35 / 35
加藤恵美・真理子編
第11話 メグミと真理子と
しおりを挟む
『第8話 真理子と 2』の続きから。
「どうして、私が感じるところが明彦にはわかるの?」
「ぼくのが真理子が感じる場所を探すからだ。真理子が気持ちよくないと、ぼくも気持ちがよくない」
「ねえ?」
「なに?」
「メグミよりも私が先にしてもらえば、こんなことにならなかったのにね?」
「それを言われると辛い」
「こんなのだったのなら、私がもっとずっと前に明彦におねだりしておけばよかったわ」と、真理子が今晩初めて笑った。
「ぼくは、真理子がこういうのが欲しいとは思わなかったんだよ」
「あら?私だって、女だから、欲しくなることはあるわよ。でも、私はメグと違うから、自分から欲しいなんて言えない・・・」
「ぼくが真理子の心をよく読んでいなかった証拠だ・・・」
「ううん、私がその部分の心を明彦に開いていなかっただけなのかもしれない」
「・・・」
「これから、どうするの?私たち?」
「それはあとでまた話して、考えよう。その前に・・・」
「その前に?」
「まだ、終わってない。同じことをする。だから、今度は真理子がぼくにするんだ」
「え?」
「教えてあげる」
また、一時間経った。
「すごい、こんなことをメグとしていたの?」
「まだ、あるんだ」
「え?まだ?」
「そう、まだ。三時間待っていたんだろ?真理子は?ぼくたちを」
「ええ」
「だから、まだ一時間あるんだよ」
「私・・・、明彦・・・、もっと、して」
「わかった」
シャワーを浴びないといけない。だから、三十分でぼくはいった。
「あ~、感想がでないわ」
「え?」
「なんて言ったらいいのか、わからないわ。明彦?」
「なに?」
「コンペティションじゃないけど、私、メグと張り合うわ」
「どういうこと?」
「これで、明彦と私がおしまい、ということじゃない、ということ」
「・・・」
「でも、メグには私は明彦を諦めたわ、って言って。私、しばらく、男の子とはつき合わない。メグとは、顔を見ると辛いから、話さない、会わない。絶交というのじゃなくて、辛いから私に話しかけないで、私を見たら逃げてって。私もメグを見たら逃げるからって。何年か経って、そういう感覚が薄れたら、また会いましょ、と、こうメグには言ってね。コンペティションじゃないけど、私、メグと張り合おうって思ったけど、撤回、メグに明彦はゆずるわと、こういう話にしておいてね。それから、あなたとは私は絶交するってことにして。ビンタされたって言ってもいいわよ」
「・・・それをメグミに言えと?」
「そのくらいは、私に協力してくれてもいいじゃない?こんなことされた私に?」
「・・・」
「今晩は疲れちゃった・・・気持ちよく疲れちゃったわ。複雑な話はできない。明日、また考える。明彦?」
「ん?」
「また、近い内に私と会って」
「いいよ、真理子」
「家に電話する」
「了解」
そのあと、ぼくらはあまり喋らないでホテルを出た。終電の時間はとっくに過ぎていて、ぼくは真理子をタクシーで家まで送っていった。真理子は家に着くと、降りて、ぼくの方のドアにまわってきた。ぼくは窓を下げた。
「明彦はどうするの?」と訊くので、「銀座までこのまま行って、ホテルの従業員の仮眠室で寝る」と答えた。
「へぇ~、こんな時間に?」
「ガードマンのおじさんに言えば入れてくれるんだ」
「ホテルでバイトしていると便利なことがあるわね?」と、真理子が笑った。
「そう、けっこう、便利なんだよ。じゃあ、真理子、また、明日」
「明彦?」
「なに?」
「キス!」ぼくは窓越しに真理子にキスした。
銀座に行く間、ぼくはいろいろと考えてしまった。状況はさらに複雑になったようだ。
翌日の朝早く、ぼくはメグミに電話をかけた。
┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈
『第9話 メグミと 7』の続きから。
「真理子が一昨日言ったのはそういうこと」
「ウソ?」
