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王の側近に案内され、私とリツはふかふかのカーペットの上を歩いていた。誰も口を開く事はせず。その場に沈黙が流れる。
リツの背中を見ながら私は物思いに耽る。
これからどうなるか全くわからないが、私にとってリツが傍にいるのなら少しは安心する。痛みや苦しみが待っていると告げられた今でさえ、こんなにも冷静でいられるのもきっとリツが一緒だからだ。
リツの少し逞しくなった背中を見て私は耳が熱くなるのを感じた。
再びリツに会えて本当に嬉しかった。できる事なら今すぐ抱きついて顔をしっかり見たい。話をしてそして、伝えられなかった想いを伝えたい。そしてできれば彼と供に人生を歩めたら……とまで考えて思わず一人で赤面してしまった。
三年経って淡い恋心は色あせるどころかすっかり鮮やかなものになっている。
無事に帰ることができたら。受け入れられるにしろ受け入れられないにしろ、気持ちを伝えたい。その想いはどんどん強くなっていった。
私とリツが通された部屋は来賓用の客室のようだった。
大きな天蓋つきベッドに品の良い木製のチェスト、テーブル一式に磨かれ美しく光る鏡台が置かれている。バスルームまでも完備されたその部屋は私の部屋よりもずっと広いだろう。
「ではわたくしはこれにて」
そうとだけ言い残すと案内をしてくれた側近は部屋を出ていった。
ドアが閉まり側近の足音が聞こえなくなると、リツは背を向けていた私にくるりと向き直る。そしてすぐに私を寄りかかるように抱きすくめ首筋に顔を押し付けた。
「リ、リツ?」
「マオ、俺が不甲斐ないばっかりに……ごめん」
私は抱きしめ謝られた事に戸惑いながらも、恥ずかしさに顔を赤くながらしリツの背中にゆっくりと手をまわす。恐る恐る抱きしめ返すとリツは更に力を強くして抱きしめ返してくれた。さすがにちょっと、痛いほどに。触れた部分からは彼の心音の速さが伝わってくる。自分と同じくいつもより速いそれを感じ胸が苦しくなった。
好きだ、私はこの人がとても愛しい。不謹慎にも泣きそうなくらい想いがいっぱいになってしまう。
「リツ、あのね、私」
「わかってる、今から言う事はマオにとってすごく大事な事だから、断ってくれて構わない。俺とじゃ、嫌だろうし」
そう言うとリツは自嘲に近い笑いを浮かべる。
「そんな事ないよ!私結構丈夫だし、リツとなら大丈夫!」
「そう言ってくれるの嬉しいけどやっぱ今回はマオにも無理だと思う」
あまりにも頑なに私には無理だ、というのでちょっと腹がたった。言っておくが私は力こそリツより劣るけれど剣技がそれほど不得意な訳ではない。むしろ年頃の女の子の中では強い方だ。また魔法に関してはここら一帯では負けなしである。
「もったいぶってないで早く言ってよ。国の存亡の危機なんでしょ?」
そう言うとさすがのリツも押し黙ってしまった。それでも奥歯に物がはさまったような曖昧な返事をするリツを覗きこむと揺れる深紅の瞳とかち合う。
潤んだ瞳に心臓が持って行かれそうになるのをすんでの所で抑えた私に、リツは今にも消えそうな声で話し始めた。
「マオが魔力を生み出すことができるのは”誰かを愛しまたその相手に愛されているとき”だそうだ。その証拠に親父さんが亡くなってからぱったりマオは爆発事故起こさなくなったろう?あれは魔力自体が今まで両親に愛されることで溢れるほど生み出されていたのがなくなったからだったんだ」
それを聞き少し疑問に思う。確かにここ近年の魔力の数値は前よりも著しく低い。しかし両親が亡くなった後も数年間は--リツがいなくなるまでは--そこそこ高かったのだ。爆発事故こそ起こさなかったが。
「でも、父さんと母さんがいない時も私、魔力高かったわ。ここ近年はだいぶ低くなったけれど」
「それは……マオが俺のことを幼馴染として……何でもない」
そう言うとリツはしょんぼりと項垂れたように言葉を濁した。
「まあいいわ。それで受け渡すにはどうしたらいいの?」
リツの態度が気になるが、魔力を生み出す、この点に関してはなんの問題もない。苦痛も痛みもないのだから。
このことからどうやら苦痛を伴うのは人から人への魔力の受け渡し方らしいということなのだろう。私は先を促すように尋ねた。
「それは……」
すると瞬時にリツはその顔を真っ赤に変える。そして片手で半分顔を隠した。照れるとでるそのくせは三年経っても同じだ。そんなに恥ずかしい事をするのだろうか?歴史に名を残すようなものだったらどうしよう、人前でもう歩けない様な事だったら。そこまで考えたが私の乏しい想像力で想像できるものはあまりなかった。
「つまり、俺と……」
「うん」
そして私が頷くとリツは一息置いて床に向かって言ったのだ。
「し、信頼関係―――愛を育めばいいらしい」
