4 / 51
第1章:ヒロとケイ
第2話:深い眠り
しおりを挟む
翌日。
「ねえ、そろそろ起きてよ」
ケイは午後になっても目を覚まさなかった。
呼吸や心臓の鼓動は、普段寝ている時と同じくらい。
ただ、大声で呼びかけても、身体に触れても、全く反応が無い。
髪をかきわけて、ぶつけた痕跡がないか確認してみたけど、特に何も見つからない。
まさか、急性の脳の病気?!
不安になった僕は、総合病院でケイを診てもらうことにした。
今年18歳になってすぐ自動車免許はとっていて、まだ初心者マークだけどよく知る道なら行ける。
僕は全く動かないケイを背負って車まで運び、慎重に運転しながら病院へ向かった。
「体内からアルコールは検出されませんでしたが、昨夜は何時にどのくらい飲んでいましたか?」
「それが、飲んでいるところは誰も見ていないんです。パーティが終わって片付けているときに、ベンチで寝ているのを発見しました」
飲み会の後から眠り続けていると話したら、先生は急性アルコール中毒を予想して調べてくれた。
【急性アルコール中毒の症状】
顔面や全身のはっきりとした紅潮・灼熱感、発汗
動悸、呼吸困難、胸痛、低血圧
頭痛、不穏、めまい、目のかすみ
嘔気・嘔吐、口渇
脱力、低血圧、起立性低血圧(急に座ったり立ち上がったりしたときに起こる失神)
アルコールの臭いがする、意識がなく、呼びかけたり揺すったりしても反応しない、呼吸が少ない、嘔吐している、口から泡を吹いている、体が冷えているなどの状態が確認されれば、急性アルコール中毒が疑われる。
ケイは意識が無く、呼びかけたり揺すったりしても反応が無い。
でも、呼吸や身体の温かさは普段眠っているときと変わらない感じで、吐いたり泡を吹いたりはしていない。
昨日一緒に寝たときのことを思い返してみると、吐息にお酒臭さは無かった。
「血圧、心拍数、呼吸数、どれも正常な範囲ですね。粘膜の充血も無く、血糖値も正常です。腕や脚が何度も震えたりはしませんでしたか?」
「いえ。普段寝ているときと同じで、身体の痙攣は無かったです」
「CT検査で脳の状態を調べてみましょう」
ストレッチャーに乗せられて看護師に運ばれるケイに、僕は不安を感じながらついていった。
検査室の前で待つ時間が、凄く長く感じる。
「脳出血や脳梗塞ではないようです。腫瘍やがんも見当たりません。頭蓋骨や脳の損傷も無いので、怪我によるものでもなさそうです。現時点では、原因を特定できません」
CT検査でも、ケイの昏睡の原因は見つからなかった。
脳梗塞や脳腫瘍ではなかったのは少しホッとしたけど、原因を特定できないと言われてまた不安になる。
「意識が戻るまで入院させた方がよいでしょう。付き添えるご家族はいらっしゃいますか?」
「僕が唯一の家族です。僕がケイに付き添います」
「では個室を御用意しますので、そちらで一緒にお泊り下さい」
先生はケイの状態や有名人であることを考慮して、病室は一番奥の個室にしてくれた。
そこへケイが運び込まれ、ベッドに寝かされたのを確認すると、僕は入院するケイと付き添いの自分に必要なものを取りに自宅へ向かった。
ケイも僕も今まで入院なんてしたことがない。
何を用意すればいいかよく分からないけど、とりあえず着替えは持って行こう。
ウォークインクローゼット内の引き出しから衣類を出してボストンバッグに詰める。
ケイがいない家の中で、僕の気持ちは暗くなる一方だ。
病院は車で数分の場所だから行き来はしやすい。
僕は最低限の物を持って、自宅を出た。
病室に行ってみると、ケイは点滴や検査器具のケーブルなどを付けられて、相変わらず眠っている。
特に具合が悪いようには見えない。
いつも見ている寝顔だ。
「ケイ、起きてよ」
呼びかけてみた。
ケイはピクリとも動かない。
ケイに引き取られた小学生の頃は「お兄ちゃん」と呼んでいた。
声優養成所に通い始めた中学生の頃から「アニキ」と呼び始めた。
それが「ケイ」になったのは、僕が18歳の誕生日を迎えた時から。
「ヒロはもう大人だし、同じ業界で働く仲間だ。これからは対等な関係であるように名前呼びしてくれ」
ケイにそう言われて以来、僕は彼を名前呼びするようになった。
対等な関係と言ってもらえたことが嬉しい。
仲間と言ってくれたケイと、共演することが目標になった。
その夢がまさかデビュー作で叶うとは、想定外だったけど。
せっかく、夢が叶ったのに。
【天使と珈琲を】の主人公役は、もともと新人を起用する予定だったらしい。
主人公はプレイヤーの分身で、個性はなるべく出さないようにということから、台詞は少ない。
攻略対象たちとの絡みも、主人公側は「はい」「いいえ」の選択くらいで、音声会話は無かった。
それでも、ケイと同じ作品に出られたから凄く嬉しかった。
ゲームがヒットすれば、アニメ化してまた共演できるかもって期待もしている。
なのに……。
「なんで起きてくれないの? 僕を独りにしないでよ……」
覗き込んだケイの顔に、ポツッと落ちたのは悲しみの雫。
僕は大好きな人を抱き締めて、抑えていた感情が溢れるままに泣いた。
「ねえ、そろそろ起きてよ」
ケイは午後になっても目を覚まさなかった。
呼吸や心臓の鼓動は、普段寝ている時と同じくらい。
ただ、大声で呼びかけても、身体に触れても、全く反応が無い。
髪をかきわけて、ぶつけた痕跡がないか確認してみたけど、特に何も見つからない。
まさか、急性の脳の病気?!
