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金少尉の居室、2026年3月16日(月)
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金少尉の居室、2026年3月16日(月)
解放軍海軍台湾侵攻第2艦隊、旗艦龍虎山艦上
金容洙少尉は、人民解放軍海軍の所属で、尾崎と美香の拉致を指揮した楊欣怡少校(少佐)の部下だ。しかし、彼女は朝鮮族であり、東ロシア共和国のエレーナ少佐と紺野二佐※に情報を流しているスパイである。
※2026年には紺野三佐は昇格して二佐になっている。
先島諸島侵攻の第二艦隊旗艦、強襲揚陸艦の龍虎山は、宮古海峡の接続水域(領海の基線からその外側24海里、約44kmの線)に近づいていた。石垣島まで120キロの海域だ。エレーナとの暗号通信が終わり、金少尉はくつろいでいた。エレーナは、東ロシア共和国から自衛隊に出向している陸軍将校だ。
さて、食事にしようか、シャワーを浴びようかとヨンスは考えた。
部屋の船内インターフォンが鳴った。なんだろう?と思って彼女は受話器を取る。切迫した声が聞こえた。「金少尉、李通信士長であります」と彼女がいつも目をかけてやっている李だった。ヨンスは李が上官の性被害に遭うのを何度もかばってやっていた。「なんだ、李士長?また、変態の上官に言い寄られ・・・」
「違います!政治将校が金少尉を逮捕するための準備をしているのを知りました。彼らの会話を盗み聞きしました。もうまもなくそちらの部屋に向かうようです!」
「それはまたなぜ?」
「艦内で暗号通信電波を傍受していて、金少尉のお部屋から電波が出ているというのを突き止めたらしいんです。そんなことはないと思いますが、政治将校のこと、何をされるかわかりません!それで事前にお知らせしようとご連絡した次第であります!」
「わ、わかった!李士長、何も問題はないはずだ。でも、ありがとう」
「では、金少尉、お気をつけて」
金少尉は量子エニグマ暗号トランシーバーと拳銃、ライフジャケットを掴んで、部屋を飛び出す。駆けながらライフジャケットを着込む。トランシーバと拳銃をズボンのポケットに突っ込んだ。
奴らは船の前部からやってくるはずだ、ヤバいぞ!と推測して、通路を後部甲板の方に駆けた。
(そういえば、楊少校が日本から拉致してレールガンと電磁カタパルトの開発をさせていた日本人のカップルが監禁されていたな。日本への手土産に彼らを連れていくもいいだろう。どこだっけ?向こうの通路か?)
金少尉は通路を左に曲がり、右舷の通路の方に駆けた。右舷通路の角で左右を盗み見る。歩哨が立っている部屋に気づいた。(あそこだ)ヨンスは歩みを緩めて歩哨の前を通り過ぎようとする。
「金少尉!ご苦労さまです!」と歩哨が敬礼をする。政治将校からの通達はまだないようだ、とヨンスは思った。
「ウム」と答礼してすれ違いざま右の裏拳で歩哨の首筋を投打した。崩れ落ちた歩哨の腰から鍵を取り出してドアを開けた。男女がベッドに座っていて話をしている最中だった。
「おい、キミらは拉致された日本人だろう?」と金少尉が日本語で聞いた。
「そうだが?あなたは何者だ?」
「私は人民解放軍の金容洙少尉。しかし、実はキミらの側の人間だ」
「そんなこと信用できるか!」
「・・・ああ、自衛隊の人間を知っている。私が日本に亡命したらカウンターパートになる人物だ。名前は紺野二佐という」
「紺野だと?紺野は三佐・・・九年も経てば昇進するか・・・」
「とにかく、一刻を争う。もうじき私を追って政治将校が来るだろう。私はスパイの身分がバレて捕まれば銃殺刑だ。さあ、私と一緒に来るのか、来ないのか?」
「・・・イチかバチかだ。行こう」と男が女に囁いた。
「ハイ」と女が頷く。
「よし。急な話だったのだ。数分前に人民解放軍の政治将校が私を逮捕するという情報をきいたばかりなのだ。それで、私は脱出の準備を何もしていない。追っ手はこの艦の前部から来るはずだ。いいか、一か八か、後部甲板から海に飛び込むぞ!」
「この荒天でか?」
「荒天だから逃げおおせるかもしれん。途中でキミらのライフジャケットを通路沿いで手に入れよう。何も持っていくな!邪魔だ!」
三人はタラップを二段ごとによじ登る。途中にライフジャケットが壁のガラス箱にあった。ガラスを割り三つ取り出した。後部甲板への水密扉を開く。後部甲板に出た。
幸いなことに、荒天のために甲板には人気はなかった。彼らは左舷甲板から海面を見下ろす。十四、五メートルある。急に甲板に拳銃の跳弾が飛んだ。
(どこかで見られたか?南無三、跳ぶしかないわね)とヨンス。
「キミら、泳ぎは?」
「いまさら習えないだろう?俺は泳ぐ程度はできるぜ」と日本人の男が答える。