「は??」
いまいち要領をえない答えに何と返事していいかわからない。なんというか、抽象的過ぎるのだ。仕方なく私は先を促すように首を傾げた。
「だから、俺と……っ」
「リツと?」
顔を近づけて眉を寄せるとリツは一歩下がりそして三回深呼吸をしたあと、床を睨んだまま言った。
「せ、っせせせせいこうしょうすればいいんだと……」
一瞬意味が掴めず心を落ち着かせるために私は遠くを見る。が、ベッドが目に入り逆効果だった。
「せ、せいこうしょうってあの、その……」
リツだけでなく私までしどろもどろになってしまう。いや、全く予想の範囲外だったわけではないけれど、小説とかにありがちだからそれはないだろうと思っていたのだ。
「しかも、毎晩。さ、ささ三回は中で、とかなんとか」
最後の方は消え入るような小ささでリツは最後まで言うとその場に沈黙が流れた。
恥ずかしさの前にショックで私の頭はパンクしそうだ。また沈黙がその症状を酷くさせていた。
「だ、だから、マオも不本意だろうし他で集める事もできるから、なんとかフィアに……」
沈黙を破ったたリツの袖を私は無意識のうちに引っ張る。
「だ、だめ。他の子となんて、そんなの」
それを聞き、リツは目を大きき見開き驚いて固まってしまう。私も大胆な自分の言動に驚きを隠せなかった。
「マオ、それって」
そこまで言ったのだ、リツが私の想いに気がつかないはずはなかった。あわてて弁明しようと顔をあげると深紅の瞳とかちあって見事私の頬まで深紅に染まってしまう。
「あ、えっとその……これは……」
瞬間、リツは再び私を抱きしめて首筋に顔を埋めた。
「リ、リツ?」
「はぁ、なんでそんなに……の?」
耳元にはっきりとは聞き取れなかった言葉と熱っぽいため息がかかる。くすぐったさと恥ずかしさに身を縮めた私を見てリツは何度目かのため息をはいた。
「え、と」
離して、と言えば簡単に離してくれただろう。しかし出る言葉が全て意味のなさない物ばかりなのは、悔しいがこの状態が少なからず嬉しいからだ。
それがわかっているのかいないのかリツはいっこうに私を離そうとはしない。触れる身体から私と同じように速く脈打つ心音が伝わる。
「マオがさ、俺が他の人から魔力をもらうのが嫌って言うのは、その、期待していいの?」
「ふぇ、あ、その・・・・・・デスネ、そうなりますかね?」
「なんで疑問系なの?」
耳元で笑うリツはいつになく嬉しそうだ。私は真っ赤になることしかできないのに余裕でこの状態を楽しんでいるであろうリツにちょっと腹が立った。
「そっちこそなんで笑うのよ?」
膨れ面でそう問うとまた耳元で笑う気配がする。なんだか面白くなくて足を踏んでやろうとするも瞬時にかわされ足は空をきった。
「なんでって、マオが可愛いからと、嬉しいこと聞いたからだけど。マオが俺を好きだって」
「す、好きだなんて言ってない」
「じゃあ好きじゃないの?」
「……」
口元を緩めるリツは心底嬉しそうに笑う。こんな顔するなんてずるい。三年前は普通に言えていた照れ隠しの言葉がどこかへ行ってしまったではないか。
「なんかいろいろ早足で悪いんだけど、俺の一番大切な人になってくれる?マオ」
ふと笑顔から真剣な面持ちになってリツが私の手を取った。振り払う選択肢なんて最早私には無く。零れる涙を拭く事さえ忘れ私は頷いた。
----------------------
湯船から上がりベッドの上で今私は正座をしている。
バスルームからは時々リツの鼻歌が聞こえてきていた。
あれからとりあえずお風呂に入ってからこれからのことを一緒に決めようと言ったのは紛れもなく私だ。リツは旅から帰ってきたばかりだというし、私も冷や汗やらなんやでだいぶ肌がべたついていたからだ。
しかしいざ浴室に入ってから誘ったと勘違いされ兼ねないと気付いた。そしてそれは今では既に後悔の域にまで達している。なんでそれぞれ別室でお風呂に入ろうとしなかったのか。足りない頭を殴ってやりたい。
だがここで言いたいことがある。それは決して私は誘った訳じゃないということだ。確かにいささかいや、だいぶ思慮が浅かったが。
着替えも持って来てなかった為、今着ているのはリツの大きめのシャツだし、実は下着もつけていない。これじゃあ襲ってくださいと言ってるような物ではないか。
今はまだリツとそう言う事をするには私の方の準備が整っていない。年齢的にはそう言う事があっても全くおかしいわけではないし、近いうちにそういう事を毎晩でもしなければならない時は必ず来るだろうけれど。展開が早過ぎるし初めての行為に恐区内といえば嘘になる。
ふと、リツはどうなのかなと思った途端胸がズキンと痛んだ。勇者なんてどこでも歓迎されるのは当たり前で。と同時に村にそういう人が来れば夜の相手を繕うのも普通である。リツにとって私は何人目なのか。そんな事を今考えても何もならないのに考えてしまう。
