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第2章:猫文明とフォース
第16話:北国の三毛猫
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「おお! ようこそ!」
「みんな待っていたんだよ」
「来てくれてありがとう」
「さあ、こちらへ」
仔猫まみれになっている俺に気づいた村猫たちが、次々に家から出てくる。
彼らは、村の中心にある一番大きい家に俺たちを案内してくれた。
イナリが事前に報せているから、村猫たちは治療が必要な者をその大きな家に集めていた。
入ってみると公民館かな? という感じの広い1室があり、畳を敷いた床のド真ん中で数匹の猫たちが丸くなって身を寄せ合っている。
部屋に入った俺に気づくと、丸くなってした猫たちがサッと四方に飛びのいた。
「タマさんのために畳を温めておいたよ!」
「さあ、ここに座って!」
どうやら、北国の猫たち流のもてなし(?)らしい。
ホカホカに温められた畳に座ると、今まで俺の腕の中にいた2匹が、左右へ飛び出して床に降り立った。
「子供たち、タマさんから降りなさい」
「「「はぁい!」」」
村猫の1匹に言われて、仔猫たちもササッと降りていく。
フリーになった俺の前に、ガリガリに痩せた三毛猫が歩み寄ってきた。
『口の中が痛くて喋るのが辛いから、フォースで話しかけるのを許してもらえる?』
その猫が俺の顔を見上げた時、不思議な【声】が頭の中に流れ込んでくる。
フォースを使えば音声無しで相手に言葉を伝えられることを、俺はこのとき知った。
『わたしはルネ。数年前から治らない口内炎を患っているのだけど、こういうのも治るものかしら?』
『治癒と浄化のフォースを使えるようになったばかりで、詳しくは俺もまだ分からないよ』
俺はルネの真似をしてフォースで話しかけてみた。
それは珍しい力ではないようで、頭の中に【返事】が届いても、ルネは驚きもしなかった。
『でも、ルネの体についた病魔が何かは分かるよ。それを浄化したら口内炎も治るかもしれない』
『では、治るか試してみて』
『OK』
俺が承諾すると、ルネはゆっくりした動作で俺の胡坐の中に納まる。
ガリガリに痩せた猫は、ハチロウやイナリの半分にも満たない重さだった。
『これが人間のぬくもり……気持ちいい。このまま逝くのも悪くないかも』
『まてまてまて、そこで永眠しようとしないで』
うっとりと目を閉じて本気で昇天しかける痩せ猫を、俺は慌てて呼び止めた。
ルネを撫でながら、まずは体内のウイルス消去にかかる。
イナリやチンさんと同じFIVだけど、ルネはメス猫だ。
チンさんはオスしか襲わないらしいから、ルネの感染は別ルートなんだろう。
「ウイルスは全部消えたよ」
「よし、じゃあ次は炎症を起こしている口の中の治療だな」
フォースを使ってウイルスの状態を見ているハチロウが言う。
ルネの体内からウイルスは完全に消去できたようだ。
続いて治癒のフォースをルネの体に流し込む。
満足に食事がとれず衰弱しているようなので、エネルギーを送り込むイメージでフォースを使った。
『驚いた。こんなにも早く治してもらえるなんて思ってもみなかったわ』
『って、もう口の中は治ってるから喋れるんじゃない?』
『こっちで慣れてるから、つい使っちゃうみたい』
まだ痩せてはいるけど毛ヅヤが良くなったルネが、ニッコリ笑って目を開けた。
口内炎は治っているから音声会話ができる筈だけど、いつものクセでフォース会話になったらしい。
普通に話をすることに慣れるまで、しばらくかかるかな?
↑ルネのモデル猫はこちら↑
ルネは2023年に老衰で逝った保護猫の名前です。
カクヨムコン短編の最終選考で落選した拙作「虹の橋のたもとで待っている」の猫でもあります。
「みんな待っていたんだよ」
「来てくれてありがとう」
「さあ、こちらへ」
仔猫まみれになっている俺に気づいた村猫たちが、次々に家から出てくる。
彼らは、村の中心にある一番大きい家に俺たちを案内してくれた。
イナリが事前に報せているから、村猫たちは治療が必要な者をその大きな家に集めていた。
入ってみると公民館かな? という感じの広い1室があり、畳を敷いた床のド真ん中で数匹の猫たちが丸くなって身を寄せ合っている。
部屋に入った俺に気づくと、丸くなってした猫たちがサッと四方に飛びのいた。
「タマさんのために畳を温めておいたよ!」
「さあ、ここに座って!」
どうやら、北国の猫たち流のもてなし(?)らしい。
ホカホカに温められた畳に座ると、今まで俺の腕の中にいた2匹が、左右へ飛び出して床に降り立った。
「子供たち、タマさんから降りなさい」
「「「はぁい!」」」
村猫の1匹に言われて、仔猫たちもササッと降りていく。
フリーになった俺の前に、ガリガリに痩せた三毛猫が歩み寄ってきた。
『口の中が痛くて喋るのが辛いから、フォースで話しかけるのを許してもらえる?』
その猫が俺の顔を見上げた時、不思議な【声】が頭の中に流れ込んでくる。
フォースを使えば音声無しで相手に言葉を伝えられることを、俺はこのとき知った。
『わたしはルネ。数年前から治らない口内炎を患っているのだけど、こういうのも治るものかしら?』
『治癒と浄化のフォースを使えるようになったばかりで、詳しくは俺もまだ分からないよ』
俺はルネの真似をしてフォースで話しかけてみた。
それは珍しい力ではないようで、頭の中に【返事】が届いても、ルネは驚きもしなかった。
『でも、ルネの体についた病魔が何かは分かるよ。それを浄化したら口内炎も治るかもしれない』
『では、治るか試してみて』
『OK』
俺が承諾すると、ルネはゆっくりした動作で俺の胡坐の中に納まる。
ガリガリに痩せた猫は、ハチロウやイナリの半分にも満たない重さだった。
『これが人間のぬくもり……気持ちいい。このまま逝くのも悪くないかも』
『まてまてまて、そこで永眠しようとしないで』
うっとりと目を閉じて本気で昇天しかける痩せ猫を、俺は慌てて呼び止めた。
ルネを撫でながら、まずは体内のウイルス消去にかかる。
イナリやチンさんと同じFIVだけど、ルネはメス猫だ。
チンさんはオスしか襲わないらしいから、ルネの感染は別ルートなんだろう。
「ウイルスは全部消えたよ」
「よし、じゃあ次は炎症を起こしている口の中の治療だな」
フォースを使ってウイルスの状態を見ているハチロウが言う。
ルネの体内からウイルスは完全に消去できたようだ。
続いて治癒のフォースをルネの体に流し込む。
満足に食事がとれず衰弱しているようなので、エネルギーを送り込むイメージでフォースを使った。
『驚いた。こんなにも早く治してもらえるなんて思ってもみなかったわ』
『って、もう口の中は治ってるから喋れるんじゃない?』
『こっちで慣れてるから、つい使っちゃうみたい』
まだ痩せてはいるけど毛ヅヤが良くなったルネが、ニッコリ笑って目を開けた。
口内炎は治っているから音声会話ができる筈だけど、いつものクセでフォース会話になったらしい。
普通に話をすることに慣れるまで、しばらくかかるかな?
↑ルネのモデル猫はこちら↑
ルネは2023年に老衰で逝った保護猫の名前です。
カクヨムコン短編の最終選考で落選した拙作「虹の橋のたもとで待っている」の猫でもあります。
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