「よし、私から・・・」金少尉は甲板から海面に飛び降りた。脚をまっすぐにして、脚から海面に突っ込む。(まいっちゃうわねえ、最後の最後にこんなことになるなんて)
二人の日本人も金少尉に続いて飛び込んだ。
夢中で潜ろうとしたがジャケットが邪魔だ。少尉はライフジャケットを脱いだ。彼らにも脱ぐように手真似で伝えた。三人のジャケットは海面の方に漂っていく。
(これで、拳銃弾があたったかも?と思ってくれるといいんだけど)
彼らの周囲の水中に拳銃弾の航跡が見える。映画じゃないんだから!とヨンスは思ってさらに深く潜る。息が苦しい。日本人の男よりも女のほうが泳ぎが上手い。彼を彼女が手助けしている。
船は全速で航行していた。23ノット(時速37キロ)。
(船が停船するまで多少の時間はあるだろう。車じゃないのだから急ブレーキを踏んで急停車というわけにもいかない。ホバーだと引き出すのに時間がかかる。ゴムボートを出してくるだろう。もう拳銃弾の射程距離外だが、海上に顔を出すと見つかる可能性があるわね?)とヨンスは考えをめぐらす。
二分ほどで息が続かなくなる。彼らは海面に顔を出した。船はまだ停船していない。ゴムボートの格納してある側部ハッチはまだ開いていない。もう日が沈む。少尉はクロールで船から離れた。男を助けて女が少尉に続いた。
十数分経って、船が停船、ゴムボートが船外に出されているのがヨンスには見えた。ボートのサーチライトが見える。ボートから離れるようにさらに泳いだ。日が沈んだ。
(まいったなあ。宮古島までは約44km以上、石垣島までは120キロ以上あるわ。う~ん・・・この量子エニグマ暗号トランシーバー、防水よね。世界基準の防水でありますように。モニターが光ったわ。よかった!)金少尉は、エレーナの番号を押した。東ロシア共和国軍のエレーナ少佐が通話に応答した。
「エレーナ!助かった!」と少尉。
「どうしたの?金少尉?まだ、宮古海峡の接続水域じゃないの?」
「それが、この通信機の電波を探知されて気づかれたの。船から飛び降りて、今、泳いでいるところ。ライフジャケットも脱ぎ捨てたわ。私の他に拉致された日本人の男女も一緒よ」
「わかった!広瀬二尉!救助に使えるヘリはどこかにいるの?」とエレーナが自衛隊の水陸機動団指揮官の広瀬に聞いた。
「ちょうど揚陸艦オスリャービャにSH-60K哨戒ヘリコプターが着機してます!」
「金少尉、トランシーバーにGPSビーコンがついているわ。スイッチオンできる?」
「ちょっと待って・・・」とヨンスが海面上で立ち泳ぎをしながらトランシーバーのモニターを覗き込む。タッチセンサーじゃないのが救いだ。上下左右のキー操作でメニューを追う。あった。「あったわ。オンにした!」
「よし!受信した!北緯24.9054、東経125.2911!ヘリを出す!約30分!少尉、頑張れるか?」
「たぶん、大丈夫よ!」
「待ってろよ!」
「了解!」
「お二人さん、自衛隊のヘリが来るそうだ。約30分!」
「わかったわ」と女が答える。男を支えて立ち泳ぎをしている。
大きな波が来て金少尉がのまれた。女の手が伸びて軍服の襟を掴んで海面に引き上げた。
「ゴホゴホ・・・あ、ありがとう。中国人は学校にプールがないから泳ぎが下手なんだ」と少尉。
「ここまで来たら生き残るしかないでしょ!頑張るのよ!」
「あなたは泳ぎがうまいな?」
「石垣島の漁師の娘ですもの。この程度の時化なんてへっちゃらよ」
「石垣島の出身なのか・・・」この女、今ここがどこか知らないな、どこだか知ったら驚くだろうなとヨンスは思った。
既に広瀬がオスリャービャに連絡、SH-60Kを準備していた。艦上にはエレーナの部下のスヴェトラーナ少尉がいた。
「広瀬!」とエレーナが叫ぶ。
「少佐、二分で発艦!スヴェトラーナ少尉が乗り込みます!」
「よし、北緯24.9054、東経125.2911だ。位置は随時連絡する!」
「聞いたな?スヴェトラーナ少尉?」と広瀬。
「二尉、E24.9054、N125.2911、了解!ヘリに入力しました。出ます!」
「気をつけるんだぞ!」「ラジャ!」
ヘリは最大速度250キロで飛行した。中国海軍の進路と思われる石垣島北方を避けて、南方より接近した。スヴェトラーナがパイロットに「サーチライト使用は止めて下さい。まだ近傍を中国軍艦が遊弋中。赤外線ライトで見つけましょう。暗視鏡、ありますか?」と聞いた。
「少尉、座席の下に赤外線ゴーグルが突っ込んであるはず!」
「お!あった!」
SH-60Kは哨戒ヘリなので、救命用ウインチは装備されていない。狭い機内で、吊り下げ式ソナーのウインチのソナー部分を外してカーゴフック、ボディハーネスを取り付けた。「私が降りる!」とスヴェトラーナが言ってボディハーネスに体をつこんだ。ウインチを降ろさせた。
