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第79話:ネーさんと白ヒヨコ

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山根さんのヒヨコを狙ったりしたら、ヘビはきっと地獄を見るよ。
俺たちがそんな事を思ったその時……

「うわぁぁぁ! やめろ! やめてくれぇぇぇ!!!」

……男性の絶叫が響いた。

「「「え?!」」」

モチ、俺、カジュちゃんの驚く声がハモる。

声はすぐ近くから聞こえた。

「行ってみよう!」

3人で駆け付けて見ると、場所は予想通り山根さんの部屋だ。

でも、山根さんの恐怖を味わっていたのは、予想と違う奴だった。

襲いに来て返り討ちに遭ってる真っ最中なのは、ヘビじゃない。

身体のあちこちに氷の塊をくっつけて、怯え切っているのは知らない男子生徒だ。
高校生くらいに見える、白い髪に赤い瞳の男子が、尻もちをついた状態でジリジリ後退してる。
猫人じゃないから、我が社の人間かな?
どこの部署だろう?
黒髪じゃないから、俺たちと同じ転生者だろうか?

「許可も無くあたしの部屋に入るなんて、いい度胸ね」

周囲に雪の結晶が舞う中、銀髪の美少女が凄む。
ヴィジュアル的には綺麗なんだけど、放つオーラがめちゃくちゃ怖い!

山根さんの後ろ、机の引き出しからヒョッコリ顔を出してるのは純白のヒヨコ。
真っ白フワフワぽわぽわ丸い体型の、これまた可愛い生き物だ。
でもこれまで見た2羽とは少し違うような。
リユとカジュちゃんのヒヨコは頭部側面に目がついてる、ハトやスズメみたいな顔。
山根さんのヒヨコは顔の正面部分に目がついてる、フクロウやミミズクみたいな顔だ。
凄まれてる相手はもちろん、見てるだけの俺たちすらビビる中、白いヒヨコは平然としてる。

「覚えておきなさい。あたしの部屋は男子立ち入り禁止よ」

山根さんの周りで吹雪が渦巻く。
ズイッと踏み出すと、白髪の男子生徒がジリッと後退る。

駆け付けてみたけど、部屋まで入らなくてヨカッタ。
モチも同じ事を思ったに違いない。

「罰として、しばらく凍っててもらうわよ。……絶対零度アブソリュートゼロ!」

山根さんが魔法使うとこ初めて見た。
モチの最上位氷魔法マヒャデドスの本家なだけあって、迫力も威力も半端ない。

可哀想だけどしばらく凍ってるしかないね。
半日くらいしたら江原を呼んで蘇生してもらうよ。

氷の彫像になっちゃった男子生徒を憐れんでいたら……

パキン、パリパリパリッ

……氷にヒビが入り、それが彫像全体に広がる。

「……え?」

山根さんが驚いてる目の前で、氷の彫像は砕け散り、巨大な白蛇が現れた!

「小娘、よくも脅かしてくれたな……」

白蛇の赤い瞳が、不気味な光を放ち始める。

直感的にヤバイと思い、俺は風神の息吹ルドラをONにした。
対象は、俺と山根さんだ。

白蛇の尾が、コマ送りのように動く。
音速状態の俺の目にそう見えるって事は相当な速さだ。
尻尾は山根さんを狙ってる。

「ネーさん逃げて!」
「え? 何?」

声をかけたけど、いきなり加速魔法がかかった山根さんは混乱していた。

「すいません、後でグーで殴ってもいいから部屋に入らせて!」
「?!」

一応断りを入れて、俺は室内に突入する。
困惑してる山根さんをヒョイッと抱えて、机の引き出しにいるヒヨコを箱ごと山根さんに渡して、部屋の外へ退避!
尻尾が届かない場所まで移動してから、風神の息吹ルドラをOFF。

ドカッ! バキシバキバキッ!

白蛇の尻尾が、山根さんがいた筈の場所と後ろの机に打ち下ろされた。

「「ネーさん!」」
「こっちにいるよ」
「「えっ?!」」

脱出に気付かず心配して叫んだカジュちゃん&モチに、背後から声をかけたらめっちゃ驚かれた。
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