最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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無慈悲

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 大剣と拳、かなりの威力を持つ二人同時の攻撃をカズは受け止める。
 突然の攻撃にその場が騒然とし、カズは攻撃して来た二人の姿を見て溜め息を吐く。

「……またお前か」

「やっほ☆こんなに何度も会うなんて、ちょっと運命感じちゃうかも?」

「ワシの拳を正面から受け止めるとは……というか知り合いか?」

 カズに攻撃を仕掛けた内の一人はシャルア、そしてもう一人はカンナだった。

「うん、彼が前に言ってた仮面の魔族……の人間!」

「あぁ、コイツが……かッ!」

 カンナが拳に力を入れてカズの受け止めた手を弾き飛ばして後退する。

「えっ、ちょっ……待って!なんか剣が抜けないんだけど!二本の指で摘まれてるだけなのに全然動かないんだけど!カンナだけ逃げてるのズルい!」

「多分お前じゃ無理だ、武器を捨てた方が早いぞ。ワシも言うほど簡単に抜け出したわけじゃないからな」

 カンナが殴った拳をシャルアに見せると、ちょうどカズが掴んだ手の甲が痛々しく真っ赤になってしまっていた。

「そうだぞ?ほら、さっさと武器から手を離さないと……」

 カズがそう言いながら大剣を受け止めた方の腕を軽々と上げ、シャルアを持ち上げる。

「何コレ!?」

 自分が抵抗もできずに持ち上げられたことに驚くシャルア。剣から手を離さずにいるため、しばらくカズにブンブンと振り回されてしまう。
 そんな暴風のような中にカンナが割り込み、カズの手を掴むと同時に振り回されていたシャルアを放り投げる形で救出する。

「いたいけな少女を虐めるのは感心せんな?」

「仕方ない、俺とお前らは今敵だからな」

 しかしカズは彼女の身体能力に驚くこともなく、掴まれた手を回転させてカンナを地面に叩き付けた。

「かっ……!? い、ま……何、を……?」

 受け身も取れず背中を強く強打したカンナは呼吸を乱し困惑する。だがカンナはカズの返答を待たずに反撃しようと掴んだままの手を回転させながら突き出す。

「おっ?」

 繰り出された技は強い威力を持ち、カズを吹き飛ばして宙へ浮かせた。
 円卓に座っていた者たちからは驚きの声が上がるが、カズはダメージを受けた様子もなく嬉しそうに笑っていた。
 威力を殺してフワリと優しく地面に着地したカズ。

「凄いな……吹っ飛ばされたさっきといい、ここまでの技量があるなんてな。巫女服っぽいの着てるけど……お前も勇者なのか?」

「ああ、シャルアと同じしがない村から選抜された女勇者のカンナだ。わしのことはカンナちゃんと呼ぶがいい!」

 汗を流しながらも腕を組んで余裕の笑みを浮かべてそう言うカンナ。
 そんな中でアイファたちは焦りを見せていた。

「なぜ天使たちが出て来ないの⁉ こういう時のためにアレがいるんじゃない!」

「……それってカズ殿がさっき全員倒してしまったから出て来れないんじゃないかのう?」

「「「……あ」」」

 ラニャの発言に全員が思い出したように声を漏らす。

「……もしかして俺やらかした?」

「いいえ……責めるとすればあなたを扇動したルーガルさんなので、あまり気にしなくていいです」

「あ、俺のせいか」

 ルーガルは重い空気にも関わらずガハハと気にした様子もなく豪快に笑う。

「まぁいいさ、アイツらがいたところでコイツを止められるとは思えないからな」

「そいつそんなに強いのか?どうせ天使がいないんだ、だったら俺にも少し暴れさせろよ!」

 ルーガルがその巨体に似合わない速さで動きでカンナに迫り、鋭い爪を伸ばして切り裂こうとする。
 しかしカンナはルーガルに視線を向けることをしないままその腕を掴み、その巨体を軽々と持ち上げてカズの方向へと投げつけた。
 カズがスッと避けるとルーガルは壁に叩き付けられて減り込んでしまう。

