よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード

✿モンテ✣クリスト✿

文字の大きさ
39 / 48
ヒメと明彦4、良子・芳芳編

第33話 美姫の裏切り2

しおりを挟む
20

「生田さんに聞いたもん!私がいない時、良子が千駄ヶ谷のアパートに来ていたことが何度かあったって。泊まった時もあったって、生田さんが教えてくれたもん!」
「私は、美姫がいなければ、彼に抱かれません!確かに、美姫がいない時、彼の部屋には行きました。いつものことでしょ?だから、いちいちあなたには言いませんでした。信頼してくれているものだと思っていたわ。それで、科目でわからないところを教えてもらったりしていました。泊まった時もあった。でも、彼も私も、セックスなんてしていません。約束でしょ?美姫がいなければ、私は彼としないって」

「フン!男と女が一つ部屋にいて、夜を過ごして、何もないわけがないわ!」
「私はそうできます。明彦だって、美姫がいなければ私を抱く気にはならないわ。私は彼のことがスキだけど、彼は美姫がスキなのよ?わからないの?私は単なるおまけなのよ?正直、おまけはいやだけど、でも、今の関係で諦めてます」
「ウソつけ!私から明彦を盗るつもりじゃん!明彦だって、私なんかより、何でも完璧で美少女の良子の方がいいに決まってる!二人で私を騙して、笑うつもりでしょ!いいわよ、欲しければあげるわよ!」

 また、良子にひっぱたかれた。

「こんなくだらない話をいつまで続けても無駄ね。美姫、今、お話ししたことは私は誰にも言わない。明彦にも言わない。だけど、自分が何を言ったのか、思い出して頂戴。よく反芻して反省なさい」
「うるさい!良子!私の部屋から出ていって!出てけ!」・・・

 あ~、イヤなことを思い出した。

 どこからおかしくなっちゃったんだろう?去年の8月末に達夫とディスコに行った時からだなあ。あれが、良子と明彦にウソをついた始まりだった。私が飲みすぎたからいけなかったんだ。達夫は悪くない。達夫を明彦と間違えて、抱きついてエッチしたのがいけなかったんだ。よく覚えてないけど。私が悪い。

 だけど、明彦だって、良子とエッチしてるじゃん!私の目の前で私の彼氏に犯されて身悶えしてよがっているじゃん!今頃、私がいなくなったから、せいせいして、あいつら、エッチしてるんだ!決まってる!またムカムカしてきた。

 火曜日、発作的に便箋と封筒を買ってきて、明彦に手紙を書いた。これを読めば明彦が騒いで、みんなに相談するだろうと思った。手紙にはこう書いた。

ー 去年の末から、私の大学進学のことで、明彦はいっぱい心配してくれて、それに答えられませんでした。私をかばってくれました。うれしかった。私の味方は明彦だけだ、と思いました。

 事実なんだよ。あの明彦が、私に隠れてウソをつくわけがないじゃん!私がいないのに、良子とエッチするわけがないじゃない!わかってる。わかってます。

ー 以前にも明彦には言いましたが、私が大学に進学する意味がわからない、というのは明彦には認めてもらえませんでした。あくまで、あなたは私が大学に進むと決めていました。

 だからイヤだって言ったのに。私の望みは、明彦のお嫁さんになることだったのに。大学なんて行く必要がないじゃない?頭だって良くない。良子と違うんだ。美少女でもない。でも、明彦はこんな私がスキって言ってくれた。高校2年生の時から優しくしてくれた。その前からもそうだけど。6年間、私を見ていてくれた。だから、私は彼のもの、お嫁になっちゃダメなの?

