異世界でも目が腐ってるからなんですか?

萩場ぬし

文字の大きさ
122 / 196
4章

2話目 中編 美女の嫉妬

しおりを挟む
「勝負?」
「えぇ、そうです。ワタクシたちとマルスさんたち、それぞれ一つの依頼を受けてどちらが早く完遂するか。負けた人は勝った人のお願いを聞くというのはどうでしょう?」
「へぇ、それは面白そうだね」

 フランシスさんの提案にルフィスさんが意外にも乗り気だった。
 よし、フォローも十分したことだし、こいつらが勝手に盛り上がってる隙に俺は俺で依頼を受けるとするか――

「うん、僕も面白そうだと思う。それじゃあ、ヤタたちも入れて三グループで競うとしよう!」
「「……え?」」

 まさかのマルスの発言に、俺とフランシスさんの声が重なった。

「おいちょっと待て。なんで俺がお前らと競わにゃならんのだ」
「そうですわ!これはあくまでワタクシとあなたの勝負であって――」
「僕たちは良い友人関係を築く……そうだろ、アリアさん?」

 さっきの言葉を利用されたフランシスさんは「ぐぬぬ……」と悔しそうにする。

「だとしても、俺が参加するメリットはないんだが?お前らにする命令なんてないからな」
「まぁ、そう言わないでくれ。君たちが勝ったらご飯くらいは奢るからさ」

 飯の奢りか……たしかにそれは俺たちからすれば魅力的だな。
 でもどうせなら少し引き出してみるか。

「二食だ」
「え?」

 俺の言葉を聞き返してくるマルス。

「俺たちはまだ昼食を食ってない。だから参加してほしいなら賭けとは別に昼食を奢れ。んで俺たちが勝ったら夕食もお前持ちだ。それなら勝負に乗ってやる」

 少々欲張りかもしれないが、俺は安易に「わかった」なんて言って引き受けない。
 特にこいつには遠慮してやらん。どうせ階級が高いから儲かってるだろうしな。
 ここであやからない手はないだろう。

「ははっ、それくらいならお安い御用さ」
「それともう一つ……ハンデとしてもう一人呼んでいいか?」

――――

「そ、それで俺が呼ばれたのか?この中に?」

 ツンツンな金髪をした若者、ガープが戸惑った様子で聞いてくる。
 こいつとは前の町からこの町に移る時に知り合った冒険者だ。今の俺よりも一つ階級が高い「剣士」だ。
 他に俺の知り合いって言ったらこいつしかいないから、ある意味呼びやすいしな。
 ちなみにもうすでにマルスやフランシスさんを含んだ三グループでテーブルを囲んでいる状態だ。
 まぁ、こんな美男美女が揃っていれば緊張もするか。

「まーな。これから依頼をそれぞれ受けて誰が先にクリアするか競うんだ。今はマルスの奢りでその前の腹ごしらえ」
「君も食べたいものを遠慮せず好きなだけ食べていいよ」
「は、はぁ……」

 状況を完全には飲み込めていない顔をしているガープだが、とりあえずと俺の横に座る。

「……なぁ、なんでマルスさんとアリアさんと一緒に飯を食うことになってんの?何なんだよ、この豪華メンバーは……」

 ガープも気後れしているのか、あまり良い顔はしない。
 まぁ、ガープもそこそこ良い顔立ちをしているとはいえ、それは一般人の中で考えればというだけの話であって、アイドル級の超絶イケメン美女が相手では形無しということだろう。

「そんな文句言うなって。そのメンバーと競わなならん俺たちの身にもなってくれ……それにこの賭けに勝てば何でもお願いをしていいぞ」
「……ん?何でも?」

 俺が付け加えた言葉に、ガープは顔をキリッとさせて聞き返してきた。
 流石男だ。「何でも」という言葉に反応するのはうちの現代人だけではないらしい。

「おい、ヤタ」
「なんだ?」
「勝つぞ、この勝負」

 その時のガープの顔は、あまりにも凛とし過ぎてマルスよりもイケメンなんじゃないかと思えてしまったほどだった。
 しかしこの会話、普通にマルスたちにも聞こえているので、女性陣からは冷たい蔑む視線が向けられていた。おぉ、怖い怖い。
 しかし言っておくが俺は嘘を吐いてはいない。
 勝てば「お願い」してもいいなんて、勝負の勝ち負け関係なくできるのだから。
 だから俺たちは夕飯を食える。ガープは賭けの賞品として告白する勇気を持てる。
 これもWinWinってやつだ。
 ……ま、あくまでお願いだから断られるかもしれないがな。

「それではワタクシたちは一足先に行かせてもらいますわね」

 飯もそこそこに食い終わったフランシスさんが突き放すようにそう言い、彼女のパーティメンバーも同時に立ち上がる。

「もう行くのか?」
「えぇ、戦いはすでに始まっていますので」

 俺の問いに冷たく言い放つフランシスさん。そこまでして勝ちたいのか?
 やれやれ、こいつが勝ったら何を要求されることだか……

「そういえばあんたらって階級はなんだ?」
「……知らないんですの?」

 えぇ、知りませんとも。
 ただでさえマルスとルフィスさんの二人がこの町だけでなく世界的にも有名だったなんて、ついこの前知ったところなんだからな。
 ガープが言うにはフランシスさんたちもこの町では美女だということと階級の高さで有名らしいからな。
 やっぱりマルスたちをライバルと言うからには彼女たちも相当上の階級なのだろうか?

「彼女は槍鬼人そうきじんだよ。槍使いの中でもかなり上の階級に位置してるんだ」

 本人に変わってマルスが答える。
 「鬼人」なんて言うくらいなんだから、マルスに並ぶか少し下くらいなのだろう。
 ……いや、並んでいるならマルスがパーティに誘ってるはずか。
 だけどマルスは前に言っていた。
 ――逆に僕ら以外にまともなパーティを組める相手がいないっていうのもあるけど――
 ルフィスさん以外と組むと好きな依頼を受けられない……つまりマルスたちと並ぶ階級を持つ人間がいないということ。
 ライバルなんて称しているが、実際は他の冒険者よりも階級が高く、最もマルスたちに近いから突っかかってるってだけの話だ。

「そりゃスゲーな」

 とはいえ、そこを指摘して嫌味や皮肉を言いたいわけじゃないので素直に褒めておく。

「バカにしてるんですの?」

 フランシスさんが眉をひそめながら不満そうに言う。
 おかしいな、褒めたはずなのになんでそう捉えられたんだろうか……してないよね?

「俺の言い方ってそんな嫌味っぽかった?」
「人によっては腹立つかもな」
「さいですか……」

 ガープに耳打ちするとそんな返答が返ってきて溜め息を吐きそうになる。
 ちょっと神経質過ぎませんかね……いや俺に言われたら誰でも神経質な反応をするか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

処理中です...