下を向けば大きいとは言えないが物凄く小さい訳でもないごく普通のサイズの胸と太目の太股が目に入りため息が出た。
「なーにやってんだよ」
その時おでこをはじかれて私はやっと現実世界に呼び戻された。
慌てて上を向けば上半身裸のリツ。引き締まった細めの身体が視界に入り頬が熱くなるのを感じる。
「え、えと、その……」
私はきっと耳まで赤くなっているだろう。そんな風では寧ろ煽るだけだとわかっているけれどどうにも止められない。ただ口をパクパクと金魚のように開け閉めしてリツを見る事しかできなかった。
「何?俺にもう抱かせてくれるの?」
にやりと妖艶に笑うリツは髪が濡れ色気をこぼしている。冗談なのかそうでないのかわからないそれに、どう答えて良いかわからず「え」やら「う、」やら言葉にならない声を出しているとリツは私の頬に触れた。
「ごめん、我慢できそうにない」
瞬間、リツが近付いて私の唇に彼自らのそれを重ねた。
「んっ!」
食むように何度も角度を変え貪るようにキスをされる。頬を包む手は優しいのにキスは激しくてうっすらと口を開けてしまった私の咥内にリツは舌を侵入させてきた。
「んむっ、んん……んぅ」
すぐに隠れていた私の舌を探し当てリツは自分のを絡めてくる。唾液が口の端から零れ羞恥で視界が滲む。
それなのに。恥ずかしくて仕方ないはずなのに、すごく気持ちが良くて、幸せで、温かい。リツに応えるように私も舌を絡めると彼の目が嬉しそうに細まった。
抱きしめたリツから薄布越しに体温が、鼓動が先ほどよりもより鮮明に伝わってくる事が気恥ずかしい反面嬉しい。
私を強く抱きしめそのままベッドに押し倒すとリツは左手で私の太ももを撫でた。
背中に何かが走り思わず肩を揺らす私に、お構いなしにリツは今度は内腿をなぞる。下腹部が疼いてとろりとしたものが溢れ出る感覚がした。
「んっ、んんっ……んっ」
これ以上リツに弄られれば彼の指についてしまうのは時間の問題だ。キスと足の愛撫だけで濡れてしまうなんて淫乱だと思われたらどうしようと、そんな思いで涙が溢れる。
それなのに身体は正直で、好きな異性からの愛撫に反応を見せてしまう。
そしてついにその時は来てしまった。太ももの内側を撫でていたリツの指についてしまったのだ。
「?!」
驚いたリツは唇を離しシャツの中に入っていた手を目の前に持ってくる。
つ、と糸をひくそれとぬらぬらと濡れて光るリツの長い指は淫猥で、リツに対して申し訳なくなり反射的に謝っていた。
「ごっごめんなさい。あの、私こんなに感じやすいなんて知らなくてっ、だから、本当リツが初めてだったからなの!けしてその、だから、」
要領を得ない私の言葉を聞くとリツは顔を背けてしまった。これは完全に引かれた、その上今の失言で処女とまで知られてしまった。三秒前の自分を呪いたい。
「リツっ、だからね、あのっ」
瞬間必死でそこまで言った私をリツは再び押し倒すと首もとに顔を埋めた。上に乗る彼が少し重たくて、でもそこから先程と変わらないどころか更に速くなった心音と熱が伝わってきて。重たいという感覚よりも何とも言えない胸の心地よい苦しみでいっぱいになる。彼がうなじまで真っ赤にさせているのを見て、先程顔を背けたのは照れからだと確信した。
「マオ、どれだけ俺を喜ばせるのがうまいんだよ。もしかしたら俺のためにずっと純潔を守ってきてくれてたとか勘違いしそうになるじゃんか」
それはあながち勘違いでもなくて、しかし認めるほど私は素直になれなくて結局なにも言えなかった。
「マオ、ごめん。俺がリードして優しくしようとか思ってたけどそんな余裕ないかも」
そう言うとリツは私の最後の砦、もとい薄手のシャツのボタンを乱暴にはずし始める。
第一ボタンが空き谷間が露わになり、第三第四ボタンをつづけて引きちぎるように外された。露わになった胸が外気に当たりひんやりとする。しかしすぐにそこも温かいリツの大きな手が這い回りはじめた。
「あんっ、んっ・・・・・・リツ」
「下着つけないで待っててくれてすげー嬉しい」
「ちがっ……あ、そこ、だめぇ」
いやいやと首を振りながらも身体は反応してしまう。
苛められ続けるそこはぷっくりと桃色になって主張している。下腹部の疼きは更に増し、リツを求めてやまないそこからは密が溢れた。
「リツ、リツ・・・・・・」
「マオ」
譫言のようにリツの名を呼びながら彼の雄に腰を押しつけるとタオル越しに彼の熱が伝わってくる。
わざと感じる部分を避けて乳輪をなぞるリツは三年前の意地悪なリツから全く変わっていない。
早く周りでなくてぷっくりと主張する桃色の尖りに触ってほしいのに、素直に私は言えなかった。その代わりにもどかしい下腹部の疼きに耐えられなくなり、両腿を擦り合わせてしまう。今まで出したことが無いような甘い声が出て、擦り合わせている脚の間が溢れ出た蜜によって湿っていった。