スヴェトラーナは海面上を見回す。赤外線ゴーグルの視界が狭く、彼女はなかなか三人を発見できない。波が荒い。数分して、海面に浮かんでいる人体が彼女に見えた。「九時の方向、二百メートル!」スヴェトラーナがマイクに叫ぶ。ヘリがホバリングして三人に近づく。スヴェトラーナが金少尉の右肘を掴んだ。ヨンスはグッタリしていた。ボディハーネスに体を入れさせた。「よし!一人、確保した!ウインチ、上げろ!」
ヘリの隊員が側面スライドドアから二人を機内に引きずりこんだ。スヴェトラーナがまたウインチを降ろさせて、次に女を引き上げた。女は意識がある。男も引き上げた。男も大丈夫そうだ。
ヘリの自衛隊員が意識を失っている金少尉を介護した。
「少尉、AEDは?」とヘリのパイロットがロシア人に聞いた。
「準備してくれ!まずは・・・」と胸部と腹部を見る。呼吸がない。胸骨圧迫をして、人工呼吸を試みる。胸部を押す。マウスツーマウスで人工呼吸をする。胸部を押す・・・金少尉が咳き込んで海水を吐き出した。ちょうど口を付けている時だ。彼女と目が合った。ギョッとしている。
ゲホゲホ言って、彼女が上体を起こした。「ああ、ひどい目にあった・・・」とヨンスが英語で言う。
横にひざまずいていたスヴェトラーナが「金少尉、ご無事で何より。小官は東ロシア共和国軍、スヴェトラーナ少尉であります」と言って毛布でヨンスの体を包んだ。タオルを渡す。自衛隊員が日本人の男女も毛布で体を包んだ。
「スヴェトラーナ少尉、ありがとうございます!助かりました!」と金少尉。
「よし!エレーナ少佐に連絡して!金少尉と日本人男女二人、無事確保と伝えて」とヘリのパイロットに叫んだ。
「了解!」
「あ~、死ぬかと思ったわ」ヘリの床に胡座をかいてヨンスが頭を振って言った。「暗号通信の電波を逆探されるとは・・・」とロシア人将校が言う。
「人民解放軍もやるわね?もう、電子戦の時代になったんだわ・・・スヴェトラーナ少尉?タバコ、お持ち?」
「え?小官は吸いませんが・・・」
パイロットが「自衛隊機は禁煙ですよ」と言って胸ポケットからタバコとライターを出して金少尉に渡した。「マルボロメンソールで良ければ。金少尉、日本国領土にようこそ」
「ありがとう!普段は吸わないんですけど、こういう場合は、ね?」とパイロットにウィンクした。パイロットは、ロシア軍の美人に人民解放軍の美人が加わったわけだ、と思った。
「あ~、生き延びたわ。エレーナ少尉にも会えるのね。彼女にニャーナの親戚の女狐が亡命してきた、って言わないとね」
「ハィ?」とスヴェトラーナ。
「あ、こっちのこと。スヴェトラーナ少尉」
「なんでしょうか?」
「ロシア人女性に初めて唇を奪われちゃったわ。私、バイセクシュアルなのよ」
「ハ?」
「あら、指輪が・・・既婚者か・・・残念・・・」
「金少尉は面白い方ですね」
「そうかしら?エレーナにとっては、私は女狐らしいわよ。スヴェトラーナ少尉は結婚してるのね?」
「ええ、佐渡ヶ島で日本人の方と・・・」
「あら、いいわねえ。私にも日本人の男性を紹介して欲しい」
金少尉がパイロットにタバコとライターを返した。「金少尉、俺で良ければ、お付き合いください。独身ですよ」と彼女らの会話を聞いていたパイロットが言った。「あら、女狐の女スパイでよろしいかしら?じゃあ、これから、人民解放軍の猛攻を生き延びたらデートしましょうよ。ディズニーランドに連れて行ってくださる?上海のディズニーランドは汚くてつまらないのよ。東京のに行きたいわ」「お安い御用です」「お互い、死ななければね・・・」
「ああ、そうそう、こちらの二人も連れてきちゃったわ」と金少尉が英語でスヴェトラーナに言う。「楊少校に拉致されて、レールガンと電磁カタパルトの開発を無理やりやらされていた人たちだわ。名前も素性も知らないけど・・・」
男が英語で答えた。「俺は尾崎紀世彦。彼女は・・・家内の比嘉美香だ。俺は日本国防衛省所属の技官だ。おい、これはどうなっているんだ?ヘリは自衛隊機で、キミは・・・ロシア人?それで助けてくれたのが人民解放軍の少尉?何が起こっているんだ?拉致されて外部の状況はまったく知らない。一体、ここはどこなんだ?」
スヴェトラーナが「話が長くなりますから、詳しいことは紺野二佐と私の上官のエレーナ少佐にお聞き下さい。ここは石垣島沖合約44km。ヘリは現在石垣島臨時自衛隊駐屯地に向かっています」
石垣島貨物ターミナル、臨時駐屯地、石垣島侵攻日当日
金少尉、尾崎、比嘉を乗せたSH-60K哨戒ヘリコプターは、揚陸艦オスリャービャに戻らず、臨時キャンプ横の空き地に着陸した。臨時キャンプの仮設事務所には、紺野二佐、畠山三佐、鈴木三佐、広瀬二尉、エレーナ少佐、アニータ少尉、ソーニャ准尉も集まっていた。
