Strawberry Film

橋本健太

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第67話 傘とパンツの恩返し

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 W杯が終わり、次の撮影の準備と写真集で使う写真とイメージビデオを編集していた薫。家族の時間も大事にしていた。京香は言葉を話せるようになり、妹の桃香と遊ぶようになっていた。
「京香は、来年、幼稚園やね。」
「そうか、京香も大きくなったな。」
娘の成長を感じる薫。元グラビアアイドルの倉橋優子とは、時々だが、やり取りをしており、娘の沙耶香が小学生になったと聞いている。
「俺がジュニアアイドル撮ってた頃の、倉橋優子って娘おったやん?あの子も娘さん授かって、今は小学生やねん。成長早いな。」
「へぇ。その子に会ってみたいな。」
現在は、大阪府吹田市に住む倉橋優子夫妻。薫も父親として、色々と頑張ろうと思った。

 8月になり、Strawberry Film3最後の海外撮影でイギリスに行く。経由地の香港で、モデルと合流した。
「HELLO!!」
アリー・チャンとジュリー・ウォンに出会い、スタッフらと共にイギリスへ飛んだ。2年ぶりのロンドンに、薫はテンションが上がる。
「2年ぶりのロンドンやー!!!!」
初めてのヨーロッパに、アリーとジュリーも大はしゃぎ。
「It's Wonderful!!!」
「Grade Kingdom!!」
かつて香港を植民地にしていたイギリス。香港は、いち早く海外の文化を採り入れ、独自の文化を形成していった。ホテルにチェックインし、ロンドンでの夕食にありつく。
「イギリス料理、意外と美味しい。」
「せやろ?フィッシュ&チップスが中々イケルで。」
香港人スタッフから、最近の香港の様子を聴く。香港は、1997年にイギリスから返還され、一国二制度の形で経済発展してきた。しかし、近年、中国が政治的に干渉して来て、それが政治に影響を及ぼした。それに、香港の民主化団体「学民思潮」が反発した。
「近々、反政府抗議活動が起こりそうです。」
「「「学民思潮」」か。どういう団体なんやろな?」
詳しい話は、撮影後と言うことで、薫は食後の紅茶を飲み干した。

 ロンドンでの撮影で、2人はイギリス風のドレスに着替えた。セレブな世界をイメージして撮影し、大英帝国の頃を彷彿とさせる。
「ええ感じやな。」
イメージビデオでは、優雅なアフタヌーンティーの様子を撮る。アリーとジュリーは、紅茶を飲みながら楽しんでいた。スコットランド方面のグラスゴーでも撮影。夏なので、水着姿も撮った。Strawberry Film3の撮影は終了。帰りに香港に立ち寄った。真夏の香港は蒸し暑く、外の壁にある室外機から水がポタポタ落ちてくる。
「暑いな。」
ジャーナリストとしての側面がある薫。香港の新聞 アップルデイリーの出版社に向かった。九龍半島新界エリアの将軍澳に行き、本社を訪れた。
「ネイホウ!!」
「ネイホウ!!君が、日本のカメラマンのカオルか!!」
創業者 黎智英(ジミー・ライ)と出会う。蘋果日報(アップルデイリー)は、1995年に香港で創刊された日刊紙で、名前の由来は「もし、アダムとイヴがリンゴを口にしなかったら、世界に善悪は無く、ニュースも存在しなかっただろう。」というものである。薫が、香港でグラビア撮影していたことは知っており、その時の写真も載せた。
「日本では、グラビアカメラマンとして有名なようだね。」
「はい。香港でも私の名が知れているのは、光栄でございます。」
ジャーナリストとしても活動し始めたことを話すと、彼は薫に仕事を依頼する。
「もし、これから、香港で民主化運動や反政府抗議活動が起これば、私は君を呼ぶ。香港の今や、彼ら彼女らのことを、日本に伝えてくれ。」
真剣な様子に、薫は真摯に耳を傾ける。
「分かりました。その時はいつでも。」
航空券代・宿泊代は保障する、という条件で契約を交わした。

 夏が終わり、薫は翌年のアジアカップの撮影の日程や段取りを、博信達と打ち合わせする。オーストラリアは南半球にあり、日本とは季節が逆。つまり、向こうは夏である。オーストラリアは初めてで、未知の世界。
「オーストラリアか。メシは美味いんやろうな。」
9月26日、香港で高校生・大学生らによる、授業のボイコット及び「真の普通選挙」を求めるデモが、香港中文大学内で起きた。これを受け、薫はジミーからの招集を受け、香港へ飛び立った。ビザの関係で、滞在期間は9月27日から11月27日の2ヶ月間。その間の住居は、向こうが保障する。学民思潮のメンバーに改めて対面する。

 反政府と言うことで、メンバーは黒いTシャツを着ている。創始者の林朗彦(アイヴァン・ラム)と黄之鋒(ジョシュア・ウォン)と出会う。
「ネイホウ。私は、学民思潮創始者の林朗彦です。」
「同じく、創始者の黄之鋒です。」
林朗彦は細身の青年、黄之鋒は眼鏡をかけた短髪の少年。
「ネイホウ。日本のグラビアカメラマンでジャーナリストの香塚薫です。」
10代の子が中心人物であることに、薫は驚く。奥から、もう一人メンバーが来た。
「ネイホウ、私は周庭です。」
周庭(アグネス・チョウ)は、黒髪ロングの美少女で、薫は一目惚れした。
「可愛い~…。」
「あれ?薫さん?もしかして、周庭に惚れたな?」

 アイスブレイクで打ち解け、薫は職務に当たる。周庭は当時17歳であり、日本の高校生に当たる年。薫は今までの経験から、彼女のグラビアを撮りたいと思った。
「周庭って子、ホンマに可愛い。社会活動しているのもありますが、こう、可愛さと力強さを兼ね備えた、そんな感じがあります。」
「そうか、あの子のことが分かるんだな。」
香港でグラビア撮影をした薫。それを察したジミー。
「もしかして、あの子のグラビアを撮る気か?」
「はい。あわよくば、パンツも撮りたいです。」
「薫よ。そこは個人の自由だ。くれぐれも警察に捕まるなよ。奴らは今、気が立っている。」
「はい。」
9月28日、繁華街の旺角や尖沙咀に行く。授業をボイコットした学生達によって、商店などは占拠されている。

「民主化」
「光復香港」

というプロパガンダが掲げられ、物々しい雰囲気が漂う。
「こんな若い子達が、ここまでやるとはな。」
10年前に、チェリーとファンのグラビアを撮った時とは打って変わっていた。その夜、大規模なデモが行われた。薫は、デモ隊を追いかけて、ギリギリまで接近して撮影する。
「スゴいな。」
その時、市民の前に武装した警察が立ちはだかった。
「止まれ!!止まらないなら、これでも食らえ!!」
警官は、デモ隊目掛けて催涙ガスを散布。
「何やコレ?」
「危ない!!」
周庭らが、薫を傘の内側に入れ、催涙ガスを防いだ。状況を飲み込み、防御装備を身に着けて、辺りを見渡す。
「オイオイ、何で警官が市民を攻撃してるんや?ジャッキー・チェンの映画観て、それで警官なったんちゃうんか?!」

 雨傘で助けられた薫。余暇には、皆は薫が持ってきた写真集を観る。
「薫さん、女の子の写真いっぱい撮ってますね。」
「俺は、グラビアカメラマンやからね。香港のグラビアアイドルも撮ったで。」
日本のアニメにハマっている周庭は、薫の撮ったグラビアにハマる。
「薫さん、女子高生好きなんですね。」
「あぁ。」
周庭に見つめられ、薫は赤面する。
「もしかして、私のこと撮りたいんですか?」
思わぬ提案に赤面する。
「撮ってもええの?」
「コスプレとかしますよ。」
「じゃあ、パンツ撮ってもええかな?」
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