「やんっ、リツ……そこ、そこ……」
「何?何かして欲しいの?」
「だから、そこ……て」
もどかしさ、リツに触れられているという嬉しさ、好きな人に普段見せられないような所を見せる恥ずかしさ、そんな気持ちがぐちゃぐちゃになって自然と視界が滲み始める。
身体の快楽としばらく戦っていた羞恥もそろそろ限界だ。
「なぁ、マオ。俺に何して欲しいの?どこに触って欲しいの?」
口の端をあげリツは楽しげに私に聞く。いつもならその意地悪に反発して、文句を言ってやるのに今の私にその余裕はなかった。
「だか、ら……その、周りじゃ、なくて……先っぽ、ちゃんと触って」
私がそう言うとリツは私の唇に触れるようなキスをすると「よくできました」と言って敏感なその桃色の頂を摘む。瞬間電撃がはしった様な痺れを感じ嬌声をあげるとともに背を逸らしてしまった。
「ぁあ、やあぁ」
続いて間髪いれずにリツは摘まれなかった方の尖りを口に含むと舌で転がすように刺激を与え始める。
「やだ、あんっ……いやぁ……だめぇ」
下から胸の頂を咥えながら覗きこむように見つめるリツの愛撫は続き、私は既に壊れたように嬌声をあげ続けてしまった。
と同時に疼く太腿の付け根を先ほどから主張し続けるリツのそこに薄布越しに求めるように押し付けてしまう。
こんな淫乱な姿の自分が情けなくて、恥ずかしくて、仕方がなかった。自分が自分でないようで恥ずかしいと言う気持ちとリツにはもっと愛されたいと言う気持ちがいりまざって涙がボロボロと出てしまう。
「あっ、ご、ごめんマオ、俺、その、泣かすつもりなんかなくてっ、だからな、泣くなよ。なっ?あっ、面白い話でもするか?」
そんな私を見ておろおろと慌て愛撫をやめたリツの瞳が先程の情欲にまみれた瞳から不安げなものに変わっていく。
「そうそう、この間レオがさ、あ、俺の旅仲間ね。そいつがさルダンの街で熊殺しのミロって言う通り名の奴に勝負を挑んだんだけど、それがな……」
どうやら勘違いをさせてしまったらしい。リツは饒舌になりレオという仲間の話を身振り手振りをくわえながら一生懸命話した。私を安心させようと高ぶっていた彼自身を押さえ、わざと笑いを取るような話をしてくれていることは確かで。嬉しい、申し訳ないという気持ちと同時に話の内容が理解できなくなるほどに、何よりも私を支配していたのはひどく動物的な感情だ。そんな続きをしてほしくてたまらないという淫らな自分に、尚更嫌気がさし涙は止まらなかった。
「な、マオ」
不意にリツが仲間の話を中断し私の瞳をのぞき込む。私もぼんやりとリツの瞳を見つめ返した。深紅のそれは静かな炎のようにゆらりと揺れる。
「俺はさ、これからマオを抱くわけだけど、そのこれからの事も考えてはいるつもりだから。だからこそさ……マオのことは嫌なこと、嬉しいこと、少しずつでいいからみんな理解したいんだ。わかるか?」
そう言うとリツは一息ついて私の頭上にある枕を見て再び私へと視線を戻した。
「そういうことで理解した上でできれば抱きたいし、マオもそれを望んでくれるならこの先も、これからもずっと一緒にいろいろなことを経験したい。でも俺馬鹿だから言ってもらわないとわからないことも多いんだ。実際今もそうで。だから教えて欲しい、マオの気持ちとか考えとかを」
リツは難問を解いている途中のように眉を寄せた。私の欲求は先程のことが嘘のように消え、代わりに温かく心地よい気持ちが胸に広がる。相変わらず瞳からは涙がでるもののそれは柔らかな滴となって頬を伝い落ちるだけだった。
「三年ぶりに会って、やっぱりマオが好きで、おかしくなるほど抱きつぶして独占したいけど。でもさ出来ればそれよりも大事にしたいから、あ~!もうっ」
瞬間、ぎゅっと抱きしめられて。耳元で悩ましげなため息を聞いた。
「言ってくれよ。情けねーけどいろいろ自信ねえし、マオのことわかりたいのに泣かせて俺最低だし、なのに同時に泣き顔も可愛くてどうしようとか、あーもう……」
ぶんぶん首を振ったりくるくると表情を変えたり、その様子は端から見れば残念で面倒くさく見えるかも知れない。けれど私はそんな不器用な彼がどうしようもなく好きで好きで仕方ないらしい。半泣きのリツを映すそれはもう滲んでいなかった。
「大好き、リツ。もっと、その……激しく、して」
「いいから」とまで言えずなんだか強請っているみたいになってしまったのは誤算だ。
勿論「激しく」なんて言葉を使ってしまったのもそうだと後で気づく事になったが。
リツは顔を燃えるように真っ赤にし固まり顔をそっぽに向け、そして。
「悪質だし最高だし……」
ぼそり、と呟かれた言葉を最後まで聞き取れなかった私は唇をさらわれる。
目の前の真っ赤な炎を思わせる、獰猛な獣の瞳に囚われた後私はどうなったのか?
