よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード

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ヒメと明彦5、美姫編

第37話 口裏合わせ2

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 私はその時、中華街のプータローから家出娘の話を小耳に挟んだ。中華街のH飯店の勘当されたドラ息子が女の子を拾って匿っているという。早速、良子に知らせた。自宅に行くと、この二人がいた。

 美姫を匿っていた林田達夫は、私の小学校の同級生。良子は忘れていたみたいだけど。彼は、私と同じ、帰化した中国人家庭の三世。美姫は知らないだろうが、林田達夫は高校2年まで明彦と同じ高校だったが成績不良で自主退学、近くの私学にスライドした。

 林田達夫はH飯店のトップの彼の祖母から勘当されていた。父親が祖母に内緒で資金援助して、学費とアパート代、生活費を出していたが、女と遊び歩く金がかさんで、金に困っていた。

 金に困っているところに、飛んで火にいる夏の虫で、美姫が転がり込んできた。H飯店は上海系だが、達夫は台湾マフィアが不良米国人兵士と組んで、日本全国から誘拐した女性を集めて、香港・広東に売り飛ばしているのを知っていた。

 上海、台湾と閥が違うが、達夫は美姫を台湾マフィアに売り飛ばすことに決めた。美姫なら素性も上物、高く売れる。だいたい、香港・広東で日本人女性をセックス奴隷で売れば、末端価格で少なくとも数百万円、高ければ千万円を越えるだろう。美姫ならオーバー千万円だと思う。達夫は美姫を売った。

 達夫のアパートの場所がわかった私は、良子、明彦、雅子と達夫のアパートを襲撃した。達夫の他に二人達夫のダチがいた。良子がその二人をのした。さっきと同じだ。瞬く間に。明彦は達夫をのした。それで、達夫が美姫が連行された場所以外は、はらいせで吐いた。

 去年の春先から達夫は美姫を狙っていた。しかし、良子がついているので、おいそれとナンパできない。去年の8月末、達夫は美姫一人の時を狙って美姫をディスコに誘った。ディスコでは美姫に酒を飲ませた。酒に目薬を数滴垂らした。目薬にはスコポラミンという成分が含まれている。酒と一緒に飲むと、酔いが進んで酩酊するんだ。酒と目薬に酩酊した美姫を達夫はラブホに連れ込んだ。ラブホでは、美姫は達夫を明彦と間違えて、自分から体を許した。

 それから、達夫は良子のいない隙を狙って、何度も美姫を誘った。最初は薬のせいでの間違いだったが、次からは、普通の美姫は誘いに乗った。明彦にも良子にも内緒で、まあ、一緒の浮気行為のセックスを何度もした。

 美姫と明彦、良子の仲はギスギスしてきた。受験もある。達夫も同じだ。今年の2月、達夫と良子は大学に合格。それで、美姫は試験を全部スルーして受けなかった。家族ともギスギスした。2月以降、ほぼ明彦との仲は終わっていたが、明彦としては心配していた。それで、美姫はストレスもあっただろう。この前の月曜日に家出。

 達夫はつかまえたが、美姫の居場所は吐かない。台湾マフィアにバレたら、東京湾にコンクリ詰めにされて沈められる。しかし、私は達夫が台湾マフィアよりも怖い存在を知っている。ヤツの祖母だ。私、良子、明彦、雅子は、H飯店に行って、彼の祖母を脅した。祖母は家の恥ということで、達夫に美姫の居場所を白状させた。こんな誘拐事件に達夫が噛んでいることを知られたら、H飯店だってぶっ潰れるかもしれない。

 台湾マフィアはさっきのノースピア、在日米軍郵便局の倉庫に美姫を監禁と達夫が吐いた。祖母は激怒して、達夫を中国雲南省に追放、パスポートを取り上げて、現地の田舎の娘と結婚させるそうだ。達夫は二度と日本には戻ってこれない。