哨戒ヘリコプターから金少尉とスヴェトラーナ少尉が降り立った。エレーナとアニータ、ソーニャが出迎える。「スヴェトラーナ、ご苦労さま・・・あなた、ずぶ濡れよ?海に飛び込んだの?」
「ハ!小官がウインチで降りて金少尉を救出しました」
「あらら、みんな、まずはシャワーを使わないといけないわね。金少尉、ご案内するわ。ソーニャ、着替えの準備をお願い。アニータ少尉、スヴェトラーナ少尉から話を聞いて」
「ラジャ!」
シャワー室に行く途中でエレーナは金少尉に話しかけた。「初めまして、っておかしいわね。エレーナです。彼女はソーニャ准尉」とソーニャを紹介する。「ソーニャはロシアのコリアン族なのよ」
「エレーナ少佐、金容洙であります!・・・亡命したから、元少尉になりますね。ヨンスと呼んでください・・・ニャーナと同じ女狐のスパイですよ」
「あら、その女狐二人のお陰でどれだけ助かったことか。お礼を言うわ。ヨンス、本当にありがとう」
「残念です。露見しなければ、もう少しスパイ活動が続けられたんですが・・・」
「いずれ露見するか、亡命しないといけなかったんだから、良い機会だったかもしれないわ。死にそうになっちゃったけどね」ソーニャがロシア軍の迷彩服をヨンスに用意した。サイズがピッタリだ。
自衛隊員に助けられてヘリを降りた尾崎と美香を紺野が出迎えた。「尾崎!比嘉さん!よくぞ生きて戻れたもんだ!金少尉のお手柄だ。二人共すまなかった。九年前に私の失態で拉致されることになってしまって・・・」紺野が二人を両手で抱きしめた。
「しかたないよ、紺野・・・二佐になったって?それより、これはどういうことだ?ロシア軍兵士がウヨウヨしていて、自衛隊員も混ざっている。一体ここで何が起こっているんだ?」
「話は長くなる。シャワーを浴びて、何か食べて飲んで落ち着いたら説明しよう。少なくともだ、与那国島では既に解放軍の上陸作戦での戦闘があった。それと連動して、石垣島・宮古島への人民解放軍の侵攻作戦が台湾侵攻と並行して進行している。ここは石垣島で、金少尉の報告では、人民解放軍の侵攻は今日なんだ」
「フム、なるほど。俺と美香は、最終決戦に間に合ったってことだな?」
「ああ、南禅と羽生がいるぞ」
「・・・レールガンだな?・・・よし、俺が開発させられていた中国側のレールガンなんかの情報もある。九年のブランクがあるが、中国野郎ども!あいつら、叩き潰してやる!」
「遠藤実と遠藤早紀江も来てるよ」
「ミノルはともかく、早紀江ちゃんがなぜここに?戦場に一般人はマズイだろ」と尾崎。
「ええ?早紀江ちゃんが?」と美香。
「もう、キミらが拉致されて九年経っているんだ。彼らは早紀江ちゃんが高校を卒業してすぐに結婚、彼女は大学を卒業して、キミの航空装備研究所に入ったんだ。いまや、ミノルのいい相棒で、尾崎の代わりにレールガンの開発を南禅と羽生と一緒にやっているんだ。お!噂をすれば・・・」
ミノルが尾崎に飛びついた。「尾崎さん、ご無事で!」と言う。早紀江も美香を抱きしめた。「美香さん、無事で良かったよぉ」とすすり泣く。
「早紀江ちゃんは結婚して、遠藤・・・名字は変わらないんだな。しかし、同じ職場とはね。何を担当しているんだ?」
「尾崎さん、レールガンや戦闘機のAIでの管制システムの担当です。ミノルにも手伝ってもらってます。ミノルは、尾崎さんの担当されていたレールガンの素材開発と冷却システムの開発も担当してます」
「そうか。中国のレールガンはどうにも水冷冷却システムがうまくいってない。すぐ砲身温度が上がってしまって、数百発の発射で千度を超えてしまう。その後、一時間は発射できないんだ。中国の素材だから、日本のものよりも耐熱性も劣る」
「なるほど。あっちは冷却がまだ水冷なんですね?こちらは、次世代原子炉の高温ガス炉の技術を流用して、ヘリウム冷却に切り替えました。砲身から出た900度以上のヘリウムガスをもがみ型護衛艦のタービンに回して、発電効率を上げています。こっちに来ているFFM-1のもがみ、FFM-2のくまの、FFM-3ののしろに搭載済み。熱交換器を通して、ヘリウムの砲身への入り温度は300度まで下げました。だから、中国のと違って、何千発でも連射できるんですよ」
「そうか。九年経てば進歩するよな。そうそう、美香、あれは落とさなかったか?」と美香に聞いた。
美香が胸元に手を入れて、ブラの中を探っている。小さなチップを取り出した。「メモリーカードを盗んだんですよ。これの中に、中国の管制システムのプログラムがセーブされているので、これを使えば、向こうの管制システムはハッキングできます」
「美香は九年も俺と一緒に仕事していたんで、今や中国の兵器の専門家だ」と尾崎。
「防衛省で雇ってくださるかしらね?」と美香。
