Strawberry Film

橋本健太

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第4話 甘い日々

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 1990年4月、薫は京都府立洛西高等学校に入学した。そこで写真部に入部し、写真撮影に打ち込んだ。この頃から、段々と将来のことについて考え始めるようになった。薫の写真撮影の技術は高く、特に人物の写真を撮ることには長けていた。当時、スーパー写真塾などの雑誌が出ており、日常的にグラビア写真を目にする機会が増えたことに加え、彼自身も女の子が好きで、どうやれば可愛さを引き出せるかを模索していた。女の子の可愛さを引き出して、それを写真に収めたい、そして、それを作品としてどう表現出来るか、エロチズム×芸術性というコンセプトで写真を撮りたい、という意思が湧き、グラビア専門のカメラマンになりたいと彼は思うようになった。写真部に入部した同級生は彼を入れて6人で、男子は彼1人だけだった。入部してから月日が経ち、夏を迎えた頃には、徐々に恋心も芽生えてきた。

 特に彼が気になった女子は3人いた。1人目は、片山美香。黒髪ボブで眼鏡のおっとりした感じの子で、写真の他に漫画が好きである。2人目は、京本優香。黒髪ロングできりっとした感じの子で、優等生である。3人目は、緒方京香。黒髪ショートでどこか不思議な感じがある。ホラー漫画家 伊藤淳二の「富江」に似た雰囲気。そんな個性豊かな女子達とよく一緒に過ごしていた。
「薫は、女の子の写真撮るの上手いな。」
「そう?」
優等生の優香に褒められ、赤面する薫。優香とは同じクラスで、成績優秀な優等生の彼女に、よく勉強を教えてもらっている。
「何かグラビアみたいで可愛いなぁ。」
美香とは、漫画好きという共通点があるので馬が合う。京香は、風景の写真を得意としており、祇園や清水寺などの風景をよく撮影している。美香と京香とは違うクラスのため、部活以外では喋る機会が少ない。そこで、薫はあることを思いついた。1学期最後の日、部活終わりに薫は3人にこう言った。
「8月にみんなで海に行かへん?」
突然の提案に皆は驚いたが、快く承諾してくれた。
「海ね、ええやん。」
「薫君と海か、楽しそう。」
「海、いい風景が撮れそう。」
計画はこうだ。部活がお盆休みの時期に、京都府北部の宮津市に行くというもの。電車でも2時間はかかるので、当日は京都駅に朝8時に集合して出発する。宮津市には、天橋立があり、それもまた絶景である。日程と集合時間・場所を決め、この日は解散した。

 夏休みに入り、薫は部活で毎日のように学校で写真を撮っていた。学校帰りに本屋で、店員に注意されるまでグラビア雑誌を立ち読みしていた。
「スゴい、ハイレグとかケツ見えるやん…。」
他にも、週刊少年ジャンプにハマっており、電影少女の単行本を買って、部屋で朗読していた。
「ええな、ビデオから女の子出て来おへんかな…。」
電影少女を読んでいる時、薫は作者の桂正和の「リアルな人物画」と「繊細な心理描写」で描かれた恐らくジャンプ史上初の本格的恋愛漫画として評価し、自分がグラビアアイドルを撮る際に、こういった形で表現出来ないだろうかと考えるようになった。宿題は計画的に進め、8月までには3分の2を終わらせた。8月も猛暑に負けず、写真を撮り続け、納得のいく1枚を模索し続けた。そんな中でも、3人と行く夏の海に思いを馳せ、夜は夏歌を口ずさみながら部屋で宿題をしていた。
「「「め組の人」」って、まず誰やねん…。」

 8月中旬、お盆休みになり、念願の海水浴の日を迎えた。当日の午前8時、薫は真っ先にJR京都駅に来ていた。茶色いカメラマンハットを被り、白いTシャツに黒い半ズボンでリュックを背負っていた。ポケットには、写ルンです、という小型のレンズ付きフィルムが入っている。しばらく待っていると、3人が来た。特急のはしだて1号 天橋立行きに乗り、宮津市へ向かう。朝早いのか、皆は車内で寝ていた。10時30分頃、電車は宮津駅に到着。
「起きて、起きて。」
3人を起こして、電車を下りる。むわっとした熱気と爽やかな夏の雰囲気に、一気にテンションが上がる。天橋立に来たら、傘松公園は欠かせない観光スポットである。

