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囚人たちの後日談~受け継がれるもの~
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後年、レイラを通じて様々な情報が伝えられる。
あの牢屋に呼び出された者達の話だ。
彼らも祝福や人柄について改められ、力ある者は見出された。
鎮静の祝福を持つ商人の娘のグレース。
その祝福を駆使した交渉力の高さから一族共に国から重用されたらしい。
思えば彼女からレイラへと続く流れが開かれたとも言える。
隠れた立役者であり、彼女が居たからこそ今がある。
同時にそんなグレースへと繋いだ者もまた同じことが言えた。
ただ、誰が彼女の前だったかはすっかり忘れた。
順番はさすがにさっぱりだ。
使用人のメアリと料理人のヨハンソンは結婚したそうだ。
数年を経てヨハンソンは料理長となり、メアリも五人の子持ちの肝っ玉母さんになったらしい。彼女はメイド長となり、若い使用人を厳しく指導し、無礼な貴族に対峙しても一歩も引かない、そんな強さを得たらしい。
弱い治癒の祝福を成長させてかなりの深手でも癒せるほどに成長させたらしく、その力によって一定の立場も得ているそうだ。要は簡単に辞めさせたり、雑な扱いを受けさせないために有用性を示しているということ。
牢屋で泣きじゃくる彼女を知っているだけにその様変わりは、伝聞ながら驚いた。
アンナに次いで繰り返し牢に送られる日々を過ごした者だ。
生贄の子羊として捧げられた無力な自分を嘆いたか。
相応に強さも得たのだろう。
弱いだけではただ食べられるだけだものな。
ヨハンソンもまた、その穏やかな人柄と献身で彼女の心を掴んだようだ。
日頃から「天使様ありがとう」と感謝を捧げているらしい。
彼の作る料理は祝福を生かした複雑な隠し味が見事だとか。
二度牢屋に呼び出された子爵家のマリアベル。
天候を読める彼女はその祝福を生かし、災害の予想などを行う立場に就いたそうだ。
その親戚のロバートは小さな火を出せる。
彼らの一族は災害時に役立つ祝福が多く出るらしい。
大きな災害時には様々な活躍をしたそうだ。
アンナも直接面識はないが、故郷が洪水の被害に遭った際にそうした者達に助けられた覚えがあると言う。お互いに知らぬ間に、あるいは気づかぬ間に案外とどこかで会っていたのかもしれない。
外の世界はやはり、色んな者達が居る。
ただ残酷で愚かなだけでもない。
知らない内に誰かに助けられることはいくらでもあるのだ。
不貞腐れているばかりでは何事もはじまらない。
いじめられていた男爵家のフィリップ。
生き物の雄と雌を見抜くという場によっては全く無意味な祝福。
あの夜に彼も実は、一定の活躍を見せたらしい。
殿下の暗殺騒ぎが起こった際、場は一時騒然としたそうだ。
未来から過去に遡った異常な体験をした者達は比較的冷静に動いた。
ガラの悪いロドリグやその婚約者のエリザベスが不審な者を捕らえ、フィリップも検分を手伝う羽目になったとか。彼の祝福は相手の衣服を脱がさずとも触れるだけで性別の判別が可能。すると女装した男性が混ざっており、尋問したところやはり密偵だったらしい。
おかげで、一定の功績を得たらしい。
自分の祝福により自信が付いて、堂々とするようになったそうだ。
とは言え、毎度密偵が女装するわけでもない。
それを職業とするには難しく、普段は相変わらず動物の性別を判別するのに利用しているそうだ。牧場を経営し、それなりにうまく行っているとか。
ロドリグとの関係も、ある程度改善されたらしい。少なくとも嫌な事は嫌と言うようになったとか。聞いた時にはとっくに彼らも学生ではなくなっていたので、もはやただの昔話であるが。
そのロドリグはと言うと、妻となったエリザベスに調教、もとい尻に敷かれているらしい。ちなみにエリザベスの「痛み」を与える祝福はやはり尋問に向いているとのことで国から見いだされ、時折顔を合わせることになった。
「あまり柄ではないのですけどね。あなたのおかげでそこまで苦しめなくて済むのは助かります」
「お手柔らかに頼むよ」
彼女とは特に揉めていなかったのは良かった。
