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勇者エリシオ編
第37話:勇者の裏話
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「私が最初に見た勇者セイルは、イルという名で金髪の子供の姿をしていたわ。 今のエリシオくらいの歳で、当時の私と双子みたいにそっくりだったから、入れ替わって影武者してもらった事があるの」
懐かしそうにセイラは話す。
「入れ替わった?」
すると当時を記憶しているチビ黒竜クーロが、目をまん丸にして従魔部屋から出て来る。
「まさか、986年前に戦った聖女は…」
「…勇者セイルが変装した姿よ」
「……………」
前世でセイラに斃されたと思っていたら、影武者だった件。
今まで聖女セイラの伝説として語り継がれてきた黒竜討伐エピソード。
実は勇者が変装していたと知り、愕然とするクーロ。
「ルシエやロミュラが使っている変身用魔道具、賢者シロウが開発した際の試作品を使ったのがセイルとソーマという転移者。2人はカートル国で当時あった連続拉致事件を探る為、子供に変身して孤児院に潜入していたの」
セイラは語る。
カートル王都は今も部分的に物騒な場所があるが、当時は今よりもっと治安が悪かった。
「そういえばフォンセが奴隷を買っていたのが、カートルの奴隷商人だったわね」
ロミュラが当時を思い出して言う。
「私はカートルの大神官から依頼を受けて入国したのだけど、お忍びで王都見学していたら拉致されちゃって…」
苦笑するセイラ。
「護衛なにしてたの」
エリシオも苦笑しつつツッコミを入れた。
「拉致されたのを助けてくれたのが誘拐犯を探っていたソーマで、保護してもらった孤児院で子供に変身中のセイルにも会ったの。その後、私が命を狙われてるのが分って入れ替わってもらってたのよ」
セイラが告げた裏話は、当時を知るロミュラやクーロには驚きつつも聖女殺害に苦戦した理由が分る内容だった。
「どうりでフォンセの戦闘奴隷たちが襲撃して返り討ちに遭ったわけね…」
ロミュラも苦笑した。
「セイルは聖王国に滞在していた頃に、当時の大神官から言われて神竜の間へ入り、トワの勇者の証を得たの」
「その証を置いて帰られた時はビックリしたけどね」
セイラの話に続けるように、ソファ脇にいた神竜シアンが言う。
「え、なんで置いて帰ったの?!」
「って思うよね?」
エリシオが驚くと、シアンは苦笑して同意した。
「セイルの言い分としては、自分はプルミエを守る勇者だから、トワの勇者にはなれないって事だったわ。2つの国に同時に災害が起きた時に、トワを優先出来ないからって」
「だからって、せっかく手に入れた聖剣を抜きもせずに置いて帰る事はないと思うんだ」
セイラの話に、シアンが更に付け加える。
「聖剣を置いて帰りおったのか。そんな勇者、初めて聞いたぞ」
エリシオの肩の上、仔猫ルシエが苦笑した。
「その後、プルミエに帰って変身を解除しようとしたら、本来の姿じゃなくてトワの初代勇者の姿になっちゃったの」
「…ご先祖様、何してるの?!」
ここまでの経緯を聞いてもワケが分からない状況に、ツッコミつつ問うエリシオ。
「セイルが転生者だったからだな」
肩の上から仔猫ルシエが答えた。
「トワの勇者の歴史は知ってる?」
セイラが問う。
「うん。聖王国トワが建国した時から続く、魔王と戦う存在だよね?」
エリシオは学校で習ったり書物で読んだりした歴史を思い出しつつ答えた。
「そう。その勇者の初代は普通の人間ではなく、私と同じ神の眷属だったけど、魔王と相打ちで命を落としたの」
話しながら、セイラがチラリとルシエを見る。
エリシオも釣られてルシエに目を向けた。
「うむ。かなり昔、我の前世と刺し違えて逝ったな」
話すルシエが、フッと寂しそうな顔になる。
ルシエをしばし見詰めた後、セイラはエリシオに、エリシオはセイラに視線を戻した。
「その初代勇者の生まれ変わりが、日本人・青野星琉だったのよ」
「つまり、僕のご先祖様?」
「そういう事ね」
エリシオは少し困惑しつつも、今この部屋にいる自分以外の全員が転生者なので、先祖が転生者だったと聞いてもあまり驚かなかった。
セイルが日本からの異世界転移者なのはよく知られているが、元はこちらの世界にいた者の生まれ変わりというのは知られていない。
「前世の姿になっちゃったのは、魂に残ってる初代勇者の生体情報が活性化したせいなんだけど、転生者である事を公にしたくないからって別人を演じた結果誕生したのが、986年前のトワの勇者よ」
「じゃあ、ルシエをプルミエに連れて来た時の動画は、金髪の人がご先祖様で、その場にいた黒髪の人は影武者?」
エリシオは以前見た動画を思い出す。
あの動画にはトワの勇者の他に、祖先の容姿にそっくりな黒髪の人物も映っていた。