「全然、問題ないよ。とりあえず嘱託で今回の戦闘に従事してもらおう」と紺野。
「よしよし、楊少校、目にもの見せてやるぞ」
解放軍海軍台湾侵攻第2艦隊、旗艦龍虎山艦上
金容洙少尉は、人民解放軍海軍の所属で、尾崎と美香の拉致を指揮した楊欣怡少校(少佐)の部下だ。しかし、彼女は朝鮮族であり、東ロシア共和国のエレーナ少佐と紺野二佐※に情報を流しているスパイである。
※2026年には紺野三佐は昇格して二佐になっている。
先島諸島侵攻の第二艦隊旗艦、強襲揚陸艦の龍虎山は、宮古海峡の接続水域(領海の基線からその外側24海里、約44kmの線)に近づいていた。石垣島まで120キロの海域だ。エレーナとの暗号通信が終わり、金少尉はくつろいでいた。エレーナは、東ロシア共和国から自衛隊に出向している陸軍将校だ。
さて、食事にしようか、シャワーを浴びようかとヨンスは考えた。
部屋の船内インターフォンが鳴った。なんだろう?と思って彼女は受話器を取る。切迫した声が聞こえた。「金少尉、李通信士長であります」と彼女がいつも目をかけてやっている李だった。ヨンスは李が上官の性被害に遭うのを何度もかばってやっていた。「なんだ、李士長?また、変態の上官に言い寄られ・・・」
「違います!政治将校が金少尉を逮捕するための準備をしているのを知りました。彼らの会話を盗み聞きしました。もうまもなくそちらの部屋に向かうようです!」
「それはまたなぜ?」
「艦内で暗号通信電波を傍受していて、金少尉のお部屋から電波が出ているというのを突き止めたらしいんです。そんなことはないと思いますが、政治将校のこと、何をされるかわかりません!それで事前にお知らせしようとご連絡した次第であります!」
「わ、わかった!李士長、何も問題はないはずだ。でも、ありがとう」
「では、金少尉、お気をつけて」
金少尉は量子エニグマ暗号トランシーバーと拳銃、ライフジャケットを掴んで、部屋を飛び出す。駆けながらライフジャケットを着込む。トランシーバと拳銃をズボンのポケットに突っ込んだ。
奴らは船の前部からやってくるはずだ、ヤバいぞ!と推測して、通路を後部甲板の方に駆けた。
(そういえば、楊少校が日本から拉致してレールガンと電磁カタパルトの開発をさせていた日本人のカップルが監禁されていたな。日本への手土産に彼らを連れていくもいいだろう。どこだっけ?向こうの通路か?)
金少尉は通路を左に曲がり、右舷の通路の方に駆けた。右舷通路の角で左右を盗み見る。歩哨が立っている部屋に気づいた。(あそこだ)ヨンスは歩みを緩めて歩哨の前を通り過ぎようとする。
「金少尉!ご苦労さまです!」と歩哨が敬礼をする。政治将校からの通達はまだないようだ、とヨンスは思った。
「ウム」と答礼してすれ違いざま右の裏拳で歩哨の首筋を投打した。崩れ落ちた歩哨の腰から鍵を取り出してドアを開けた。男女がベッドに座っていて話をしている最中だった。
「おい、キミらは拉致された日本人だろう?」と金少尉が日本語で聞いた。
「そうだが?あなたは何者だ?」
「私は人民解放軍の金容洙少尉。しかし、実はキミらの側の人間だ」
「そんなこと信用できるか!」
「・・・ああ、自衛隊の人間を知っている。私が日本に亡命したらカウンターパートになる人物だ。名前は紺野二佐という」
「紺野だと?紺野は三佐・・・九年も経てば昇進するか・・・」
「とにかく、一刻を争う。もうじき私を追って政治将校が来るだろう。私はスパイの身分がバレて捕まれば銃殺刑だ。さあ、私と一緒に来るのか、来ないのか?」
「・・・イチかバチかだ。行こう」と男が女に囁いた。
「ハイ」と女が頷く。
「よし。急な話だったのだ。数分前に人民解放軍の政治将校が私を逮捕するという情報をきいたばかりなのだ。それで、私は脱出の準備を何もしていない。追っ手はこの艦の前部から来るはずだ。いいか、一か八か、後部甲板から海に飛び込むぞ!」
「この荒天でか?」
「荒天だから逃げおおせるかもしれん。途中でキミらのライフジャケットを通路沿いで手に入れよう。何も持っていくな!邪魔だ!」
三人はタラップを二段ごとによじ登る。途中にライフジャケットが壁のガラス箱にあった。ガラスを割り三つ取り出した。後部甲板への水密扉を開く。後部甲板に出た。
幸いなことに、荒天のために甲板には人気はなかった。彼らは左舷甲板から海面を見下ろす。十四、五メートルある。急に甲板に拳銃の跳弾が飛んだ。
(どこかで見られたか?南無三、跳ぶしかないわね)とヨンス。
「キミら、泳ぎは?」
「いまさら習えないだろう?俺は泳ぐ程度はできるぜ」と日本人の男が答える。
「よし、私から・・・」金少尉は甲板から海面に飛び降りた。脚をまっすぐにして、脚から海面に突っ込む。(まいっちゃうわねえ、最後の最後にこんなことになるなんて)
二人の日本人も金少尉に続いて飛び込んだ。
