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それはさておき。
誰かに見せて自慢してみたいと常々思っている正剛だが、簡単なはずの最初の一歩すら切り出すことが出来ない。なので今のところ実現したことはない。
「わぁ、可愛いー」
「ちっちゃいですねー」
新人からの誉め言葉にドヤ顔をする山崎。元々細い目を更に細くさせ、胸を反らしている。最近出張ってきたと言っていた腹がぼうんと一回りデカくなって見えた。
腹回りだけでなく、厚みも増し始めている山崎を横目で確認した正剛は、思わず自分の腹に目線を落とした。
(まだ大丈夫だとは言え、俺もそろそろ気を付けなくちゃな・・・)
週一で社内ジムへ行くように心がけていたのだが、年度末から新年度は仕事量が増えていたので中々行けていないのと、ジムへ行く時間があるのならうさおを愛でたい。それが実状だ。
(気候も良くなってきたことだし、またジムに行くか)
アラフォーが目前に迫ってきた今、ここで自分を甘やかせば取り返しのつかないことになりそうな気がひしひしと感じた。
自己管理を怠っていると、そのうちデータとしても表れてくる。それは回避したい。ただでさえ厳つい顔をしているから男女問わず一定距離を取られやすいのに、プラスぶよぶよな体なんて最悪だろう。
(これで加齢臭が加わると目も当てられんしな・・・。)
早く帰って可愛いうさおを触りたい気持ちを堪えつつ、一先ず正剛は目の前の食事に専念することにした。
新人歓迎会を終え、少々食べ過ぎた感を覚えた正剛は、カロリー消費を考え、最寄り駅一つ前で降車して一駅分を歩いて帰ろうかとも思ったが、アルコール摂取量と、うさおに早く会いたいが為に時間短縮の方を選んだ。
普段より遅い時間に、いつも利用している道をコンビニやスーパーにも寄り道することなく歩いた。駅から十分程度でアパートにたどり着く距離をアルコールが入った体で出来るだけ急いだ。ゴールには癒しが待っている。
アパートのドアの開錠さえも、もどかしく感じる。ここを開ければもふもふを堪能出来る。後数秒だ。
「ただいま」
なるべく大きな音と声で驚かせることが無いように、静かにドアの開閉をする。飼い始めて毎回出社や帰宅の際にはうさおに挨拶をするようになっていた。
以前は無言のままリビングへと移動し、ソファにどさりと腰を落としてから一息ついてからテレビを点けだらだらすることが習慣だった。
今は、うさおの顔を見ることが何よりも最優先。
室内で外窓の光があたらない場所に設置したうさぎのケージに真っ先に向い、まずは元気そうか表情を見る。体に似合わない程の大きな黒い瞳でじいっと見つめられる至福。
「うさお。ただいま」
腰を屈め、ケージ越しにまず愛でる。本人に自覚はないが目じりが大変残念なことになっている。それを見るものは誰もいないから問題はない。
早く姿を見たいからと言って、体の移動を早くしたりはしない。驚いてケージの隅に逃げてしまうからだ。
飼いだしてそろそろ一週間。最初は警戒して全然寄ってこなかったうさおは、ようやく正剛が怖くないと認識してくれたらしく、人差し指を柵の間から入れるとふんふんと匂いを嗅ぎに来てくれるようになった。毎日餌をくれる人だとしか認識されていないのかも知れないが、そんなことはうさおの愛らしさの前では些細なこと。
ゆっくりとケージの扉を開き、驚かせないようにゆっくりと手を差し入れ指先でおでこ(目と目の間の部分)を撫でる。気持ちがいいのだろう。うさおは目を閉じ動かない。けれど髭がぴょこぴょこ揺れている。
自分の掌よりも小さな小さな頭。ふわふわと滑らかな毛の感触が堪らない。犬や猫の毛よりずうっと細くて柔らかだ。
撫でる側と撫でられる側、うっとりとお互いが目を閉じているのは愛嬌と言えるだろうか。
満足するまで撫でているとかなりの時間が経過していて驚くこともしばしば。
そのうち自分の大きな手のひら全体を使って体中を撫でさせてもらうことも今後の目標だ。
飼い始めて読んだ本で知ったことだが、うさぎはあまり鳴かない生き物らしい。犬や猫のように明確な鳴き声は声帯が無いのでないらしい。ただ、鼻を鳴らしたり、食道を狭めたりすることで、「声」のような音を発することはあるらしい。まだ一週間ほどしか経っていないからまだうさおの鳴き声は聞いたことはない。機嫌がいいときなどは「ぷぅぷぅ」、「ぷっぷっ」といった風に鼻音を立てるらしい。早くそんな可愛い音を聞かせて欲しいと願う。