 達夫の祖母は、彼女の家も絡むことから、マネージャの王さんと若い徐さんを私に貸してくれた。私は、彼氏の吉村を呼んで、警察に内緒で加勢させた。美姫と同じ場所に4人、日本女性もいた。しかし、まずは先に美姫だけ連れ出さないと、後で警察に美姫も連れて行かれて、美姫の誘拐の話が公になる。だから、美姫だけ先に連れ出して、明彦と雅子に車まで送らせた。残りの4人を連れ出して、日本の領土で県警が手が出せる場所まで逃げた。そこで、吉村は県警に連絡。他の人間はこうして美姫の件がバレないようにここまで逃げてきた、ということだ。

「仲里美姫ちゃん、これがあんたがしでかしたことだよ」美姫はショックだったろう、俯いてベソをかいた。良子が彼女の頭を抱えた。「さて、美姫の両親への説明だ。美姫は家出した。偶然、林田達夫に出会って達夫のアパートに転がり込んだ。美姫の手紙を見て疑念に思った良子が中華街に詳しい私に相談した。私は達夫のアパートに美姫がいるのを探り出した。良子と私は、達夫のアパートに行って、美姫と達夫を説得して、美姫を連れ戻してきた、とこういう話にする。いいわね?」

「こうファンにまとめられて、あらためて聞いてみると、かなり面倒になったかもしれないわね?」と美姫の頭をなでながら、良子が冷静に言う。「ファンの話で問題はなさそうね。でも、美姫、あなた、この話の演技ができる?パパとママには、達夫のことを聞かれるだろうし、なぜ家出したかも聞かれるでしょう。だから、私がずっとついていてあげる。あなたの口が滑りそうだから。いいこと?」と美姫の顎を指であげさせて念を押す。美姫が頷く。

「誘拐事件と私たちの関与がバレたら、県警、吉村刑事、H飯店、林田達夫、ファンの張の家、明彦、雅子、私にも影響が及ぶのよ。誘拐事件は刑事事件。これで、女性4人の誘拐だけだったら、吉村刑事は誤魔化せるでしょう。でも、あなたがあそこにいた、あなただけ、先に連れ出した、なんてことがバレたら、大変。だって、私たちも米軍施設への違法侵入で刑事事件になるから」美姫が泣き出した。「これから、あなたを家に送っていく。ファンもついてきて。ファンがいた方が説得力がある。明彦と雅子は帰りなさい。あなたたちがいると話が複雑になる。ウソは単純な方がいいのよ」

「まあ、美姫、認識しておいた方がいい。たぶん、達夫が目薬を使わなくても、8月末じゃなくても、良子と一緒じゃない機会はたくさんあった。目薬を使わないでも、達夫があなたを落とそうとしていたんだから、いくらでもあなたを落とせただろう。あなたも明彦と良子へのはらいせを考えていたんだろう。だから、どっちにしてもあなたは達夫に抱かれたでしょう、セックスしたでしょう。でも、あなたは明彦も良子も責められない。彼らに正直に自分の置かれた立場、ストレスを説明しなかったのが間違いよ。でも、どうしようもなかったんでしょうね、たぶん。達夫も目薬を酒に混ぜたのは軽犯罪でしょう。台湾マフィアに美姫を売り飛ばしたのは重犯罪だわね」

 それで、この件で、一番、被害を受けたのは誰だと思う?被害者じゃないわ。被害、ダメージよ。まずは、台湾マフィア。金づるの誘拐・人身売買が壊滅したんだから。台湾野郎を一人つかまえてあるから、今頃は県警があいつらの事務所のガサ入れをしているはずよ。次に被害を受けたのが、林田達夫。美姫を売っ飛ばして、こ金を稼ごうとした小悪党が、重犯罪に関わった。それで、彼の人生はおしまい。彼の祖母はそれはそれは怖いんだから。もう二度と日本に帰れない。雲南省で百姓をやって垢抜けない中国人を嫁にもらってガキを作るってわけよ。

