24 / 54
第20話:岩を穿つ水
しおりを挟む
「水滴石穿……相変わらず恐ろしいスキルだ」
いつも落ち着いていて少々のことでは動じないウリが、顔を引き攣らせて慄く。
私がサキから習ったそのスキルは、相手の防具を完全に破壊するだけでなく、防御力をゼロにする効果もあった。
金剛石よりも硬いと評されるウリやヴォロスのような防御キャラには、天敵のようなスキルといえる。
「ヒロ、間違ってもそれを味方には使うなよ?」
「使いませんってば。サキさんじゃないんですから」
私に念押しするウリ。
実は、彼はサキから水滴石穿を食らったことがあった。
◇◆◇◆◇
天界の鍛錬場。
私にスキルを伝授するサキは、運悪く近くで天使たちに稽古をつけていたウリを実験台にしたの。
「見てなさいヒロ、これがこのスキルの真の効果よ」
流し目気味に微笑みながら、サキがウリめがけて放ったのは水の矢。
1本に見えるけれど、実際は幾千もの矢の集合体だよ。
怪訝な顔で振り返るウリにそれが当たった直後、重厚な鎧も、大きな盾も、粉々に砕け散った。
「なっ?!」
ギョッとするウリは更に驚くことになる。
彼が鎧の下に着ていた衣服さえも、細かく破れた末に糸くずと化して散ってしまった。
当然、ウリは丸裸ね。
生まれたまんまのイヤンな姿にされちゃったの。
「「「隊長っ?!」」」
稽古途中の下位天使たちも、ギョッとして目を真ん丸に見開いている。
水滴石穿は、水が滴り続けて岩を穿つイメージでサキが開発した特殊スキル。
その破壊力には、水の力の他に、素早く魔法を撃ち出す技術も影響する。
覚えたての私は防具を破壊する程度だけど、極めたサキは相手を包む物全てを破壊できた。
「ななな…っ?! なにをする?!」
慌てて股間を隠しながら、ウリが困惑した声を上げる。
私は後にも先にも、あんなに動揺したウリを見たことはない。
下位天使たちが、サーッと青ざめている。
サキだけが、悪戯が成功した子供のように満面の笑みを浮かべていた。
「見た? 凄いでしょ?」
「は、はい……」
サキは得意気にニコニコしながら言う。
私はとんでもないスキル効果に顔を引き攣らせて答えた。
「みみみっ、見たのかっ?!」
「「「みっ見てませんっ!」」」
一方、ウリは慌てまくり、顔を真っ赤にして訊いてくる。
稽古をつけてもらっていた下位天使たちが、顔面蒼白で引き攣りながら一斉にウリに背中を向けた。
ウリは私の方を向いて訊いているのだけど、もはや彼等にとってそんなことは関係ない。
「ふふふっ、ヴォロスもあれくらい丸裸にしてあげなさい」
「物理的にも社会的にも破壊するんですね……」
なんだか楽しそうなサキに言われ、私は苦笑するしかなかった。
いつも落ち着いていて少々のことでは動じないウリが、顔を引き攣らせて慄く。
私がサキから習ったそのスキルは、相手の防具を完全に破壊するだけでなく、防御力をゼロにする効果もあった。
金剛石よりも硬いと評されるウリやヴォロスのような防御キャラには、天敵のようなスキルといえる。
「ヒロ、間違ってもそれを味方には使うなよ?」
「使いませんってば。サキさんじゃないんですから」
私に念押しするウリ。
実は、彼はサキから水滴石穿を食らったことがあった。
◇◆◇◆◇
天界の鍛錬場。
私にスキルを伝授するサキは、運悪く近くで天使たちに稽古をつけていたウリを実験台にしたの。
「見てなさいヒロ、これがこのスキルの真の効果よ」
流し目気味に微笑みながら、サキがウリめがけて放ったのは水の矢。
1本に見えるけれど、実際は幾千もの矢の集合体だよ。
怪訝な顔で振り返るウリにそれが当たった直後、重厚な鎧も、大きな盾も、粉々に砕け散った。
「なっ?!」
ギョッとするウリは更に驚くことになる。
彼が鎧の下に着ていた衣服さえも、細かく破れた末に糸くずと化して散ってしまった。
当然、ウリは丸裸ね。
生まれたまんまのイヤンな姿にされちゃったの。
「「「隊長っ?!」」」
稽古途中の下位天使たちも、ギョッとして目を真ん丸に見開いている。
水滴石穿は、水が滴り続けて岩を穿つイメージでサキが開発した特殊スキル。
その破壊力には、水の力の他に、素早く魔法を撃ち出す技術も影響する。
覚えたての私は防具を破壊する程度だけど、極めたサキは相手を包む物全てを破壊できた。
「ななな…っ?! なにをする?!」
慌てて股間を隠しながら、ウリが困惑した声を上げる。
私は後にも先にも、あんなに動揺したウリを見たことはない。
下位天使たちが、サーッと青ざめている。
サキだけが、悪戯が成功した子供のように満面の笑みを浮かべていた。
「見た? 凄いでしょ?」
「は、はい……」
サキは得意気にニコニコしながら言う。
私はとんでもないスキル効果に顔を引き攣らせて答えた。
「みみみっ、見たのかっ?!」
「「「みっ見てませんっ!」」」
一方、ウリは慌てまくり、顔を真っ赤にして訊いてくる。
稽古をつけてもらっていた下位天使たちが、顔面蒼白で引き攣りながら一斉にウリに背中を向けた。
ウリは私の方を向いて訊いているのだけど、もはや彼等にとってそんなことは関係ない。
「ふふふっ、ヴォロスもあれくらい丸裸にしてあげなさい」
「物理的にも社会的にも破壊するんですね……」
なんだか楽しそうなサキに言われ、私は苦笑するしかなかった。
10
あなたにおすすめの小説
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる