よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード

✿モンテ✣クリスト✿

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ヒメと明彦5、美姫編

第36話 口裏合わせ1

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 吉村刑事を除いて、全員、東高島貨物駅脇の路肩に戻った。

 ラッキーだった。こっちもあっちもたいした被害がなく済んだ。もちろん、良子がブチかましたエアガンの米兵負傷は別の話だ。被害があって、こっちの正体がバレたら、中華街全体を巻き込んだ抗争になっていたところだ。

 あ!私は心配になった。正体がバレるのは、浩司だ。おいおい、私の彼氏が危ない?台湾野郎どもはたとえ警官であっても仕返しするかもしれない。このことまでは考えなかった。失敗だ。私ごときが作戦を立てたからだ。頭脳明晰な良子に立てさせればよかったが、こいつは、そういう口出しはしない女だった。

 人のものを横取りするさもしさがない代わりに、人が主導してやっていれば、ホイホイ、その手元でも使われてやるという女だった。最初から、こいつに任せりゃよかった。後で、事後処理と、浩司をどうするか、聞いてやろう。きっと、最高の解決策をヘロッと秒速で説明するに違いない。

 良子からエアガンを返してもらった。浩司はエアガンを王さんに返したはず。こんな証拠品、持っているわけにはいかない。王さんがこっちの車に来た。

「嬢ちゃん、今晩はこれでおしまいだな」
「王さん、これ」と言って、王さんにエアガンを返した。
「ありがとう。証拠隠滅。東京湾に沈めておかないとな。さてさて、俺と徐はここでバイバイだ。嬢ちゃん、もう俺と関わるのは止めにしてくれよ。俺は娘が心配になった。俺の娘が、『お父さん、これから誘拐された友人を奪還しに行きます!手伝って!』なんて言わないか、ビクビクだ」
「王さんの娘さんなら大丈夫だよ」
「自信がなくなったよ。特に、なんだ?あんたの親友、高橋さんの嬢ちゃん、ありゃあ、化け物か?アッという間に、5人、片付けたぞ」
「気にしないで。彼女は昔からそうなのよ。てってーてきに何でもやる女なんだ」
「やれやれ、関わり合いになりたくないもんだ」
「王さん、忘れたの?林のおばあちゃんは、彼女にフカヒレと紹興酒の飲み放題、食い放題を約束したんだからね。近いうちにお店に来るよ。そういう約束は、彼女はぜぇ~ったいに忘れない」
「勘弁してくれ」
「まあ、いいや。今晩はバイバイだ。あ!徐さん、ありがとうね。今度、私とデートしようね!」徐さんは首を傾げた。私って、徐さんの理解の範疇外なんだろうか?

 王さんと徐さんの車が国道の方に消えていった。さて、私たちも。

 車に戻って、マーくんに元町まで、いつものスナックだよ、と言った。今度は後部座席に座る。この、美姫、明彦、良子、雅子の4人のお通夜をどうにかしないといけないから。美姫の隣は良子が座っている。最後部に明彦と雅子。雅子、まだバラクラバ帽を被ったままじゃないか。異様だよ。マスクを取らない理由は・・・美姫か?

「さて、当事者の四人のみなさん、ここは、本来なら、まずは、美姫の家に彼女を送り届けないといけないところだけど、私たち以外には言えないような事情がある。私たち五人は口裏を合わせないといけないってことよね。わかるよね?特に、美姫の両親に言えないことがある。その口裏合わせのストーリーをみんなで決めたら、王さんにも浩司にも説明しておいて、万一の場合でもボロが出ないようにする。それを相談に、寄り道をする。元町のスナックに行く。いいよね?」みんな頷いた。

 スナックに着いた。ボックス席に座った。美姫と良子、正面に明彦と雅子。通路側の議長席に私。

「雅子、バラクラバ帽、被ったままだよ」と注意した。
「え?忘れていた。どうりで暑いと思ったわ」と雅子がバラクラバ帽を脱いだ。あれ?この人、気づいてないんだ、マスクをしていたのを。なんだ、美姫を気にして、ってことじゃなかったんだね。天然ボケか?