牢屋でも一度食らったが、あれは痛い。
ちなみに夫の光る蝶々を出す祝福は彼らの子どもを良く楽しませているらしい。子煩悩で、いつも相手をしてくれて助かるとか。
サボり癖のある騎士見習いのルーカスは、夢占い師に転身したらしい。
見たい夢が見られるらしい、という何とも曖昧な祝福。
しかし例の夜に戻った際に一瞬うたた寝をし、国王陛下やオリヴィア様に暗殺者が迫ると言う夢を見たとかで即座にその場に居た騎士団長に進言したらしい。
普段はぼんやりとしている彼が異様な形相で「国が滅ぶ! 国が滅ぶ! 子々孫々に渡って恐ろしい罪禍が迫る!」と詰め寄ったらしい。
何やら不審ではあったが、実は彼の祖先は夢で未来を予知をする祝福を持っていたらしい。建国王の時代に讃えられし、伝説の一角に連なる者。騎士団長は実は彼の遠縁であり、その一族でもあった。それゆえ、ルーカスの様子に何かを感じたらしい。騎士団長の祝福は優れた直観力。だらしない親戚の若者に何かあると常日頃から感じていたようだ。
殿下の暗殺の報せを聞き、騎士たちもルーカスの発言を元に配置を固めた。
結果として、未然に暗殺は防がれたらしい。
伝説級の祝福。国を守る存在はそこかしこに居たのだ。
ある意味で、僕もまた彼らに近しい存在なのかもしれない。
あらゆる音を聞き取るミザリーはその能力を生かし、国の諜報機関で働いている。アンナに再会した際には、かつてその危機を救えなかったことをひどく詫びていた。自分のことを少しでも気に掛ける存在が居たと知り、アンナもまた涙していた。
他にも誰か居た気はするが、聞かされてもすぐに忘れた。特に終盤はもう無我夢中で相手の顔すら覚えていない。レイラが「最近例の画家が」などと言っていたが、聞いてもわからず首を傾げた。印象の薄い者は片っ端から記憶から飛んでいる。
短い間にあれだけ大勢と会えばそうもなる。
全員の名前を正確に思い出せと言われても無理だ。
接した時間が短くともやはり印象に残る存在も居た。
賢明な宰相の息子と風向きを読めるアナスタシア嬢も無事結婚。
国家的な陰謀を阻んだ功績もあって盤石な地位を築いたそうだ。
オリヴィエ様は第二王子と結婚し、無事王妃となられた。
ちなみに僕とアンナの結婚式には色とりどりの見事な薔薇の花束が贈られた。オリヴィエ様の祝福によって生み出されたそれは、まさに荘厳にして優美。
女神に選ばれし英雄たる真実の色をまとう者。
最後に僕らを救ったのは彼女であるが、何故だか少しだけ恐ろしくも感じる。
その偉大な存在は、あるいは再び大きな災厄に対するために天より配されているのではないか、そんな風に感じるのだ。未来に何が起こるかは誰にもわからない。
僕はアンナと共に普段は侯爵家ゆかりの土地で暮らしている。
最近は雑貨屋などを営んでいるが、常に誰かしらに監視されていた。
もう慣れていて、顔見知りを見かけて会釈したりしている。
血筋から同じ力を持つ者が生まれることもあるかもしれない。
レイラが関わる研究機関と侯爵家に管理されることになった。
それもある意味での後ろ盾だ。
呼び出されれば即座に馳せ参じて己の役目を果たす。
平和になれば暇な時期もそれなりに長く続く。
収入はその仕事の分安定しており、経済的な不安はない。
牢番として生きることに比べればよほど自由で気楽だった。
雑貨屋はある種の隠れ蓑。
アンナも半ば趣味で経営しており、楽し気である。
妻が幸せそうで何よりだ。
ちなみに彼女の木炭を出す祝福についても研究がされている。時間を越えても残ったそれには何がしかの力が秘められているかもしれないと、今でも定期的に関係機関へと奉納していた。
あるいは子孫がそれを使う時が来るかもしれない。まぁ来ないなら来ないにこしたことはないけれども。と言うより、来るな。来なくていいわ。あんなもん。マジでしんどいよあれ、とたまにものすごく愚痴をこぼしたくなる。
時間を間接的に弄ると言う意味不明な作業は酷く心をすり減らした。
たまに悪夢としてよみがえり、うなされる。
今だ牢屋に居るのではないかと錯覚するほどに。
あの夜にまた急に戻されたら、と思うと恐ろしくてたまらない。
もしも似たような祝福を今誰かが使ったら?
