Strawberry Film

橋本健太

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第21話 20世紀の終わり

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   2000年1月、20世紀最後の年が幕を開けた。コンピューターの2000年問題は、無事に解決し、薫は実家で年を越して新年を迎えた。近代と現代が入り交じった20世紀も、今年で終わる。日本はバブル崩壊や阪神淡路大震災、オウム真理教地下鉄サリン事件と、激動の1990年代を過ごした。21世紀は、良いものになるようにと、薫は八坂神社で祈願した。それから仕事に励み、グラビア撮影を行った。2月のある日、雑誌の撮影で東京へ行った際、アイドルグループと出会った。
「ん?あれはもしかして?!」
当時、人気絶頂のアイドルグループ モーニング娘。である。グラビア撮影の合間、音楽番組 HEY!HEY!HEY!の収録に同行させてもらった。曲は、「恋のダンスサイト」。曲が始まると、熱気は増し、薫は彼女らに圧倒された。
「セクシービーム!!」
(矢口真里のセクシービームや!!)
薫は、モーニング娘。のメンバーを生で見れたことに感激し、手に汗握った。その後もゴマキや辻ちゃん加護ちゃんを見ることが出来、その日の夜は眠れなかった。

   春になった頃、青少年育成保護条例により、一部のジュニアアイドル雑誌が、有害図書にみなされ、廃刊に追い込まれた。廃刊にされてしまうと、グラビアアイドルやカメラマン、出版社の仕事が無くなってしまう。何でもかんでも抑圧することが、本当にいいのか、一体誰にとって都合が悪いのか、薫はそのことについて考えた。
「有害図書って、言いますけど、何を以てそういうんですかね…。」
「あぁ…。青少年育成保護条例というのが出来てから、グラビアアイドル雑誌が廃刊になるからな…。」
仕事終わりの時間、薫は孝明と話をした。芸能事務所Starでは、薫が入社した1997年に刊行したジュニアアイドル雑誌「フルーツジュース」「チョコバナナ」「ミルキーポムポム」が、そこそこ売れていた。しかし、女子中高生のヌードやパンティを付録にしたことで、有害図書だと言われてしまい、2000年の4月を以て廃刊になると言われた。
「「「チョコバナナ」」って、同じ名前のイラスト集の雑誌はありましたけど…。」
「あぁ、さくまあきらの雑誌ね。あれは単純に、あの雑誌が赤字やから廃刊になっただけやで。女子中高生のパンティを付録にする際には、ちゃんと許可を取った上でやってるから…。決して無理強いはしてへん。」
「一度、訴えを起こした人達と話してみたいです。」
「話してみるか…。個人的ならイケそうやな…。」
この日のやり取りが、ここで終了。後日、訴えを起こした者と連絡が取れ、アポイントメントを取った。その結果、各雑誌の最終号の撮影日である3月20日の夜に、大阪市内の貸会議室で話すことになった。これは、あくまでも個人的なもので、メディアには一切公表しないという約束で成立した。

