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第4章:残されたモノ
第36話:ミジュンの唐揚げ
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イナリがドッサリ穫ったのは、沖縄ではミジュンと呼ばれていた小魚だった。
ミジュン(学名:Herklotsichthys quadrimaculatus)
条鰭綱ニシン科の海水魚。
体長は最大25cm(平均10cm前後)で、稚魚は動物プランクトン(特に橈脚類)、成魚となると毛顎動物のほか、多毛類や小型のエビや魚類などを捕食する。
沖縄では安価な大衆魚として流通するほか、カツオ漁などでの釣餌としても利用される。
「ミジュンか、昔は唐揚げをよく食べていたよ」
「カラアゲ食ってみたいな。これで作れるか?」
「うん。じゃあ今夜は唐揚げを作ろう」
「お~!」
ミジュンは唐揚げが美味い。
俺とイナリはミジュン数十匹を手土産に、研究所へ帰還した。
「この油を使うのなら、問題なく食べられるよ」
「じゃあ、調味料不使用で揚げれば大丈夫だね」
ハチロウに調べてもらったサラダ油は、猫たちも口にできるものと判明。
肉食動物である猫は、人間よりも多くのタンパク質や脂質を必要とするらしい。
油(脂質)も猫にとって大切な栄養素の一つだ。
「カタクリコ、か。この粉も無害だね。水で溶いてスープに入れるとトロッとするのか。お年寄りにいいかもしれないな」
片栗粉もハチロウが調べてくれて、猫たちに無害な食品と分かった。
食事にとろみを付けて食べやすくして、嚥下機能が低下した老猫たちの食事を助けることができるそうだよ。
今回はとろみに使うわけじゃないけどね。
「揚げ物するの? フライヤーならいいのがあるわよ」
と、ケイトが教えてくれたのは、二千年前の設備が健在の「ゆんたく OISTレストラン」。
そこでフライヤーを拝借して、ミジュンの唐揚げ作りスタート!
ウロコとワタを取り、自分用だけ軽く塩を振り、猫たち用は味付けなしで。
小さい魚を数十匹も1人で下処理するのは大変なので、みんなに手伝ってもらった。
(ミノルとアババはつまみ食いするから手伝わせない方がいいとのことで、研究所に居残り中)
下処理が済んだら、溶き卵と片栗粉をまぶして、熱したサラダ油にIN!
頭から尻尾まで骨ごと食べられるように、低温でじっくりカラッと揚げるのがコツだ。
実家にいた頃は、ミジュンが手に入ると、母を手伝って唐揚げ作りをしたなぁ。
フライヤーでミジュンを揚げながら、俺はほんの少しだけノスタルジーを感じた。
俺の父はミジュンの唐揚げをツマミに泡盛を呑むのが好きだった。
揚げたてのミジュンを口に放り込み、氷を入れた泡盛をちびちび飲みつつ、「お前も大人になればこの最高の組み合わせが楽しめるぞ」って言っていたな。
残念ながら俺の肉体年齢は18歳で止まっているから、今も酒は呑めないけど。
俺はコールドスリープの被験者になって以降、父には会っていない。
大学入試に落ちてからの就活がハロワ1回、最初に目についた求人情報で即決だったのは、早く働けと父にうるさく言われるのが嫌だったからだ。
「今度は10年も眠るんだから、御両親に顔を見せてからにしたら?」
クリストファーはそう言ってくれたけど。
ひたすら凍って寝てるだけの簡単なお仕事(?)を知られたら、父の説教を食らう予感しかない。
仕事について話すのが億劫で、結局実家には一度も帰らずにコールドスリープに入った。
もしも人類が滅亡せずに10年後に目覚めていたとしても、会いに行かなかっただろうな。
まさか、自分が眠っている間に両親が「消滅」するなんて思わなかった。
まだ行ったことがない二千年後の実家付近、両親の弔いに行ってみるかな?
