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第54話 クライシス
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Twitterを始めた薫。写真館の他にフリーの仕事を依頼されるようになった。ただ、娘の京香は新生児なので、仕事の数は抑えている。
「アジアカップ、日本の優勝観れて良かったね。」
「あぁ。若手が出てきよるからな。それと、ザッケローニ監督か。あのサッカーは、これからもっと進化していくやろうな。楽しみや。」
写真館では、老若男女問わず様々な写真を撮っていた。ある時は、高齢夫婦を撮影。ブラウンスーツに身を包んでいる老紳士。顔に刻まれた皺が、人生の重厚さを物語る。
「ブランデーみたいに、熟成されている感じがします。」
「上手いこと言うてくれるやん。」
赤ちゃんの京香を可愛がり、日々の成長を微笑ましく見守る。
「可愛いな。」
「いつか、薫に写真撮ってもらえるんやね。」
2月中旬、撮影オファーの予定を整理し、リストにまとめた。
2011年
2月18日 神戸
2月26日 京都
3月9日 仙台
3月10~11日 東京
2月18日、この日は神戸で撮影。町中華探訪ということで南京町に来た。
「おはようございます、薫さん。」
「おはようございます。寒いな。」
2週間前に春節祭が行われていた南京町。阪神淡路大震災後、観光地として復興し、現在に至る。門をくぐると、中国風の世界観が広がる。美味そうなニオイがあちこちから漂う。薫にとって、神戸は久々に来る場所である。最初に訪れたのは、ぎょうざ苑という餃子のお店。店内には多くの有名人のサインが飾られている。
「色んな人が来てるんやな。」
ここで3種類の餃子をいただく。水餃子・焼き餃子・揚げ餃子を注文し、烏龍茶と共にいただく。共演者は30代の男性で神戸市出身。神戸では、餃子に味噌だれをつけて食べるのがツウである。
「こうやって食べるのが、美味しいんですよ。」
「味噌だれね。意外と美味いわ。」
その後も様々なお店を廻り、最後は老祥記を訪れた。大正時代創業の豚まん発祥の老舗。豚まんは1個60円で、売り切れ次第営業終了。甘みのある皮とジューシーな餡が絶品。
「南京町に来たら、やっぱこれやね。」
2月26日、この日は京都で撮影。祇園四条を廻る。久々のグラビア系の撮影で、薫はウキウキしていた。
「モデルはどんな子かな?」
しばらく待っていると、モデルが来た。黒髪ショートの落ち着いた雰囲気の子。どこか妖艶な雰囲気がある。
「こんにちは。烏丸雫と言います。Sexy Amazonesというアイドルグループにいました。」
「え、君、アイドルグループにおったん?!」
Sexy Amazonesは、2001年に結成されたアイドルグループで、アマゾネスをイメージし、メンバーにはそれぞれ肩書があった。2004年に地下アイドルからメジャーデビューし、アジアでも活躍した。しかし、2008年にリーマンショックの影響で事務所の経営が傾いたことと、EXILEやAKB48の台頭もあり、徐々に人気は低迷し、2010年に解散。メンバーはそれぞれの道を歩んだ。
「知ってました?」
「いやぁ、悪い悪い。全盛期のモーニング娘。でアイドルの知識は止まってもうてるから。」
祇園で撮影する。浴衣姿をカメラに収める。グラビアカメラマンとして、余すところなく色気を引き出させて、1枚の写真として表現する。畳に寝転び、浴衣をはだけさせて撮影。豊満な乳房が見えるか見えないかの、きわどいところを収めていく。最後は入浴シーンも収め、大満足であった。
「薫さん、中々エッチやね。」
「いや、別に。」
3月9日、青森以来の撮影で東北地方へ行った。仙台は雪が残り、まだまだ寒い。伊達政宗像を撮影し、政宗に関する話を聞き、インタビューを重ねる。途中、M-1グランプリで優勝したサンドイッチマンの話が出てきた。サンドイッチマンは宮城県出身のお笑いコンビで、2007のM-1で敗者復活戦を制して決勝進出を果たし、そのまま優勝した。
「サンドイッチマンか。バナナマンみたいな名前やな。」
3月10日、11日は東京で撮影。秋葉原や新宿で、若者の流行などを調査。この時、大災害に遭遇した。3月11日、14時46分、渋谷での撮影を終え、駅前の喫茶店でスタッフと休憩しようとした時、緊急地震速報が鳴り、咄嗟にテーブルの下に潜る。下から突き上げるような衝撃が来て、大きな揺れに襲われた。
「薫さん!」
「地震や!テーブルの下に入れ!」
スタッフを守ろうと必死な薫。揺れが収まり、落ち着いてから、ホテルに避難。テレビで被害状況を見た時、薫は言葉が出なかった。
「東北でマグニチュード9の巨大地震 岩手・宮城・福島で津波」
大津波の映像が流れ、車や家が流されていた。福島第一原発が爆発し、放射性物質流出の危機など、甚大な被害が出ていた。
「東京行くのが遅かったら、巻き込まれとった…。」
京都に帰った後も、メディアは連日、東日本大震災を報道。世間は自粛ムードに包まれた。明らかになる被害状況、ジャーナリストやアナウンサーが必死に被災地の状況を伝える。薫は、ジャーナリズムについて再び考えざるを得なくなり、自粛ムードと相まって、悶々としていた。