それは不意に訪れるかもしれないのだ。
祝福と呪いは表裏一体である。
戒めだけは常に受け継ぐべきだった。
あの牢屋に呼び出された者達の話だ。
彼らも祝福や人柄について改められ、力ある者は見出された。
鎮静の祝福を持つ商人の娘のグレース。
その祝福を駆使した交渉力の高さから一族共に国から重用されたらしい。
思えば彼女からレイラへと続く流れが開かれたとも言える。
隠れた立役者であり、彼女が居たからこそ今がある。
同時にそんなグレースへと繋いだ者もまた同じことが言えた。
ただ、誰が彼女の前だったかはすっかり忘れた。
順番はさすがにさっぱりだ。
使用人のメアリと料理人のヨハンソンは結婚したそうだ。
数年を経てヨハンソンは料理長となり、メアリも五人の子持ちの肝っ玉母さんになったらしい。彼女はメイド長となり、若い使用人を厳しく指導し、無礼な貴族に対峙しても一歩も引かない、そんな強さを得たらしい。
弱い治癒の祝福を成長させてかなりの深手でも癒せるほどに成長させたらしく、その力によって一定の立場も得ているそうだ。要は簡単に辞めさせたり、雑な扱いを受けさせないために有用性を示しているということ。
牢屋で泣きじゃくる彼女を知っているだけにその様変わりは、伝聞ながら驚いた。
アンナに次いで繰り返し牢に送られる日々を過ごした者だ。
生贄の子羊として捧げられた無力な自分を嘆いたか。
相応に強さも得たのだろう。
弱いだけではただ食べられるだけだものな。
ヨハンソンもまた、その穏やかな人柄と献身で彼女の心を掴んだようだ。
日頃から「天使様ありがとう」と感謝を捧げているらしい。
彼の作る料理は祝福を生かした複雑な隠し味が見事だとか。
二度牢屋に呼び出された子爵家のマリアベル。
天候を読める彼女はその祝福を生かし、災害の予想などを行う立場に就いたそうだ。
その親戚のロバートは小さな火を出せる。
彼らの一族は災害時に役立つ祝福が多く出るらしい。
大きな災害時には様々な活躍をしたそうだ。
アンナも直接面識はないが、故郷が洪水の被害に遭った際にそうした者達に助けられた覚えがあると言う。お互いに知らぬ間に、あるいは気づかぬ間に案外とどこかで会っていたのかもしれない。
外の世界はやはり、色んな者達が居る。
ただ残酷で愚かなだけでもない。
知らない内に誰かに助けられることはいくらでもあるのだ。
不貞腐れているばかりでは何事もはじまらない。
いじめられていた男爵家のフィリップ。
生き物の雄と雌を見抜くという場によっては全く無意味な祝福。
あの夜に彼も実は、一定の活躍を見せたらしい。
殿下の暗殺騒ぎが起こった際、場は一時騒然としたそうだ。
未来から過去に遡った異常な体験をした者達は比較的冷静に動いた。
ガラの悪いロドリグやその婚約者のエリザベスが不審な者を捕らえ、フィリップも検分を手伝う羽目になったとか。彼の祝福は相手の衣服を脱がさずとも触れるだけで性別の判別が可能。すると女装した男性が混ざっており、尋問したところやはり密偵だったらしい。
おかげで、一定の功績を得たらしい。
自分の祝福により自信が付いて、堂々とするようになったそうだ。
とは言え、毎度密偵が女装するわけでもない。
それを職業とするには難しく、普段は相変わらず動物の性別を判別するのに利用しているそうだ。牧場を経営し、それなりにうまく行っているとか。
ロドリグとの関係も、ある程度改善されたらしい。少なくとも嫌な事は嫌と言うようになったとか。聞いた時にはとっくに彼らも学生ではなくなっていたので、もはやただの昔話であるが。
そのロドリグはと言うと、妻となったエリザベスに調教、もとい尻に敷かれているらしい。ちなみにエリザベスの「痛み」を与える祝福はやはり尋問に向いているとのことで国から見いだされ、時折顔を合わせることになった。
「あまり柄ではないのですけどね。あなたのおかげでそこまで苦しめなくて済むのは助かります」
「お手柔らかに頼むよ」
彼女とは特に揉めていなかったのは良かった。
牢屋でも一度食らったが、あれは痛い。
ちなみに夫の光る蝶々を出す祝福は彼らの子どもを良く楽しませているらしい。子煩悩で、いつも相手をしてくれて助かるとか。
