最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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一言余計だとしても命取られるほどじゃないと思う

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 ジークたちに連れられて屋敷の外へ出て、街頭すら消えて真っ暗になった町を歩いてしばらく。
 いつも出歩いて見ている昼間とは真逆な、人気が無い薄気味悪い光景に思える町を見て、ある意味で新鮮さを感じていた。
 思えばこっちの世界に来てから夜遅くに外に出て活動するということがなくなり、ゆっくり過ごせている気がする。
 向こうの世界では昼間より夜の方が主な活動時間だったことも多く、戦いばかりの日々だったから、こういう長期的な平和な時間が新鮮にも感じられた。
 普通、漫画やアニメだったら平和な日常から戦いばかりの異世界に飛ばされて困惑しながらも生き抜く、というのが定番だが、俺は逆に戦う頻度が少なくなったのでむしろスローライフに感じてしまっている。
 かなり強いと言われてたカウ・ホーンだって「この程度か」としか思えなかったし、まだ魔物もいない向こうの世界にいた方が苛烈な戦いが多かったと思う。
 ……我ながら狂った生き方をしてきたものだと思えてくる。
 元々俺たち柏木家は一般人とは違った生活をしてきたのはわかってたつもりだが、そんな家族の中でもあまりの吸収の速さに俺は異常だと言われてきた。
 「お前は天才だ。だがそれ以上に異常だ」と軽く笑われながら。
 まぁ、だからと言ってバカにされていると感じているわけじゃないし、褒め言葉の一つとして受け取っていた。
 そしてそんな俺が戦いに明け暮れ、いつの間にか付いた二つ名が「最強超人」だとさ。
 武術を極めている奴は達人と呼ばれ、その中でもさらに秀でた者が超人と呼ばれるのだとか……だが「最強」とか「超人」って褒めてるようで「お前もう人間やめてるよ」と言われてるように聞こえてくるのは卑屈過ぎるだろうか?
 なんて考えているとジークたちが狭い路地裏に入る。
 そこは人が普段通るような場所ではなく、薄気味悪く感じるような暗さがあった。
 路頭に迷っているような奴はいないものの、怪しいという意味で色んな奴がいる。ローブを深く被ってる奴とかスキンヘッドで顔に傷を負った奴とかどう見ても堅気じゃないようにしか見えないのばかりだ。
 こんな路地裏に似合わない老人と少女とは……これはこれで怪しさが増してる気がするな。
 しかしこんな怪しさ満点な場所に入ってもジークたちの様子は普段通りではあるが、この先には何があるんだ……?
 するとしばらく歩いた後に少し開けた場所に出る。

「ここです。ここからはいつもの仮面を付けてもらえますか?」

 ジークがそう言うとマヤルと共に仮面を付ける。
 どうやら目的地に着いたようだ。仮面が必要ということは素性をかくす必要があるのか?
 魔法で収納していた仮面を付けながら周囲を見渡す。
 そこは民家が密集している中で出入り口が一つだけあり、周囲よりも一際大きな建物がこちら側に向いて建っている。
 その建物の出入り口には屈強な男が二人立っているが、ジークたちは気にした様子も無く建物の中に入っていった。
 俺も彼らの後ろに続いてついて行く。
 建物前の男たちには睨まれはしたものの絡まれることなく、中へ入ることができた。
 内装は西部劇なんかに出てきそうな酒場の雰囲気があり、そこでも表には出てこれないような顔付きの奴らが多くいた。
 ただ顔付きが怖いからじゃない。なんせ、人を殺すのが当たり前というような雰囲気を纏ってるからだ。
 恐らくここにいる全員が人を殺したか、後ろめたいことをしているのだろう。
 そんな全員の視線が俺たちに集まっている。
 しかもヒソヒソ話や陰口すらせず、ただジッと俺たちを見るその様は少し気持ち悪い。
 受付っぽいところまで行くとバーテンダー風の服装をした女性が立っていた。
 セミロングの黒髪で片目を隠して顔に斜めの傷を作っており、ヴェルネと同じように青肌をし、スタイルも胸がレトナくらい大きく腰は細くくびれ臀部も……ソフトな言い方が思い付かないのでストレートに言ってしまうが、いわゆる安産型というものをしている。
 そしてやはりというべきか、堅気ではない雰囲気を纏っている。

「今噂の人間なんか連れて何の用だい、ジーちゃん?」

 視線は下に向けたまま彼女がそう問いかける。外見の年齢は二十代~三十代くらいに見えるが、そのジーちゃんというのはジークのことを指しているのか?
 というか仮面付けてるのに早速バレてるんだが。まぁ、いつもこの仮面を付けてるからわかる奴にはわかるんだろうけど……

「はい、私どもから少々紹介したい方がいまして……この方はリーシア、ここの責任者です」

 対してジークは気にせず話を続けようとする。
 ジークの言葉に彼女は驚いたように少しだけ目を見開き、口元に笑みを浮かべる。

「……へぇ、伝説のアサシン様が目を付けた人間か」

 品定めする目つきで俺を見てくる。
 というかなんだ「伝説のアサシン」って。ジークってそんな呼ばれ方されてるの?
 ジークを見ると少し気恥ずかしそうにする。

「ははは、伝説などとお恥ずかしい……今までの功績でそう呼ばれるようになりましたが、あなたと比べられると胸を張れるような話じゃありませんよ」

「胸は張っていいと思いますよ?だってジークさんはここの依頼を失敗したことないじゃないですか」

 マヤルがフォローしようとそう言う。ここで依頼?

「ここでもギルドみたいな依頼を受けられるのか?」

「あら、何の説明もせず連れて来たの?」

 まるで迷子でも迷い込んだような反応をしてジークを見るリーシア。はい、何も言われずに連れて来られましたよ。

「あまり表立ってできる話ではなかったので……それにどちらにしてもあなたから直接お話していただけるのでしょう?」

「それはそうだけどさ……殺せるの、ソイツ?」

 含みのある笑いで俺を見てくるリーシア。同時に彼女から殺気が俺に向けられてくる。
 コイツの言う「殺せる」ってのは魔物……のことじゃないな。きっと魔族や同族の人間を指しているんだろう。

「それだけの理由があれば。まさか依頼だからって誰彼構わず虐殺するようなサイコパスの巣窟じゃないんだろ、ここは?」

 俺の言葉に複数人が反応して殺気を放ち、武器に手を伸ばそうとする。

「フフッ、威勢がいいのは結構だけど……あまり挑発しない方が良いわよ?」

 彼女もそう言いつつ腰に手を伸ばす。
 ジークはやれやれと肩をすくめ、マヤルも「あーあ」と呆れたように呟く。あっ、もしかしなくてもまた余計な事を言っちまったか……?

「話がややこしくなりそう……」

「まぁ、カズ様ですし。むしろ好都合じゃないですか?」

 そんな話をしながら俺から離れていくジークたち。助ける気はないってか。
 二人が離れたことで周りの奴らの殺気がさらに濃くなり、完全に今すぐ襲いかかってくる雰囲気になってしまっている。
 そんな中で真っ先にローブの男が背後から低めの姿勢で攻撃を仕掛けてきた。

「シッ――」

 男はナイフで首元を狙ってきたのでそのナイフを素早く奪い取って膝で顔面を蹴り上げる。
 さらに横から斬りかかってきた女の剣を手に持ったナイフで軌道をズラしてローブの男に当てさせた。

「あっ……」

「――ッ!?」

「おっと、お気の毒」

 同士討ちをさせといて他人事のように言い、女の方のみぞを殴って戦闘不能にさせる。
 そして他の奴らも立ち上がり、武器を手に取って構えてこちらに向かって来ようとしていた。
 しかし直前に全員の足が何かに絡め取られて動けずにいた。

「なんだ……ッ!?」

 各々が自分の足元を見ると一気に顔が青ざめる。
 なぜなら彼らの足を絡め取っていたのは人の手の形をした青い何かだったからだ。

「きゃあぁぁぁっ⁉」

「なにこれ⁉ お、オバケ⁉」

 それらを見て悲鳴が上がり、他の奴らもパニックになり始める。
 アレは一応俺の魔法で作った「お手伝いちゃん」なのだけれど、そんなことを知らない奴らから見たら幽霊みたいなオカルト的化け物が自分の足を掴んでいるのだから人によっては発狂するだろうと思う。
 ……そういえばヴェルネもそういうホラー系が苦手みたいだったな。これをアイツにやったらどんな反応するか試してみようかな?あとでめっちゃぶち切れられそうだけど。
 何はともあれ、料理のような細かい作業をこの量にさせるには慣らさないとならないが、「掴む」「殴る」というような単純作業をさせることはできる。
 だから相手の場所さえ把握していればその場で拘束させることも可能というわけだ。それに腕一、二本分なら……

「ふっ!」

 俺の背後に立っていたリーシアが三十センチほどの細長い針を素早く数本投げつけてくる。

「なるほど、人間は弱点を的確に刺されれば簡単に死に至るからな。しかも動いてる相手のその特定の箇所に当てようとするのはそれだけでもかなりの技量を必要とする。それはたしかに凄いことだ……でもそれだけだ」

 俺は動くことなく「お手伝いちゃん」でその飛ばされた針をそれぞれ指の間でキャッチする。
 それをピンッと指で弾いて返すとリーシアは少しだけ驚きながら、他にも持っていた針で弾いて防ぐ。
 それもギリギリといった感じですぐに反撃してくる様子はなかったので、その隙を突いてお手伝いちゃんで手足を拘束、一本だけ残しておいた長針を彼女の喉元に突き付ける。

「……さて、ここまでやっておけば俺の態度のデカさは許してくれるかな?」

「……そう、そういうこと。たった一人でこの人数を制圧できるほどの実力があるのなら、ジーちゃんが目をかけるのも納得だわ。つまり彼を自分の代わりにしたいってこと?」

 何かを悟ったようにそう言ってジークを見るリーシア。

「代わりって何の話だ?」

「いいえ、違いますよ。たしかに引退の話はしましたが、だからと言って代役を立てて去ることはしません。ただ彼はすでに私以上の実力をお持ちなので、その手腕を勉強しようと思いましてね」

 ジークは俺にではなくリーシアへ返答するようにそう言い、俺の横に立つ。

「それは……何の冗談?たしかに彼は凄いけど、あなたよりなんて……」

 リーシアや周囲の奴らの雰囲気も段々落ち着いてきたので魔法を解いてやる。
 ついでに殺しに来てたとはいえ一応傷を負ったローブの男にも回復の魔法をかけてやった。

「しかも回復の魔法まで使えるの?……あぁ、これだけでも十分あなたに匹敵する規格外の化け物って言えるわね」

 リーシアはそう言いながら、さっき俺が針を突き付けたのを思い出しているのか喉元を擦っていた。

「いいわ、どの道あなたはそれだけの力量を示したし。歓迎するわ、ようこそ裏のギルド……へ」

 リーシアはそう言って微笑んだ。
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