おわかりかと思います。
リツの背中を見ながら私は物思いに耽る。
これからどうなるか全くわからないが、私にとってリツが傍にいるのなら少しは安心する。痛みや苦しみが待っていると告げられた今でさえ、こんなにも冷静でいられるのもきっとリツが一緒だからだ。
リツの少し逞しくなった背中を見て私は耳が熱くなるのを感じた。
再びリツに会えて本当に嬉しかった。できる事なら今すぐ抱きついて顔をしっかり見たい。話をしてそして、伝えられなかった想いを伝えたい。そしてできれば彼と供に人生を歩めたら……とまで考えて思わず一人で赤面してしまった。
三年経って淡い恋心は色あせるどころかすっかり鮮やかなものになっている。
無事に帰ることができたら。受け入れられるにしろ受け入れられないにしろ、気持ちを伝えたい。その想いはどんどん強くなっていった。
私とリツが通された部屋は来賓用の客室のようだった。
大きな天蓋つきベッドに品の良い木製のチェスト、テーブル一式に磨かれ美しく光る鏡台が置かれている。バスルームまでも完備されたその部屋は私の部屋よりもずっと広いだろう。
「ではわたくしはこれにて」
そうとだけ言い残すと案内をしてくれた側近は部屋を出ていった。
ドアが閉まり側近の足音が聞こえなくなると、リツは背を向けていた私にくるりと向き直る。そしてすぐに私を寄りかかるように抱きすくめ首筋に顔を押し付けた。
「リ、リツ?」
「マオ、俺が不甲斐ないばっかりに……ごめん」
私は抱きしめ謝られた事に戸惑いながらも、恥ずかしさに顔を赤くながらしリツの背中にゆっくりと手をまわす。恐る恐る抱きしめ返すとリツは更に力を強くして抱きしめ返してくれた。さすがにちょっと、痛いほどに。触れた部分からは彼の心音の速さが伝わってくる。自分と同じくいつもより速いそれを感じ胸が苦しくなった。
好きだ、私はこの人がとても愛しい。不謹慎にも泣きそうなくらい想いがいっぱいになってしまう。
「リツ、あのね、私」
「わかってる、今から言う事はマオにとってすごく大事な事だから、断ってくれて構わない。俺とじゃ、嫌だろうし」
そう言うとリツは自嘲に近い笑いを浮かべる。
「そんな事ないよ!私結構丈夫だし、リツとなら大丈夫!」
「そう言ってくれるの嬉しいけどやっぱ今回はマオにも無理だと思う」
あまりにも頑なに私には無理だ、というのでちょっと腹がたった。言っておくが私は力こそリツより劣るけれど剣技がそれほど不得意な訳ではない。むしろ年頃の女の子の中では強い方だ。また魔法に関してはここら一帯では負けなしである。
「もったいぶってないで早く言ってよ。国の存亡の危機なんでしょ?」
そう言うとさすがのリツも押し黙ってしまった。それでも奥歯に物がはさまったような曖昧な返事をするリツを覗きこむと揺れる深紅の瞳とかち合う。
潤んだ瞳に心臓が持って行かれそうになるのをすんでの所で抑えた私に、リツは今にも消えそうな声で話し始めた。
「マオが魔力を生み出すことができるのは”誰かを愛しまたその相手に愛されているとき”だそうだ。その証拠に親父さんが亡くなってからぱったりマオは爆発事故起こさなくなったろう?あれは魔力自体が今まで両親に愛されることで溢れるほど生み出されていたのがなくなったからだったんだ」
それを聞き少し疑問に思う。確かにここ近年の魔力の数値は前よりも著しく低い。しかし両親が亡くなった後も数年間は--リツがいなくなるまでは--そこそこ高かったのだ。爆発事故こそ起こさなかったが。
「でも、父さんと母さんがいない時も私、魔力高かったわ。ここ近年はだいぶ低くなったけれど」
「それは……マオが俺のことを幼馴染として……何でもない」
そう言うとリツはしょんぼりと項垂れたように言葉を濁した。
「まあいいわ。それで受け渡すにはどうしたらいいの?」
リツの態度が気になるが、魔力を生み出す、この点に関してはなんの問題もない。苦痛も痛みもないのだから。
このことからどうやら苦痛を伴うのは人から人への魔力の受け渡し方らしいということなのだろう。私は先を促すように尋ねた。
「それは……」
すると瞬時にリツはその顔を真っ赤に変える。そして片手で半分顔を隠した。照れるとでるそのくせは三年経っても同じだ。そんなに恥ずかしい事をするのだろうか?歴史に名を残すようなものだったらどうしよう、人前でもう歩けない様な事だったら。そこまで考えたが私の乏しい想像力で想像できるものはあまりなかった。
「つまり、俺と……」
「うん」
そして私が頷くとリツは一息置いて床に向かって言ったのだ。
「し、信頼関係―――愛を育めばいいらしい」
「は??」
いまいち要領をえない答えに何と返事していいかわからない。なんというか、抽象的過ぎるのだ。仕方なく私は先を促すように首を傾げた。
「だから、俺と……っ」
「リツと?」
