最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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顔だけで威嚇するのはシュール

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「……何してんだ、お前」

「待たせたな相棒!奇妙な気配を感じたから馳せ参じたぞ!さて、我らの敵はどこにいる?」

 なぜか腕を組んでやる気満々のヤトが周囲を見渡す。本当に何を言ってるんだ、コイツは?

「奇妙な気配ってなんだよ……さっきまでいた魔物ならどっかに行ったぞ?そもそも俺が苦戦する奴なんて今のところ――」

 そこまで言ってついさっき魔物化した魔族と戦ったのを思い出した。

「ん~?そう言われればその妙な気配をもう感じないな……」

 ヤトが周囲を見渡し、そんな彼をクロニクたちは唖然とした表情で見て完全に置いていかれてしまっていた。

「えっと……その子は?いきなり空から飛んで来た気がするんだが……」

「我か?我はヤト!ソイツの同族だ!」

 ヤトがラウを指差してそう言うが、自己紹介にしても説明不足でしかないのでクロニクとモモが理解できずに混乱してしまっていた。
 しかしラウはすぐにヤトが同じ竜であることを感じ取ったのか、「クゥ~ン」と犬のように鳴きながら近付いて顔を舐めた。

「おい、やめ……出会ってすぐに求愛するんじゃない!我はお前のような子供になんぞ興味は無いから離れろ!」

 ヤトを相当気に入ったらしく、ラウは拒絶されていても構わずに彼の顔を舐め回していた。
 するとヤトが限界を迎えたらしく……

「やめんかァァァァッ‼」

 顔だけ竜になり、空気がビリビリと震えるほどの叫びを放つヤト。その姿に俺以外全員が驚いてしまっていた。
 器用に顔だけってなんかシュールな光景になってるんだけど……まぁ、クロニクたちはそこまで気にする余裕はないみたいだが。
 ヤトは人の顔に戻り、やり切った感を出して「ふぅ……」と一息吐き涎だらけの顔を拭う。

「なんで顔だけ?」

「全身変身すると服が破れるからな、せっかく相棒から貰った服を台無しにするのは避けたいから顔だけにしたんだ。部分的に変身するのも段々慣れてきたところだ」

「そうか……でももうそれやめた方がいいぞ。色んな意味で心臓に悪いから」

 引きつった笑みを浮かべつつも青ざめた顔のヴェルネを見て言う。

「ふふふ、そうか。逆に考えると相手を驚かせる時に顔だけ竜になればいいということだな」

 意地悪な笑みを浮かべ、そんな子供じみたことを言うヤト。なんだか竜の時と違って生き生きとしているな。

「ところで俺たちはこれからダンジョンに行くけど、どうせ来たんならヤトも来るか?」

「相棒の誘いならもちろんだ!丁度我も人々が口にするダンジョンというのも昔から気になっていたしな!共に行こう!」

 高いテンションで俺の腕にくっ付いてくるヤト。なんでくっ付いてくるんだよ……?
 そしてそんな俺たちの姿を見たラウが唸る。
 竜の男に抱き着かれて竜のメスに嫉妬されてるこのカオスな状況……なんなんだとしか言えない。

――――
―――
――


「『黄色』か……」

 クロニクたちが落ち着いたところで移動した俺たちはダンジョンに到着し、そのゲートの前で立ち止まっていた。

「青と赤以外にもあるんだな」

「黄色は『要注意』ね。特徴は地形はある程度の準備をすればいいけど、そこの魔物が強くて厄介なのが多いって感じかしらね」

 俺の疑問にヴェルネの説明し、クロニクが「うむ」と力強く頷き同意する。

「ちなみにここに挑戦する奴は少ないらしい。黄色以上はそれなりの実力がないとすぐにやられてしまうからな……だから他のところのようにダンジョン前に出店が出てないんだ」

「あぁ、そういえばウチの近くのダンジョンのとこでも準備してたの見かけたな」

 前回アウタルと入ったダンジョンの前でも営業まではしていなかったが、その準備らしいことをしてる屋台を見かけたことがあったのを思い出す。

「つまりダンジョンに挑むなら準備は町で済ませるしかないってことか」

「そういうことだな。それでも挑むのは相当な物好きか、金に余裕がない借金まみれの奴くらいだろう」

「……それじゃあ、あの男はそれほど切迫した状況だったってことなのかな?」

 恐らくこのダンジョンに挑んだであろう魔物化した魔族の男のことを口にしたモモがゲートを興味津々に見ていた。
 覗き込み過ぎてそのまま頭からゲートの中に突っ込んでしまいそうな体勢のモモの襟首をクロニクが掴んで引っ張り、彼女は「ぐぇっ⁉」とアイドルらしからぬ潰れたカエルのような声を出してしまう。
 「何すんの!」とクロニクと言い合いを始めるのを横目に俺が先に頭だけゲートをくぐらせて様子を窺う。
 ゲートの先は辺り一面の砂漠が広がっていた。
 ゲートから頭を抜き、ヴェルネたちの方を見る。

「どうやら今回のダンジョンは砂漠らしい。しかも遠くまで見ても建造物どころか木や石の一つも見当たらないぞ」

「だとしたら水は必須か。他には長くなりそうなら食糧と、それとせめてソナー系の魔道具があればいいんだが……」

「我がお前らを乗せればいいんじゃないか?そうすれば上から見渡せて一目瞭然だろう」

 自信満々に胸を張って言うが、ヴェルネが首を横に振る。

「この手のダンジョンは地面に扉があるのが基本で、大抵砂で埋もれて隠されてることが多いの。それにかなり広いらしいから片っ端から探すのも骨よ?」

「とはいえ、今回の目的は異変の調査だ。とりあえずヤトの案に乗っかって怪しいものがないか空から見渡していいんじゃないか?」

「だな。もし今回の犯人が故意的に起こされたもので、その誰かがダンジョンの先に進んでいるのなら扉自体がまだ見えてるだろうしな」

 意見も大体まとまったところで俺たちはゲートを潜った。
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