5 / 51
第1章:ヒロとケイ
第3話:夢枕のケイ
しおりを挟む
「ヒロ、聞こえるか?」
ケイの声がする。
僕はすぐに、これが夢だと気付いた。
だって目の前に現れたのはケイではなく、白い6対の翼を持つ天使だったから。
サラサラで少し長い銀色の髪に、宝石みたいな蒼い瞳。
ケイが演じたキャラ、ルウ・シフェルが碧空に浮かびながらこちらを見つめている。
「よし、姿は見えているな?」
「ケイ、どうしてその姿になっているの?」
「多分、これはゲームキャラに憑依したみたいなもんだな」
僕は天使に問いかけてみた。
見た目はルウだけど、中身はケイなのか。
夢でも話ができるのは嬉しい。
だけど、できればいつものケイの姿を見せてほしい。
僕は泣きそうになるのを堪えながら、空に浮かぶ天使を見つめる。
すると、ケイが演じる天使はこう言ったんだ。
「ヒロ、助けてくれ。ゲーム世界に閉じ込められた」
「え?!」
どうしてそうなった?!
昨夜のケイはゲームなんてしていなかったよ?
飲み会では、お客さんにお酒やオツマミを渡している姿を見かけただけだ。
やっぱり、夢だから突拍子もないことを言い出すんだろうか?
「信じてほしい。これは夢じゃない」
でも、ケイが入ったルウは、真剣な顔で告げる。
僕は彼が冗談を言っているワケじゃないと感じた。
「昨夜俺はベンチで誰かと話していたときに、うなじに何か針のような物が刺さるのを感じた。それから眩暈がしてしばらく意識が途切れた後、気が付くとルウの中に入っていたんだ」
首に針を刺されて眠らされるなんて、まるでどっかの探偵みたいだけど。
ゲームのキャラクターの中に入ってしまうなんて、創作界隈ではよくある話だけど。
どうしてケイがそんなことになったんだろう?
「頼む、ヒロ。【天使と珈琲を】をプレイして、ルウ・シフェルのルートをクリアしてくれ。主人公役を務めたヒロが俺のキャラとエンディングを迎えれば、一緒にゲーム世界から出られるかもしれない」
「でも【天使と珈琲を】は、まだ発売されていないよ?」
ケイの頼みなら引き受けるけど。
まだ手に入らないゲームをプレイすることは無理だと思う。
最後の収録が終わったのが先週くらいだったな。
その時点でゲームのシステムは完成していると聞いた記憶がある。
多分これからデバッガーたちによるチェックが始まる筈だ。
発売予定日は2~3ヶ月後って聞いた気がするよ。
「開発チームから貰ったテストプレイ用があるんだ。後でヒロと2人で遊ぼうと思って寝室の引き出しに入れたから、探してみてくれ。小箱に入った指輪がそれだ」
「分かった。ケイを目覚めさせるためなら、ゲームでも隠しエンディング攻略でも何でもするよ」
ケイがいない世界なんて、耐えられないから。
なにがなんでも、目覚めてもらわないと困る。
こうして、僕はケイを救うため、フルダイブ型BLゲームをプレイすることになった。
「ありがとう。愛してるよ、ヒロ」
そう言って僕と唇を重ねた後、ルウ・シフェルの姿をしたケイは空に溶け込んで見えなくなった。
夢から覚めて目を開けると、相変わらず昏睡状態のケイの寝顔が間近に見える。
病室には付き添い用のサブベッドがあるけど、僕は今までいつもケイと一緒に寝ていたから、昨夜は寂しくてケイのベッドに潜り込んで寝たんだ。
窓を見ると夜明けで、太陽の光がカーテンの隙間から漏れている。
朝食の時間までには戻れるから、ちょっと自宅へ行ってこよう。
寝室の引き出しに指輪が入った小箱があれば、あれは夢じゃなくて本当にケイが報せに来たってことだ。
夢の中で触れた唇の感触は、現実のように温かさや柔らかさがあった。
姿はルウだったけど、ケイの唇とそっくりな感触だったな。
その感触を確かめるように、僕は眠ったままのケイの唇に口付けた。
おとぎ話の姫ならキスで目覚めてくれるんだろうけど。
姫じゃなくて天使になっているケイは、いつもより長いキスをしてあげても、目を覚まさない。
ファーストキスから現在まで全て、僕はケイに捧げている。
僕にとってケイは恩人で、家族で、恋人でもあった。
朝食前に自宅へ行って寝室のサイドテーブルの引き出しを開けたら、空色の箱に入った2つの指輪を見つけた。
昔のゲームはBOX型とか大きな物だったらしいけど。
だんだん小型化されて、今ではアクセサリータイプが主流になっている。
指輪タイプは確か、チャンネルを共有して協力プレイができるんだったかな?
ケイは既にゲーム世界にいるから、同じチャンネルに入るためには2人で指輪を着けるのかな?
そんなことを思いつつ病室に指輪を持ち帰って間もなく、食堂スタッフから内線がかかってきた。
「広瀬さん、お食事はどちらでとられますか?」
「病室にお願いします。ケイはまだ意識が戻ってないから、僕の分だけお願いします」
「分かりました」
運んでもらった朝食を食べ終えてしばらくすると、看護師と担当医が部屋を訪れた。
補液したり、呼吸や心音の状態を調べたりしている看護師や医師に、夢の中でケイが言っていたことを話したほうがいいんだろうか?