「はあ、幸せだなぁ」
歓迎帰りで帰宅時間も随分と遅いのに、まだ風呂にも入っていない。ついまたうさおを撫で始める。指先で感じる滑らかさと、少しだけ感じる温もりがまたいい。
こんな毎日が続けばいいと心の底から思っている正剛は、現在(今というか数年)彼女なし、婚姻履歴無しのもう少しでアラフォーになろうかとしている34歳。
同期の男達も次々と結婚をし、子供を持ったと連絡を貰うことも多くなってきた。正直、焦りも感じない訳ではなかったが、如何せん見た目が最悪だという事は自覚もある。すでに今後も無理だろうと諦めてもいる。
仕事は出来て、家事もそこそこ器用にこなす。癒しのなかった生活もうさおによって十分満たされることが分かった今。
こんなことならもっと早く飼い始めれば良かったと、違う後悔をしているのだった。
週明け。うさおという癒しで充実した休日を過ごした。月曜日特有の怠さなどない。もう少しで昼休憩になろうとしている時間、部下が提出してきたばかりの書類にざっと目を通した正剛は、顔も上げずにまだ見落としが無いか書面を見つめながら平坦な声で提出者の名を呼んだ。
「山崎、ちょっと来てくれ」
「は、はいっ」
課長直々からの呼び出しに、びくぅと肩を揺らした山崎は慌てて立ち上がるとギクシャクとした歩きで正剛の正面に立った。
先週末の新人歓迎会を終え、週が明けた月曜の午前中の仕事というのは少し気持ちが緩みやすい。エンジンがまだかかり切っていないのだろう。だからと言って、書類の不備が許されるわけもない。
「この書類なんだが、ここ数字が間違っている。それとここも。後は―――」
分かりやすく丁寧に修正箇所を指摘する。誰でもミスはするもの。回数自体はそれほど多くない相手だから、特に声を荒立てたりもしない。平生と変わらずを念頭に置き声高にならないよう気を付けて話す。さもなければ相手は、たちまち委縮してしまう。下手をすれば恐怖で何を言われたのか理解できずにミスの箇所を記憶しなくなる。そして後の仕事に悪影響しか及ぼさない。
「以上を訂正して再提出するように」
最後に理解をしたのか確認の意味を込めて顔を上げ、正剛はようやくここで相手の表情を見る。
普段は視線もなるべく合わさないように心がけているのだが、最後の確認だけはしっかりしておかないとまた同じ説明をしなくてはならないことにも繋がりかねない。目つきの悪さは嫌というほど自覚しているが、仕方がない。
「分かりました。済みませんでした、大熊課長。以後気を付けます」
「ああ」
―――ん?
肩を落とし、しょんぼりしている姿はまあ普通の態度だとは思ったが、正剛はミスをしてうつむき加減になっている山崎の細い目の下の隈に気づいた。
「・・・山崎」
「は、はいっ。何でしょうかっ。俺、他にも何か失敗やらかしてましたかっ!?」
「いや、そうじゃなくて。体調でも悪いのか?少し顔色が悪いようだが・・・」
名前を呼ばれただけで失敗が前提というのもなんだかなと心で突っ込みを入れながら、正剛は体調不良でもなっているのかと聞いた。もしそうなら早退させ病院へと行かせようと思ったからだ。
「ああー、これは体調が悪いんじゃなくて・・・、いえ、大したことじゃあないんですけど・・・」
言いにくいのか山崎は言葉を濁しながら、手元に戻った書類を持つ反対の手で頭を掻いた。浮かない顔だ。
その様子が顔を赤くして弁明するようであれば、結婚を考えているらしい彼女と一緒に過ごしたのかと簡単に想像は出来たが、そうではないらしい。実は心配事があるんですと分かるぐらいに表情に表れているように見えた。
先を促すようなことはせず、正剛はただ待った。
「実は最近になって猫を飼い始めたんですけど。土曜日に誤飲をしてしまって。まだ小さいから食べ物でないものも口にしてしまってですね。それでまあ色々とありまして。ちょっと眠れなくて寝不足なだけです」
予想外の山崎からの説明に正剛は目を見開いた。歓迎会で新人相手に見せていた猫の事だろう。
「猫は医者へは連れて行ったのか?」
小さい猫であれば大変だろう。何を口にしたのかは知らないが、下手をすれば命にだって係わってくるだろうことは容易に想像できる。
もし、これがうさおの身に同じことが起こったとしたら。