顔を近づけて眉を寄せるとリツは一歩下がりそして三回深呼吸をしたあと、床を睨んだまま言った。
「せ、っせせせせいこうしょうすればいいんだと……」
一瞬意味が掴めず心を落ち着かせるために私は遠くを見る。が、ベッドが目に入り逆効果だった。
「せ、せいこうしょうってあの、その……」
リツだけでなく私までしどろもどろになってしまう。いや、全く予想の範囲外だったわけではないけれど、小説とかにありがちだからそれはないだろうと思っていたのだ。
「しかも、毎晩。さ、ささ三回は中で、とかなんとか」
最後の方は消え入るような小ささでリツは最後まで言うとその場に沈黙が流れた。
恥ずかしさの前にショックで私の頭はパンクしそうだ。また沈黙がその症状を酷くさせていた。
「だ、だから、マオも不本意だろうし他で集める事もできるから、なんとかフィアに……」
沈黙を破ったたリツの袖を私は無意識のうちに引っ張る。
「だ、だめ。他の子となんて、そんなの」
それを聞き、リツは目を大きき見開き驚いて固まってしまう。私も大胆な自分の言動に驚きを隠せなかった。
「マオ、それって」
そこまで言ったのだ、リツが私の想いに気がつかないはずはなかった。あわてて弁明しようと顔をあげると深紅の瞳とかちあって見事私の頬まで深紅に染まってしまう。
「あ、えっとその……これは……」
瞬間、リツは再び私を抱きしめて首筋に顔を埋めた。
「リ、リツ?」
「はぁ、なんでそんなに……の?」
耳元にはっきりとは聞き取れなかった言葉と熱っぽいため息がかかる。くすぐったさと恥ずかしさに身を縮めた私を見てリツは何度目かのため息をはいた。
「え、と」
離して、と言えば簡単に離してくれただろう。しかし出る言葉が全て意味のなさない物ばかりなのは、悔しいがこの状態が少なからず嬉しいからだ。
それがわかっているのかいないのかリツはいっこうに私を離そうとはしない。触れる身体から私と同じように速く脈打つ心音が伝わる。
「マオがさ、俺が他の人から魔力をもらうのが嫌って言うのは、その、期待していいの?」
「ふぇ、あ、その・・・・・・デスネ、そうなりますかね?」
「なんで疑問系なの?」
耳元で笑うリツはいつになく嬉しそうだ。私は真っ赤になることしかできないのに余裕でこの状態を楽しんでいるであろうリツにちょっと腹が立った。
「そっちこそなんで笑うのよ?」
膨れ面でそう問うとまた耳元で笑う気配がする。なんだか面白くなくて足を踏んでやろうとするも瞬時にかわされ足は空をきった。
「なんでって、マオが可愛いからと、嬉しいこと聞いたからだけど。マオが俺を好きだって」
「す、好きだなんて言ってない」
「じゃあ好きじゃないの?」
「……」
口元を緩めるリツは心底嬉しそうに笑う。こんな顔するなんてずるい。三年前は普通に言えていた照れ隠しの言葉がどこかへ行ってしまったではないか。
「なんかいろいろ早足で悪いんだけど、俺の一番大切な人になってくれる?マオ」
ふと笑顔から真剣な面持ちになってリツが私の手を取った。振り払う選択肢なんて最早私には無く。零れる涙を拭く事さえ忘れ私は頷いた。
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湯船から上がりベッドの上で今私は正座をしている。
バスルームからは時々リツの鼻歌が聞こえてきていた。
あれからとりあえずお風呂に入ってからこれからのことを一緒に決めようと言ったのは紛れもなく私だ。リツは旅から帰ってきたばかりだというし、私も冷や汗やらなんやでだいぶ肌がべたついていたからだ。
しかしいざ浴室に入ってから誘ったと勘違いされ兼ねないと気付いた。そしてそれは今では既に後悔の域にまで達している。なんでそれぞれ別室でお風呂に入ろうとしなかったのか。足りない頭を殴ってやりたい。
だがここで言いたいことがある。それは決して私は誘った訳じゃないということだ。確かにいささかいや、だいぶ思慮が浅かったが。
着替えも持って来てなかった為、今着ているのはリツの大きめのシャツだし、実は下着もつけていない。これじゃあ襲ってくださいと言ってるような物ではないか。
今はまだリツとそう言う事をするには私の方の準備が整っていない。年齢的にはそう言う事があっても全くおかしいわけではないし、近いうちにそういう事を毎晩でもしなければならない時は必ず来るだろうけれど。展開が早過ぎるし初めての行為に恐区内といえば嘘になる。
ふと、リツはどうなのかなと思った途端胸がズキンと痛んだ。勇者なんてどこでも歓迎されるのは当たり前で。と同時に村にそういう人が来れば夜の相手を繕うのも普通である。リツにとって私は何人目なのか。そんな事を今考えても何もならないのに考えてしまう。
下を向けば大きいとは言えないが物凄く小さい訳でもないごく普通のサイズの胸と太目の太股が目に入りため息が出た。