夢中で潜ろうとしたがジャケットが邪魔だ。少尉はライフジャケットを脱いだ。彼らにも脱ぐように手真似で伝えた。三人のジャケットは海面の方に漂っていく。
(これで、拳銃弾があたったかも?と思ってくれるといいんだけど)
彼らの周囲の水中に拳銃弾の航跡が見える。映画じゃないんだから!とヨンスは思ってさらに深く潜る。息が苦しい。日本人の男よりも女のほうが泳ぎが上手い。彼を彼女が手助けしている。
船は全速で航行していた。23ノット(時速37キロ)。
(船が停船するまで多少の時間はあるだろう。車じゃないのだから急ブレーキを踏んで急停車というわけにもいかない。ホバーだと引き出すのに時間がかかる。ゴムボートを出してくるだろう。もう拳銃弾の射程距離外だが、海上に顔を出すと見つかる可能性があるわね?)とヨンスは考えをめぐらす。
二分ほどで息が続かなくなる。彼らは海面に顔を出した。船はまだ停船していない。ゴムボートの格納してある側部ハッチはまだ開いていない。もう日が沈む。少尉はクロールで船から離れた。男を助けて女が少尉に続いた。
十数分経って、船が停船、ゴムボートが船外に出されているのがヨンスには見えた。ボートのサーチライトが見える。ボートから離れるようにさらに泳いだ。日が沈んだ。
(まいったなあ。宮古島までは約44km以上、石垣島までは120キロ以上あるわ。う~ん・・・この量子エニグマ暗号トランシーバー、防水よね。世界基準の防水でありますように。モニターが光ったわ。よかった!)金少尉は、エレーナの番号を押した。東ロシア共和国軍のエレーナ少佐が通話に応答した。
「エレーナ!助かった!」と少尉。
「どうしたの?金少尉?まだ、宮古海峡の接続水域じゃないの?」
「それが、この通信機の電波を探知されて気づかれたの。船から飛び降りて、今、泳いでいるところ。ライフジャケットも脱ぎ捨てたわ。私の他に拉致された日本人の男女も一緒よ」
「わかった!広瀬二尉!救助に使えるヘリはどこかにいるの?」とエレーナが自衛隊の水陸機動団指揮官の広瀬に聞いた。
「ちょうど揚陸艦オスリャービャにSH-60K哨戒ヘリコプターが着機してます!」
「金少尉、トランシーバーにGPSビーコンがついているわ。スイッチオンできる?」
「ちょっと待って・・・」とヨンスが海面上で立ち泳ぎをしながらトランシーバーのモニターを覗き込む。タッチセンサーじゃないのが救いだ。上下左右のキー操作でメニューを追う。あった。「あったわ。オンにした!」
「よし!受信した!北緯24.9054、東経125.2911!ヘリを出す!約30分!少尉、頑張れるか?」
「たぶん、大丈夫よ!」
「待ってろよ!」
「了解!」
「お二人さん、自衛隊のヘリが来るそうだ。約30分!」
「わかったわ」と女が答える。男を支えて立ち泳ぎをしている。
大きな波が来て金少尉がのまれた。女の手が伸びて軍服の襟を掴んで海面に引き上げた。
「ゴホゴホ・・・あ、ありがとう。中国人は学校にプールがないから泳ぎが下手なんだ」と少尉。
「ここまで来たら生き残るしかないでしょ!頑張るのよ!」
「あなたは泳ぎがうまいな?」
「石垣島の漁師の娘ですもの。この程度の時化なんてへっちゃらよ」
「石垣島の出身なのか・・・」この女、今ここがどこか知らないな、どこだか知ったら驚くだろうなとヨンスは思った。
既に広瀬がオスリャービャに連絡、SH-60Kを準備していた。艦上にはエレーナの部下のスヴェトラーナ少尉がいた。
「広瀬!」とエレーナが叫ぶ。
「少佐、二分で発艦!スヴェトラーナ少尉が乗り込みます!」
「よし、北緯24.9054、東経125.2911だ。位置は随時連絡する!」
「聞いたな?スヴェトラーナ少尉?」と広瀬。
「二尉、E24.9054、N125.2911、了解!ヘリに入力しました。出ます!」
「気をつけるんだぞ!」「ラジャ!」
ヘリは最大速度250キロで飛行した。中国海軍の進路と思われる石垣島北方を避けて、南方より接近した。スヴェトラーナがパイロットに「サーチライト使用は止めて下さい。まだ近傍を中国軍艦が遊弋中。赤外線ライトで見つけましょう。暗視鏡、ありますか?」と聞いた。
「少尉、座席の下に赤外線ゴーグルが突っ込んであるはず!」
「お!あった!」
SH-60Kは哨戒ヘリなので、救命用ウインチは装備されていない。狭い機内で、吊り下げ式ソナーのウインチのソナー部分を外してカーゴフック、ボディハーネスを取り付けた。「私が降りる!」とスヴェトラーナが言ってボディハーネスに体をつこんだ。ウインチを降ろさせた。
