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無理のある試みに対する最後の挑戦~無我夢中の果てにあるもの~
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「ちくしょう、あのレイラって女。リザにも被が及ぶとか冗談じゃねぇ。嘘だったら承知しねぇからな! クソが!」
鉄格子にケリを入れている男性。
そのガラの悪さにどこか覚えがあった。
リザと言うとエリザベスあたりの愛称だろうか。
どうやらレイラが適当に言いくるめたらしい。
「誰だか知らんが前の奴だな、次はこいつを陥れてくれ!」
「説明端折るな意味わからん!」
とにかく説明を重ねてどうにか納得させる。
レイラもかみ砕いた説明はしてくれているが、初対面の相手の言葉ゆえに全てを信じるのも難しいだろう。一度ここに来た人間ならば僕と顔を合わせればどうにかなる。初めての相手は、嘘を見抜くなりしてある種の信頼を得なくてはならない。
何とも手間のかかる、複雑な工程だ。
いったいどれほどの時間が経過したか、囚人の言葉から推測するしかない。
既にアンナは近衛兵に連れていかれたようだ。
もはや猶予はない。この試みが最後のチャンスだ。
事情を知る者はどんどん増えてはいるが、問題は送り込んだその瞬間に「ごくわずかな間で」侯爵令嬢に取り次げる相手に辿り着くことだ。
レイラたちが自由に動ける余裕が出るのはあくまでも夜が明けてからの話。現場での身動きは限界がある。声を掛けられる相手は身分が低い相手や、一度呼び出した相手を介して声を掛けてもらうと言うような方法が行われていると推測される。
言わば椅子を取り換え、伝言を繰り返すこと。
それが僕のやっている行為なのだ。
ここに来て初歩的なことを思うが、「新しい未来の記憶を持つ人間が行くたびに過去は変わる」のではないだろうか。常に上書きされ続ける過去。
レイラの認識にしても、最後に送った状態に固定されている可能性が高い。とすれば、より複雑な動きを即座に求められるだろう。彼女の祝福と賢さをアテにするより他はない。いよいよ事態の恐ろしさに戦慄する。
実に複雑怪奇。過去を歪め続けるおぞましき振る舞い。
これは祖先も表舞台からさっさと隠れるわ。
牢番でもしてた方がマシだと思うのもわからなくはない。
誰も使いたがらないのも至極当たり前のことだ。
そりゃ無理だよ、こんな無茶な事。
様々な大事なことを盛大に無視して何事かを行っている。
さながら運命をこねくり回す陶芸も良いところだ。
恐らく一定の賢さがあればどこかで止めてしまうかもしれない。
もう無理だろうと諦めてしまうかもしれない。
適度に愚かで無神経で大雑把な僕だからこそ出来るのだと思えて来た。
囚人と囚人が入れ替わるまでの間、あちらの時間も少しずつ進む。
とにかく次々相手を変えていく。
二人、三人、四人、あぁ何時間が経過しただろう。
あちらとこちらの時間の流れは違う。
だけどこの夜が明けたら、もうアンナを救えない気がしてきた。
「頼む、この相手につないでくれ!」
これで何人目の囚人を送って来ただろう。
さすがに疲れを感じて来た。
話を聞いては過去に送り出すことの繰り返す。
念のため、最も侯爵令嬢に近いと思われる相手や他の名前についても知らないかと聞いてはいるが、次に呼ぶ相手しか面識がないことがほとんどだ。知っていても噂レベルで即座に話が出来るような関係ではないと。
別の誰かが囚人として牢の中に入っているので、確実に何がしかの成果は出ているはず。
でも終わらない。終わりが見えない。
わずか数人を交代させることの難しさ。
しかも何度も繰り返すうちに意識がだんだん薄れかけて来た。
恐らく祝福の多用が体力を削っているのだ。
そして何よりも彼女が、アンナは何度となく死に続けていた。
気持ちの上でも、限界に近い。
「公爵家のアナスタシアと申します。祝福は風向きを読む事。アンナ様とは面識もありませんし、お父様が何とかしてくださると良いのですが」
まとう色は青。正直者。
これまでで、もっとも身分の高い相手だ。
彼女自身はそこまで危機感を抱いても居ないらしい。
生贄にするには身分が上がるほどに失敗する可能性も上がる。
あるいは目の前の彼女は死刑にならずに済むかもしれない。
だが、最も重要なのはアンナの生死である。
メモを渡し、最後の名前に当たる部分を指し示す。
「こちらの方は宰相様のご令息ですね」
「知ってる方でしょうか?」
身分の高い相手ゆえに多少口調も丁寧にする。
「えぇ。その実は求婚されていまして。本気かどうかはわかりませんが」
「侯爵令嬢様とは親しいだろうか」
「えぇ、お二人はいとこ同士だそうです」
