Strawberry Film

橋本健太

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第16話 1997スタート

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   芸能事務所のカメラマンとして日々働き、大阪での独り暮らしにも慣れてきた。夏になり、研修期間を終えた薫は先輩カメラマンの見習いとして、撮影に携わることになった。1997年7月1日 配属されるカメラマンと対面した。
「キミやね。私は倉本孝明。よろしくね。」
面長で、髭を生やした物静かな感じの男性。見習いは1人のカメラマンに付き、2人は付く。薫と同じく彼に付くのは、黒髪ショートのムッチリした感じの女子である。
「香塚薫です。」
「棟方喜美子です。」
今日は、雑誌の表紙と巻頭のグラビア撮影。撮影機材を手入れし、ワゴン車に詰め込む。
「忘れ物は無いな?今日は撮影で、神戸まで行くからな。」
「大丈夫です!」
その他スタッフ達と共に撮影場所へ向かう。阪神高速道路を通り、神戸市に到着。スタジオにて、クライアントと顔合わせ。
「こんにちは。お世話になります。芸能事務所Starのカメラマン 倉本孝明と申します。」
「こんにちは。マネージャーの田村昭二と申します。こちらがウチのグラビアアイドルの山本真希です。」
「どうも、山本真希です。」

    撮影の段取りを確認している間、モデルの子はへアセットやメイクをしてもらっている。モデルの子の情報を確認。

撮影日 1997年7月1日
モデル 山本真希
年齢 19歳

午前中の撮影は、このスタジオで行う。セットが終わり、薫と喜美子は準備をして裏方に徹する。最初はベッドに座り、パジャマ姿で撮影。辺りを暗くしてピンポイントで照明を当てる。
(機材、重たいわ…。)
他のスタッフに支えてもらい、照明を調整してもらう。パジャマの下はパンティで、太ももはむっちりしている。座っている所から、徐々にパジャマのボタンを外していく様を、ストップモーションのように撮影していく。パジャマをはだけさせ、ベッドに四つん這いになって誘うような仕草をし、見る者を誘惑する。ベッドでの撮影を終え、風呂場での撮影に入る。ビキニ姿で撮影し、入浴している様も撮った。午前中の撮影を終え、休憩時間に入る。
「19歳で、あんなセクシーなプロポーション。あの子中々ええな。」
「それは、ウチも思ったけん。パジャマはだけさせたんエロかったとよ。」
「喜美子ちゃん、九州の子?」
「うん。福岡やけん。」
午後からは、三宮に移動し、南京町で撮影。全て終わったのは18時。大阪に帰って来たのは19時。機材を片付け、この日の仕事は終了。
「お疲れ様。初めての撮影の裏方は、キツかったやろ?まぁ、裏方でしっかり下積みを経ていくことや。また頑張ろう!」
「はい!!」

    夏本番になり、薫は相棒の喜美子とグラビア撮影の裏方に励んだ。仕事帰りに、薫は週刊少年ジャンプを読んで、元気を貰った。
「何や、この髭面のオッサン、えぇ?!小学生なん!?」
社宅では、喜美子と隣のため、彼女に福岡名物をご馳走してもらった。
「暑い時こそ、もつ鍋やけんね。」
「ニラがゴツいな。めっちゃ煮えてるやん。」
撮影では、海での撮影も行い、女子の水着姿にたじろいだ。
「何見てるの?変態。」
「変態ちゃうよ。」
夏の暑い日も裏方に奔走し、夜は涼しいコンビニでジャンプを読んだ。
「I,,sは夏の話や。女の子のビキニ姿はええな。」
「新作は、「「ONE PIECE」」?海賊か。ゴムゴムの実?何やこれ?」
日々、仕事に励み、学び得たことを復習した。

    秋になり、余裕が出てきた頃、久々に博信に出会った。
「薫!久しぶりやな!」
「博信、元気そうやな。」
博信は、大阪スポーツでスポーツカメラマンとして働いている。16th1998FIFAW杯フランス大会のアジア最終予選を追っている。日本代表は、加茂周監督が解任され、岡田武史が就任。宿敵 韓国に勝利し、カザフスタンを粉砕して2位に入り、プレーオフに進出した。
「盛り返したんや。」
「そうや。俺は、プレーオフの撮影でマレーシアまで行くわ。薫はテレビで観てくれ。」
「マレーシアまで行くんや。頑張ってな。」
親友が遠い存在のように感じた。

16th1998FIFAW杯フランス大会
アジア第3代表決定戦  
1997年11月16日
日本VSイラン
仕事帰りの薫は、喜美子を自分の部屋に呼び、日本の悲願のW杯出場を見届けようと見守る。
「頑張れ…。」
「頑張って欲しか。」
キックオフ。前半は日本が攻め、39分に中山雅史のゴールで先制した。
「よっしゃ!ゴンが決めた!」
しかし、イランも2トップが躍動。後半にコダト・アジジとアリ・ダエイが得点し、逆転された。
「何ばしよっと!!」
「マズい…。引っくり返された…。」
2人の脳裏に浮かぶドーハの悲劇。もうあんな悲劇はごめんだ、と祈る思いで観ていた。日本は反撃し、76分に城彰二の得点で同点に追い付き、勝負は振り出しに戻った。
「よっしゃ!」
「何か、イランの選手、へばって来とるな…。これはチャンスやな…。」
イラン代表は、イランからマレーシアに行く時に直行便が確保出来ず、ドバイや香港を経由して36時間かけて到着。更に飛行機の遅延で乗り継ぎ失敗し、6時間もかかってしまい、コンディション調整に失敗。終盤は立つのがやっとであった。試合は延長戦へ突入。ここからは、どちらかが決めた時点で試合終了のゴールデンゴール方式が採られた。日本は岡野雅行を突入。切り札登場かと思われたが、緊張からか、ことごとく決定機をフイにし、実況とサポーターを呆れさせた。
「何しに来たと?」
「岡野ぉ…。このままやったら、日本帰られへんぞ。」
勝負は延長後半13分、このまま残り2分で決着が着かなければ、PK戦へ突入する。お互いに体力の限界が来ていた。日本はピンチをしのぎ、中田英寿がドリブルからシュートを放つ。GKが弾いたところを岡野雅行がスライディングで押し込み、勝負あり。3-2で勝利した日本が、W杯出場権を獲得した。
「やったー!!!!!!!」
「遂に行けたんやな!!!W杯に!!!」
薫と喜美子は、幸福感でいっぱいだった。

    12月下旬、薫は博信と久々に夕食をいただいた。博信の奢りで、大阪 鶴橋で焼き肉。
「いやー。あの試合はホンマに手に汗握ったで!!!歴史的瞬間を撮影出来たんやからな!!!」
「俺もテレビで観ていたけど、最高やったな。岡野決めてくれたからな。」
「これで、日本は悲願のW杯初出場や。」
焼き肉の熱気と相まって、2人は顔を赤くして語っていた。
「せやけどな。これはゴールやない。スタートや。ようやく日本は世界で戦う場所に立てた訳やからな。」 
「そうやな。これからやな。」
薫と博信は、カメラマンとして、まだ駆け出したばかりである。1997年、カメラマンとして駆け出した…。
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