スヴェトラーナは海面上を見回す。赤外線ゴーグルの視界が狭く、彼女はなかなか三人を発見できない。波が荒い。数分して、海面に浮かんでいる人体が彼女に見えた。「九時の方向、二百メートル!」スヴェトラーナがマイクに叫ぶ。ヘリがホバリングして三人に近づく。スヴェトラーナが金少尉の右肘を掴んだ。ヨンスはグッタリしていた。ボディハーネスに体を入れさせた。「よし!一人、確保した!ウインチ、上げろ!」
ヘリの隊員が側面スライドドアから二人を機内に引きずりこんだ。スヴェトラーナがまたウインチを降ろさせて、次に女を引き上げた。女は意識がある。男も引き上げた。男も大丈夫そうだ。
ヘリの自衛隊員が意識を失っている金少尉を介護した。
「少尉、AEDは?」とヘリのパイロットがロシア人に聞いた。
「準備してくれ!まずは・・・」と胸部と腹部を見る。呼吸がない。胸骨圧迫をして、人工呼吸を試みる。胸部を押す。マウスツーマウスで人工呼吸をする。胸部を押す・・・金少尉が咳き込んで海水を吐き出した。ちょうど口を付けている時だ。彼女と目が合った。ギョッとしている。
ゲホゲホ言って、彼女が上体を起こした。「ああ、ひどい目にあった・・・」とヨンスが英語で言う。
横にひざまずいていたスヴェトラーナが「金少尉、ご無事で何より。小官は東ロシア共和国軍、スヴェトラーナ少尉であります」と言って毛布でヨンスの体を包んだ。タオルを渡す。自衛隊員が日本人の男女も毛布で体を包んだ。
「スヴェトラーナ少尉、ありがとうございます!助かりました!」と金少尉。
「よし!エレーナ少佐に連絡して!金少尉と日本人男女二人、無事確保と伝えて」とヘリのパイロットに叫んだ。
「了解!」
「あ~、死ぬかと思ったわ」ヘリの床に胡座をかいてヨンスが頭を振って言った。「暗号通信の電波を逆探されるとは・・・」とロシア人将校が言う。
「人民解放軍もやるわね?もう、電子戦の時代になったんだわ・・・スヴェトラーナ少尉?タバコ、お持ち?」
「え?小官は吸いませんが・・・」
パイロットが「自衛隊機は禁煙ですよ」と言って胸ポケットからタバコとライターを出して金少尉に渡した。「マルボロメンソールで良ければ。金少尉、日本国領土にようこそ」
「ありがとう!普段は吸わないんですけど、こういう場合は、ね?」とパイロットにウィンクした。パイロットは、ロシア軍の美人に人民解放軍の美人が加わったわけだ、と思った。
「あ~、生き延びたわ。エレーナ少尉にも会えるのね。彼女にニャーナの親戚の女狐が亡命してきた、って言わないとね」
「ハィ?」とスヴェトラーナ。
「あ、こっちのこと。スヴェトラーナ少尉」
「なんでしょうか?」
「ロシア人女性に初めて唇を奪われちゃったわ。私、バイセクシュアルなのよ」
「ハ?」
「あら、指輪が・・・既婚者か・・・残念・・・」
「金少尉は面白い方ですね」
「そうかしら?エレーナにとっては、私は女狐らしいわよ。スヴェトラーナ少尉は結婚してるのね?」
「ええ、佐渡ヶ島で日本人の方と・・・」
「あら、いいわねえ。私にも日本人の男性を紹介して欲しい」
金少尉がパイロットにタバコとライターを返した。「金少尉、俺で良ければ、お付き合いください。独身ですよ」と彼女らの会話を聞いていたパイロットが言った。「あら、女狐の女スパイでよろしいかしら?じゃあ、これから、人民解放軍の猛攻を生き延びたらデートしましょうよ。ディズニーランドに連れて行ってくださる?上海のディズニーランドは汚くてつまらないのよ。東京のに行きたいわ」「お安い御用です」「お互い、死ななければね・・・」
「ああ、そうそう、こちらの二人も連れてきちゃったわ」と金少尉が英語でスヴェトラーナに言う。「楊少校に拉致されて、レールガンと電磁カタパルトの開発を無理やりやらされていた人たちだわ。名前も素性も知らないけど・・・」
男が英語で答えた。「俺は尾崎紀世彦。彼女は・・・家内の比嘉美香だ。俺は日本国防衛省所属の技官だ。おい、これはどうなっているんだ?ヘリは自衛隊機で、キミは・・・ロシア人?それで助けてくれたのが人民解放軍の少尉?何が起こっているんだ?拉致されて外部の状況はまったく知らない。一体、ここはどこなんだ?」
スヴェトラーナが「話が長くなりますから、詳しいことは紺野二佐と私の上官のエレーナ少佐にお聞き下さい。ここは石垣島沖合約44km。ヘリは現在石垣島臨時自衛隊駐屯地に向かっています」
石垣島貨物ターミナル、臨時駐屯地、石垣島侵攻日当日
金少尉、尾崎、比嘉を乗せたSH-60K哨戒ヘリコプターは、揚陸艦オスリャービャに戻らず、臨時キャンプ横の空き地に着陸した。臨時キャンプの仮設事務所には、紺野二佐、畠山三佐、鈴木三佐、広瀬二尉、エレーナ少佐、アニータ少尉、ソーニャ准尉も集まっていた。
哨戒ヘリコプターから金少尉とスヴェトラーナ少尉が降り立った。エレーナとアニータ、ソーニャが出迎える。「スヴェトラーナ、ご苦労さま・・・あなた、ずぶ濡れよ?海に飛び込んだの?」