「俺は何をやってるんや。中途半端な覚悟じゃジャーナリストなんて務まらん。」
「アジアカップ、日本の優勝観れて良かったね。」
「あぁ。若手が出てきよるからな。それと、ザッケローニ監督か。あのサッカーは、これからもっと進化していくやろうな。楽しみや。」
写真館では、老若男女問わず様々な写真を撮っていた。ある時は、高齢夫婦を撮影。ブラウンスーツに身を包んでいる老紳士。顔に刻まれた皺が、人生の重厚さを物語る。
「ブランデーみたいに、熟成されている感じがします。」
「上手いこと言うてくれるやん。」
赤ちゃんの京香を可愛がり、日々の成長を微笑ましく見守る。
「可愛いな。」
「いつか、薫に写真撮ってもらえるんやね。」
2月中旬、撮影オファーの予定を整理し、リストにまとめた。
2011年
2月18日 神戸
2月26日 京都
3月9日 仙台
3月10~11日 東京
2月18日、この日は神戸で撮影。町中華探訪ということで南京町に来た。
「おはようございます、薫さん。」
「おはようございます。寒いな。」
2週間前に春節祭が行われていた南京町。阪神淡路大震災後、観光地として復興し、現在に至る。門をくぐると、中国風の世界観が広がる。美味そうなニオイがあちこちから漂う。薫にとって、神戸は久々に来る場所である。最初に訪れたのは、ぎょうざ苑という餃子のお店。店内には多くの有名人のサインが飾られている。
「色んな人が来てるんやな。」
ここで3種類の餃子をいただく。水餃子・焼き餃子・揚げ餃子を注文し、烏龍茶と共にいただく。共演者は30代の男性で神戸市出身。神戸では、餃子に味噌だれをつけて食べるのがツウである。
「こうやって食べるのが、美味しいんですよ。」
「味噌だれね。意外と美味いわ。」
その後も様々なお店を廻り、最後は老祥記を訪れた。大正時代創業の豚まん発祥の老舗。豚まんは1個60円で、売り切れ次第営業終了。甘みのある皮とジューシーな餡が絶品。
「南京町に来たら、やっぱこれやね。」
2月26日、この日は京都で撮影。祇園四条を廻る。久々のグラビア系の撮影で、薫はウキウキしていた。
「モデルはどんな子かな?」
しばらく待っていると、モデルが来た。黒髪ショートの落ち着いた雰囲気の子。どこか妖艶な雰囲気がある。
「こんにちは。烏丸雫と言います。Sexy Amazonesというアイドルグループにいました。」
「え、君、アイドルグループにおったん?!」
Sexy Amazonesは、2001年に結成されたアイドルグループで、アマゾネスをイメージし、メンバーにはそれぞれ肩書があった。2004年に地下アイドルからメジャーデビューし、アジアでも活躍した。しかし、2008年にリーマンショックの影響で事務所の経営が傾いたことと、EXILEやAKB48の台頭もあり、徐々に人気は低迷し、2010年に解散。メンバーはそれぞれの道を歩んだ。
「知ってました?」
「いやぁ、悪い悪い。全盛期のモーニング娘。でアイドルの知識は止まってもうてるから。」
祇園で撮影する。浴衣姿をカメラに収める。グラビアカメラマンとして、余すところなく色気を引き出させて、1枚の写真として表現する。畳に寝転び、浴衣をはだけさせて撮影。豊満な乳房が見えるか見えないかの、きわどいところを収めていく。最後は入浴シーンも収め、大満足であった。
「薫さん、中々エッチやね。」
「いや、別に。」
3月9日、青森以来の撮影で東北地方へ行った。仙台は雪が残り、まだまだ寒い。伊達政宗像を撮影し、政宗に関する話を聞き、インタビューを重ねる。途中、M-1グランプリで優勝したサンドイッチマンの話が出てきた。サンドイッチマンは宮城県出身のお笑いコンビで、2007のM-1で敗者復活戦を制して決勝進出を果たし、そのまま優勝した。
「サンドイッチマンか。バナナマンみたいな名前やな。」
3月10日、11日は東京で撮影。秋葉原や新宿で、若者の流行などを調査。この時、大災害に遭遇した。3月11日、14時46分、渋谷での撮影を終え、駅前の喫茶店でスタッフと休憩しようとした時、緊急地震速報が鳴り、咄嗟にテーブルの下に潜る。下から突き上げるような衝撃が来て、大きな揺れに襲われた。
「薫さん!」
「地震や!テーブルの下に入れ!」
スタッフを守ろうと必死な薫。揺れが収まり、落ち着いてから、ホテルに避難。テレビで被害状況を見た時、薫は言葉が出なかった。
「東北でマグニチュード9の巨大地震 岩手・宮城・福島で津波」
大津波の映像が流れ、車や家が流されていた。福島第一原発が爆発し、放射性物質流出の危機など、甚大な被害が出ていた。
「東京行くのが遅かったら、巻き込まれとった…。」
京都に帰った後も、メディアは連日、東日本大震災を報道。世間は自粛ムードに包まれた。明らかになる被害状況、ジャーナリストやアナウンサーが必死に被災地の状況を伝える。薫は、ジャーナリズムについて再び考えざるを得なくなり、自粛ムードと相まって、悶々としていた。
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