蒼のタチカゼ

しゃか

文字の大きさ
上 下
25 / 32

第3章 イド帝国

しおりを挟む
「はい、失礼致します」


陛下や王子に一礼をして踵を返して、謁見の間を後にした。


謁見の間を出て扉がしまった後、フゥゥゥ――と深いため息をついた。

腕を見るとサブいぼが立っていて、未だに冷や汗もとまらなかった。


「・・・あれがうちの大将ってわけか・・・おもしろい!」


タチカゼはもう一度息を吐き出して、謁見の間を後にした。


##############################


流石のタチカゼも皇帝の圧にあてられたのか、ぐったりとしながら自室で休もうと薄暗く長い廊下

を歩いていた。

すると向こう側からこちらに近付いて来る2組の影がみえた。

シュバルツ王子と従者のキバカゼだった。タチカゼは2人に向かって大きく手を振って近づいて

いった。


「おぉぉー!キバ兄!へへっ、やっぱりキバ兄と一緒に戦いたくてここまで来ちまったよ。

王子様もこれからはバンバンイド帝国の戦力として働くからよぅ、よろしくな!」


タチカゼは手を差し出した。それを見たキバカゼは


「そろそろ、その雑な三文芝居は止めてもらえねぇか?気分が悪くなる・・・」

「・・・せっかく師匠との感動的な再開を再現しようと思ったのに、つれないですね」


キバカゼいつものひょうひょうとした感じに話し方を戻した。


「お前がオリジンキューブの5号にインプットされた人格ってわけか・・・」

「ええ、そうです。少々時間がかかってしまいましたが完全覚醒することが出来ました」


タチカゼは仰々《ぎょうぎょう》しく、両手を広げて見せた。

キバカゼは特に何もリアクションする事もなく


「タチカゼはどうした?」と尋ねた。


「タチカゼ?タチカゼはぼくですよ?・・・なんて、下らない返事はやめておきましょう。

彼はキューブコアのアーカイブの中で徐々にデバッグされていますよ。いずれ彼の全データは

消去される事っでしょう」


クックックッとタチカゼは笑った。それを見てキバカゼはフッと笑顔を見せる。

タチカゼは予想外の反応に眉をぴくっと動かした。


「何が可笑おかしいんです?曲がりなりにもあなたの愛弟子だったのでしょう?」

「いや、悪かった。思ったより考え方が甘ちゃんなんだと思ってな」

「どういう事です?」


キバカゼはそれに答える事なく、「王子、時間を取らせました。行きましょう」と王子と共

に歩き始めた。タチカゼとすれ違いざまに、


「『あいつ』を舐めない方がいいぜ、なんせ俺の弟子だからな」


キバカゼはそう言って、王子と共に廊下の暗闇の中へと消えていった。


「・・・ふん、今更奴に何ができるというんだ。」


タチカゼは頭をガリガリと掻いて、フッと息を吐いた。


「さて、総大将は再起不能だろうし・・・ヤルか、蒼の風の面々を」


タチカゼは軽くほくそ笑んで、また薄暗い廊下を歩きはじめた。


しおりを挟む

処理中です...