ー だんだん私の心は明彦から離れていきました。

 自分でもウソを書いているのはよくわかる。

ー 日曜日に、明彦、私にボーイフレンドができたら、キミ、どうする?と聞いたけど、真面目に受け取ってくれなかったよね? そう、私、ボーイフレンドができました。もう明彦にいろいろ言われるのはたくさん!好きな人ができたので明彦から逃げます!私にもう構わないで下さい。

 我ながら、よくもこんな文章が書けたものだ。我ながら呆れかえる。これは、彼に対する捨て台詞そのものだ!あてつけだ!・・・でもなあ、彼なら、そうか、ヒメの感情は尊重するよと言うだろう、思うだろう・・・バカ!引き止めて欲しいのに・・・バカ!依存関係とか、難しい言葉を使いやがって!・・・単純に、私がスキなら、自分のもの、ぼくの女だ!って言えばいいのに・・・言ってほしいのに・・・

 月曜日は、達夫と久しぶりにエッチした。受験勉強で忙しく、良子も一緒だったから会う機会がなかった。家出間際なので、エッチが新鮮だった。今年に入って、明彦も忙しくて、ぜんぜんエッチしてくれなかったから、気持ちが良かった。何度も逝った、達夫に逝かされた。

 でも、火曜日に手紙を出してから、達夫とのエッチも面白くなくなった。後ろめたい。それに、このまま達夫の部屋にずっといるわけにもいかない。食事も何も達夫が買ってくれた。部屋代の代わりで達夫にエッチさせているみたいだ。自分が惨めになってきた。

 火曜日に投函したから、明彦は水曜日には手紙を読んだはず。それから、木、金曜日。私を探しているんだろうか?でも、あんなことを書いちゃったので、当然、他に相手ができたと思ってるかな。パパとママは激怒してるだろうな?良子も怒り狂っている?良子にまたひっぱたかれるのはイヤだ!

 日も暮れてきた。だるくて何もする気がしなかった。達夫は午後から外出している。大学に行かないのかしら?あ~あ、洗濯しなくちゃ。パンツに私と達夫のものがベットリついていて、汚い。そんなに下着を持ってこなかったものなあ。ウトウトした・・・

 目が覚めた。部屋に達夫と誰かがいる。薄目を開けた。男が二人。達夫とヒソヒソ話している。上海系が、とか、台湾がとか、横浜のは足がつくけど、上物だからとか言っている。男の一人が、封で止めてある1万円の札束を4つ、達夫に渡している。何?これ、何?

 男二人が私に近寄ってくる。飛び起きようとしたが、先に毛布を剥がされた。男に口を塞がれた。口に布を突っ込まれて、猿轡?をされて、目隠しされた。足を縛られている。後ろ手に手も縛られた。担ぎ上げられた。車のスライドドアを開ける音がする。車にほうりこまれた。

 何?これ、何?誘拐?拉致?なんで達夫は止めないの?・・・え?札束?達夫は平気な顔で受け取った・・・達夫が私を誘拐犯に売った?そんなバカな!今朝も抱いてくれたじゃない?・・・バカな私は、達夫に騙されたってこと?・・・あああ・・・どうしよう?

 車がどこかに向かっている。30分くらいかしら?カーブしたり、信号待ちをしたりしている。車が停まった。フェンスを横に引くような音がした。車がちょっと動いて停車した。また、担ぎ上げられた。英語で何か話しているのが聞こえた。ドアを通って建物の中に入ったようだ。右、左に曲がった。どこかの部屋に入ったみたい。

 床に転がされた。目隠しは取ってくれる。照明が眩しい。

 大きな部屋だった。私の隣に私と同じように縛られて猿轡をされている女性が4人いた。女性たちが目をパチパチして私を見る。私も彼女たちを見た。え?何?この人たち、何?

 部屋の中を見回すと、軍服を着た外国人が3人、私を運んできた男2人。外国人たちはトランプゲームをしていた。私を運んできた男の一人が私に近寄った。「おとなしくしてろよ。トイレに行きたい時は足で床を叩け。トイレに連れてってやるから。漏らされちゃたまらないからな。ちょっと辛抱していれば、船に乗せてやるよ」と言われた。船?私、どこに連れて行かれるの?私のすぐ’横に転がされている女性が泣いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...