【完結】冒険者学園の落ちこぼれ、異世界人に憑依されて無双する

BIRD

文字の大きさ
87 / 87
第8章:光と闇

EPILOGUE

しおりを挟む
 翌朝、俺とセラフィナ(ソフィエ)は、バランさんとミィファさんに連れられて、プレア王城へ向かった。
 メシエの王城は白い石壁に青い屋根だったけど、プレアの王城はべージュ色の石壁に緑の屋根。
 王都の中心の高台にあり、孤児院や冒険者学園がある平民街からでも見ることはできる。
 今まで外観を見ることはあっても、城内に入ったことは無かった。

「どうぞ、お通り下さい」

 王城正門の門番たちは、俺たちの姿を見ただけで、すんなり通してくれた。
 お城に顔パスで入れる?!
 ……っていうか、服装ですぐ誰か分かるんだろう。
 俺とセラフィナの服装は、メシエの法王様から渡された正装だ。
 バランさんとミィファさんには、プレア国王から謁見用の礼服が贈られている。
 当然ながら目立つわけで、街を歩いているときや門をくぐるときには、街の人々が興味津々で眺めていたよ。
 この白い服は、どの国でも王との謁見に使えるものらしい。

『僕はこういうの苦手で喋れなくなるから、スバルに任せるよ』

 アルキオネはそう言って、表層意識を交代した。
 俺も堅苦しいのは苦手なんだぞ?
 まあでも俺は大人だから、引き受けておくよ。


 ◇◆◇◆◇


「よく来たな、勇者アルキオネと聖女セラフィナよ。この国を拠点としてくれることを、とても嬉しく思う」

 プレアの国王陛下は、黒髪黒目で日本人と西洋人の混血っぽい顔の男。
 バランさんと同じくらいの歳かな?
 謁見の間にて、俺たちは玉座の前で跪いて王様の話を聞いていた。

「勇者を生み出した両親には恩賞を与えているのだが、アルキオネは孤児と聞いている。故に育ての親であるバランとミィファを両親とし、恩賞を与えるものとする」
「「お心遣い感謝申し上げます」」

 国王陛下の言葉に、バランさんとミィファさんが深々と頭を下げて応える。
 深層意識で、アルキオネが歓喜するのが感じられた。
 生まれてすぐ棄てられたアルキオネに、実の親への思慕の情は無い。
 彼にとって親とは、バランさんとミィファさんなんだ。
 2人に褒美が与えられることが、アルキオネには何よりも嬉しかった。

 勇者はどこの国でも待遇が良いらしいが、プレアでは特に歓迎され、福利厚生が良いと聞いたことがある。
 多分、勇者はSS級冒険者となり、難易度の高い魔物の討伐を引き受けられるからだろう。

「そして聖女セラフィナ、父上より依頼がきている。そなたをプレア国民として迎えよう」
「ありがとうございます」

 法王様は、プレア国王に魔導通信で連絡していたらしい。
 セラフィナは王の承認により、プレア国籍を手に入れた。
 勇者と聖女は名誉国民となり、貴族よりも上の立場になるそうだ。

「さて、メシエでもしたと思うが、バルコニーに出て、プレアの民にも勇者と聖女の姿を見せてやってくれ」

 そう言うと国王陛下は玉座から立ち上がり、謁見の間に隣接するバルコニーに向かう。
 後に続いてバルコニーに出ると、お城の前に人々が集まっているのが見える。
 ゲームやアニメでよくあるシーンだ。
 歓声をあげる人々の中には、見知った顔も見つけられた。

 購買のケラエノさん。
 モントル時計店のリピエノさん。
 アトラス、エレク、リック、ミラ、クロエ。
 それに付き添う、2年生パーティのミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさん。
 同じく子供たちに付き添う、バランさんのパーティのヴァルトさんとマルカさん。
 食堂のおばちゃんや冒険者学園の先生たち。
 ユノと娼館のお姉さんたち。
 よく菓子を買いに行く店のオヤジ。
 役場の職員ジミーさん。

 いじわるトリオの姿も見えた。
 トレミーは恨めしそうな顔で俺を見ている。
 スーフィーは、なんでお前がそこに立ってるんだ? って言いたそうな困惑顔になっている。
 ハインドだけは俺に蘇生されたり海竜召喚を見たりしたからか、笑みを浮かべてこちらを見つめていた。

 奴隷商人のユピテルはいなかった。
 多分、もうアルキオネを奴隷にすることはできないから、興味を失ったんだろう。


 ◇◆◇◆◇


 夏休み明け、学園へ行くと校長に呼び出された。
 さすがに説教ではないだろうと思いつつ行ってみると、校長室にはコメルス支部長のシースリットさんがいる。

「やあアルキオネくん、勇者認定されたそうだね」
「はい」

 シースリットさんは、お祝いに駆け付けたというわけではなさそうだ。
 俺が頷くと、彼はニッコリ笑って用件を伝えてくる。

「実はね、今代の勇者と聖女のお披露目式をソシエテでもやってほしいっていう声が多くてね、ちょっとコメルスまで来てもらえないかな?」
「ついでにエテルネルにも来てほしいと依頼があったのだよ」

 ソシエテからの招待に便乗するエテルネル。
 まだ他の国からも呼ばれそうな予感がする。

 後に、俺たちは予想通り、世界の各国を巡る旅に出ることになってしまった。
 その話は、またいつか。

   ~END~
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...