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勇者エリシオ編
第23話:剣士で聖女な王女様
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カートル王国、その王都の神殿は、人口に合わせて造られた事から大陸最大規模の収容人数を誇る。
訪れる者は多く、神聖魔法での治療を求める人も多い。
そんなカートル神殿の悩みは、所属する聖女がおらず、高度な神聖魔法を使える者が大神官1人という事。
他の神殿では大神官と聖女の2人で請け負う重傷者の治療を、1人でせねばならない大神官はブラック企業の社畜並みに忙しい。
カートル王国の孤児院を訪れた後、ソレミアは神殿に向かう。
冒険者風の動きやすい衣服を身に纏う彼女が、プルミエの王族だと気付く者はいない。
しかしサラサラストレートロングの黒髪に、睫毛が長く整った顔立ち、色白の肌に黒い宝石のような瞳という容姿は目を引き、よからぬ者も引き寄せてしまう。
カートル王都の人口は200万超、地球のフランス首都ぐらいの人数である。
それぐらい人間がいれば治安が微妙なのも仕方なく、美しい少女によろしくない事をしようとする2人の男が建物の間からスッと出て来た。
彼等の1人、小柄な男は少女の横を通り過ぎるフリをして、ポケットに忍ばせた麻痺薬つきの針を刺そうとする。
もう1人、大柄な男は少女が倒れたら介抱するフリをして、抱き上げて攫う予定。
が、2人の行動が成功する事は無かった。
小柄な男が持つ麻痺針はその手から忽然と消え、少女ではなく大柄な男に刺さる。
少女が倒れたら連れ去る役の大柄な男は、麻痺針が首に刺さってその場に倒れた。
少女の姿がフッと消える。
「えっ?!」
驚く小柄な男は直後、後頭部に衝撃を受けて昏倒した。
(ちょっと人通りが少ないと、すぐこれなんだから…)
納刀した日本刀をストレージに戻し、軽く溜息をついてソレミアはその場を立ち去る。
現場には倒れた男たち以外に誰もいない。
もしもいたとしても何が起きたか分からなかっただろう。
小柄な男の手から麻痺針を奪い取り、大柄な男の首に刺した。
大柄な男が倒れるのを小柄な男が見ている間に背後へ回り込み、峰打ちで昏倒させた。
その動作は速すぎて、目視出来る者はいない。
警備兵に引き渡すのは説明が面倒なので放置して去った。
王族のソレミアが護衛も無しに国外へ出かけられるのは、この素早い動きと体術があるから。
ならず者ごときに拉致出来るような少女ではなかった。
自身の拉致被害をあっさり阻止したソレミアは、何事も無かったように神殿を訪れる。
カートル国の神殿では、大神官や神官たちが今日も忙しく働いていた。
入って来た少女に気付き、彼女が誰か知る神官たちがそっと手を合わせる仕草で敬意を示す。
ニコッと微笑むソレミアが通り過ぎる際、ふわりと金色の燐光が舞う。
その場にいた全員、怪我人や病人だけでなく、疲労困憊な神官たちにも光の祝福が付与された。
「ソレミア様、ありがとうございます」
重傷者の治療に追われていた大神官ペリアルは、手伝いに入る聖女ソレミアに感謝した。
「すぐに駆け付けられなくてごめんね。当日は学園メンバーで間に合った?」
光の祝福を重傷者全員にかけた後、個別で最上級回復魔法をかけてゆきつつ、ソレミアは問うた。
「はい。最上級回復魔法を使える方が2人も来られて、本当に助かりました」
ペリアルも範囲回復魔法の効果を維持しつつ、個別の治療を続ける。
聖女の光の祝福と大神官の範囲回復魔法は重ねがけが可能で、重傷者が多い時は合わせて発動する。
カートル神殿には聖女がいないので普段は出来ないが、ソレミアが来た今なら可能となった。
「それに、あの日の夜は神の奇跡を頂いたので、死者を出さずに済みました」
治療を続けながらペリアルが言う。
「神の奇跡?」
「はい。真夜中に光の雨が降り注ぎ、その場にいた全ての者を癒やしたのです」
首を傾げるソレミアに、ペリアルが語る。