「これから言うことをよく聞いて、そのように動いて欲しい。とても大事なことなんだ。恐らく君の身を助け、そしてその未来を明るいものにするはずだ。女神のお導きを信じて欲しい」
そして、最後の希望を託した。
現れたのは。
鉄格子にケリを入れている男性。
そのガラの悪さにどこか覚えがあった。
リザと言うとエリザベスあたりの愛称だろうか。
どうやらレイラが適当に言いくるめたらしい。
「誰だか知らんが前の奴だな、次はこいつを陥れてくれ!」
「説明端折るな意味わからん!」
とにかく説明を重ねてどうにか納得させる。
レイラもかみ砕いた説明はしてくれているが、初対面の相手の言葉ゆえに全てを信じるのも難しいだろう。一度ここに来た人間ならば僕と顔を合わせればどうにかなる。初めての相手は、嘘を見抜くなりしてある種の信頼を得なくてはならない。
何とも手間のかかる、複雑な工程だ。
いったいどれほどの時間が経過したか、囚人の言葉から推測するしかない。
既にアンナは近衛兵に連れていかれたようだ。
もはや猶予はない。この試みが最後のチャンスだ。
事情を知る者はどんどん増えてはいるが、問題は送り込んだその瞬間に「ごくわずかな間で」侯爵令嬢に取り次げる相手に辿り着くことだ。
レイラたちが自由に動ける余裕が出るのはあくまでも夜が明けてからの話。現場での身動きは限界がある。声を掛けられる相手は身分が低い相手や、一度呼び出した相手を介して声を掛けてもらうと言うような方法が行われていると推測される。
言わば椅子を取り換え、伝言を繰り返すこと。
それが僕のやっている行為なのだ。
ここに来て初歩的なことを思うが、「新しい未来の記憶を持つ人間が行くたびに過去は変わる」のではないだろうか。常に上書きされ続ける過去。
レイラの認識にしても、最後に送った状態に固定されている可能性が高い。とすれば、より複雑な動きを即座に求められるだろう。彼女の祝福と賢さをアテにするより他はない。いよいよ事態の恐ろしさに戦慄する。
実に複雑怪奇。過去を歪め続けるおぞましき振る舞い。
これは祖先も表舞台からさっさと隠れるわ。
牢番でもしてた方がマシだと思うのもわからなくはない。
誰も使いたがらないのも至極当たり前のことだ。
そりゃ無理だよ、こんな無茶な事。
様々な大事なことを盛大に無視して何事かを行っている。
さながら運命をこねくり回す陶芸も良いところだ。
恐らく一定の賢さがあればどこかで止めてしまうかもしれない。
もう無理だろうと諦めてしまうかもしれない。
適度に愚かで無神経で大雑把な僕だからこそ出来るのだと思えて来た。
囚人と囚人が入れ替わるまでの間、あちらの時間も少しずつ進む。
とにかく次々相手を変えていく。
二人、三人、四人、あぁ何時間が経過しただろう。
あちらとこちらの時間の流れは違う。
だけどこの夜が明けたら、もうアンナを救えない気がしてきた。
「頼む、この相手につないでくれ!」
これで何人目の囚人を送って来ただろう。
さすがに疲れを感じて来た。
話を聞いては過去に送り出すことの繰り返す。
念のため、最も侯爵令嬢に近いと思われる相手や他の名前についても知らないかと聞いてはいるが、次に呼ぶ相手しか面識がないことがほとんどだ。知っていても噂レベルで即座に話が出来るような関係ではないと。
別の誰かが囚人として牢の中に入っているので、確実に何がしかの成果は出ているはず。
でも終わらない。終わりが見えない。
わずか数人を交代させることの難しさ。
しかも何度も繰り返すうちに意識がだんだん薄れかけて来た。
恐らく祝福の多用が体力を削っているのだ。
そして何よりも彼女が、アンナは何度となく死に続けていた。
気持ちの上でも、限界に近い。
「公爵家のアナスタシアと申します。祝福は風向きを読む事。アンナ様とは面識もありませんし、お父様が何とかしてくださると良いのですが」
まとう色は青。正直者。
これまでで、もっとも身分の高い相手だ。
彼女自身はそこまで危機感を抱いても居ないらしい。
生贄にするには身分が上がるほどに失敗する可能性も上がる。
あるいは目の前の彼女は死刑にならずに済むかもしれない。
だが、最も重要なのはアンナの生死である。
メモを渡し、最後の名前に当たる部分を指し示す。
「こちらの方は宰相様のご令息ですね」
「知ってる方でしょうか?」
身分の高い相手ゆえに多少口調も丁寧にする。
「えぇ。その実は求婚されていまして。本気かどうかはわかりませんが」
「侯爵令嬢様とは親しいだろうか」
「えぇ、お二人はいとこ同士だそうです」
「これから言うことをよく聞いて、そのように動いて欲しい。とても大事なことなんだ。恐らく君の身を助け、そしてその未来を明るいものにするはずだ。女神のお導きを信じて欲しい」
そして、最後の希望を託した。
現れたのは。
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