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第9章:世代交代
第90話:母なるもの
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マザーコンピューター【マーテル】は、惑星アエテルヌムを管理する人工知性体だ。
所謂AIにあたるものだけど、地球のAIとは違って【心】を持っている。
僕たちが目指す惑星が大きく見え始めたとき、マーテルは挨拶をするため姿を現した。
アイオが「婿入り先に挨拶」なんていうから、僕だけ変な緊張しているよ。
どんな挨拶をすればいいんだろうね?
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「移民の皆さん、ようこそアエテルヌムへ。私は惑星管理コンピューターの【マーテル】です」
アルビレオ内の各所にあるスクリーンに、穏やかな笑みを浮かべる美女が映し出された。
聖母のような慈愛を感じさせるその女性は、マーテルのイメージ画像である。
「アルビレオに選ばれてここまで来ました。僕は艦長のトオヤ・ユージアライトです」
「トオヤ、貴方が私の新しい息子ですね」
通信に応答するトオヤに、マーテルが微笑む。
アイオが言うように、トオヤはマーテルの「息子」として認識されたようだ。
「私は多くの子供たちを宇宙へ旅立たせました。その中でD因子に対する抗体をもつ異星人を発見できた子はアルビレオだけです。こんなにも多くの移民を連れて来てくれたことを、とても嬉しく思います」
遺伝子に現れたD因子によって、受精卵が育たなくなったというアエテルヌムの民。
アルビレオが運んできた地球人の卵子と精子は、アエテルヌム人の卵子または精子と受精して、D因子に打ち勝ち子孫を残すことを目的としていた。
「成人済の者はD因子撲滅のお役には立てませんが、労働力として何かできたらと思っています」
「では成人済の方たちには、アエテルヌムの技術者たちを手伝って頂きましょう」
トオヤたち成人済の地球人は避妊去勢手術を受けているため、子孫は残せない。
一代限りの生を、アエテルヌムの文明に捧げることとなった。
「旅の途中で保護した異星人たちも、住民として受け入れてもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
移民団メンバーに途中から加わった地球人以外の人々も、受け入れてもらえるという。
これはもともとアイオから聞いていたので分かってはいたが、トオヤはマーテルにも確認した。
D因子のせいで知的生命体のほとんどが滅びかけていたアエテルヌムには、彼等も有難い存在である。
「僕たちの故郷【地球】は、戦争によって生き物が住めない惑星になってしまいました。移民先で祖先の過ちを繰り返さぬように、地球の歴史データをお渡ししておきます」
「確かに受け取りました。トオヤ、貴方はアルビレオある限り不老不死の身、語り部となってくれることを望みます」
「はい。僕だけでなく、アンドロイドのライカやクローンとして生きるティオやレシカも語り部になれると思います」
トオヤは地球の歴史データをマーテルに送信した。
戦争で母星を死の惑星にしてしまった地球人の苦い記憶は、決して忘れてはならないものである。
こうして、故郷の惑星を離れた移民たちは、新天地の惑星アエテルヌムに降り立った。
マーテルは冷凍睡眠で絶滅を防いでいたアエテルヌム人たちを目覚めさせ、移民たちとの交流を進める。
様々な星の民が交わるアエテルヌムを、トオヤはマーテルの「息子」として支えていくこととなった。
所謂AIにあたるものだけど、地球のAIとは違って【心】を持っている。
僕たちが目指す惑星が大きく見え始めたとき、マーテルは挨拶をするため姿を現した。
アイオが「婿入り先に挨拶」なんていうから、僕だけ変な緊張しているよ。
どんな挨拶をすればいいんだろうね?
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「移民の皆さん、ようこそアエテルヌムへ。私は惑星管理コンピューターの【マーテル】です」
アルビレオ内の各所にあるスクリーンに、穏やかな笑みを浮かべる美女が映し出された。
聖母のような慈愛を感じさせるその女性は、マーテルのイメージ画像である。
「アルビレオに選ばれてここまで来ました。僕は艦長のトオヤ・ユージアライトです」
「トオヤ、貴方が私の新しい息子ですね」
通信に応答するトオヤに、マーテルが微笑む。
アイオが言うように、トオヤはマーテルの「息子」として認識されたようだ。
「私は多くの子供たちを宇宙へ旅立たせました。その中でD因子に対する抗体をもつ異星人を発見できた子はアルビレオだけです。こんなにも多くの移民を連れて来てくれたことを、とても嬉しく思います」
遺伝子に現れたD因子によって、受精卵が育たなくなったというアエテルヌムの民。
アルビレオが運んできた地球人の卵子と精子は、アエテルヌム人の卵子または精子と受精して、D因子に打ち勝ち子孫を残すことを目的としていた。
「成人済の者はD因子撲滅のお役には立てませんが、労働力として何かできたらと思っています」
「では成人済の方たちには、アエテルヌムの技術者たちを手伝って頂きましょう」
トオヤたち成人済の地球人は避妊去勢手術を受けているため、子孫は残せない。
一代限りの生を、アエテルヌムの文明に捧げることとなった。
「旅の途中で保護した異星人たちも、住民として受け入れてもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
移民団メンバーに途中から加わった地球人以外の人々も、受け入れてもらえるという。
これはもともとアイオから聞いていたので分かってはいたが、トオヤはマーテルにも確認した。
D因子のせいで知的生命体のほとんどが滅びかけていたアエテルヌムには、彼等も有難い存在である。
「僕たちの故郷【地球】は、戦争によって生き物が住めない惑星になってしまいました。移民先で祖先の過ちを繰り返さぬように、地球の歴史データをお渡ししておきます」
「確かに受け取りました。トオヤ、貴方はアルビレオある限り不老不死の身、語り部となってくれることを望みます」
「はい。僕だけでなく、アンドロイドのライカやクローンとして生きるティオやレシカも語り部になれると思います」
トオヤは地球の歴史データをマーテルに送信した。
戦争で母星を死の惑星にしてしまった地球人の苦い記憶は、決して忘れてはならないものである。
こうして、故郷の惑星を離れた移民たちは、新天地の惑星アエテルヌムに降り立った。
マーテルは冷凍睡眠で絶滅を防いでいたアエテルヌム人たちを目覚めさせ、移民たちとの交流を進める。
様々な星の民が交わるアエテルヌムを、トオヤはマーテルの「息子」として支えていくこととなった。
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