82 / 87
第8章:光と闇
第72話:孤児の視点
しおりを挟む
僕は学園に入る前、街で1人の男の子と出会った。
男の子は誰かに殴られたみたいにあちこち痣だらけで、家の裏口に座って泣いていた。
「大丈夫? 何かあったの?」
僕がその子に声をかけたのは、ミィファさんの教えがあったから。
泣いてる子がいたら優しくしてあげてって、いつも言われている。
「お父さんに、ぶたれたの」
僕と同じくらいの歳に見える男の子は言った。
言いながら、ポロポロと涙を流して泣いていた。
「こんなに痣になるまでぶつなんて酷いね、逃げたかったら、マイア孤児院に来る?」
僕がそう言ったのは、バランさんの教えがあったから。
もしも親に殴られて傷だらけの子がいたら、孤児院へ連れて来たらいいよって言われている。
でも、その子は来なかった。
「ううん、いい。僕の家はここだから」
「そっか。もしも逃げたくなったら、いつでも来ていいからね」
痣だらけの子は、親に殴られても、その家にいると言う。
僕は、何故その子が誘いを断るのか分からなかった。
「親がいる子は、それがどんなに酷い親でも慕って離れようとしないんだ」
バランさんに話したら、溜息をついてそう言った。
僕には、どうして酷い目にあっても親から離れないのか分からない。
それからしばらくして、痣だらけの男の子はその家からいなくなった。
家が貧しくて、売られてしまったんだと街の人が言っていた。
殴られても家から離れなかったのに。
親の都合で、追い出されてしまうなんて。
売られてしまった子を助けてあげられなかったことが、僕には悔しくて悲しかった。
◇◆◇◆◇
「ほら、いい子だろう?」
エルシスは自分で殺した子の力を操って、そんなことを言っている。
左腕に抱かれた子は心臓を抉り出されていて、ピクリとも動かない。
スバルはエルシスをブッ飛ばしたいらしい。
でも、僕の気持ちはそれとは違う。
僕は、あの子を助けたい!
『OK、なら交代するぞ』
強く思ったとき、スバルの言葉が心に流れ込み、僕は表層に出た。
僕たちが入れ替わったことは、誰も気付いていない。
僕は可哀想な赤ん坊に片手を向けた。
「クククッ、やるのかい? どうなっても知らないよ?」
エルシスが笑いながら言う。
攻撃なら反射されるだろうからね。
でも、僕が使うのは攻撃魔法じゃない。
『ラメル様、僕に力を貸して下さい』
『承知した』
僕の片手から、金色の光の粒子と、マリンブルーの水の玉が、混ざり合って湧き出てくる。
既に息絶えている赤ん坊に向けて、僕は魔法を放つ。
光×水属性(混合・上位変換):蘇生回復
僕の片手から放たれた光と海の力が、赤ん坊を包んで癒していく。
無残な姿になっていた赤ん坊の傷が癒えると共に、エルシスの右手にあった真紅の宝石が消えた。
「……なん……だと……?」
呆然とするエルシス。
その隙に、僕は跳ぶように駆け寄り、その腕から赤ん坊を奪い取って飛び下がった。
奪い取った赤ん坊は、蘇生回復が完了してスヤスヤ眠っている。
「セラ、この子を抱いてて」
僕はセラフィナ(ソフィエ)に赤ん坊を預けて、スバルと交代した。
男の子は誰かに殴られたみたいにあちこち痣だらけで、家の裏口に座って泣いていた。
「大丈夫? 何かあったの?」
僕がその子に声をかけたのは、ミィファさんの教えがあったから。
泣いてる子がいたら優しくしてあげてって、いつも言われている。
「お父さんに、ぶたれたの」
僕と同じくらいの歳に見える男の子は言った。
言いながら、ポロポロと涙を流して泣いていた。
「こんなに痣になるまでぶつなんて酷いね、逃げたかったら、マイア孤児院に来る?」
僕がそう言ったのは、バランさんの教えがあったから。
もしも親に殴られて傷だらけの子がいたら、孤児院へ連れて来たらいいよって言われている。
でも、その子は来なかった。
「ううん、いい。僕の家はここだから」
「そっか。もしも逃げたくなったら、いつでも来ていいからね」
痣だらけの子は、親に殴られても、その家にいると言う。
僕は、何故その子が誘いを断るのか分からなかった。
「親がいる子は、それがどんなに酷い親でも慕って離れようとしないんだ」
バランさんに話したら、溜息をついてそう言った。
僕には、どうして酷い目にあっても親から離れないのか分からない。
それからしばらくして、痣だらけの男の子はその家からいなくなった。
家が貧しくて、売られてしまったんだと街の人が言っていた。
殴られても家から離れなかったのに。
親の都合で、追い出されてしまうなんて。
売られてしまった子を助けてあげられなかったことが、僕には悔しくて悲しかった。
◇◆◇◆◇
「ほら、いい子だろう?」
エルシスは自分で殺した子の力を操って、そんなことを言っている。
左腕に抱かれた子は心臓を抉り出されていて、ピクリとも動かない。
スバルはエルシスをブッ飛ばしたいらしい。
でも、僕の気持ちはそれとは違う。
僕は、あの子を助けたい!
『OK、なら交代するぞ』
強く思ったとき、スバルの言葉が心に流れ込み、僕は表層に出た。
僕たちが入れ替わったことは、誰も気付いていない。
僕は可哀想な赤ん坊に片手を向けた。
「クククッ、やるのかい? どうなっても知らないよ?」
エルシスが笑いながら言う。
攻撃なら反射されるだろうからね。
でも、僕が使うのは攻撃魔法じゃない。
『ラメル様、僕に力を貸して下さい』
『承知した』
僕の片手から、金色の光の粒子と、マリンブルーの水の玉が、混ざり合って湧き出てくる。
既に息絶えている赤ん坊に向けて、僕は魔法を放つ。
光×水属性(混合・上位変換):蘇生回復
僕の片手から放たれた光と海の力が、赤ん坊を包んで癒していく。
無残な姿になっていた赤ん坊の傷が癒えると共に、エルシスの右手にあった真紅の宝石が消えた。
「……なん……だと……?」
呆然とするエルシス。
その隙に、僕は跳ぶように駆け寄り、その腕から赤ん坊を奪い取って飛び下がった。
奪い取った赤ん坊は、蘇生回復が完了してスヤスヤ眠っている。
「セラ、この子を抱いてて」
僕はセラフィナ(ソフィエ)に赤ん坊を預けて、スバルと交代した。
11
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる