最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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2022 甘いハロウィン!

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「カズくーん、お菓子ちょーだーイ!もしくは子作りしよウ!」

 ある日の朝、朝食を何にしようかと考えているとフウリが突然押し掛けて来て、そんな爆弾発言を投下したので早速彼女の頭にアイアンクローを食らわせた。

「あだだだだだ⁉ 待って待って、頭割れちゃうカラ!」

「しょうもないことしか言えないそんな頭なんてもう砕いてもいいだろ。なんなんだ、朝から……」

 えへへと悪びれもなく笑う。

「レトナちゃんたちから聞いたヨ、君の故郷では今日みたいな日をハロウィンっていうのだろウ?だからそれに乗っ取って『お菓子か悪戯かトリックオアトリート』って言ってみたんダ♪合ってたデショ?」

「うんまぁ、間違った方向に合ってたよ。せめて言葉をオブラートに包めよ」

「オブラー……ト?」

 「オブラート」という単語がこの世界に存在しないのか、単に彼女が知らないだけなのは知らないが、フウリは「何それ?」と言いたげに首を傾げる。

「それで今作ってるのはお菓子かイ?」

「作ってるっていうかこれから作ろうとしてたっていうか……そもそも作ろうとしてたのはただの朝食なんだけどな。朝からお菓子なんて作るわけないだろ」

「そっか……あ、なら僕の分もお願いしてもいいかナ?」

 図々しいフウリのお願いに「仕方ねえな」と言って多めに作ることにした。
 俺が朝食を作り始めてもフウリは調理場

「にしても面白い行事があるんだネ?自分の種族とは別の何かの格好になって人を脅すなんてサ」

 言い方よ。

「子供が大人に強請ってるだけなんだから、そんな重く捉えんな」

「でもその場にお菓子が無かったら悪戯されるんだよネ?カズ君がお菓子を用意できてないと知ったらルルアちゃんたちはどんな悪戯を考えるのカ……」

 不穏なことを言うフウリ。いや、たしかにルルアならレトナを巻き込んで変なことを考えるに違いない。
 もちろん俺がNOと答えれば強硬手段には出ないだろうけれど……

「……そうなる前にお菓子を作っておけばいいだけの話か」

 そういう結論になり、朝食のついでにハロウィン用のお菓子を作ることにした。
 そして先に朝食を作り終えたので、ついでにフウリに手伝ってもらいながら食卓へと運んだ。

「お菓子はもう作ったのかイ?」

「ああ、あとは冷やすだけだからな。粗熱も取ったし、お昼前頃には出来上がって渡せるだろうし、『アレ』ならルルアたちもきっと喜ぶだろうよ」

 そう言うと「それは楽しみだナー」と貰う気満々のフウリ。一応知り合い全員分作ったから別にいいんだけどな。

 ――――

「ハロウィン……?それでこれを俺らに?」

「それでこの……なんです、これは……?」

 朝食を終えてユースティックとミミィに作ったものを渡したのだが、聞き慣れない文化に困惑させてしまったようだった。

「まぁ、名前を言っても知らないだろうから、それは食べてからのお楽しみってことで帰ってから食べてくれ」

 二人に渡した後にはギルドに行き……

「え、カズさんから贈り物ですか!? 彼女がいるのに!?」

「いや、そういうのじゃねえから」

 イルから変な驚き方をされつつ、オーナーにも渡す。

「これは甘い物なのかしらぁ?」

「ああ、甘過ぎないくらいのちょうどいい甘味になってるはずだ」

「それは嬉しいわねぇ、私って甘い物には目がなくてぇ……本当に美味しかったら私もあなたのお嫁さんに立候補しようかしらぁ?……冗談よぉ♪」

 なんて微妙にリアクションをし難いことを言いながらオーナーは満足そうな笑みを浮かべながら奥に消え、ついでにその場にいたラグたち六人にも渡した。

「俺らにもか?」

「ああ、一応知り合った縁、てことでな」

「「あ……兄貴!!」」

「誰がお前らの兄貴だよ」

 餌付けされて懐かれてしまいそうになったのでさっさとその場から逃げた。
 その後もお世話になった鍛冶屋のレンジ、アクセサリー屋のダート、奴隷商人のフォストなどにも直接会ってお菓子を渡した。

「いつもお世話になってる商店の人たちにも渡したし、あとは帰ってルルアたちに渡すので最後か」

 どうせハロウィンという文化がここにはないのだから、今までにお世話になった者たちの分も作って渡したのだ。
 ルルアが聞いたら「なんでルルアに最初から渡してくれないの」と文句を言っていじけそうだが、俺が作った「アレ」を食べてもらえれば機嫌も直るだろう。
 そう信じて帰ると……

「おう、ほ帰り、カフ!」

 屋敷に帰るとヤトが何かを頬張りながら出迎えてくれる。
 その腕にはバケツのような大きさの容器が抱えられていた。

「あー……ヤト、まさかそれは?」

「ん?ああ、これか?小腹が減ったんで飯を探していたんだが、冷たくなる箱の中にコレがあったから気になって食べてみたら……」

 そう言いながらバケツからまた一口分をすくって口に入れると、その姿と相まってまるで少女のような蕩けるような表情になるヤト。冷たくなる箱とはきっと冷蔵庫のことだろう。

「食べると舌の上で一瞬で溶けてしまう。だが口の中に残るこの甘さ……長年生きてきた私が今まで食べたことのない美味さだ!なんという食い物なんだ、これは?」

 驚きつつも満足そうにしながら食べ続けるヤト。そんな彼の姿を見た俺は頭を抱えていた。
 そしてさらにはタイミング悪くルルアとレトナがやってきて、美味そうに何かを食べている彼の姿を目撃してしまう。

