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第6章:秘められたもの
第60話:研究者の願い
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「タマ、君は古代文字が読めるそうだね。是非見てほしい物がある」
素晴らしい朝焼けを見せてくれた後、シンバ様は俺を王宮の書庫へ案内してくれた。
棚に並ぶ書物の背表紙の文字は、マヤー王国やピカリャー王国のものとは異なる。
俺はそれを読むことができた。
二千年前とは違い、今の時代では文字を書くのにフォースを使う。
フォースは「思念」の力、思いが通じ合えば外国の文字も理解できるらしい。
俺はケニアに着いて早々にライオンたちを治療したり、ワニと戦う姫様をサポートしたりってことがあったので、ライオンたちのフォース文字が読めるようになったようだ。
「二千年前に書かれた文字、何を伝えようとしているのか、私も知りたいの」
フォースが完全回復して元気そうなエルザ姫が、父王のすぐ後ろを歩きながら、時折こちらを振り返って笑みを見せる。
ちょっとした図書館並みに広い書庫の奥まで進むと、水晶みたいな透明な板に護られた文書らしき物が見えてきた。
「手紙?」
冒頭の文字列を見て、英語で書かれた手紙だと察した。
To dear you(親愛なるあなたへ)と書いてあるけど、誰に宛てたものだろうか?
「私の祖先が洞窟で見つけたと伝えられている古代の異物だよ。読んでみてくれ」
シンバ様が言うので、俺は二千年以上前に書かれたと思われる手紙を読んでみた。
【いつの日かこれを読む、未来の知的生命体に伝えておこう】
最初の1文は、そう書いてある。
マヤー王国に保管されていた研究ノートと同じ筆跡、おそらくこれを書いたのは同じ人だろう。
研究ノートは専門用語が多くて難解だったけど、これはメッセージらしく、それほど難しくはない。
俺はシンバ様とエルザ姫にも分かるように、手紙の内容を翻訳して読み上げた。
◇◆◇◆◇
人類は愚かで、自ら滅びに向かってしまった。
某国が人間だけを殺す兵器を開発したことを知りながら、私は猫たちのフォースの開発をわざと遅らせている。
軍事目的で研究費用を提供されたが、私は猫たちを戦争の道具になどしたくはなかった。
ネコ科動物だけに知能とフォースをもたらす遺伝子は、人類が滅びた後に覚醒するように組み込んでおいた。
誰かがこのノートを読む頃には、私も含めて人類は滅亡しているだろう。
新たな知的生命体たちよ、どうかこの惑星を大切にしてほしい。
君たちが、人類と同じ轍を踏まぬことを願う。
◇◆◇◆◇
「この人、まさか生き残った人類がこれを読むとは予想もしてなかったでしょうね」
「タマの存在は、かなり想定外なのだろう」
「二千年も生きているなんて、不思議だわ」
「ずっと眠っていたから、そんなに長い時が経った気はしないですよ」
手紙を読み終えた俺は、シンバ様やエルザ姫と話しながら、猫文明の生みの親ともいうべき人のことを考えていた。
猫たちを軍事利用されたくなくて、覚醒を遅らせたという研究者。
どんな思いで人類最後の時を迎えたんだろうか?
素晴らしい朝焼けを見せてくれた後、シンバ様は俺を王宮の書庫へ案内してくれた。
棚に並ぶ書物の背表紙の文字は、マヤー王国やピカリャー王国のものとは異なる。
俺はそれを読むことができた。
二千年前とは違い、今の時代では文字を書くのにフォースを使う。
フォースは「思念」の力、思いが通じ合えば外国の文字も理解できるらしい。
俺はケニアに着いて早々にライオンたちを治療したり、ワニと戦う姫様をサポートしたりってことがあったので、ライオンたちのフォース文字が読めるようになったようだ。
「二千年前に書かれた文字、何を伝えようとしているのか、私も知りたいの」
フォースが完全回復して元気そうなエルザ姫が、父王のすぐ後ろを歩きながら、時折こちらを振り返って笑みを見せる。
ちょっとした図書館並みに広い書庫の奥まで進むと、水晶みたいな透明な板に護られた文書らしき物が見えてきた。
「手紙?」
冒頭の文字列を見て、英語で書かれた手紙だと察した。
To dear you(親愛なるあなたへ)と書いてあるけど、誰に宛てたものだろうか?
「私の祖先が洞窟で見つけたと伝えられている古代の異物だよ。読んでみてくれ」
シンバ様が言うので、俺は二千年以上前に書かれたと思われる手紙を読んでみた。
【いつの日かこれを読む、未来の知的生命体に伝えておこう】
最初の1文は、そう書いてある。
マヤー王国に保管されていた研究ノートと同じ筆跡、おそらくこれを書いたのは同じ人だろう。
研究ノートは専門用語が多くて難解だったけど、これはメッセージらしく、それほど難しくはない。
俺はシンバ様とエルザ姫にも分かるように、手紙の内容を翻訳して読み上げた。
◇◆◇◆◇
人類は愚かで、自ら滅びに向かってしまった。
某国が人間だけを殺す兵器を開発したことを知りながら、私は猫たちのフォースの開発をわざと遅らせている。
軍事目的で研究費用を提供されたが、私は猫たちを戦争の道具になどしたくはなかった。
ネコ科動物だけに知能とフォースをもたらす遺伝子は、人類が滅びた後に覚醒するように組み込んでおいた。
誰かがこのノートを読む頃には、私も含めて人類は滅亡しているだろう。
新たな知的生命体たちよ、どうかこの惑星を大切にしてほしい。
君たちが、人類と同じ轍を踏まぬことを願う。
◇◆◇◆◇
「この人、まさか生き残った人類がこれを読むとは予想もしてなかったでしょうね」
「タマの存在は、かなり想定外なのだろう」
「二千年も生きているなんて、不思議だわ」
「ずっと眠っていたから、そんなに長い時が経った気はしないですよ」
手紙を読み終えた俺は、シンバ様やエルザ姫と話しながら、猫文明の生みの親ともいうべき人のことを考えていた。
猫たちを軍事利用されたくなくて、覚醒を遅らせたという研究者。
どんな思いで人類最後の時を迎えたんだろうか?
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