「なーにやってんだよ」
その時おでこをはじかれて私はやっと現実世界に呼び戻された。
慌てて上を向けば上半身裸のリツ。引き締まった細めの身体が視界に入り頬が熱くなるのを感じる。
「え、えと、その……」
私はきっと耳まで赤くなっているだろう。そんな風では寧ろ煽るだけだとわかっているけれどどうにも止められない。ただ口をパクパクと金魚のように開け閉めしてリツを見る事しかできなかった。
「何?俺にもう抱かせてくれるの?」
にやりと妖艶に笑うリツは髪が濡れ色気をこぼしている。冗談なのかそうでないのかわからないそれに、どう答えて良いかわからず「え」やら「う、」やら言葉にならない声を出しているとリツは私の頬に触れた。
「ごめん、我慢できそうにない」
瞬間、リツが近付いて私の唇に彼自らのそれを重ねた。
「んっ!」
食むように何度も角度を変え貪るようにキスをされる。頬を包む手は優しいのにキスは激しくてうっすらと口を開けてしまった私の咥内にリツは舌を侵入させてきた。
「んむっ、んん……んぅ」
すぐに隠れていた私の舌を探し当てリツは自分のを絡めてくる。唾液が口の端から零れ羞恥で視界が滲む。
それなのに。恥ずかしくて仕方ないはずなのに、すごく気持ちが良くて、幸せで、温かい。リツに応えるように私も舌を絡めると彼の目が嬉しそうに細まった。
抱きしめたリツから薄布越しに体温が、鼓動が先ほどよりもより鮮明に伝わってくる事が気恥ずかしい反面嬉しい。
私を強く抱きしめそのままベッドに押し倒すとリツは左手で私の太ももを撫でた。
背中に何かが走り思わず肩を揺らす私に、お構いなしにリツは今度は内腿をなぞる。下腹部が疼いてとろりとしたものが溢れ出る感覚がした。
「んっ、んんっ……んっ」
これ以上リツに弄られれば彼の指についてしまうのは時間の問題だ。キスと足の愛撫だけで濡れてしまうなんて淫乱だと思われたらどうしようと、そんな思いで涙が溢れる。
それなのに身体は正直で、好きな異性からの愛撫に反応を見せてしまう。
そしてついにその時は来てしまった。太ももの内側を撫でていたリツの指についてしまったのだ。
「?!」
驚いたリツは唇を離しシャツの中に入っていた手を目の前に持ってくる。
つ、と糸をひくそれとぬらぬらと濡れて光るリツの長い指は淫猥で、リツに対して申し訳なくなり反射的に謝っていた。
「ごっごめんなさい。あの、私こんなに感じやすいなんて知らなくてっ、だから、本当リツが初めてだったからなの!けしてその、だから、」
要領を得ない私の言葉を聞くとリツは顔を背けてしまった。これは完全に引かれた、その上今の失言で処女とまで知られてしまった。三秒前の自分を呪いたい。
「リツっ、だからね、あのっ」
瞬間必死でそこまで言った私をリツは再び押し倒すと首もとに顔を埋めた。上に乗る彼が少し重たくて、でもそこから先程と変わらないどころか更に速くなった心音と熱が伝わってきて。重たいという感覚よりも何とも言えない胸の心地よい苦しみでいっぱいになる。彼がうなじまで真っ赤にさせているのを見て、先程顔を背けたのは照れからだと確信した。
「マオ、どれだけ俺を喜ばせるのがうまいんだよ。もしかしたら俺のためにずっと純潔を守ってきてくれてたとか勘違いしそうになるじゃんか」
それはあながち勘違いでもなくて、しかし認めるほど私は素直になれなくて結局なにも言えなかった。
「マオ、ごめん。俺がリードして優しくしようとか思ってたけどそんな余裕ないかも」
そう言うとリツは私の最後の砦、もとい薄手のシャツのボタンを乱暴にはずし始める。
第一ボタンが空き谷間が露わになり、第三第四ボタンをつづけて引きちぎるように外された。露わになった胸が外気に当たりひんやりとする。しかしすぐにそこも温かいリツの大きな手が這い回りはじめた。
「あんっ、んっ・・・・・・リツ」
「下着つけないで待っててくれてすげー嬉しい」
「ちがっ……あ、そこ、だめぇ」
いやいやと首を振りながらも身体は反応してしまう。
苛められ続けるそこはぷっくりと桃色になって主張している。下腹部の疼きは更に増し、リツを求めてやまないそこからは密が溢れた。
「リツ、リツ・・・・・・」
「マオ」
譫言のようにリツの名を呼びながら彼の雄に腰を押しつけるとタオル越しに彼の熱が伝わってくる。
わざと感じる部分を避けて乳輪をなぞるリツは三年前の意地悪なリツから全く変わっていない。
早く周りでなくてぷっくりと主張する桃色の尖りに触ってほしいのに、素直に私は言えなかった。その代わりにもどかしい下腹部の疼きに耐えられなくなり、両腿を擦り合わせてしまう。今まで出したことが無いような甘い声が出て、擦り合わせている脚の間が溢れ出た蜜によって湿っていった。
「やんっ、リツ……そこ、そこ……」
「何?何かして欲しいの?」