想像しただけでぞっとした。
誰かに見せて自慢してみたいと常々思っている正剛だが、簡単なはずの最初の一歩すら切り出すことが出来ない。なので今のところ実現したことはない。
「わぁ、可愛いー」
「ちっちゃいですねー」
新人からの誉め言葉にドヤ顔をする山崎。元々細い目を更に細くさせ、胸を反らしている。最近出張ってきたと言っていた腹がぼうんと一回りデカくなって見えた。
腹回りだけでなく、厚みも増し始めている山崎を横目で確認した正剛は、思わず自分の腹に目線を落とした。
(まだ大丈夫だとは言え、俺もそろそろ気を付けなくちゃな・・・)
週一で社内ジムへ行くように心がけていたのだが、年度末から新年度は仕事量が増えていたので中々行けていないのと、ジムへ行く時間があるのならうさおを愛でたい。それが実状だ。
(気候も良くなってきたことだし、またジムに行くか)
アラフォーが目前に迫ってきた今、ここで自分を甘やかせば取り返しのつかないことになりそうな気がひしひしと感じた。
自己管理を怠っていると、そのうちデータとしても表れてくる。それは回避したい。ただでさえ厳つい顔をしているから男女問わず一定距離を取られやすいのに、プラスぶよぶよな体なんて最悪だろう。
(これで加齢臭が加わると目も当てられんしな・・・。)
早く帰って可愛いうさおを触りたい気持ちを堪えつつ、一先ず正剛は目の前の食事に専念することにした。
新人歓迎会を終え、少々食べ過ぎた感を覚えた正剛は、カロリー消費を考え、最寄り駅一つ前で降車して一駅分を歩いて帰ろうかとも思ったが、アルコール摂取量と、うさおに早く会いたいが為に時間短縮の方を選んだ。
普段より遅い時間に、いつも利用している道をコンビニやスーパーにも寄り道することなく歩いた。駅から十分程度でアパートにたどり着く距離をアルコールが入った体で出来るだけ急いだ。ゴールには癒しが待っている。
アパートのドアの開錠さえも、もどかしく感じる。ここを開ければもふもふを堪能出来る。後数秒だ。
「ただいま」
なるべく大きな音と声で驚かせることが無いように、静かにドアの開閉をする。飼い始めて毎回出社や帰宅の際にはうさおに挨拶をするようになっていた。
以前は無言のままリビングへと移動し、ソファにどさりと腰を落としてから一息ついてからテレビを点けだらだらすることが習慣だった。
今は、うさおの顔を見ることが何よりも最優先。
室内で外窓の光があたらない場所に設置したうさぎのケージに真っ先に向い、まずは元気そうか表情を見る。体に似合わない程の大きな黒い瞳でじいっと見つめられる至福。
「うさお。ただいま」
腰を屈め、ケージ越しにまず愛でる。本人に自覚はないが目じりが大変残念なことになっている。それを見るものは誰もいないから問題はない。
早く姿を見たいからと言って、体の移動を早くしたりはしない。驚いてケージの隅に逃げてしまうからだ。
飼いだしてそろそろ一週間。最初は警戒して全然寄ってこなかったうさおは、ようやく正剛が怖くないと認識してくれたらしく、人差し指を柵の間から入れるとふんふんと匂いを嗅ぎに来てくれるようになった。毎日餌をくれる人だとしか認識されていないのかも知れないが、そんなことはうさおの愛らしさの前では些細なこと。
ゆっくりとケージの扉を開き、驚かせないようにゆっくりと手を差し入れ指先でおでこ(目と目の間の部分)を撫でる。気持ちがいいのだろう。うさおは目を閉じ動かない。けれど髭がぴょこぴょこ揺れている。
自分の掌よりも小さな小さな頭。ふわふわと滑らかな毛の感触が堪らない。犬や猫の毛よりずうっと細くて柔らかだ。
撫でる側と撫でられる側、うっとりとお互いが目を閉じているのは愛嬌と言えるだろうか。
満足するまで撫でているとかなりの時間が経過していて驚くこともしばしば。
そのうち自分の大きな手のひら全体を使って体中を撫でさせてもらうことも今後の目標だ。
飼い始めて読んだ本で知ったことだが、うさぎはあまり鳴かない生き物らしい。犬や猫のように明確な鳴き声は声帯が無いのでないらしい。ただ、鼻を鳴らしたり、食道を狭めたりすることで、「声」のような音を発することはあるらしい。まだ一週間ほどしか経っていないからまだうさおの鳴き声は聞いたことはない。機嫌がいいときなどは「ぷぅぷぅ」、「ぷっぷっ」といった風に鼻音を立てるらしい。早くそんな可愛い音を聞かせて欲しいと願う。
