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第5章:異国観光
第50話:海神が力を貸す治癒魔法
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海賊の攻撃を受けたユノさんの船は、帆布が燃やされてしまったので航行が困難になっている。
船員たちは弓矢による攻撃で重傷を負っていて、死にかけている人もいた。
「こりゃ酷いな……」
「とにかく止血を!」
モントル号の船医さんと看護師さんが、急いで手当を始める。
冒険者のバランさんたちも応急処置はできるので、手分けして救命活動を開始した。
冒険者学園では救命活動も習うので、ミュスクルさんたちも救命活動に参加している。
スバルも手伝おうと、怪我人たちがいる船に乗り込んだ。
「ハド! 目を開けて! 死なないで!」
悲鳴に近い女性の叫び声。
スバルも僕もその声には聞き覚えがあった。
声がする方を振り向いてみたら、赤いドレスの女性が甲板の上に座り込んでいる。
娼館の主、この船のオーナーでもあるユノさんだ。
ユノさんは1人の少年を膝に乗せて抱き、化粧が崩れるのも構わず涙を流している。
その少年が誰か、すぐに分かった。
(ハインドか。夏休みだし、親の持ち船だし、いても不思議じゃないか)
僕をイジメていた張本人の1人。
弓の扱いが得意だから、海賊との戦闘に参加していたんだろう。
海賊たちは女性のみ残すため、戦力のある男性なら子供でも容赦しなかったらしい。
「ハド!」
必死で呼びかけているユノさんのドレスは元々赤いので、血が付いても遠目には目立たない。
でも、彼女の周囲に広がる大量の鮮血を見れば、ハインドの重傷は明らかだった。
ハインドは薄く目を開けているけどピクリとも動かず、グッタリしていて生死は分からない。
(別に隠す必要は無いし、使っとくか治癒魔法)
スバルは心の中で呟いた。
彼の魂が僕の身体に憑依する前、女神リイン様は能力を隠せとは言ってなかったものね。
ユノさんは歩み寄るスバルに気付いて、ハッと顔を上げた。
以前、ユノさんはスライムガードの反撃で負傷したときに、スバルの治癒魔法を受けている。
息子を助けたい一心で、ユノさんは縋るような目を向けてきた。
「お願い……この子を助けて……」
スバルが近くまで行って屈むと、ユノさんは震える声で呟く。
間近で見たハインドは失血で蒼白な顔をしていて、微かに開いた両目は虚ろだった。
よく見ると怪我をしているのは胸の辺りで、そこから赤い泉のように鮮血が噴き出ている。
「治癒」
スバルはハインドの胸に片手を翳して、治癒魔法を起動した。
翳した片手から金色の光の粒子が湧き出て、ハインドの胸の辺りを覆う。
『ふむ、治療か。もう心臓は止まっているようだが、私の力を足せば蘇生できるだろう』
再び、ラメル様の声が聞こえた。
スバルの片手から放たれる金色の光に、水色の光が混ざり始める。
光×水属性(混合・上位変換):蘇生回復
致命傷だったハインドの傷が、急速に癒えていく。
矢が貫通したらしい心臓の穴が塞がり、出血が止まり、蒼白だった顔色に血の気が戻ってきた。
虚ろだった両目が、しっかり開いてユノさんを見つめる。
「……母さん? なんで泣いてるの……?」
不思議そうにユノさんに問いかけるハインドと、2人から離れて歩き出すスバルに、人々の驚きの視線が集まる。
傷を癒す魔法でも珍しいのに、心臓が止まった人を生き返らせるなんて……。
さっきの召喚魔法に続く驚きに、みんな言葉も無かった。
『ラメル様、他にも瀕死の人たちがいるので、範囲魔法に力を貸してもらえますか?』
『勿論だ』
スバルは心の中でラメル様に問いかける。
承諾の声が聞こえると、スバルは魔法を起動した。
光×水属性(混合・範囲・上位変換):癒しの海
金色と水色が入り混じる光が、甲板全体を覆う。
その場にいた全ての怪我人たちの傷を光が優しく包み、完全に治癒していった。
船員たちは弓矢による攻撃で重傷を負っていて、死にかけている人もいた。
「こりゃ酷いな……」
「とにかく止血を!」
モントル号の船医さんと看護師さんが、急いで手当を始める。
冒険者のバランさんたちも応急処置はできるので、手分けして救命活動を開始した。
冒険者学園では救命活動も習うので、ミュスクルさんたちも救命活動に参加している。
スバルも手伝おうと、怪我人たちがいる船に乗り込んだ。
「ハド! 目を開けて! 死なないで!」
悲鳴に近い女性の叫び声。
スバルも僕もその声には聞き覚えがあった。
声がする方を振り向いてみたら、赤いドレスの女性が甲板の上に座り込んでいる。
娼館の主、この船のオーナーでもあるユノさんだ。
ユノさんは1人の少年を膝に乗せて抱き、化粧が崩れるのも構わず涙を流している。
その少年が誰か、すぐに分かった。
(ハインドか。夏休みだし、親の持ち船だし、いても不思議じゃないか)
僕をイジメていた張本人の1人。
弓の扱いが得意だから、海賊との戦闘に参加していたんだろう。
海賊たちは女性のみ残すため、戦力のある男性なら子供でも容赦しなかったらしい。
「ハド!」
必死で呼びかけているユノさんのドレスは元々赤いので、血が付いても遠目には目立たない。
でも、彼女の周囲に広がる大量の鮮血を見れば、ハインドの重傷は明らかだった。
ハインドは薄く目を開けているけどピクリとも動かず、グッタリしていて生死は分からない。
(別に隠す必要は無いし、使っとくか治癒魔法)
スバルは心の中で呟いた。
彼の魂が僕の身体に憑依する前、女神リイン様は能力を隠せとは言ってなかったものね。
ユノさんは歩み寄るスバルに気付いて、ハッと顔を上げた。
以前、ユノさんはスライムガードの反撃で負傷したときに、スバルの治癒魔法を受けている。
息子を助けたい一心で、ユノさんは縋るような目を向けてきた。
「お願い……この子を助けて……」
スバルが近くまで行って屈むと、ユノさんは震える声で呟く。
間近で見たハインドは失血で蒼白な顔をしていて、微かに開いた両目は虚ろだった。
よく見ると怪我をしているのは胸の辺りで、そこから赤い泉のように鮮血が噴き出ている。
「治癒」
スバルはハインドの胸に片手を翳して、治癒魔法を起動した。
翳した片手から金色の光の粒子が湧き出て、ハインドの胸の辺りを覆う。
『ふむ、治療か。もう心臓は止まっているようだが、私の力を足せば蘇生できるだろう』
再び、ラメル様の声が聞こえた。
スバルの片手から放たれる金色の光に、水色の光が混ざり始める。
光×水属性(混合・上位変換):蘇生回復
致命傷だったハインドの傷が、急速に癒えていく。
矢が貫通したらしい心臓の穴が塞がり、出血が止まり、蒼白だった顔色に血の気が戻ってきた。
虚ろだった両目が、しっかり開いてユノさんを見つめる。
「……母さん? なんで泣いてるの……?」
不思議そうにユノさんに問いかけるハインドと、2人から離れて歩き出すスバルに、人々の驚きの視線が集まる。
傷を癒す魔法でも珍しいのに、心臓が止まった人を生き返らせるなんて……。
さっきの召喚魔法に続く驚きに、みんな言葉も無かった。
『ラメル様、他にも瀕死の人たちがいるので、範囲魔法に力を貸してもらえますか?』
『勿論だ』
スバルは心の中でラメル様に問いかける。
承諾の声が聞こえると、スバルは魔法を起動した。
光×水属性(混合・範囲・上位変換):癒しの海
金色と水色が入り混じる光が、甲板全体を覆う。
その場にいた全ての怪我人たちの傷を光が優しく包み、完全に治癒していった。
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