 その次の被害が良子よ。美姫が余計なことをしなければ、あなた、明彦、良子の危うい三角関係?違った、三位一体が維持できて、明彦も雅子と付き合わなかったかもしれない。美姫がすべてぶち壊したのよ。あなた自身も含めて。最後に、明彦。こりゃあ、ショックよねえ。昨日今日でわかったけど、彼は、美姫がスキなのよ。小さい頃から幼なじみみたいに過ごしてきて、妹同然。肉体関係もある。明彦にだって、その点、負い目があるわね。ただ、これであなた、良子とも関係が清算できたんだから。

「一つ、美姫に言っておく。昨日今日と雅子を見ていて、気づいた。明彦が雅子をスキなのは、雅子があなたにソックリだからじゃないわ。みかけは、美姫と雅子はソックリよ。でも、中身はまったくの別物。悪いけど、美姫のように明彦に依存するわけじゃない。彼女は誰からも独立しているのよ」

「ファンファン、ちょっと待って」雅子が割って入る。「『これであなた、良子とも関係が清算できた』って完全にバイバイなんて、私がさせないわ。ここまで壊れたけど、私は、これ以上、あなた方の関係が壊れて欲しくない。もちろん、推測で申し訳ないけど、美姫ちゃんがセックスを人質にして誰かと関係を保ちたいというのは清算して欲しい。男と女であっても、まずセックスありきなんてダメよ」

 美姫ちゃんが良いと言うなら、私とも話す機会を持たせて欲しい。大学受験の話も相談したい。このままじゃあ、明彦がガミガミ言わないでも、良子が圧をかけたら、美姫ちゃんは潰れちゃうわ。ご両親も圧をかけるでしょう。私はあなたに潰れて欲しくないの。

 それから、明彦は優勝トロフィーじゃないわ。私は彼の女とか、彼は私の男なんて絶対の所有欲は御免被りたい。多少はいいでしょうよ。でも、それで男女がお互いを縛るというのは私のタイプじゃない。だから、明彦には美姫ちゃんと接し続けて欲しい。

「彼とセックスをしたければ・・・まあ、私の感情というものもあるけど、したってかまわないわ。良子も。明彦、ごめんね。ハーレムのことは、ハーレムの主は決められないのよ。女が決めるのよ。美姫ちゃん、急ぐ必要はないわ。でもね、ちょっと年上だから忠告するけど、今回の件で、ご両親に反発はしないで。この件ではあなたが申し開きができる部分は非常に少ないでしょ?フリでもいい、反省して、ハイハイとご両親に従いなさい。それが処世術ってものだわ」

「雅子、京都じゃあ、そういう解決方法をするんだね?」と明彦が雅子に聞いた。
「浜っ子っていうの?ドライな印象を持つけど、ウェットね。京都はドライなのよ。性格が『いけず』、意地悪だし。千数百年も次々と支配者が様変わりしたら、そうなっちゃうわよ。ずるがしこいの。明彦だって、私の方言で迫ったら落ちたしね」

「日本の地方の人は、マルチリンガルってことなんだね。そうか、じゃあ、私も北京語か、広東語で・・・いや、中国語は京都弁と違って、男を落とせるような、フランス語のような甘い響きはないからなあ・・・」とファンファン。
「京都が中国に勝ったわ!まあね、そうね、なんだろう?美姫ちゃんも男性経験が二人だけでしょ?私も二人だけよ。明彦の前は高校の時、京都の男とね。だから、浮気とか気にしないこと。良子とファンファンは、二人ってことはなさそうよ?そうでしょ?それに比べれば、私と美姫ちゃんなんて、処女みたいなもの」
「雅子、ひどい言い方しないで!」と良子。「まあ、食ったけどね。そういう風に言われればそうよ。美姫なんて、ケツに蒙古斑ついているような段階よ」

 明彦が嫌な顔をしている。フン!女同士の会話なんてこんなもの。もっとひどいんだから。男のほうが純情だわ、と良子は思った。「あ!そうだ!林のおバア様と、フカヒレと紹興酒、タダで食べ放題飲み放題の約束してたわ!みんなで週末に行きましょ!フカヒレの姿煮を食い尽くしてやる!」・・・やっぱり、忘れてなかったね。
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