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第78話:愛歌鳥

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「こんなのリユが見たら卒倒しちゃうよ」
「早く片付けよう」

そんな事を話しつつ、お亡くなりのヘビ群を片付ける俺とモチ。
モチが倒した巨大ヘビは、既に収納済だ。

「ありがとう~、こんなのブラブラしたままじゃ、夜眠れないところだったわ」

ホッとした様子でカジュちゃんが言う。

確かに、こんな大きなヘビが何匹も天井からぶら下がってる中で、平然と眠れる猛者はなかなかいないと思うよ。

「よし、これで全部片付いたな」
「うん、スッキリしたね」

天井に突き刺さったヘビは、全て異空間倉庫ストレージに収納して撤去した。
異物が無くなった天井は、すぐに修復し始める。

「そういやカジュちゃん、タマゴかヒヨコ育ててたりする?」
「うん。この子だよ」
「ピヨッ?」

ヘビを撤去し終えたところで俺は聞いてみる。
カジュちゃんが机の引き出しを開けて、ピンク色のヒヨコを見せてくれた。

「リユちゃんのと同じ種類の、鳥さんがくれたタマゴだよ」
「手の上でタマゴ産んでったの?」
「うん」
「ピヨ?」

話してたら、ヒヨコが可愛く首を傾げた。

ピンク色といっても夜店のヒヨコみたいな不自然な濃い色ではなく、自然な桃の花のような淡い色。

愛歌鳥ルベライトだ。

禁書で見た鳥の種類が頭に浮かぶ。
その鳥は確か、澄んだ伸びやかな歌声で体力を回復させたり、身体能力を上げたり出来ると書いてあった。

リユが育ててるヒヨコの色違いみたいな、フワフワ、ぽわぽわの丸い生き物。
これは多分、愛歌鳥ルベライトと呼ばれる神鳥の、ヒナだと思う。

「さっきロッサ先生に聞いたんだけど、リユのヒヨコは神鳥のヒナなんだって。この子も同じかもしれない」
「そっかあ、そんなすごい子なのね」
「ピヨピヨピヨ」

自分の事を話してると分かってるのかいないのか、ヒヨコは口を開けて羽根をプルプル震わせてメシくれアピールする。
とりあえず可愛いのは間違いない。

「はい、ゴハンだよ」

と言いながらカジュちゃんがヒヨコにあげるのは、粟玉という小鳥のヒナ用の餌。
動植物学部の購買で買える品で、ほとんどの鳥のヒナにあげられる。
専用の小さなスプーンですくって口元へ持って行くと、ヒナは勢いよく食いついてモグモグしてる。
手乗りインコのヒナみたいだな。

「他にこのヒヨコの仲間を育ててる人はいる?」
「あとはネーさんくらいかな」

カジュちゃんが言う「ネーさん」は、山根さんの事だ。

「それは襲う奴の心配した方がいいかも」
「怖すぎて泣いちゃうかもね……ヘビが」

モチが半目になって言う。
カジュちゃんも苦笑した。

確かに。

山根さんのペットを食おうとしたら、どんな恐ろしい目に遭うか。

ヘビに同情しておこう。
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