 撮影が近づき、薫はスタッフやモデルと打ち合わせを行い、準備を進める。自分を育ててくれたグラビア雑誌が、大人や社会の一方的な都合で、廃刊にされてしまうことに悲しみを感じた。仕事終わりに、週刊少年ジャンプを立ち読みし、桂正和の「I,,s」が終わりに近づいていることを知った。
「もう終わりの方やな。伊織と一貴の恋どうなるんや…。」
2000年の週刊少年ジャンプは、I,,sが終わりを迎えようとしていた。ヒロインの伊織は、高校卒業後に芸能界に入った一方で、主人公の一貴は大学入試に失敗、現状を変えようと一人暮らしを始めるという対照的な状況だった。それでも互いを思っていたが、芸能界に入った伊織は、様々な圧力を受け、恋を諦めざるを得なくなっていた。
「何か状況似てるな。」
他の作品では、遊戯王はデュエルモンスターズの原点となるカードゲームの戦いが始まり、HUNTER×HUNTERでは、ハンター試験に挑み、シャーマンキングでは、シャーマンファイトという大会が始まり、と様々なストーリーが展開されていた。
「ONE PIECE13巻出てる。買っていこう。」
気分転換をしながら、撮影まで準備した。最後の撮影日を迎え、3本連続で撮影することになった。フルーツジュースの撮影では、女子高生のパンチラと教室での白ハイソックスでのヌード撮影を行った。時間が押しているため、大阪から神戸までの移動中の車内で、昼食を食べる。
「薫君、顔が青いと。大丈夫と?」
「あ、あぁ。大丈夫やで…。」
コンビニで買ったアンパンと野菜スティックを食べ、コーヒー牛乳を一気飲みして、神戸に着くまで昼寝した。神戸の須磨海水浴場で撮影。チョコバナナという雑誌の撮影で、女子中学生の水着グラビアを撮った。溶けかけの棒アイスをしゃぶるところを、セクシーな感じで撮影した。撮影が終わり、阪神高速で大阪に戻り、最後のミルキーポムポムの撮影にあたる。時刻は17時。朝5時から移動している薫は、疲労困憊であった。
「大丈夫ですか?しっかりしてください。」
モデルの子は、倉橋優子 18歳。黒髪ショートのしっかりした感じの子である。
「よし、撮影や。」
教室で、黒板に字を書いている所や、スカートを捲し上げてのパンチラショットなどを撮影した。18時半になり、全ての撮影は終了した。写真の編集は翌日に行うことになった。

 仕事が終わり、喜美子は先に社宅に帰り、薫・孝明・なぜか優子も便乗してついてきた。19時半、大阪市内の貸会議室に到着。訴えを起こした代表者2人来ていた。
「こんばんは。芸能事務所Starのカメラマン 倉本孝明と申します。」
「同じく香塚薫です。」
「モデルの倉橋優子です。」
挨拶をした後、彼らも自己紹介した。代表者は40代のオジサンとけばけばしい感じのオバサンである。
「こんばんは。「「青少年を有害図書から守る会」」会長の小杉清と申します。」
「同じく副会長の副島雅子と申します。」
訴えた理由は、「フルーツジュース」「チョコバナナ」「ミルキーポムポム」の1999年8月号に掲載された女子中学生のヌードグラビアや入浴シーンのことである。以前から、棒アイスをペロペロ舐めるシーンや、教室でのヌードグラビアなど際どいグラビアを載せていることから、度々目を付けていたという。
「学びの場である教室で、机に腰掛けたり、椅子の上でM字開脚だの、全くはしたないわよ!」
会長は机を叩いて叫んだが、口調が口調なので優子は吹き出した。
「ぷふっ、何か喋り方、おすぎとピーコみたい…。」
「優子ちゃん、笑ったらアカンよ。」
「おすぎじゃないわよ!」
それに副会長も続いた。
「1980年代に起きた宮崎勤の誘拐事件を知らないの!あれこそロリコンよ!アンタ達のせいで、日本がロリコン大国になるのよ!汚らわしいったら、ありゃしないわ!この変態カメラマン!」
この一言に、薫は机を叩いて立ち上がった。
「ちょっと今のは、聞き捨てなりません!確かに際どい所は撮ってます。しかし決して犯罪を助長している訳ではありません。あくまで芸術として撮影しています。グラビア1つ撮るのに、どれだけの時間と労力を費やしているか、1度でも考えたことありますか?不快に思われたら、申し訳ありません。しかし、カメラマンとモデルはいい作品を遺そうとしているのです。今回の廃刊は仕方ないですが、どうか活動の場を奪わないであげてください。」
薫は、深々と頭を下げた。これに会長の態度は軟化した。
「私こそ頭ごなしに否定してしまって、申し訳ないわ。もう少し貴方達に思いを馳せるべきね。今回、貴方方のようなカメラマンに会えて良かったわ。中々熱いじゃないの。」
話し合いは終わり、双方主張が出来て、スッキリした面持ちで貸会議室を後にした。
「見直したよ、薫。」
「薫さん、カッコ良かったです。」
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