「あー、ヤトが何か食べてる!」

「昼飯……じゃないよな?時間的にもまだ早いし……というかその食べてるものから何か甘い匂いしないか?」

 何かを食べてるヤトにルルアたちが駆け寄り、その中身を確認する。

「……何これ?」

「全部同じ色……美味いのか?」

「おう、滅茶苦茶美味いぞ!」

 一見美味そうには見えないらしく眉間にシワを寄せるルルアとレトナだが、ヤトが続けて「ソレ」を口に入れて美味しそうに食べる。
 そんな彼の姿が相当なものだったのか、ルルアたちも羨ましそうに涎を垂らしてしまう。

「……ね?もしかしてヤトが食べてるものってお兄ちゃんが作った甘い食べ物?」

「……ああ、そうだ。そろそろ去年と同じハロウィンの時期になったから『プリン』っていうのを作ったんだが、どうやら渡す前に見つけて食われちまったみたいだ」

「それって俺たちの分はもうないってことか?」

 大きな容器に入ったプリン、いわゆるバケツプリンを美味そうに食べてるヤトの姿を見ながら落胆するレトナ。まぁ、こうなるよな。

「ないってわけじゃない。ただその大きさのプリンは三つしか作ってないんだ。ヴェルネとお前ら二人の分でな……一応ヤトの分は別で用意してたんだが……そっちは小さいコップ程度の量しかないんだよ」

「おいおい、こんな美味いものをそんな少量で済ませろだなんて酷なことを言ってくれるじゃないか?」

 ヤトはそう言いながら遠慮無くバケツプリンを無慈悲に食べ続けた。きっとルルアは悔しがってるだろう……と思っていたのだが、残念そうにして首を傾げているがそこまででもなさそうだった。

「んー……じゃあ、しょうがないからレトナと分けて食べようかな。レトナもそれでいい?」

「うん、いいぞ!ちょうど俺もそう思ってたところだ!ヴェル姉ちゃんの分を取るわけにもいかないしな。それにあんだけの量があるなら分けても十分だろ」

 意外にも大人な対応をする二人についつい感心してしまう。たしかに一人で食べる分には多い量だが、それでも納得しないのが子供という印象だったが……誰かを気遣って遠慮できるとはな。
 まぁ、だからってヤトが子供っぽいとか責めることはしないけれど。
 そんなことを考えていると、前方の廊下からヴェルネがヤトと同じように食べ歩きながらやって来る。

「あら、そんなところで何してるの?」

「いや……っていうかヴェルネの食べてるそれって……?」

「これ?ちょっと甘い物が欲しくて冷蔵庫見たらコレがあったから貰ったわ。あんたが作ったやつ?結構美味しいのね♪」

 そう言ってヤト以上に美味しそうな表情をするヴェルネ。
 彼女を見たルルアが複雑そうな顔をする。

「一応ヴェルネの分はコイツが今食ってるくらいの大きなやつがあったんだけど……」

 俺がヤトの頭に手を乗せて言うと、ヴェルネがヤトが持つバケツプリンに視線を向ける。

「ん~?……いや、たしかに美味しいけどそんな量食べられるわけないでしょ。あたしはコレで十分よ」

 ヴェルネは嫌な顔をして本心からそう言っているようで、そのまま去ってしまった。
 ……これはつまり?

「バケツプリンが一つ余ったってことか。んじゃ、振り出しに戻ってルルアとレトナで一つずつ食べられるな」

「「…………」」

 二人とも喜ぶかと思ったのだけれども、ルルアたちは互いに顔を合わせて何かが通じあったように頷く。

「ううん、やっぱりルルアたちは二人で一つでいいよ。でもその代わりしたいことがあるけど、いい?」

 ルルアがそう言い、俺が答える前にレトナと二人で近寄って来て手招きする。そして俺が中腰になるとルルアたちはさらに近付き、それぞれが両耳に耳打ちしてきた。

「「……トリックオアトリート」」

 ――チュッ

 ハロウィン特有の言葉を囁くと二人が同時に頬へキスされる。
 ルルアは「えへへ」と無邪気に笑ってレトナは顔を真っ赤にして離れ、逃げるように廊下の向こうへと走って行ってしまった。
 俺は固まって彼女たちの背中を見送り、少しして溜め息を零して立ち上がる。彼女たちの予想斜め上の行動になんだかやられた感を感じるのだった。

「ん?一つ余ったのか?だったらそれも私が貰っていいか?」

「ダメだ。お前が大食いの竜だって言っても流石に食い過ぎだ。まだ渡す相手がいるからそいつにやることにするよ」

 今のバケツプリンを食べ切ってもいない癖に食い意地の張ったことを言い始めるヤトにそう言ってやると、若干不服そうにはしつつも渋々了解して食べ歩きを始めてどこかへと行く。
 ……行儀が悪いからせめて座って食ってほしいんだけどな。
 それはそれとして問題が解決し、結果として余ったバケツプリンを残りもう一人に差し上げることにした。
 ということで椅子に座ったフウリの目の前に彼女の頭と同じぐらいの量をドンッと置いた。

「…………エ?」

 しばらく固まった後、俺の顔色を窺うように見てくる。

「えっと……トリックオアトリート?」

 「ある意味悪戯」という意味でそう言うと、俺が全部を説明せずとも心を読んで悟ってくれたらしいフウリが次に一緒に机を囲んでプリンを分け合って食べてるルルアたちに視線を向ける。
 互いに「あーん♪」と恋人のように食べさせ合ってるルルアたちを羨ましそうに見ながらも再び俺に視線を向けてくる。

「……アウタルも呼んでイイ?」

 彼女もまた自分一人では多過ぎると感じたらしい彼女の言葉に頷く。
 ……今度またお菓子作る機会があったらヤト以外は少なめにするか。
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