「何か変わったことはありませんか?」
「昨日と変わりません。ずっと眠ったままです」
結局、僕は夢のことは話さなかった。
ケイの声がする。
僕はすぐに、これが夢だと気付いた。
だって目の前に現れたのはケイではなく、白い6対の翼を持つ天使だったから。
サラサラで少し長い銀色の髪に、宝石みたいな蒼い瞳。
ケイが演じたキャラ、ルウ・シフェルが碧空に浮かびながらこちらを見つめている。
「よし、姿は見えているな?」
「ケイ、どうしてその姿になっているの?」
「多分、これはゲームキャラに憑依したみたいなもんだな」
僕は天使に問いかけてみた。
見た目はルウだけど、中身はケイなのか。
夢でも話ができるのは嬉しい。
だけど、できればいつものケイの姿を見せてほしい。
僕は泣きそうになるのを堪えながら、空に浮かぶ天使を見つめる。
すると、ケイが演じる天使はこう言ったんだ。
「ヒロ、助けてくれ。ゲーム世界に閉じ込められた」
「え?!」
どうしてそうなった?!
昨夜のケイはゲームなんてしていなかったよ?
飲み会では、お客さんにお酒やオツマミを渡している姿を見かけただけだ。
やっぱり、夢だから突拍子もないことを言い出すんだろうか?
「信じてほしい。これは夢じゃない」
でも、ケイが入ったルウは、真剣な顔で告げる。
僕は彼が冗談を言っているワケじゃないと感じた。
「昨夜俺はベンチで誰かと話していたときに、うなじに何か針のような物が刺さるのを感じた。それから眩暈がしてしばらく意識が途切れた後、気が付くとルウの中に入っていたんだ」
首に針を刺されて眠らされるなんて、まるでどっかの探偵みたいだけど。
ゲームのキャラクターの中に入ってしまうなんて、創作界隈ではよくある話だけど。
どうしてケイがそんなことになったんだろう?
「頼む、ヒロ。【天使と珈琲を】をプレイして、ルウ・シフェルのルートをクリアしてくれ。主人公役を務めたヒロが俺のキャラとエンディングを迎えれば、一緒にゲーム世界から出られるかもしれない」
「でも【天使と珈琲を】は、まだ発売されていないよ?」
ケイの頼みなら引き受けるけど。
まだ手に入らないゲームをプレイすることは無理だと思う。
最後の収録が終わったのが先週くらいだったな。
その時点でゲームのシステムは完成していると聞いた記憶がある。
多分これからデバッガーたちによるチェックが始まる筈だ。
発売予定日は2~3ヶ月後って聞いた気がするよ。
「開発チームから貰ったテストプレイ用があるんだ。後でヒロと2人で遊ぼうと思って寝室の引き出しに入れたから、探してみてくれ。小箱に入った指輪がそれだ」
「分かった。ケイを目覚めさせるためなら、ゲームでも隠しエンディング攻略でも何でもするよ」
ケイがいない世界なんて、耐えられないから。
なにがなんでも、目覚めてもらわないと困る。
こうして、僕はケイを救うため、フルダイブ型BLゲームをプレイすることになった。
「ありがとう。愛してるよ、ヒロ」
そう言って僕と唇を重ねた後、ルウ・シフェルの姿をしたケイは空に溶け込んで見えなくなった。
夢から覚めて目を開けると、相変わらず昏睡状態のケイの寝顔が間近に見える。
病室には付き添い用のサブベッドがあるけど、僕は今までいつもケイと一緒に寝ていたから、昨夜は寂しくてケイのベッドに潜り込んで寝たんだ。
窓を見ると夜明けで、太陽の光がカーテンの隙間から漏れている。
朝食の時間までには戻れるから、ちょっと自宅へ行ってこよう。
寝室の引き出しに指輪が入った小箱があれば、あれは夢じゃなくて本当にケイが報せに来たってことだ。
夢の中で触れた唇の感触は、現実のように温かさや柔らかさがあった。
姿はルウだったけど、ケイの唇とそっくりな感触だったな。
その感触を確かめるように、僕は眠ったままのケイの唇に口付けた。
おとぎ話の姫ならキスで目覚めてくれるんだろうけど。
姫じゃなくて天使になっているケイは、いつもより長いキスをしてあげても、目を覚まさない。
ファーストキスから現在まで全て、僕はケイに捧げている。
僕にとってケイは恩人で、家族で、恋人でもあった。
朝食前に自宅へ行って寝室のサイドテーブルの引き出しを開けたら、空色の箱に入った2つの指輪を見つけた。
昔のゲームはBOX型とか大きな物だったらしいけど。
だんだん小型化されて、今ではアクセサリータイプが主流になっている。
指輪タイプは確か、チャンネルを共有して協力プレイができるんだったかな?
ケイは既にゲーム世界にいるから、同じチャンネルに入るためには2人で指輪を着けるのかな?
そんなことを思いつつ病室に指輪を持ち帰って間もなく、食堂スタッフから内線がかかってきた。
「広瀬さん、お食事はどちらでとられますか?」
「病室にお願いします。ケイはまだ意識が戻ってないから、僕の分だけお願いします」
「分かりました」
運んでもらった朝食を食べ終えてしばらくすると、看護師と担当医が部屋を訪れた。
補液したり、呼吸や心音の状態を調べたりしている看護師や医師に、夢の中でケイが言っていたことを話したほうがいいんだろうか?
「何か変わったことはありませんか?」
「昨日と変わりません。ずっと眠ったままです」
結局、僕は夢のことは話さなかった。
6
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
