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未来と御汁粉と焼き芋のお話

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  「ほぇ~・・・」



  ここは西暦2022年とある都内某所とでも語ろうか。自分こと新谷 翔太は友人の浅野 健一としがない住宅地を歩行中の時である。


  「いや、そのリアクションはなくない?」


  そういう浅野は不機嫌というのか、困っていると言うのか、、、少なくともポジティブなリアクションではないという事は分かる表情で自分の顔色を伺うのであった。


  「いや、ほぇ~となるでしょ。普通」


  「あのねえ、こっちは真面目にお前が友達だから打ち明けたの!!」


  「どうせ打ち明けるんだったらクラスメイトの吉見さんの事が好きって事を打ち明けて欲しかったなあ」


  そう言いながら自分はただただ焼き芋という物を口に頬張る。うん、まだ時期は少し早いがこの口の中でパサつきとホッコリが来る感じは堪らない。後で缶コーヒーも買おう。良い時代だ。


  「いや、信じてないでしょ?てか吉見さんの事俺そんなわかり易い?」


  「うん」


  というのもこの友人こと浅野の突飛な発言は普通の人なら鼻で笑う内容だからまだ自分のリアクションは優しい方であるのだ。というかせっかくだし鼻で笑えばよかった。


  「もう一度言うから真剣に聞いてくれ・・・俺は未来から来たんだ」


  「ほぇ~・・・」


  珍しさで御汁粉を自販機で買ったがこれも話に聞いた様に悪くないな。自販機って良いな。


  「聞けよ!!」


  「聞いてはいるよ。興味がないだけで」


  「本当なんだよ!!」


  「あっそう。ところで吉見さんにはいつ告るの?」


  「それは・・・いや、そっちはどうでもは良くないけど今は良いんだよ!!」


  「でも吉見さん最近野球部の武田先輩と仲良くなって来てるから急いだ方が良いよ」


  「えっ・・・」


  「いや、引退試合終わって髪伸びてきて、なんかモテ始めてるじゃないあの人」


  運動部というのは引退してからモテる。そういう話は聞いていたが実際にワックスと染髪が出来るまでになってると本当にそうなんだなと感じるここ最近。やはり百聞は一見に如かずとは昔からよく言うものだ。


  「もうそっちの話気になり過ぎるから早く本題進ませてくれ!!」


  「いやあ、急に未来から来たと言われても普通は、ねえ?」


  「証拠もあるから!!示すから」


  「例えば?」


  「来週お前が事故で死んじゃう!!その原因が今日猫を拾って持ち帰って飼い始める!!定期的に病院に連れてく途中で車に撥ねられるんだよ!!!」


  「うわぁ・・・なんかピンポイント過ぎない?」


  「・・・俺だって傍から聞いたら頭オカシイと思われるのは分かるよ。でもこっちの時代に来て、一緒に過ごして、そしてお前の未来を知って・・・」


  「というか、どうしてそんな個人の情報ピンポイントなのよ?ん?何だこの子、お前も焼き芋食うかね?」


  「それは、定期的に関わってる人間位だけどライブラリをインターフェイスに繋いで・・・いや絶対その猫に関わるの駄目だろ今の話聞いてたら!!」


  仔猫と戯れていると再度横から怒声が聞こえる。が時遅くすでにヒト目で仔猫に心を持っていかれているので話半分にしか入ってこないのだった。


  「一応、君が未来人という体で話を続けるけど、なんで未来から来たの?」


  「信じてくれるのか!?」


  「いや、一応聞くだけ。あと猫可哀想だから威嚇は辞めて」


  「絶対その猫駄目だって!!俺はその時代時代の環境調査の一環で来てるの!!わかる!?その際に現地で円滑に過ごす為に関わる人間の年表とか確認できるから見てたらお前が来週死ぬって判って慌ててるの!!」


  「うん、それで過去の時代の女性に恋をしたと?」


  「そこはもう良いじゃない~!好きになったのは時代も何も関係ないからさあ!!」


  「いやでも、うん。となると君は環境調査の仕事中に現地の女性に惚れた上に死ぬ予定の人間助けるとか過去改変とか色々とやばいんじゃないかい?」


  ん、この猫。御汁粉も好きか。でも流石に身体に悪かろう。ひと舐めだけにさせよう。スーパーに仔猫用ミルクあるかしら。


  「いや、色々と不味いよ!!多分強制送還の後に審問会だよ!!」


  「なんか大変だね」


  「そりゃあね!!」


  「無理して助けなくても良いんじゃない?一応高校からの付き合いで日も浅いし」


  「自分の命に冷め過ぎだろ!?」


  「とはいっても、まあ、急な突拍子もない話だし、ねえ?」


  「ならない!!そうはならない!!普通ならあの話の後に猫がいた時点でビビるか引くって!!」


  「まあ、じゃあこうしよう。この猫は君が飼って病院に連れてく。それで自分や君がしぬことはないんじゃないかい」


  「いや!、、、多分、そうかな?俺が代わりに死ぬ事はないとは思うけど。うーん・・・」


  「あと吉見さん猫飼ってるからそこから話増やせるよ?」


  「マジで?」


  「マジデジマ」


 この猫も意外と物分りが良いのか、早速浅野に懐くパフォーマンスを魅せている。賢いなあ。


  「まあ、この猫はウチで面倒みるよ。ただ、もし未来が変わったら俺がいなくなるかもしれない。この時点で消えてないのも不思議な位だ・・・だから、何かあったら8日後、猫を代わりに育ててくれ。っつっても、忘れてるかもしんないけどさ」


  「そこに関しては多分大丈夫だよ。というかさ」


  「なんだよ?」


  「未来から来た君が恋をしちゃうのはしょうがないにしろ、何で自分なんか特定の友達作ったの?」


  「・・・それは、何というか、俺に似てたから。上手く言えないけど一緒にいて居心地良くて、クラスメイトとして話してたら、友達になってたんだよ」


  「悪い気はしないねえ」


  「軽いな!!」


  「まあまあ、んじゃまた明日ねえ」


  「あ、お、おう!また明日な!!」


 一つ言い忘れてた。いけないいけない。


  「吉見さん別に武田先輩とは付き合ってないから安心してね」


  「マジで!?」


  「デジマ」


  「サンキュー!!またな!!!」


 はてさて


  「ふぅ・・・それにしても『おじいちゃんの時代』って存外不便だなあ」


  話では聞いてたけど、インターフェイス経由じゃないと年表見れないとか特定にしかアクセス出来ないとかどれだけ情報整備されてないんだろと少しどころか大分限定的だなあと空になった缶をゴミ箱に捨てながら感じる。


  「というか、環境とか特定調査でしか過去に来れない時代だしそれもそうだよなあ。まあ、そういった時代の人のお陰でこうやって現代人のフリして過去の未来人騙す遊びが出来るようになってるんだから感謝しないと」


  それにしても、おばあちゃんの言う通りこの時代の御汁粉と焼き芋は確かに美味かった。未来に帰ったらおかあさんに作ってもらおう。そう思いながら、帰るまではおじいちゃんとおばあちゃんのラブストーリーは見守ろうそうしようと誓うのだった。





お し ま い

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