「重傷者を同時に完治させる魔法などこの世にありませんから、あれは神の御業なのでしょう」
奇跡が起きた夜を思い出しながら、ペリアルは穏やかな笑みを浮かべていた。
訪れる者は多く、神聖魔法での治療を求める人も多い。
そんなカートル神殿の悩みは、所属する聖女がおらず、高度な神聖魔法を使える者が大神官1人という事。
他の神殿では大神官と聖女の2人で請け負う重傷者の治療を、1人でせねばならない大神官はブラック企業の社畜並みに忙しい。
カートル王国の孤児院を訪れた後、ソレミアは神殿に向かう。
冒険者風の動きやすい衣服を身に纏う彼女が、プルミエの王族だと気付く者はいない。
しかしサラサラストレートロングの黒髪に、睫毛が長く整った顔立ち、色白の肌に黒い宝石のような瞳という容姿は目を引き、よからぬ者も引き寄せてしまう。
カートル王都の人口は200万超、地球のフランス首都ぐらいの人数である。
それぐらい人間がいれば治安が微妙なのも仕方なく、美しい少女によろしくない事をしようとする2人の男が建物の間からスッと出て来た。
彼等の1人、小柄な男は少女の横を通り過ぎるフリをして、ポケットに忍ばせた麻痺薬つきの針を刺そうとする。
もう1人、大柄な男は少女が倒れたら介抱するフリをして、抱き上げて攫う予定。
が、2人の行動が成功する事は無かった。
小柄な男が持つ麻痺針はその手から忽然と消え、少女ではなく大柄な男に刺さる。
少女が倒れたら連れ去る役の大柄な男は、麻痺針が首に刺さってその場に倒れた。
少女の姿がフッと消える。
「えっ?!」
驚く小柄な男は直後、後頭部に衝撃を受けて昏倒した。
(ちょっと人通りが少ないと、すぐこれなんだから…)
納刀した日本刀をストレージに戻し、軽く溜息をついてソレミアはその場を立ち去る。
現場には倒れた男たち以外に誰もいない。
もしもいたとしても何が起きたか分からなかっただろう。
小柄な男の手から麻痺針を奪い取り、大柄な男の首に刺した。
大柄な男が倒れるのを小柄な男が見ている間に背後へ回り込み、峰打ちで昏倒させた。
その動作は速すぎて、目視出来る者はいない。
警備兵に引き渡すのは説明が面倒なので放置して去った。
王族のソレミアが護衛も無しに国外へ出かけられるのは、この素早い動きと体術があるから。
ならず者ごときに拉致出来るような少女ではなかった。
自身の拉致被害をあっさり阻止したソレミアは、何事も無かったように神殿を訪れる。
カートル国の神殿では、大神官や神官たちが今日も忙しく働いていた。
入って来た少女に気付き、彼女が誰か知る神官たちがそっと手を合わせる仕草で敬意を示す。
ニコッと微笑むソレミアが通り過ぎる際、ふわりと金色の燐光が舞う。
その場にいた全員、怪我人や病人だけでなく、疲労困憊な神官たちにも光の祝福が付与された。
「ソレミア様、ありがとうございます」
重傷者の治療に追われていた大神官ペリアルは、手伝いに入る聖女ソレミアに感謝した。
「すぐに駆け付けられなくてごめんね。当日は学園メンバーで間に合った?」
光の祝福を重傷者全員にかけた後、個別で最上級回復魔法をかけてゆきつつ、ソレミアは問うた。
「はい。最上級回復魔法を使える方が2人も来られて、本当に助かりました」
ペリアルも範囲回復魔法の効果を維持しつつ、個別の治療を続ける。
聖女の光の祝福と大神官の範囲回復魔法は重ねがけが可能で、重傷者が多い時は合わせて発動する。
カートル神殿には聖女がいないので普段は出来ないが、ソレミアが来た今なら可能となった。
「それに、あの日の夜は神の奇跡を頂いたので、死者を出さずに済みました」
治療を続けながらペリアルが言う。
「神の奇跡?」
「はい。真夜中に光の雨が降り注ぎ、その場にいた全ての者を癒やしたのです」
首を傾げるソレミアに、ペリアルが語る。
「重傷者を同時に完治させる魔法などこの世にありませんから、あれは神の御業なのでしょう」
奇跡が起きた夜を思い出しながら、ペリアルは穏やかな笑みを浮かべていた。
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