「ハ!小官がウインチで降りて金少尉を救出しました」
「あらら、みんな、まずはシャワーを使わないといけないわね。金少尉、ご案内するわ。ソーニャ、着替えの準備をお願い。アニータ少尉、スヴェトラーナ少尉から話を聞いて」
「ラジャ!」
シャワー室に行く途中でエレーナは金少尉に話しかけた。「初めまして、っておかしいわね。エレーナです。彼女はソーニャ准尉」とソーニャを紹介する。「ソーニャはロシアのコリアン族なのよ」
「エレーナ少佐、金容洙であります!・・・亡命したから、元少尉になりますね。ヨンスと呼んでください・・・ニャーナと同じ女狐のスパイですよ」
「あら、その女狐二人のお陰でどれだけ助かったことか。お礼を言うわ。ヨンス、本当にありがとう」
「残念です。露見しなければ、もう少しスパイ活動が続けられたんですが・・・」
「いずれ露見するか、亡命しないといけなかったんだから、良い機会だったかもしれないわ。死にそうになっちゃったけどね」ソーニャがロシア軍の迷彩服をヨンスに用意した。サイズがピッタリだ。
自衛隊員に助けられてヘリを降りた尾崎と美香を紺野が出迎えた。「尾崎!比嘉さん!よくぞ生きて戻れたもんだ!金少尉のお手柄だ。二人共すまなかった。九年前に私の失態で拉致されることになってしまって・・・」紺野が二人を両手で抱きしめた。
「しかたないよ、紺野・・・二佐になったって?それより、これはどういうことだ?ロシア軍兵士がウヨウヨしていて、自衛隊員も混ざっている。一体ここで何が起こっているんだ?」
「話は長くなる。シャワーを浴びて、何か食べて飲んで落ち着いたら説明しよう。少なくともだ、与那国島では既に解放軍の上陸作戦での戦闘があった。それと連動して、石垣島・宮古島への人民解放軍の侵攻作戦が台湾侵攻と並行して進行している。ここは石垣島で、金少尉の報告では、人民解放軍の侵攻は今日なんだ」
「フム、なるほど。俺と美香は、最終決戦に間に合ったってことだな?」
「ああ、南禅と羽生がいるぞ」
「・・・レールガンだな?・・・よし、俺が開発させられていた中国側のレールガンなんかの情報もある。九年のブランクがあるが、中国野郎ども!あいつら、叩き潰してやる!」
「遠藤実と遠藤早紀江も来てるよ」
「ミノルはともかく、早紀江ちゃんがなぜここに?戦場に一般人はマズイだろ」と尾崎。
「ええ?早紀江ちゃんが?」と美香。
「もう、キミらが拉致されて九年経っているんだ。彼らは早紀江ちゃんが高校を卒業してすぐに結婚、彼女は大学を卒業して、キミの航空装備研究所に入ったんだ。いまや、ミノルのいい相棒で、尾崎の代わりにレールガンの開発を南禅と羽生と一緒にやっているんだ。お!噂をすれば・・・」
ミノルが尾崎に飛びついた。「尾崎さん、ご無事で!」と言う。早紀江も美香を抱きしめた。「美香さん、無事で良かったよぉ」とすすり泣く。
「早紀江ちゃんは結婚して、遠藤・・・名字は変わらないんだな。しかし、同じ職場とはね。何を担当しているんだ?」
「尾崎さん、レールガンや戦闘機のAIでの管制システムの担当です。ミノルにも手伝ってもらってます。ミノルは、尾崎さんの担当されていたレールガンの素材開発と冷却システムの開発も担当してます」
「そうか。中国のレールガンはどうにも水冷冷却システムがうまくいってない。すぐ砲身温度が上がってしまって、数百発の発射で千度を超えてしまう。その後、一時間は発射できないんだ。中国の素材だから、日本のものよりも耐熱性も劣る」
「なるほど。あっちは冷却がまだ水冷なんですね?こちらは、次世代原子炉の高温ガス炉の技術を流用して、ヘリウム冷却に切り替えました。砲身から出た900度以上のヘリウムガスをもがみ型護衛艦のタービンに回して、発電効率を上げています。こっちに来ているFFM-1のもがみ、FFM-2のくまの、FFM-3ののしろに搭載済み。熱交換器を通して、ヘリウムの砲身への入り温度は300度まで下げました。だから、中国のと違って、何千発でも連射できるんですよ」
「そうか。九年経てば進歩するよな。そうそう、美香、あれは落とさなかったか?」と美香に聞いた。
美香が胸元に手を入れて、ブラの中を探っている。小さなチップを取り出した。「メモリーカードを盗んだんですよ。これの中に、中国の管制システムのプログラムがセーブされているので、これを使えば、向こうの管制システムはハッキングできます」
「美香は九年も俺と一緒に仕事していたんで、今や中国の兵器の専門家だ」と尾崎。
「防衛省で雇ってくださるかしらね?」と美香。
「全然、問題ないよ。とりあえず嘱託で今回の戦闘に従事してもらおう」と紺野。
「よしよし、楊少校、目にもの見せてやるぞ」
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