「ホントだって。真理子は、『私、しばらく、男の子とはつき合わない。メグは、顔を見ると辛いから、話さない、会わない。絶交というのじゃなくて、辛いから私に話しかけない、私を見たら逃げてって。私もメグを見たら逃げるからって。何年か経って、そういう感覚が薄れたら、また会いましょ』と、こうメグミにぼくから言ってくれと言ったんだ」と、ぼくは言った。「そうそう、それから、『コンペティションじゃないけど、私、メグと張り合うって思ったけど、撤回、メグに明彦はゆずるわ』と、真理子は言ったんだ。真理子はぼくとは絶交するだそうだ。真理子にビンタされたよ」
「まさか?」
「だって、真理子がそういったんだから」
「それで、明彦、明彦はどうするの?」
「メグミ、ぼくは真理子から絶交されたんだから、もうぼくから真理子とは会えないということ。あとは、メグミがぼくをどうするか?それだけの話だよ」
「信じられない!」
「信じるとか、信じないとか、それは知らないけど、そうなの」
「じゃあ、メグミ、明彦と平日だろうと週末だろうと、しよ!と言うといつでもできるようになったの?」
「あのね、メグミ、この話は、ぼくと真理子、メグミと真理子の話であって、メグミと彼氏の話じゃないでしょ?」
「え?ああ、彼氏?あれ、もう先週、好きな人ができたから、バイバイって言っちゃたんだ」
「まさか?本当に?」
「メグミ、ウソ言わないもん」
「メグミ、ホントにそういうことをしちゃったの?」
「ハイ、メグミはそういたしました」
「だって、先週だろ?なぜ、先週なの?」
「だってさ、もう、こう喉の上まで、明彦がのぼってきて、彼といても意味がなくなったから、たまらなくなって、それでバイバイしたのよ。いけなかった?」
「これは・・・絶句するしかないな?」
「なんで絶句するの?一緒にいてもお互い意味がないんだから。そういう人と明彦は無理につき合えって言うの?」
「だってさ、10月にぼくはメグミを選ぶって言ったけど、今月までダラダラと来てしまって、ぼくは真理子との結論をださなかったじゃないか?それなのに、その前に、バイバイしちゃったの?」
「しょうがないでしょ?無理だったんだから・・・」
「わかった。わかりました」
「マリに悪いことしたな・・・」
「それはね、メグミ、ぼくだってそうだけど、5月以来、真理子をだましていたんだから、いまさら、真理子にああだ、こうだ、と言えないよ。言えないし、向こうも聞きたくないって、昨日言われた」
「明彦!」
「なんだよ?」
「明彦は、それでいいわけ?」
「それでいいって、真理子に対してか?」
「そ」
「だって、昨日も真理子に謝ろうとしたけど、聞きたくない、知りたくないと言ってました」
「私から・・・」
「言ったっていいけど、真理子が聞くかどうか知らないよ。それに、いまさら、何を言うの?何か釈明できることでもありますか?ホテルからお手々つないでぼくらは出てきたんだからね?」
「う~、どうしようもないか?」
「ハイ、どうしようもありません」
真理子の話に関してウソをつくのは苦しい。とはいえ、真理子が言ったことを言うわけにもいかないじゃないか?メグミも本心でキッパリ!などと言っているのかどうか、わからない。多少ハイテンションになるときは、逆に、落ち込んでいるのがメグミなのだ。
┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈
明彦と飯田橋のホテルであんなことがあって、家の前までタクシーで送ってくれた日から一週間が経った。いろいろなことを考えた。私にとって彼はなんなのか、メグにとって彼はなんなのか、とかとか。私もメグみたいにグイグイせまって、明彦とさっさとエッチをしていればこうはならなかったのか、とかとか。
ああでもない、こうでもないと考えていたら、そう言えば、大学の付き合いばかりだったけど、私は彼のことをほとんど何も知らないことに気づいた。聞かなかったせいもある。彼も自分の昔の話を積極的にする方じゃない。第一、彼の昔の女性関係を聞き出すなんて、不躾よね?よっぽどの仲・・・体の関係を持つとか?・・・私は彼に抱かれたわよね?もう、聞いてもいいのかな?
じゃあ、メグは?彼の昔の話を知っているのかしら?なぜ、小森雅子先輩と別れたとか?それを、知っているのかしら?
思い悩んでいてもしょうがないのだ。私はメグに電話をかけた。もうやる時はやる!今までみたいな真理子じゃないんだぞ!