    宮津駅から移動し、傘松公園に到着。傘松公園からは日本三景「天橋立」を見ることが出来る。
「あれって、島?」
「天橋立に来たら、アレやらへん?股のぞき。」
天橋立の中心「阿蘇海」と外側の「宮津湾」を分けて伸びる天橋立は、股の間から覗くと、天地が逆転し、天に橋がかかっているように見える。台に乗り、皆で股のぞきをする。
「わー、スゴい!」
「絶景やな!」
「おぉー!天橋立とは言うたモンやな。」
薫は、写ルンですのシャッターを切る。天橋立公園も廻り、天橋立海水浴場に行く。
時刻は12時。海で泳ぐ前に、まずは腹ごしらえ。海の家の定番メニューと言えば、焼きそばである。安値で量いただける。瓶のコーラで乾杯し、焼き立ての湯気が立ち込める焼きそばを啜る。
「美味いー!やっぱコレやな!」
「美味しい!」
腹を満たした後は、更衣室へ行って着替える。

    先に着替えを済ませた薫は、砂浜で場所をとる。そこに水着に着替えた3人が来た。
「お待たせ!」
優香は白ビキニ、京香は黒ビキニ、そんな中、美香は丸縁のメガネに白と青のハイレグと大胆な水着姿を披露した。
「わー!!美香ちゃん、大胆やなー!!もっこり、もっこり!!」
「「「シティハンター」」の冴場みたいやな。」
それから、海をバックに3人の写真を撮る。一緒に海で泳ぎ、夏を満喫した。
「海は気持ちいいわね!」
「最高やなー!」
砂浜で、優香と美香の相撲。ハイレグのお尻が食い込んだ所を、薫は寝そべって撮影した。
「これはスゴい!」
「もー、薫のエッチ!」
こうして、3人との夏の海を満喫した。

    夏休み明けの文化祭では、薫のグラビア写真が高く評価された。体育祭では、写真部として、競技の様子を写真に収めた。
「これよ、これ!この躍動感!!」
学年優勝を修め、みんなの集合写真を撮った。
「ええな、この勝った後の笑顔!行くでー!」
三脚にカメラをセットし、急いで皆の元へ駆け寄り、集合写真を撮る。充実した日々を送っていたが、薫が1番好きなのは、女の子の写真を撮る時である。秋になり、美香と祇園をデート。浴衣姿で風情を楽しむ。
「大人の世界みたいやな。」
「祇園はええとこやね。」
ただ、薫が女の子の写真を撮る時に、ベストシーズンと思っているのは、夏である。夏の海で、女の子の水着姿を写真撮影する時が、1番好きなのだ。秋、冬は露出度が減るので水着の写真が中々撮れない。
「薫と海行ったの楽しかったな。」
「ありがとう。僕も女の子3人と海で遊べたのは楽しかったよ。」
「ねぇ、薫。海で美香のお尻いっぱい撮ってたね。」
「べ、別にアレは変な意味やないで。」
「何?照れてるん?」
美香に手を握られ、赤面する薫。美香のつぶらな瞳に、ドキドキする。
「ちょ、そんなに見つめんといてよ…。」
「美香もドキドキする。」
この流れはキス?そう思ったが、お互いに勇気が出なかったのでしなかった。

    学校帰りに、週刊少年ジャンプを読んでいたら、ある作品に目が止まった。
「ん?幽☆遊☆白書?」
冨樫義博の2作目となる作品で、第1話でいきなり主人公の浦飯幽助が死ぬ所から始まる。
「えぇ!!いきなり死ぬん?!」
充実した1990年が終わり、高2になる1991年も楽しくなりそうだ、と薫は高揚感を抱いた。
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