「だから、そこ……て」
もどかしさ、リツに触れられているという嬉しさ、好きな人に普段見せられないような所を見せる恥ずかしさ、そんな気持ちがぐちゃぐちゃになって自然と視界が滲み始める。
身体の快楽としばらく戦っていた羞恥もそろそろ限界だ。
「なぁ、マオ。俺に何して欲しいの?どこに触って欲しいの?」
口の端をあげリツは楽しげに私に聞く。いつもならその意地悪に反発して、文句を言ってやるのに今の私にその余裕はなかった。
「だか、ら……その、周りじゃ、なくて……先っぽ、ちゃんと触って」
私がそう言うとリツは私の唇に触れるようなキスをすると「よくできました」と言って敏感なその桃色の頂を摘む。瞬間電撃がはしった様な痺れを感じ嬌声をあげるとともに背を逸らしてしまった。
「ぁあ、やあぁ」
続いて間髪いれずにリツは摘まれなかった方の尖りを口に含むと舌で転がすように刺激を与え始める。
「やだ、あんっ……いやぁ……だめぇ」
下から胸の頂を咥えながら覗きこむように見つめるリツの愛撫は続き、私は既に壊れたように嬌声をあげ続けてしまった。
と同時に疼く太腿の付け根を先ほどから主張し続けるリツのそこに薄布越しに求めるように押し付けてしまう。
こんな淫乱な姿の自分が情けなくて、恥ずかしくて、仕方がなかった。自分が自分でないようで恥ずかしいと言う気持ちとリツにはもっと愛されたいと言う気持ちがいりまざって涙がボロボロと出てしまう。
「あっ、ご、ごめんマオ、俺、その、泣かすつもりなんかなくてっ、だからな、泣くなよ。なっ?あっ、面白い話でもするか?」
そんな私を見ておろおろと慌て愛撫をやめたリツの瞳が先程の情欲にまみれた瞳から不安げなものに変わっていく。
「そうそう、この間レオがさ、あ、俺の旅仲間ね。そいつがさルダンの街で熊殺しのミロって言う通り名の奴に勝負を挑んだんだけど、それがな……」
どうやら勘違いをさせてしまったらしい。リツは饒舌になりレオという仲間の話を身振り手振りをくわえながら一生懸命話した。私を安心させようと高ぶっていた彼自身を押さえ、わざと笑いを取るような話をしてくれていることは確かで。嬉しい、申し訳ないという気持ちと同時に話の内容が理解できなくなるほどに、何よりも私を支配していたのはひどく動物的な感情だ。そんな続きをしてほしくてたまらないという淫らな自分に、尚更嫌気がさし涙は止まらなかった。
「な、マオ」
不意にリツが仲間の話を中断し私の瞳をのぞき込む。私もぼんやりとリツの瞳を見つめ返した。深紅のそれは静かな炎のようにゆらりと揺れる。
「俺はさ、これからマオを抱くわけだけど、そのこれからの事も考えてはいるつもりだから。だからこそさ……マオのことは嫌なこと、嬉しいこと、少しずつでいいからみんな理解したいんだ。わかるか?」
そう言うとリツは一息ついて私の頭上にある枕を見て再び私へと視線を戻した。
「そういうことで理解した上でできれば抱きたいし、マオもそれを望んでくれるならこの先も、これからもずっと一緒にいろいろなことを経験したい。でも俺馬鹿だから言ってもらわないとわからないことも多いんだ。実際今もそうで。だから教えて欲しい、マオの気持ちとか考えとかを」
リツは難問を解いている途中のように眉を寄せた。私の欲求は先程のことが嘘のように消え、代わりに温かく心地よい気持ちが胸に広がる。相変わらず瞳からは涙がでるもののそれは柔らかな滴となって頬を伝い落ちるだけだった。
「三年ぶりに会って、やっぱりマオが好きで、おかしくなるほど抱きつぶして独占したいけど。でもさ出来ればそれよりも大事にしたいから、あ~!もうっ」
瞬間、ぎゅっと抱きしめられて。耳元で悩ましげなため息を聞いた。
「言ってくれよ。情けねーけどいろいろ自信ねえし、マオのことわかりたいのに泣かせて俺最低だし、なのに同時に泣き顔も可愛くてどうしようとか、あーもう……」
ぶんぶん首を振ったりくるくると表情を変えたり、その様子は端から見れば残念で面倒くさく見えるかも知れない。けれど私はそんな不器用な彼がどうしようもなく好きで好きで仕方ないらしい。半泣きのリツを映すそれはもう滲んでいなかった。
「大好き、リツ。もっと、その……激しく、して」
「いいから」とまで言えずなんだか強請っているみたいになってしまったのは誤算だ。
勿論「激しく」なんて言葉を使ってしまったのもそうだと後で気づく事になったが。
リツは顔を燃えるように真っ赤にし固まり顔をそっぽに向け、そして。
「悪質だし最高だし……」
ぼそり、と呟かれた言葉を最後まで聞き取れなかった私は唇をさらわれる。
目の前の真っ赤な炎を思わせる、獰猛な獣の瞳に囚われた後私はどうなったのか?
おわかりかと思います。
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