「もしもし、加藤ですが…」とメグが出た。20世紀、スマホなどない!固定電話だ!その固定電話も液晶などないから、相手の電話番号がわかるわけじゃない。だから、20世紀では電話に出ると、21世紀からすると物騒に見えるが、自分ちの名前を名乗ってしまうのだ。
「メグ、真理子」
「マリ…」と怯えた声が聞こえた。
「メグ、怯えなくてもいいわよ。話があるの」
「…け、決着をつけようというの?」
「そういう話じゃない!知りたいことがあるのよ。明彦も呼び出して、彼に聞きたいことがあるの。そうじゃないと私、モヤモヤするのよ」
「何を明彦に聞くの?」
「彼の過去。今晩七時に明彦のいつものジャズバーに来て」
ジャズバーでメグは言い訳を少しするし、私はそんなメグを多少なじった。だけど、知りたいのはメグと私のことじゃない。私は明彦に「私とメグは自分たちの話をあなたにかなりしたよ。でも、あなたは自分のことを話したことはない。もちろん、私もメグも聞かなかったけど。でも、今、聞きたい。小森雅子さんと何があったの?雅子先輩の前にもなにかあったの?」と明彦に尋ねた。
明彦は、仲里美姫との最初の中学生の頃から高校三年生、大学二年生までの話をした。仲里美姫と高橋良子とのおかしな三角関係というか、三位一体?の話。まあ、それまでの話はついていけた。例え、男の子と女の子二人のおかしな関係であっても。それはまだいい。それから、小森先輩との出会い、仲里美姫の失踪と奪回、台湾マフィアとの抗争の話を彼はした。そして、去年の11月の小森先輩との別れ。
高校三年生から大学二年生までのこの三、四年間、この私の彼氏(?)は何をしていたんだ?わけがわからない。
「じゃあ、小森先輩は京都に帰ってしまって、結婚したわよね?でも、まだ、仲里美姫と高橋良子はいるじゃない!」
「彼女たちとはたまに連絡するけど、それ以上の付き合いはないんだよ、真理子」
「なるほど。わかった。じゃあ、仲里美姫、高橋良子、小森先輩まではいいとして、それで、その後、鈴木清美?清美ちゃん?」
「まあ、それはちょっとした間違いというか…」
「・・・じゃあ、清美ちゃんまでで、四人でしょう?さらにその後で私とメグ。私は、彼女としては五人目で、セックスの相手としてはメグの後の六人目なの?この私が?なんか、わからない。メグと私は東京生まれの東京育ちだから、『とうきょう物語』だけなんだけど、明彦は『とうきょう物語』と『よこはま物語』を別々に紡いていたってことなのよね。なんか、不公平。私も北海道大学に転入して、『さっぽろ物語』でも紡もうかしら?」
「マリ、彼の話で昔なにがあったのか、わかったけど、それでどうするの?戦線離脱でもするの?」
「戦線離脱?メグ、そんなことは私はしないわよ。してやるもんか!いや、するかも?まさか、もういないでしょうね?よくもまあ、たくさん女の子が出てくるものだわ。どうせ、みんな可愛いんでしょうね?美人なんでしょうね?仲里美姫や小森先輩や高橋良子みたいに!張芳芳って子はどうなの?こうなると、みんな怪しく思えてきちゃうわ。後藤恵子巡査と斉藤慶子巡査とはどうなの?」
「あるわけないじゃないか!芳芳とか、後藤恵子巡査と斉藤慶子巡査とか、何もないよ、なかったよ」
「私はイヤよ!小森先輩、仲里美姫、高橋良子の代わりに私がなるのはイヤ!それで、私とメグとで一夫二婦制、三位一体とか、わけのわからない関係はイヤー!一対一、一夫一婦制度じゃないとイヤー!もういいわ。重いよ、重いのよ。美姫とか雅子とか、そんなあなたにとっての存在に私がなれるわけがないじゃない!いいです!絶好はしないけど、私も自由に相手をみつけるわ!メグもそうでしょ?」
「マリ、私はあなたほど最初から重くなかったし、今でも彼のセフレでもいいと思ってる。だけどね、明彦は、なんていうかなあ、何かあるのよ、何か。この世界だけじゃなく、彼との因縁?、それがあるみたいなのよ。私はこのままでいいわ」
「メグ、勝手にしなさい!後悔してもしらないんだから…」
確かに、数年後、メグから話を聞いた時、メグの『何か。この世界だけじゃなく、彼との因縁?、それがあるみたい』という話がよくわかった。不思議な話だった。