 雅子の顔を見直してしまった。美姫はさっき初めて会った。雅子は昨日から顔を見慣れている。別々に見ているとわからないが、こうしてスナックの明るい照明の下のボックス席で、二人が相対していると、彼女らは見かけがソックリだ。髪型、顔つき、体型。もしも、同じような服装をしていたら、年子か双子の姉妹に見える。良子説では、雅子が髪の毛を軽い茶色に染めたのは、美姫をみかけたからだという。

 美姫がギョッとした表情で雅子を見た。眉根にシワを寄せて考えている。「あなたは、スケッチブックのMasako Komori さんね?そうでしょ?ここにいるということは、明彦と大学で出会ったのね?そうよね?」と雅子を睨みつける。なんで、美姫はたった一度すれ違っただけ、手袋を拾っただけの女性にこれほどの敵愾心を燃やすんだろう?

「美姫、私は昨日からの当事者でほぼ部外者だからよくわからないけど、美姫はたった一度すれ違っただけ、明彦の手袋を拾っただけのこの小森雅子さんをなぜそうも憎々しげに思うの?見るの?ま、それはおいおいの話として」

 私はハイエースに積んであった美姫のバックを良子の足元に押した。「これはあなたのバック。達夫の部屋のクローゼットにしまってあったわ。達夫がはらいせに私たちに教えたのよ、このバックのありかと中身のことを。ここのみんな達夫が言ったから知っている。でも、中身を見たのは私だけ。生々しいからね」と言った。美姫がガックリと首をたれた。そりゃあ、達夫の精子でベトベトになったパンティーなんて実物があるんじゃ、雅子がどうとか言えないわよ。残酷だったかしら。

「まあ、その前に、美姫は私も雅子も知らないから紹介をしておきます。私は良子の小学校の時の同級生で、高校は良子と美姫の学校の隣の女子校。偏差値、悪かったからね。それと、良子の合気道の道場仲間。これは明彦も美姫も知らないわね?良子が言わないから。それで、私の血は中国人。祖父の時に日本に帰化して日本人になった帰化三世とでも言うのかな?私の家の商売は、中華系マフィア。テリトリーは中華街近辺。ただし、私自身は家の商売に関係がない、今年大学の法学部に入学して、良子に合わせたのが失敗だったと思っている女子大生、彼氏はさっき人質救出に関わった県警吉村警部補。偶然お互いを知らないで肉体関係を持った、当然、吉村はこの事件の内実を知っているが、私のせいで県警には言えない、とこういう女だよ。ハイ、雅子、どうぞ」

「私は明彦の大学の理学部化学科に通っている大学3年生。高校までは生まれも育ちも京都。明彦とは5ヶ月違いの年上。美術部在籍。今年、5月に明彦が入部してきて、それ以来・・・彼を狙っていた。気になってたの。それで、え~、一昨日、二人で付き合っちゃおうか?というので始まった。美姫ちゃん、悪いけど、一昨日、彼と寝ました。私も彼も去年の2月、合格発表の日にすれ違って手袋を私が拾って渡したのを覚えていたけど、お互い、覚えているとは思わなかったわ。その時彼と一緒にいた美姫ちゃん、あなたのことも私は覚えています」美姫が雅子と明彦の顔を見て、何かいいたそうだが、黙っていた。ほぉらね、とでも言いたいのだろう。

「さて、みんな各々言いたいことはあるだろうが、まずはこの件の事後処理の方法を決めないといけないので、まとめさせてくれ。ことの発端は、美姫が火曜日に投函し明彦が水曜日に受け取った美姫の手紙だ。明彦は、美姫の両親に手紙を見せてコピーを渡した。その手紙を見て、明彦と両親は、単なる家出と信じた。両親は警察に通報しなかった。美姫のママから手紙のコピーを貰った良子が、手紙の内容を疑った。単なる、明彦へのあてつけの手紙だろうか?と。そして、消印が中華街郵便局だったのを疑問に思った。それで、良子は中華街に詳しい私に連絡してきた。私も当てつけと絶縁の手紙じゃないと思った。私は郵便局まで行って、郵便局長にブラとパンツをチラ見させて、郵便局の集配エリアを聞き出した。地図で見たら、中華街全域だが、家出娘が逃げ込む居住区は中村川沿いと目星をつけた」

 木曜日、金曜日と歩き回ったけど何もわからず。土曜日になった。たまたま、明彦はこの家出話を雅子にした。雅子も手紙を見た。良子と同じく、雅子も内容を疑い、消印の郵便局の場所を疑問に思った。単なる家出と思っている明彦を雅子が説得して、昨日の土曜日午前、良子に電話をかけた。良子は二人を自宅に呼んだ。
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