72 / 92
第7章:二千年前の願い
第64話:亡国の跡地
しおりを挟む
俺はケニアで見た手紙の内容を、ケイトにも伝えた。
クリストファは守護霊として俺と一緒に現地に行けたけど、ケイトはOISTに残っていたので手紙を見ていない。
『良い人ね』
話を聞いたケイトの第一声はそれだった。
彼女も猫好きだ。
『私も同じ立場なら、覚醒タイミングを遅らせたと思う』
ケイトはそう言って微笑む。
生前の彼女は【猫様の下僕】だったらしい。
猫様の下僕とは、自分の生活よりも飼い猫の生活を優先する者だとか。
猫を兵器として戦場や敵国に送り込むなんてとんでもない、そんなことになるくらいなら人体破壊兵器で死んだ方がマシだと彼女は言う。
実際彼女はもう死んでいるワケだけど。
その裏側に猫好きの科学者がいたと知り、ケイトは満足そうに笑った。
◇◆◇◆◇
それから数日後。
俺は遺跡調査チームのメンバーと共に、某国の研究施設跡地を訪れた。
他国の人類を消滅させた直後に、隣国の自動反撃システムの総攻撃を受けて滅びたという閉鎖的な国。
世界で唯一、人類以外にも被害が及んだ地域の遺跡は、ほぼ粉々になっていて古代の文明を調べられる状態ではなさそうな気がする。
そこには、人類の文明が滅びた後にはえたと思われる草木が一面に生い茂っていた。
……夏草や兵どもが夢の跡……
松尾芭蕉の名句がピッタリな風景。
杜甫の「国破れて山河あり、城春にして草木深し」でもいいかもしれない。
そこにどんな都市があったのか、今となっては全く分からなくなっている。
「ここに建物があったなんて想像つかないレベルの更地だね」
人工物らしきものが見当たらない大草原を見回して、俺は感想を述べた。
今日ここに来たのは、他国を滅ぼそうとして自らも滅びた国が、今どうなっているのか見てみたかったから。
自然界にダメージを与える核兵器ではなく、人間だけを消滅させるなんてトンデモ発明をした科学者がいた国。
何か遺物があるか探しに来たんだけど、こうも大自然が広がっていると見つかる気がしない。
『隣国の人間を消滅させたら機械に総攻撃されるって、予想しなかったのかなぁ?』
俺の隣で姿を現しているクリストファが言う。
この国の人々の霊が残っていないか探ってもらったけど、誰もいないみたいだ。
昔は怪談とかで数百年前の怨霊が~みたいな話があったのに、ここには怨霊も残ってなかった。
もしかして、死んでから二千年も経つと成仏しちゃうのかな?
クリストファも【霊魂の保存研究】が無かったら、今ここにはいなかっただろうね。
「フォースを使って探ってみても、何もひっかからないねぇ」
「一体どんな攻撃を受けたんだろう?」
遺跡調査チームの面々も首を傾げている。
猫たちは、古代の大量破壊兵器を知らない。
遥か昔、1発の爆弾が都市を壊滅させたことがある。
この国を滅ぼしたものは、それよりも破壊力と範囲が大きいものだったに違いない。
……君たちが、人類と同じ轍を踏まぬことを願う……
猫たちにフォースを与えた人物の言葉が、俺の脳裏に浮かんだ。
クリストファは守護霊として俺と一緒に現地に行けたけど、ケイトはOISTに残っていたので手紙を見ていない。
『良い人ね』
話を聞いたケイトの第一声はそれだった。
彼女も猫好きだ。
『私も同じ立場なら、覚醒タイミングを遅らせたと思う』
ケイトはそう言って微笑む。
生前の彼女は【猫様の下僕】だったらしい。
猫様の下僕とは、自分の生活よりも飼い猫の生活を優先する者だとか。
猫を兵器として戦場や敵国に送り込むなんてとんでもない、そんなことになるくらいなら人体破壊兵器で死んだ方がマシだと彼女は言う。
実際彼女はもう死んでいるワケだけど。
その裏側に猫好きの科学者がいたと知り、ケイトは満足そうに笑った。
◇◆◇◆◇
それから数日後。
俺は遺跡調査チームのメンバーと共に、某国の研究施設跡地を訪れた。
他国の人類を消滅させた直後に、隣国の自動反撃システムの総攻撃を受けて滅びたという閉鎖的な国。
世界で唯一、人類以外にも被害が及んだ地域の遺跡は、ほぼ粉々になっていて古代の文明を調べられる状態ではなさそうな気がする。
そこには、人類の文明が滅びた後にはえたと思われる草木が一面に生い茂っていた。
……夏草や兵どもが夢の跡……
松尾芭蕉の名句がピッタリな風景。
杜甫の「国破れて山河あり、城春にして草木深し」でもいいかもしれない。
そこにどんな都市があったのか、今となっては全く分からなくなっている。
「ここに建物があったなんて想像つかないレベルの更地だね」
人工物らしきものが見当たらない大草原を見回して、俺は感想を述べた。
今日ここに来たのは、他国を滅ぼそうとして自らも滅びた国が、今どうなっているのか見てみたかったから。
自然界にダメージを与える核兵器ではなく、人間だけを消滅させるなんてトンデモ発明をした科学者がいた国。
何か遺物があるか探しに来たんだけど、こうも大自然が広がっていると見つかる気がしない。
『隣国の人間を消滅させたら機械に総攻撃されるって、予想しなかったのかなぁ?』
俺の隣で姿を現しているクリストファが言う。
この国の人々の霊が残っていないか探ってもらったけど、誰もいないみたいだ。
昔は怪談とかで数百年前の怨霊が~みたいな話があったのに、ここには怨霊も残ってなかった。
もしかして、死んでから二千年も経つと成仏しちゃうのかな?
クリストファも【霊魂の保存研究】が無かったら、今ここにはいなかっただろうね。
「フォースを使って探ってみても、何もひっかからないねぇ」
「一体どんな攻撃を受けたんだろう?」
遺跡調査チームの面々も首を傾げている。
猫たちは、古代の大量破壊兵器を知らない。
遥か昔、1発の爆弾が都市を壊滅させたことがある。
この国を滅ぼしたものは、それよりも破壊力と範囲が大きいものだったに違いない。
……君たちが、人類と同じ轍を踏まぬことを願う……
猫たちにフォースを与えた人物の言葉が、俺の脳裏に浮かんだ。
30
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