「それはセイルの生体情報をコピーして変身した獣人シトリね」
セイラが答える。
変身用魔道具やら前世の影響やらで、裏歴史は少々ややこしい事になっていたようだ。
懐かしそうにセイラは話す。
「入れ替わった?」
すると当時を記憶しているチビ黒竜クーロが、目をまん丸にして従魔部屋から出て来る。
「まさか、986年前に戦った聖女は…」
「…勇者セイルが変装した姿よ」
「……………」
前世でセイラに斃されたと思っていたら、影武者だった件。
今まで聖女セイラの伝説として語り継がれてきた黒竜討伐エピソード。
実は勇者が変装していたと知り、愕然とするクーロ。
「ルシエやロミュラが使っている変身用魔道具、賢者シロウが開発した際の試作品を使ったのがセイルとソーマという転移者。2人はカートル国で当時あった連続拉致事件を探る為、子供に変身して孤児院に潜入していたの」
セイラは語る。
カートル王都は今も部分的に物騒な場所があるが、当時は今よりもっと治安が悪かった。
「そういえばフォンセが奴隷を買っていたのが、カートルの奴隷商人だったわね」
ロミュラが当時を思い出して言う。
「私はカートルの大神官から依頼を受けて入国したのだけど、お忍びで王都見学していたら拉致されちゃって…」
苦笑するセイラ。
「護衛なにしてたの」
エリシオも苦笑しつつツッコミを入れた。
「拉致されたのを助けてくれたのが誘拐犯を探っていたソーマで、保護してもらった孤児院で子供に変身中のセイルにも会ったの。その後、私が命を狙われてるのが分って入れ替わってもらってたのよ」
セイラが告げた裏話は、当時を知るロミュラやクーロには驚きつつも聖女殺害に苦戦した理由が分る内容だった。
「どうりでフォンセの戦闘奴隷たちが襲撃して返り討ちに遭ったわけね…」
ロミュラも苦笑した。
「セイルは聖王国に滞在していた頃に、当時の大神官から言われて神竜の間へ入り、トワの勇者の証を得たの」
「その証を置いて帰られた時はビックリしたけどね」
セイラの話に続けるように、ソファ脇にいた神竜シアンが言う。
「え、なんで置いて帰ったの?!」
「って思うよね?」
エリシオが驚くと、シアンは苦笑して同意した。
「セイルの言い分としては、自分はプルミエを守る勇者だから、トワの勇者にはなれないって事だったわ。2つの国に同時に災害が起きた時に、トワを優先出来ないからって」
「だからって、せっかく手に入れた聖剣を抜きもせずに置いて帰る事はないと思うんだ」
セイラの話に、シアンが更に付け加える。
「聖剣を置いて帰りおったのか。そんな勇者、初めて聞いたぞ」
エリシオの肩の上、仔猫ルシエが苦笑した。
「その後、プルミエに帰って変身を解除しようとしたら、本来の姿じゃなくてトワの初代勇者の姿になっちゃったの」
「…ご先祖様、何してるの?!」
ここまでの経緯を聞いてもワケが分からない状況に、ツッコミつつ問うエリシオ。
「セイルが転生者だったからだな」
肩の上から仔猫ルシエが答えた。
「トワの勇者の歴史は知ってる?」
セイラが問う。
「うん。聖王国トワが建国した時から続く、魔王と戦う存在だよね?」
エリシオは学校で習ったり書物で読んだりした歴史を思い出しつつ答えた。
「そう。その勇者の初代は普通の人間ではなく、私と同じ神の眷属だったけど、魔王と相打ちで命を落としたの」
話しながら、セイラがチラリとルシエを見る。
エリシオも釣られてルシエに目を向けた。
「うむ。かなり昔、我の前世と刺し違えて逝ったな」
話すルシエが、フッと寂しそうな顔になる。
ルシエをしばし見詰めた後、セイラはエリシオに、エリシオはセイラに視線を戻した。
「その初代勇者の生まれ変わりが、日本人・青野星琉だったのよ」
「つまり、僕のご先祖様?」
「そういう事ね」
エリシオは少し困惑しつつも、今この部屋にいる自分以外の全員が転生者なので、先祖が転生者だったと聞いてもあまり驚かなかった。
セイルが日本からの異世界転移者なのはよく知られているが、元はこちらの世界にいた者の生まれ変わりというのは知られていない。
「前世の姿になっちゃったのは、魂に残ってる初代勇者の生体情報が活性化したせいなんだけど、転生者である事を公にしたくないからって別人を演じた結果誕生したのが、986年前のトワの勇者よ」
「じゃあ、ルシエをプルミエに連れて来た時の動画は、金髪の人がご先祖様で、その場にいた黒髪の人は影武者?」
エリシオは以前見た動画を思い出す。
あの動画にはトワの勇者の他に、祖先の容姿にそっくりな黒髪の人物も映っていた。
「それはセイルの生体情報をコピーして変身した獣人シトリね」
セイラが答える。
変身用魔道具やら前世の影響やらで、裏歴史は少々ややこしい事になっていたようだ。
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