飽くまで悪魔です

ごったに

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第一章

6.6.5 一片の花弁には満開の花を

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柳さくらは、感情を吐き出し暴れている中、近くに青い炎を見た。
そのまばゆさに。目を奪われ思わず動きを止め、その光景に見惚れた。

その炎は大きくそれでいてとても穏やかに揺らめき、周囲を照らす。

そしてその炎が静かに収まった時。

銀髪、褐色肌の青年がそこにいた。
その上半身は服を纏っておらず、それでいて銀色の鎧が両腕を包んでいる。
下半身は黒いズボンのようなものの上から、腕と同じように銀に輝く鎧。

牛のような黒い大きな角。
巨大な蝙蝠のような黒い翼。
まるで大蛇のような尾が揺れる。
黒いチョーカーの金具が、光る。

その悪魔が、ゆっくりと目を開く。
悪魔は少しの間ぼんやりしてから自身の両手を見る。
それからすい、と飛行しビルの窓で自身の容姿を確かめた。

そして子供のような顔で嬉しそうに笑って呟く。

「こりゃあ、すげえな。四ノ宮朝陽・夜モードってところか」

その口から洩れた名は、やはりさくらが想定した通りの名だった。
たとえ髪の色が変わろうが、肌の色が変わろうが角が生えようがさくらには、それがアサヒだとすぐに分かった。

アサヒは、さくらに見られていることに気付いていないようで独り言のように言う。

「で、こっからどうすればいいんだヨルくん」

そして少し黙り、

「……ヨルくん?」

周囲をきょろきょろと見渡した後、ばちりとさくらと目を合わせた。

「……………………………ふっ」

そして何かを悟ったかのように、もしくは何かを誤魔化すように笑って、それからすいとさくらの前に飛んできた。

その仕草がなんだか可笑しくて、さくらはつられるように笑ってしまう。
そして宙に浮くアサヒをまっすぐ見据え、睨み告げる。

「そんなかっこいいかっこしたって、無駄ですよ。わたしの邪魔をするんなら、たとえアサヒさんでも許しませんから」

その言葉を聞いて、

「許さない?それはこっちのセリフだろ。柳さくら」

まるで悪魔と化したアサヒは、獰猛に笑って言った。

「龍次郎にやったこと、100倍で返すから覚悟しろよ」
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