「はあ、幸せだなぁ」
歓迎帰りで帰宅時間も随分と遅いのに、まだ風呂にも入っていない。ついまたうさおを撫で始める。指先で感じる滑らかさと、少しだけ感じる温もりがまたいい。
こんな毎日が続けばいいと心の底から思っている正剛は、現在(今というか数年)彼女なし、婚姻履歴無しのもう少しでアラフォーになろうかとしている34歳。
同期の男達も次々と結婚をし、子供を持ったと連絡を貰うことも多くなってきた。正直、焦りも感じない訳ではなかったが、如何せん見た目が最悪だという事は自覚もある。すでに今後も無理だろうと諦めてもいる。
仕事は出来て、家事もそこそこ器用にこなす。癒しのなかった生活もうさおによって十分満たされることが分かった今。
こんなことならもっと早く飼い始めれば良かったと、違う後悔をしているのだった。
週明け。うさおという癒しで充実した休日を過ごした。月曜日特有の怠さなどない。もう少しで昼休憩になろうとしている時間、部下が提出してきたばかりの書類にざっと目を通した正剛は、顔も上げずにまだ見落としが無いか書面を見つめながら平坦な声で提出者の名を呼んだ。
「山崎、ちょっと来てくれ」
「は、はいっ」
課長直々からの呼び出しに、びくぅと肩を揺らした山崎は慌てて立ち上がるとギクシャクとした歩きで正剛の正面に立った。
先週末の新人歓迎会を終え、週が明けた月曜の午前中の仕事というのは少し気持ちが緩みやすい。エンジンがまだかかり切っていないのだろう。だからと言って、書類の不備が許されるわけもない。
「この書類なんだが、ここ数字が間違っている。それとここも。後は―――」
分かりやすく丁寧に修正箇所を指摘する。誰でもミスはするもの。回数自体はそれほど多くない相手だから、特に声を荒立てたりもしない。平生と変わらずを念頭に置き声高にならないよう気を付けて話す。さもなければ相手は、たちまち委縮してしまう。下手をすれば恐怖で何を言われたのか理解できずにミスの箇所を記憶しなくなる。そして後の仕事に悪影響しか及ぼさない。
「以上を訂正して再提出するように」
最後に理解をしたのか確認の意味を込めて顔を上げ、正剛はようやくここで相手の表情を見る。
普段は視線もなるべく合わさないように心がけているのだが、最後の確認だけはしっかりしておかないとまた同じ説明をしなくてはならないことにも繋がりかねない。目つきの悪さは嫌というほど自覚しているが、仕方がない。
「分かりました。済みませんでした、大熊課長。以後気を付けます」
「ああ」
―――ん?
肩を落とし、しょんぼりしている姿はまあ普通の態度だとは思ったが、正剛はミスをしてうつむき加減になっている山崎の細い目の下の隈に気づいた。
「・・・山崎」
「は、はいっ。何でしょうかっ。俺、他にも何か失敗やらかしてましたかっ!?」
「いや、そうじゃなくて。体調でも悪いのか?少し顔色が悪いようだが・・・」
名前を呼ばれただけで失敗が前提というのもなんだかなと心で突っ込みを入れながら、正剛は体調不良でもなっているのかと聞いた。もしそうなら早退させ病院へと行かせようと思ったからだ。
「ああー、これは体調が悪いんじゃなくて・・・、いえ、大したことじゃあないんですけど・・・」
言いにくいのか山崎は言葉を濁しながら、手元に戻った書類を持つ反対の手で頭を掻いた。浮かない顔だ。
その様子が顔を赤くして弁明するようであれば、結婚を考えているらしい彼女と一緒に過ごしたのかと簡単に想像は出来たが、そうではないらしい。実は心配事があるんですと分かるぐらいに表情に表れているように見えた。
先を促すようなことはせず、正剛はただ待った。
「実は最近になって猫を飼い始めたんですけど。土曜日に誤飲をしてしまって。まだ小さいから食べ物でないものも口にしてしまってですね。それでまあ色々とありまして。ちょっと眠れなくて寝不足なだけです」
予想外の山崎からの説明に正剛は目を見開いた。歓迎会で新人相手に見せていた猫の事だろう。
「猫は医者へは連れて行ったのか?」
小さい猫であれば大変だろう。何を口にしたのかは知らないが、下手をすれば命にだって係わってくるだろうことは容易に想像できる。
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