『よこはま物語 壱½ Ⅱ、ヒメたちとのエピソード』に続く。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/913345710
「どうして、私が感じるところが明彦にはわかるの?」
「ぼくのが真理子が感じる場所を探すからだ。真理子が気持ちよくないと、ぼくも気持ちがよくない」
「ねえ?」
「なに?」
「メグミよりも私が先にしてもらえば、こんなことにならなかったのにね?」
「それを言われると辛い」
「こんなのだったのなら、私がもっとずっと前に明彦におねだりしておけばよかったわ」と、真理子が今晩初めて笑った。
「ぼくは、真理子がこういうのが欲しいとは思わなかったんだよ」
「あら?私だって、女だから、欲しくなることはあるわよ。でも、私はメグと違うから、自分から欲しいなんて言えない・・・」
「ぼくが真理子の心をよく読んでいなかった証拠だ・・・」
「ううん、私がその部分の心を明彦に開いていなかっただけなのかもしれない」
「・・・」
「これから、どうするの?私たち?」
「それはあとでまた話して、考えよう。その前に・・・」
「その前に?」
「まだ、終わってない。同じことをする。だから、今度は真理子がぼくにするんだ」
「え?」
「教えてあげる」
また、一時間経った。
「すごい、こんなことをメグとしていたの?」
「まだ、あるんだ」
「え?まだ?」
「そう、まだ。三時間待っていたんだろ?真理子は?ぼくたちを」
「ええ」
「だから、まだ一時間あるんだよ」
「私・・・、明彦・・・、もっと、して」
「わかった」
シャワーを浴びないといけない。だから、三十分でぼくはいった。
「あ~、感想がでないわ」
「え?」
「なんて言ったらいいのか、わからないわ。明彦?」
「なに?」
「コンペティションじゃないけど、私、メグと張り合うわ」
「どういうこと?」
「これで、明彦と私がおしまい、ということじゃない、ということ」
「・・・」
「でも、メグには私は明彦を諦めたわ、って言って。私、しばらく、男の子とはつき合わない。メグとは、顔を見ると辛いから、話さない、会わない。絶交というのじゃなくて、辛いから私に話しかけないで、私を見たら逃げてって。私もメグを見たら逃げるからって。何年か経って、そういう感覚が薄れたら、また会いましょ、と、こうメグには言ってね。コンペティションじゃないけど、私、メグと張り合おうって思ったけど、撤回、メグに明彦はゆずるわと、こういう話にしておいてね。それから、あなたとは私は絶交するってことにして。ビンタされたって言ってもいいわよ」
「・・・それをメグミに言えと?」
「そのくらいは、私に協力してくれてもいいじゃない?こんなことされた私に?」
「・・・」
「今晩は疲れちゃった・・・気持ちよく疲れちゃったわ。複雑な話はできない。明日、また考える。明彦?」
「ん?」
「また、近い内に私と会って」
「いいよ、真理子」
「家に電話する」
「了解」
そのあと、ぼくらはあまり喋らないでホテルを出た。終電の時間はとっくに過ぎていて、ぼくは真理子をタクシーで家まで送っていった。真理子は家に着くと、降りて、ぼくの方のドアにまわってきた。ぼくは窓を下げた。
「明彦はどうするの?」と訊くので、「銀座までこのまま行って、ホテルの従業員の仮眠室で寝る」と答えた。
「へぇ~、こんな時間に?」
「ガードマンのおじさんに言えば入れてくれるんだ」
「ホテルでバイトしていると便利なことがあるわね?」と、真理子が笑った。
「そう、けっこう、便利なんだよ。じゃあ、真理子、また、明日」
「明彦?」
「なに?」
「キス!」ぼくは窓越しに真理子にキスした。
銀座に行く間、ぼくはいろいろと考えてしまった。状況はさらに複雑になったようだ。
翌日の朝早く、ぼくはメグミに電話をかけた。
┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈
『第9話 メグミと 7』の続きから。
「真理子が一昨日言ったのはそういうこと」
「ウソ?」