「ルーガル様!」

 部屋の外で待機していたライネルとフェイがそれを見て部屋の中へと入って彼の心配をして駆け寄ろうとする。その瞬間に大きな音が鳴り、その音が鳴った方向にはカズとカンナが取っ組み合いをしていた。

「おいおい、受け止めてやらなかったのか?薄情な男だな」

「自分から突っ込んだんだから自業自得だろ。恋人でもない奴の尻拭いなんてしたくない。それにアイツを道具みたいに投げて、その隙に近付いて来たのはお前だろう?」

 互いに笑みを浮かべながら腕に筋を浮かべるほどの力が入っており、彼らが立つ地面はクレーターのように大きく沈み続けていた。
 しばらく膠着状態が続くとカズが動き出し、両手を内側に回してカンナを浮かせる。

「このままだと腕が千切れるが……どうする?」

「うぐぐ……そ、それよりもこの状態だとわしの巨乳が強調されててエッチに感じないか?」

「やかましいわ」

 窮地なはずのカンナの口から軽口が出て、カズが思わずツッコミを入れる。そこに隙が生まれたのかカンナがバク転をしてカズへ蹴りを入れる。
 その足が当たる直前に彼も掴んだ腕をそのままにのけぞって避け、飛ぶようにバク転してカンナの上へと移動、背中に両膝を乗せて叩き付けるような形で地面へ落ちた。
 この間、一秒にも満たない速さの攻防であった。

「うわぁ……さぞ痛そうな酷い技が決まったのう……」

「女の子を足蹴にするなんて……カズ君って結構ドS?」

「あたしに聞かないでくださいよ……アイツは容赦がないだけでそういうんじゃないですから!……多分」

「…………」

 カズのカウンターを見ていたラニャ、ピア、ヴェルネ、アイファが「いくら敵とはいえ……」と複雑な表情を浮かべてその戦いを観戦していた。
 そして――

 ――ゴキュッ

「ぐあっ……!」

 異様な音が鳴ると共にカンナの左腕が力無く倒れるように地面に落ちる。

「うっ……アレって折られた?」

「いや、外しただけみたいじゃ。だが十分なほどにエグいことをする……」

「おい、いつまで遊んでる!さっさとそのガキを半殺しにして捕まえないか⁉」

 ピアとラニャがカンナの痛々しい状態へ同情したり、ゲイドが思い通りにならない状況にイラつき野次を飛ばしたりと騒がしくなっていた。
 そんな中でシャルアは胡坐でその場に座って楽しそうに体を左右に揺らす。

「シャルア、お前も何をサボっている!あの筋肉女と共に戦え!」

「無理無理☆ただでさえカンナちゃんって私たち勇者の中でも別格の強さなのに負けてるんだよ?私が行ったところで足手まといにしかならなくて邪魔になるだけだよ~♪それよりもおじさん、逃げた方がいいんじゃない?」

「おじっ……なんでだ?」

「だって……」

 おじさん呼びにショックを受けつつも聞き返すゲイドにシャルアは周囲を見渡す。

「魔法は使えないけど、あの人たちみたいに戦ってても問題ないなら、この中で全く戦えないのっておじさんくらいだし……護衛に連れてきた勇者も私とカンナちゃんだけ。表にいる強そうなお兄さんたちだって勇者ほど強くないし……私が行っちゃったらおじさん死んじゃうかもね☆」

 シャルアに言われてようやく自分の状況を理解し、その途端に周囲からの視線を気にし始めて焦りから冷や汗が顔に垂れ流される。
 目が合う者たちにはそんな意図はないが、ゲイドにとっては猛獣に狙われているかのように錯覚し恐怖してしまうのだった。

「ひ、ひぃッ……⁉」

 ゲイドがその恐怖に耐え切ることができず、ついにその場に腰を抜かしてしまった。
 彼の怯えに他の者たちが首を傾げていると、カズたちが入って来た扉とは別の扉が部屋に突如として出現し、それがゆっくりと開かれる。
 そこからは一人の少女が現れ、部屋の中が不自然なほど一気に静まり返った。
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