サボり癖のある騎士見習いのルーカスは、夢占い師に転身したらしい。
見たい夢が見られるらしい、という何とも曖昧な祝福。
しかし例の夜に戻った際に一瞬うたた寝をし、国王陛下やオリヴィア様に暗殺者が迫ると言う夢を見たとかで即座にその場に居た騎士団長に進言したらしい。
普段はぼんやりとしている彼が異様な形相で「国が滅ぶ! 国が滅ぶ! 子々孫々に渡って恐ろしい罪禍が迫る!」と詰め寄ったらしい。
何やら不審ではあったが、実は彼の祖先は夢で未来を予知をする祝福を持っていたらしい。建国王の時代に讃えられし、伝説の一角に連なる者。騎士団長は実は彼の遠縁であり、その一族でもあった。それゆえ、ルーカスの様子に何かを感じたらしい。騎士団長の祝福は優れた直観力。だらしない親戚の若者に何かあると常日頃から感じていたようだ。
殿下の暗殺の報せを聞き、騎士たちもルーカスの発言を元に配置を固めた。
結果として、未然に暗殺は防がれたらしい。
伝説級の祝福。国を守る存在はそこかしこに居たのだ。
ある意味で、僕もまた彼らに近しい存在なのかもしれない。
あらゆる音を聞き取るミザリーはその能力を生かし、国の諜報機関で働いている。アンナに再会した際には、かつてその危機を救えなかったことをひどく詫びていた。自分のことを少しでも気に掛ける存在が居たと知り、アンナもまた涙していた。
他にも誰か居た気はするが、聞かされてもすぐに忘れた。特に終盤はもう無我夢中で相手の顔すら覚えていない。レイラが「最近例の画家が」などと言っていたが、聞いてもわからず首を傾げた。印象の薄い者は片っ端から記憶から飛んでいる。
短い間にあれだけ大勢と会えばそうもなる。
全員の名前を正確に思い出せと言われても無理だ。
接した時間が短くともやはり印象に残る存在も居た。
賢明な宰相の息子と風向きを読めるアナスタシア嬢も無事結婚。
国家的な陰謀を阻んだ功績もあって盤石な地位を築いたそうだ。
オリヴィエ様は第二王子と結婚し、無事王妃となられた。
ちなみに僕とアンナの結婚式には色とりどりの見事な薔薇の花束が贈られた。オリヴィエ様の祝福によって生み出されたそれは、まさに荘厳にして優美。
女神に選ばれし英雄たる真実の色をまとう者。
最後に僕らを救ったのは彼女であるが、何故だか少しだけ恐ろしくも感じる。
その偉大な存在は、あるいは再び大きな災厄に対するために天より配されているのではないか、そんな風に感じるのだ。未来に何が起こるかは誰にもわからない。
僕はアンナと共に普段は侯爵家ゆかりの土地で暮らしている。
最近は雑貨屋などを営んでいるが、常に誰かしらに監視されていた。
もう慣れていて、顔見知りを見かけて会釈したりしている。
血筋から同じ力を持つ者が生まれることもあるかもしれない。
レイラが関わる研究機関と侯爵家に管理されることになった。
それもある意味での後ろ盾だ。
呼び出されれば即座に馳せ参じて己の役目を果たす。
平和になれば暇な時期もそれなりに長く続く。
収入はその仕事の分安定しており、経済的な不安はない。
牢番として生きることに比べればよほど自由で気楽だった。
雑貨屋はある種の隠れ蓑。
アンナも半ば趣味で経営しており、楽し気である。
妻が幸せそうで何よりだ。
ちなみに彼女の木炭を出す祝福についても研究がされている。時間を越えても残ったそれには何がしかの力が秘められているかもしれないと、今でも定期的に関係機関へと奉納していた。
あるいは子孫がそれを使う時が来るかもしれない。まぁ来ないなら来ないにこしたことはないけれども。と言うより、来るな。来なくていいわ。あんなもん。マジでしんどいよあれ、とたまにものすごく愚痴をこぼしたくなる。
時間を間接的に弄ると言う意味不明な作業は酷く心をすり減らした。
たまに悪夢としてよみがえり、うなされる。
今だ牢屋に居るのではないかと錯覚するほどに。
あの夜にまた急に戻されたら、と思うと恐ろしくてたまらない。
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