「ホントだって。真理子は、『私、しばらく、男の子とはつき合わない。メグは、顔を見ると辛いから、話さない、会わない。絶交というのじゃなくて、辛いから私に話しかけない、私を見たら逃げてって。私もメグを見たら逃げるからって。何年か経って、そういう感覚が薄れたら、また会いましょ』と、こうメグミにぼくから言ってくれと言ったんだ」と、ぼくは言った。「そうそう、それから、『コンペティションじゃないけど、私、メグと張り合うって思ったけど、撤回、メグに明彦はゆずるわ』と、真理子は言ったんだ。真理子はぼくとは絶交するだそうだ。真理子にビンタされたよ」
「まさか?」
「だって、真理子がそういったんだから」
「それで、明彦、明彦はどうするの?」
「メグミ、ぼくは真理子から絶交されたんだから、もうぼくから真理子とは会えないということ。あとは、メグミがぼくをどうするか?それだけの話だよ」
「信じられない!」
「信じるとか、信じないとか、それは知らないけど、そうなの」
「じゃあ、メグミ、明彦と平日だろうと週末だろうと、しよ!と言うといつでもできるようになったの?」
「あのね、メグミ、この話は、ぼくと真理子、メグミと真理子の話であって、メグミと彼氏の話じゃないでしょ?」
「え?ああ、彼氏?あれ、もう先週、好きな人ができたから、バイバイって言っちゃたんだ」
「まさか?本当に?」
「メグミ、ウソ言わないもん」
「メグミ、ホントにそういうことをしちゃったの?」
「ハイ、メグミはそういたしました」
「だって、先週だろ?なぜ、先週なの?」
「だってさ、もう、こう喉の上まで、明彦がのぼってきて、彼といても意味がなくなったから、たまらなくなって、それでバイバイしたのよ。いけなかった?」
「これは・・・絶句するしかないな?」
「なんで絶句するの?一緒にいてもお互い意味がないんだから。そういう人と明彦は無理につき合えって言うの?」
「だってさ、10月にぼくはメグミを選ぶって言ったけど、今月までダラダラと来てしまって、ぼくは真理子との結論をださなかったじゃないか?それなのに、その前に、バイバイしちゃったの?」
「しょうがないでしょ?無理だったんだから・・・」
「わかった。わかりました」
「マリに悪いことしたな・・・」
「それはね、メグミ、ぼくだってそうだけど、5月以来、真理子をだましていたんだから、いまさら、真理子にああだ、こうだ、と言えないよ。言えないし、向こうも聞きたくないって、昨日言われた」
「明彦!」
「なんだよ?」
「明彦は、それでいいわけ?」
「それでいいって、真理子に対してか?」
「そ」
「だって、昨日も真理子に謝ろうとしたけど、聞きたくない、知りたくないと言ってました」
「私から・・・」
「言ったっていいけど、真理子が聞くかどうか知らないよ。それに、いまさら、何を言うの?何か釈明できることでもありますか?ホテルからお手々つないでぼくらは出てきたんだからね?」
「う~、どうしようもないか?」
「ハイ、どうしようもありません」
真理子の話に関してウソをつくのは苦しい。とはいえ、真理子が言ったことを言うわけにもいかないじゃないか?メグミも本心でキッパリ!などと言っているのかどうか、わからない。多少ハイテンションになるときは、逆に、落ち込んでいるのがメグミなのだ。
┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈
明彦と飯田橋のホテルであんなことがあって、家の前までタクシーで送ってくれた日から一週間が経った。いろいろなことを考えた。私にとって彼はなんなのか、メグにとって彼はなんなのか、とかとか。私もメグみたいにグイグイせまって、明彦とさっさとエッチをしていればこうはならなかったのか、とかとか。
ああでもない、こうでもないと考えていたら、そう言えば、大学の付き合いばかりだったけど、私は彼のことをほとんど何も知らないことに気づいた。聞かなかったせいもある。彼も自分の昔の話を積極的にする方じゃない。第一、彼の昔の女性関係を聞き出すなんて、不躾よね?よっぽどの仲・・・体の関係を持つとか?・・・私は彼に抱かれたわよね?もう、聞いてもいいのかな?
じゃあ、メグは?彼の昔の話を知っているのかしら?なぜ、小森雅子先輩と別れたとか?それを、知っているのかしら?
思い悩んでいてもしょうがないのだ。私はメグに電話をかけた。もうやる時はやる!今までみたいな真理子じゃないんだぞ!