【第36話の裏話】
ミジュンの唐揚げは作者の大好物でもあります。
画像は弁当屋を営む知人から頂きました。
沖縄の総菜コーナーに行くとミジュンの唐揚げが売っていることがよくあります。
揚げたてがイチバンですが、冷めても美味しい唐揚げです。
ミジュン(学名:Herklotsichthys quadrimaculatus)
条鰭綱ニシン科の海水魚。
体長は最大25cm(平均10cm前後)で、稚魚は動物プランクトン(特に橈脚類)、成魚となると毛顎動物のほか、多毛類や小型のエビや魚類などを捕食する。
沖縄では安価な大衆魚として流通するほか、カツオ漁などでの釣餌としても利用される。
「ミジュンか、昔は唐揚げをよく食べていたよ」
「カラアゲ食ってみたいな。これで作れるか?」
「うん。じゃあ今夜は唐揚げを作ろう」
「お~!」
ミジュンは唐揚げが美味い。
俺とイナリはミジュン数十匹を手土産に、研究所へ帰還した。
「この油を使うのなら、問題なく食べられるよ」
「じゃあ、調味料不使用で揚げれば大丈夫だね」
ハチロウに調べてもらったサラダ油は、猫たちも口にできるものと判明。
肉食動物である猫は、人間よりも多くのタンパク質や脂質を必要とするらしい。
油(脂質)も猫にとって大切な栄養素の一つだ。
「カタクリコ、か。この粉も無害だね。水で溶いてスープに入れるとトロッとするのか。お年寄りにいいかもしれないな」
片栗粉もハチロウが調べてくれて、猫たちに無害な食品と分かった。
食事にとろみを付けて食べやすくして、嚥下機能が低下した老猫たちの食事を助けることができるそうだよ。
今回はとろみに使うわけじゃないけどね。
「揚げ物するの? フライヤーならいいのがあるわよ」
と、ケイトが教えてくれたのは、二千年前の設備が健在の「ゆんたく OISTレストラン」。
そこでフライヤーを拝借して、ミジュンの唐揚げ作りスタート!
ウロコとワタを取り、自分用だけ軽く塩を振り、猫たち用は味付けなしで。
小さい魚を数十匹も1人で下処理するのは大変なので、みんなに手伝ってもらった。
(ミノルとアババはつまみ食いするから手伝わせない方がいいとのことで、研究所に居残り中)
下処理が済んだら、溶き卵と片栗粉をまぶして、熱したサラダ油にIN!
頭から尻尾まで骨ごと食べられるように、低温でじっくりカラッと揚げるのがコツだ。
実家にいた頃は、ミジュンが手に入ると、母を手伝って唐揚げ作りをしたなぁ。
フライヤーでミジュンを揚げながら、俺はほんの少しだけノスタルジーを感じた。
俺の父はミジュンの唐揚げをツマミに泡盛を呑むのが好きだった。
揚げたてのミジュンを口に放り込み、氷を入れた泡盛をちびちび飲みつつ、「お前も大人になればこの最高の組み合わせが楽しめるぞ」って言っていたな。
残念ながら俺の肉体年齢は18歳で止まっているから、今も酒は呑めないけど。
俺はコールドスリープの被験者になって以降、父には会っていない。
大学入試に落ちてからの就活がハロワ1回、最初に目についた求人情報で即決だったのは、早く働けと父にうるさく言われるのが嫌だったからだ。
「今度は10年も眠るんだから、御両親に顔を見せてからにしたら?」
クリストファーはそう言ってくれたけど。
ひたすら凍って寝てるだけの簡単なお仕事(?)を知られたら、父の説教を食らう予感しかない。
仕事について話すのが億劫で、結局実家には一度も帰らずにコールドスリープに入った。
もしも人類が滅亡せずに10年後に目覚めていたとしても、会いに行かなかっただろうな。
まさか、自分が眠っている間に両親が「消滅」するなんて思わなかった。
まだ行ったことがない二千年後の実家付近、両親の弔いに行ってみるかな?
【第36話の裏話】
ミジュンの唐揚げは作者の大好物でもあります。
画像は弁当屋を営む知人から頂きました。
沖縄の総菜コーナーに行くとミジュンの唐揚げが売っていることがよくあります。
揚げたてがイチバンですが、冷めても美味しい唐揚げです。
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