Strawberry Film

橋本健太

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第53話 平穏

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 2010年の最後は、久美との間に待望の第一子が誕生するというこの上ない形で幕を閉じた。出生届を出し、薫は父親になった。2011年1月、第一子の娘に命名する。
「名前は「「京香」」。今日から、お前の名前は京香や。」

長女 香塚京香
2010年12月24日 誕生

正月には、久美の親族も来てくれ、孫の誕生を盛大に祝った。
「コイツは、新春から縁起がいいやぁ~!」
三が日には、喜美子が福岡から来てくれた。
「あけましておめでとう。薫君、久美ちゃん。」
子どもの誕生を喜ぶ喜美子。
「可愛いでちゅね~。」
「一人娘の京香や。」
福岡土産と共に再会を喜び、喜美子は子どもの誕生を祝ってくれた。
「君が、薫と久美と一緒に撮影していた喜美子なんやね?」
「はい、私は福岡のカメラ女子 棟方喜美子です。薫君と久美ちゃんには、お世話になりましたけん。」
土産で持ってきたモツ鍋セットで、モツ鍋をいただく。喜美子は福岡の芸能事務所 オーシャンブルーで働いている。食後のデザートは、福岡名物の博多通りもん。ミルク風味の生地で白餡を包んだ博多西洋和菓子。 
「甘過ぎなくてええな。」
「福岡土産って言ったら、通りもんやけん。」
今は、京香が乳児なので、オファーの数は減らしているが、いつかはまた福岡でも撮影したい薫。
「またいつか、福岡での撮影オファーも欲しいな。」
「薫君、トラックに撥ねられたらいけんよ。」
「その時は、私も京香連れて行ってええ?」
「良かよ。久美ちゃんも来てね。」

 三が日が終わり、仕事が始まる。おめでたい瞬間などを収めていた。1/7から始まったアジアカップを久美と共に観戦する。

15th2011AFCアジアカップ カタール
開催期間 2011 1/7~1/29
開催都市 ドーハ・アル・ラーヤン
グループA
カタール
ウズベキスタン
中国
クウェート

グループB
サウジアラビア
日本
ヨルダン
シリア

グループC
韓国
オーストラリア
バーレーン
インド

グループD
イラク
イラン
アラブ首長国連邦
北朝鮮

ここ数年で、アジアサッカーの勢力図は大きく変動していた。2004から16チームで行われたアジアカップ。初出場チームも出て来て、新興国の快進撃も目立った。
「カタールって、金持ちの国らしいねんて。」
「中東辺りのチームが、ようけ出てきよるな。」
TVで夫婦として観戦するアジアカップ。久美と娘の京香と熱狂する。

2011年1月9日 第1戦 VSヨルダン
南アフリカW杯後に、イタリア人監督のアルベルト・ザッケローニが就任した日本代表。若手主体で臨む。2004アジアカップでPK戦までもつれたヨルダンと対戦。堅守を誇るヨルダンに日本は苦戦し、45分にアブドゥルファッターに決められ、先制を許す。日本は反撃し続け、90+2分に吉田麻也のゴールで追いつき、辛うじて1-1の引き分けに持ち込んだ。
「ギリギリやったな。」
「まぁ、まずは勝ち点やな。吉田麻也か。覚えといたろ。」

2011年1月13日 第2戦 VSシリア
初戦でサウジアラビアを破ったシリアと対戦。35分に長谷部誠のゴールで先制。リードしたが、シリアの反撃に遭い、76分にGKの川島永嗣がレッドカードで退場となり、PKを与えてしまう。これをアル・ハティーブに決められ、同点に追いつかれる。苦しい時間を迎えた日本、82分にPKを獲得。これを本田圭佑が決め、リードを奪い、2-1で勝利した。
「危ない所やったな。本田圭佑、日本のエースやな。」
「川島永嗣の退場は痛いな。まぁ、勝てたんはええわ。」

2011年1月17日 第3戦 VSサウジアラビア
前回の準決勝で敗れたサウジアラビアと対戦。ベトナムで苦杯を喫した時、薫は久美と喜美子と共に観戦していた。今回、サウジアラビアは2連敗で敗退が決まっていた。日本は序盤から猛攻を仕掛け、8分、13分、80分に岡崎慎司がハットトリックを挙げ、19分、51分に前田遼一のゴールで5-0とサウジアラビアを一蹴。2勝1分 勝ち点7 8得点2失点で1位通過を果たした。
「サウジアラビア、今回全然やな。」
「ここからや。ここからがホンマの勝負や。」

決勝トーナメント
ウズベキスタンVSヨルダン
オーストラリアVSイラク
日本VSカタール
イランVS韓国

中国でブーイングと反日ムードに晒されながら優勝を見届けた2004年、東南アジアで苦い思いをした2007年、今回は現地に赴いていないが、妻になった久美と誕生した娘の京香と家族が増えた。その家族と観戦するのは、薫にとって充実したものであった。

2011年1月21日 準々決勝 VSカタール
決勝トーナメントの相手は、開催国カタール。帰化選手や地道な育成が功を奏し、近年力をつけてきている。12分にセバスチャン・ソリアに先制を許したが、28分に香川真司のゴールで同点に追いつく。前半は1-1で折り返した。後半に入ると、63分にファビオ・セザールのゴールで勝ち越しを許す。苦しい状況の日本だが、70分に香川真司のゴールで再び追いつくと、89分に伊野波雅彦のゴールで勝ち越し、3-2で逆転勝利を挙げた。
「勝ったー!!底力スゴい。」
「2004の時みたいな、あの泥臭さや。」

2011年1月25日 準決勝 VS韓国
準決勝では、前回3位決定戦でPK戦の末に敗れた韓国とのリベンジマッチ。23分に奇誠庸にPKで決められたが、36分に前田遼一のゴールで同点に追いつく。延長戦では、97分に細貝萌のゴールで逆転したが、120分に黄載元に決められ、2-2でPK戦へ。
「またPK戦やん。」
「あの時のリベンジを…。」
脳裏をよぎる2007年の夏。インドネシアでPK戦の末に敗れたあの日。重い足取りで、ジャカルタに戻った。そこで飲んだココナッツジュースは水のような味だった。
「ここで、勝ってくれ。」
日本が先攻。本田圭佑は確実に決めた。韓国の1人目、ク・ジャチョルは川島永嗣が止めた。岡崎慎司は決め、イ・ヨンネは失敗。長友佑都は失敗。ホン・ジョンホも失敗。3人目を終えて、日本が2-0。4人目で決めれば勝利。キッカーは今野泰幸。これを決め、3-0でPK戦に勝利。
「川島永嗣、スゴい!!!」
「やったで!!!!」

2011年1月29日 決勝 VSオーストラリア
決勝はオーストラリアと対戦。ここ数年、苦戦を強いられている相手である。エースのケーヒルなどに押される時間が続くが耐え切り、延長戦へもつれた。109分に長友佑都のクロスから、李忠成のボレーシュートで日本が先制。最後まで守りきり、1-0で勝利。2大会ぶり4度目の優勝を果たした。
「やったー!!!!」
「優勝や!!!!!」

TVの前だが、家族と喜びを分かち合う薫。いつかまた、サッカーに関する撮影もしたいと心から思った。
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