不安になった僕は、総合病院でケイを診てもらうことにした。
今年18歳になってすぐ自動車免許はとっていて、まだ初心者マークだけどよく知る道なら行ける。
僕は全く動かないケイを背負って車まで運び、慎重に運転しながら病院へ向かった。
「体内からアルコールは検出されませんでしたが、昨夜は何時にどのくらい飲んでいましたか?」
「それが、飲んでいるところは誰も見ていないんです。パーティが終わって片付けているときに、ベンチで寝ているのを発見しました」
飲み会の後から眠り続けていると話したら、先生は急性アルコール中毒を予想して調べてくれた。
【急性アルコール中毒の症状】
顔面や全身のはっきりとした紅潮・灼熱感、発汗
動悸、呼吸困難、胸痛、低血圧
頭痛、不穏、めまい、目のかすみ
嘔気・嘔吐、口渇
脱力、低血圧、起立性低血圧(急に座ったり立ち上がったりしたときに起こる失神)
アルコールの臭いがする、意識がなく、呼びかけたり揺すったりしても反応しない、呼吸が少ない、嘔吐している、口から泡を吹いている、体が冷えているなどの状態が確認されれば、急性アルコール中毒が疑われる。
ケイは意識が無く、呼びかけたり揺すったりしても反応が無い。
でも、呼吸や身体の温かさは普段眠っているときと変わらない感じで、吐いたり泡を吹いたりはしていない。
昨日一緒に寝たときのことを思い返してみると、吐息にお酒臭さは無かった。
「血圧、心拍数、呼吸数、どれも正常な範囲ですね。粘膜の充血も無く、血糖値も正常です。腕や脚が何度も震えたりはしませんでしたか?」
「いえ。普段寝ているときと同じで、身体の痙攣は無かったです」
「CT検査で脳の状態を調べてみましょう」
ストレッチャーに乗せられて看護師に運ばれるケイに、僕は不安を感じながらついていった。
検査室の前で待つ時間が、凄く長く感じる。
「脳出血や脳梗塞ではないようです。腫瘍やがんも見当たりません。頭蓋骨や脳の損傷も無いので、怪我によるものでもなさそうです。現時点では、原因を特定できません」
CT検査でも、ケイの昏睡の原因は見つからなかった。
脳梗塞や脳腫瘍ではなかったのは少しホッとしたけど、原因を特定できないと言われてまた不安になる。
「意識が戻るまで入院させた方がよいでしょう。付き添えるご家族はいらっしゃいますか?」
「僕が唯一の家族です。僕がケイに付き添います」
「では個室を御用意しますので、そちらで一緒にお泊り下さい」
先生はケイの状態や有名人であることを考慮して、病室は一番奥の個室にしてくれた。
そこへケイが運び込まれ、ベッドに寝かされたのを確認すると、僕は入院するケイと付き添いの自分に必要なものを取りに自宅へ向かった。
ケイも僕も今まで入院なんてしたことがない。
何を用意すればいいかよく分からないけど、とりあえず着替えは持って行こう。
ウォークインクローゼット内の引き出しから衣類を出してボストンバッグに詰める。
ケイがいない家の中で、僕の気持ちは暗くなる一方だ。
病院は車で数分の場所だから行き来はしやすい。
僕は最低限の物を持って、自宅を出た。
病室に行ってみると、ケイは点滴や検査器具のケーブルなどを付けられて、相変わらず眠っている。
特に具合が悪いようには見えない。
いつも見ている寝顔だ。
「ケイ、起きてよ」
呼びかけてみた。
ケイはピクリとも動かない。
ケイに引き取られた小学生の頃は「お兄ちゃん」と呼んでいた。
声優養成所に通い始めた中学生の頃から「アニキ」と呼び始めた。
それが「ケイ」になったのは、僕が18歳の誕生日を迎えた時から。
「ヒロはもう大人だし、同じ業界で働く仲間だ。これからは対等な関係であるように名前呼びしてくれ」
ケイにそう言われて以来、僕は彼を名前呼びするようになった。
対等な関係と言ってもらえたことが嬉しい。
仲間と言ってくれたケイと、共演することが目標になった。
その夢がまさかデビュー作で叶うとは、想定外だったけど。
せっかく、夢が叶ったのに。
【天使と珈琲を】の主人公役は、もともと新人を起用する予定だったらしい。
主人公はプレイヤーの分身で、個性はなるべく出さないようにということから、台詞は少ない。
攻略対象たちとの絡みも、主人公側は「はい」「いいえ」の選択くらいで、音声会話は無かった。
それでも、ケイと同じ作品に出られたから凄く嬉しかった。
ゲームがヒットすれば、アニメ化してまた共演できるかもって期待もしている。
なのに……。
「なんで起きてくれないの? 僕を独りにしないでよ……」
覗き込んだケイの顔に、ポツッと落ちたのは悲しみの雫。
僕は大好きな人を抱き締めて、抑えていた感情が溢れるままに泣いた。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!
渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた!
しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!!
至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる