最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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「あっ、おかえりお兄ちゃん!と……その人は誰?」

 ユースティックに人通りの少ない場所の宿屋へと連れられ、その中の一部屋へと案内されたそこにはベッドの上で上半身だけを起こした少女がいた。
 セミロングの黒髪をし、額にはユースティックと同じ三つ目の目がある。普通よりも瘦せ細っているからか生気が薄く、触っただけで壊れてしまいそうな儚さを感じた。
 警戒する様子もなく首を傾げて俺を見る彼女はお世辞にも健康体と言えるものではなかった。

「前に話しただろ?この人が今の俺の雇い主だ。カズ、コイツは俺の妹のアイラ。申し訳ないがベッドから動ける状態じゃなくてな……」

「ああ、一目見てわかったから大丈夫だ。それで俺にやってほしいことってなんだ?」

「アイラは昔から体が弱かったんだが、段々と悪化していって最近じゃ歩くこともできなくなっちまってる。医者に見せても原因がわからないと言うばかりでまともな治療法も無く、ポーションを飲ませることで辛うじて生きながらえている状態なんだ」

「歩けなくなる病か……外見に異常はあるか?もしくは体のどこかが異常に痛かったりとか」

「いえ、何も変なところはないです。ただ力が入らなくて……えっと、もしかして人間のお医者さんですか?」

 ユースティックがどんな伝え方をしたのかはわからないが、普通こんな姿の人間を医者だとは思わないだろう。

「残念ながら違う。どんな症状なのかとか病名だったりを突き止めることはできると思うが、正直あまり重過ぎるものだったら俺にはどうしようもできないからな」

 それに症状を確かめると言っても俺は医療を勉強した人間でもない。もし手術をしなければならないほどの重病であれば、二人には悪いが諦めてもらうしかない。
 と、そんなもしものことを考えて躊躇していても意味が無いので、とりあえずここ最近一番の頼りになってしまっているスマホを取り出す。
 このスマホだけで治療することはできないだろうが、病名の特定や対処法くらいは表示してくれたらいいなーくらいの気持ちでそれっぽいアプリを探す。
 前に使った鑑定アプリだって「万能鑑定」とは書いてあるけど限度があるだろうし……
 そう思いながらもアプリを起動し、「その他」と書かれた項目をタッチしてカメラを起動してアイラを撮影した。

 ――ピッ

 スマホが何かを認識した音がし、画面にはいくつかの情報が表示される。
 アイラという名前と共に種族が魔族であることや女性であるという基本情報からバスト、ウエスト、ヒップのスリーサイズまで……やぺぇ、こんな個人情報見たって言ったら軽蔑されそうなんだが……
 あまり恥ずかしくなりそうな項目は飛ばし、他に何かないか探す。すると「異常」と書かれた項目があり、そこに病名らしき文字が書かれていた。

「えっと……魔力多量漏洩?」

「……なんだって?」

 俺がその言葉を口にするとユースティックが聞き返してくる。

「なんだその魔力多量漏洩って……」

「あぁ、名前からしてなんとなく想像付くけど、ちょっと読み上げてみるぞ」

 ――「魔力多量漏洩……体内に存在する魔力がより多く排出されてしまうこと。通常、生物の全てには魔素を吸収して魔力に変換し溜めておく経路が存在し、上限以上に吸収された魔力は微量ながらも体の外へと放出している。しかしこの場合その経路に異常をきたし、大量の魔力が漏れ出て行ってしまっている状態となっている。初期症状としては息切れや怠さといった風邪の症状から始まるが、それが長期間続くと手足が動かなくなるまで悪化してしまう。ポーションによる魔力補給で延命することはできるが、最悪心臓が止まり死亡してしまうケースもある。この症状が発症する確率は――」

 そこまで読み上げたところで一旦止め、ユースティックたちの様子を見る。
 アイラはもちろんのこと落ち込んでおり、ユースティックに至ってはすでにお通夜モードだった。まぁ、「死亡」なんて単語が出てくればそうなるわな。
 それにこの世界の医療技術は見聞きした限り魔法やポーションで回復する以外に聞いたことがなかったからそこまで進歩してるわけでもないかもしれない。
 彼らからしたらある種の死亡宣言を受けたようなものだ。

「死亡……死ぬのか、アイラは?助けることはできないのか⁉」

 ユースティックは俺の両肩を強めに掴み、涙を目に溜めながら聞いてきた。

「……ダメだよ、お兄ちゃん。雇い主のカズさんにそんな迷惑をかけちゃ……困ってるでしょ?それに今すぐ死んじゃうって決まったわけじゃないんだから」

 妹の方も妹の方で苦笑して諦めモードになってる。これは早くこの先を読んでやらんとユースティックが泣き出すかもしれんな……

「言っとくが死ぬかもしれないっていうのは最悪の場合でっていうだけだ。ここにはちゃんと治療法も書いてあるから心配するな」

 そう言うと二人がキョトンと間の抜けた顔を俺に向けて固まる。

「……えっ、治療法?ポーションを飲むんじゃなくて?」

 アイラの疑問に頷く。

「それはあくまで延命するための処置だそうだ。ちゃんと治す方法は書いてあるか――」

「本当か!アイラは……妹は本当に治るのか?昔みたいに歩けるようになるのか⁉」

 俺の肩を掴みっ放しだったユースティックの手に再び力が入り、異様なほどに圧を感じる。

「落ち着け、アイラの場合は動かなかった時期が長いからリハビリが必要になるけど問題無いらしい」

 治療法が存在し、彼女が治ることを伝えるとユースティックはしばらく固まった後に膝から崩れ落ちる。
 アイラもまさか治るとは思っていなかっただけに両手で口を押えて涙を流していた。
 ……あっ、治るって言っちゃったけど俺でも治せるものかわかってなかった……これで難易度高いものだったらどうしよう……
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