「もしもし、加藤ですが…」とメグが出た。20世紀、スマホなどない!固定電話だ!その固定電話も液晶などないから、相手の電話番号がわかるわけじゃない。だから、20世紀では電話に出ると、21世紀からすると物騒に見えるが、自分ちの名前を名乗ってしまうのだ。
「メグ、真理子」
「マリ…」と怯えた声が聞こえた。
「メグ、怯えなくてもいいわよ。話があるの」
「…け、決着をつけようというの?」
「そういう話じゃない!知りたいことがあるのよ。明彦も呼び出して、彼に聞きたいことがあるの。そうじゃないと私、モヤモヤするのよ」
「何を明彦に聞くの?」
「彼の過去。今晩七時に明彦のいつものジャズバーに来て」
ジャズバーでメグは言い訳を少しするし、私はそんなメグを多少なじった。だけど、知りたいのはメグと私のことじゃない。私は明彦に「私とメグは自分たちの話をあなたにかなりしたよ。でも、あなたは自分のことを話したことはない。もちろん、私もメグも聞かなかったけど。でも、今、聞きたい。小森雅子さんと何があったの?雅子先輩の前にもなにかあったの?」と明彦に尋ねた。
明彦は、仲里美姫との最初の中学生の頃から高校三年生、大学二年生までの話をした。仲里美姫と高橋良子とのおかしな三角関係というか、三位一体?の話。まあ、それまでの話はついていけた。例え、男の子と女の子二人のおかしな関係であっても。それはまだいい。それから、小森先輩との出会い、仲里美姫の失踪と奪回、台湾マフィアとの抗争の話を彼はした。そして、去年の11月の小森先輩との別れ。
高校三年生から大学二年生までのこの三、四年間、この私の彼氏(?)は何をしていたんだ?わけがわからない。
「じゃあ、小森先輩は京都に帰ってしまって、結婚したわよね?でも、まだ、仲里美姫と高橋良子はいるじゃない!」
「彼女たちとはたまに連絡するけど、それ以上の付き合いはないんだよ、真理子」
「なるほど。わかった。じゃあ、仲里美姫、高橋良子、小森先輩まではいいとして、それで、その後、鈴木清美?清美ちゃん?」
「まあ、それはちょっとした間違いというか…」
「・・・じゃあ、清美ちゃんまでで、四人でしょう?さらにその後で私とメグ。私は、彼女としては五人目で、セックスの相手としてはメグの後の六人目なの?この私が?なんか、わからない。メグと私は東京生まれの東京育ちだから、『とうきょう物語』だけなんだけど、明彦は『とうきょう物語』と『よこはま物語』を別々に紡いていたってことなのよね。なんか、不公平。私も北海道大学に転入して、『さっぽろ物語』でも紡もうかしら?」
「マリ、彼の話で昔なにがあったのか、わかったけど、それでどうするの?戦線離脱でもするの?」
「戦線離脱?メグ、そんなことは私はしないわよ。してやるもんか!いや、するかも?まさか、もういないでしょうね?よくもまあ、たくさん女の子が出てくるものだわ。どうせ、みんな可愛いんでしょうね?美人なんでしょうね?仲里美姫や小森先輩や高橋良子みたいに!張芳芳って子はどうなの?こうなると、みんな怪しく思えてきちゃうわ。後藤恵子巡査と斉藤慶子巡査とはどうなの?」
「あるわけないじゃないか!芳芳とか、後藤恵子巡査と斉藤慶子巡査とか、何もないよ、なかったよ」
「私はイヤよ!小森先輩、仲里美姫、高橋良子の代わりに私がなるのはイヤ!それで、私とメグとで一夫二婦制、三位一体とか、わけのわからない関係はイヤー!一対一、一夫一婦制度じゃないとイヤー!もういいわ。重いよ、重いのよ。美姫とか雅子とか、そんなあなたにとっての存在に私がなれるわけがないじゃない!いいです!絶好はしないけど、私も自由に相手をみつけるわ!メグもそうでしょ?」
「マリ、私はあなたほど最初から重くなかったし、今でも彼のセフレでもいいと思ってる。だけどね、明彦は、なんていうかなあ、何かあるのよ、何か。この世界だけじゃなく、彼との因縁?、それがあるみたいなのよ。私はこのままでいいわ」
「メグ、勝手にしなさい!後悔してもしらないんだから…」
確かに、数年後、メグから話を聞いた時、メグの『何か。この世界だけじゃなく、彼との因縁?、それがあるみたい』という話がよくわかった。不思議な話だった。
『よこはま物語 壱½ Ⅱ、ヒメたちとのエピソード』に続く。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/913345710
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる