【本編完結】株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~

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勇者エリシオ編

第15話:聖女と魔王と黒竜

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 プルミエ王国の第一王女ソレミアと、聖王国トワの聖女セイラは仲が良い。
 国同士が友好国で幼少期から交流しており、ソレミアにとって3歳年上のセイラは親戚のお姉ちゃんみたいな存在である。
 魔王がエリシオの使い魔になったという話は、ソレミアからセイラに伝えられた。

「………」
「???」
 じぃ~っと睨むように観察する聖女セイラと、キョトンとする猫魔王ルシエ。

「…浄化ピュリファイ
 ボソッと呟くセイラ。
 光魔法、それも世界最強聖女と言われるセイラが発動する浄化魔法ピュリファイは、魔王にダメージを与える筈だが、ルシエは全く影響を受けなかった。

「謀ったわね? 魔王」
「何の事だ?」
 セイラに言われた意味が分からず、ルシエは問い返した。

「エリの使い魔になる事で、光抵抗を上げたでしょう」
「そうなのか?」
「とぼけないで」
 聖女らしくない鋭い目でルシエを睨むセイラ。
 使い魔は主人の属性の影響を受けて魔法抵抗が上がる。
 全属性持ちのエリシオの使い魔となったルシエは、魔族でありながら光属性攻撃・神聖力への抵抗を得ていた。

「986年前、あんたは浄化魔法ピュリファイ1発で瀕死になったわ。それが今は全くダメージを受けない。つまり今のあんたは聖剣や神聖魔法で斃せないって事よ」
「今の我は斃されぬ方が世界の為であろう?」
「あんたが裏切らないならね」
 遥かな昔から勇者と共に魔王を斃してきたセイラにとって、ルシエは宿敵だ。

 睨んでいると、心配しながら様子を見ていたエリシオが間に入ってくる。
「セイラやめて、ルシエは悪い子じゃないよ!」
 猫ルシエを庇うように抱き上げて言う。
 エリシオが信じてくれる事が嬉しくて、灰色の仔猫は目を細めてその胸にスリゴロする。

「セイラ、この子は世界を滅ぼす気も勇者と戦う気も全く無いわよ」
 同じく様子を見ていたソレミアも言う。
 彼女は祖先セイル譲りの気配探知能力を持っており、誰かに害為す者か無害かを把握出来る。

「2人がそう言うならしょうがないわね」
 セイラは諦めの溜息をついた。

「じゃあその証明として、3人とも黒竜討伐に付き合ってくれる?」
「構わぬぞ」
「いいよ」
「いいわよ」
 代わりに出された要望を、3人が承知する。


 セイラに同行して、ルシエ、エリシオ、ソレミアは、黒竜が転生して来たという山へ向かった。

「いっそ黒竜も転生しないように封印したらいいかもね」
 セイラを乗せて飛びながら、青竜シアンが言う。
「あんな大きいものを封印する魔道具なんて、置き場所に困りそう」
「そう思ったから変身アクセサリーを持って来たわ」
 セイラが言えば、不死鳥に乗って並んでいるソレミアが言った。

 986年前、卒業検定の際に祖先セイルの使い魔になった不死鳥。
 セイルからモミジという名を与えられた紅い鳥は、王家の守護聖獣となって現在ソレミアに仕えている。
 剣聖ソレミアのメイン武器は、モミジが提供したレア金属・緋緋色金で作られた日本刀カタナ

「斃さなくていいなら、魔法で凍らせちゃってもいい?」
 エリシオも会話に加わる。
 彼は白雪が空を駆けられると知り、ルシエと共にその背に乗っていた。


 斃されると100年後に転生するという黒竜。
 その当代は、まだ産まれて間もなかった。
 0歳の竜は、猫になっているルシエよりも小さい。

「魔王様、存在エネルギーを吸収出来なくなったというのは本当ですか?」
 一同の中に魔王がいると気付き、黒竜は戦おうとせずに聞く。
「うむ。真実だ。まさかそなた、我を殺して転生させる気か?」
 ルシエが問うと、黒竜はいいえと首を横に振った。
「生まれて間もないこの身に、そのような力はございません」
「では大人しく封印されるか?」
「主の御命令とあらば」
 明らかに勝てないと察した黒竜は大人しかった。
 身体も小さいので変身アイテムも要らず、セイラが持つ魔道具で異空間牢へ収容された。
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