雨の日の美術館 、イシガキ作戦の前日譚。

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第1章 尾崎と比嘉編

第12話 紺野と尾崎、2017年11月15日(水)

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Ⅰ 特別管理秘密にかかわる基準
 特別に秘匿すべき情報については物的管理として、最新の「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一管理基準」及び「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一技術基準」(情報セキュリティ制作会議決定)の厳格な適用等と行うとともに、人的管理として、秘密取扱者適格性確認制度、管理責任体制、秘密保全研修制度を導入して、特別な管理を行い、情報漏えいの絶無を期するものとする。



外交や安全保障に関する重要秘密を「特別管理秘密」とし、これを扱う国家公務員の適格性を調べる制度。日本政府が2007年(平成19)8月に策定した「カウンターインテリジェンス(防諜)機能の強化に関する基本方針」に基づいて定められ、2009年4月から導入された。国家機密の漏洩(ろうえい)を防ぎ、スパイ活動から国家機密を守ることを目的とする制度である。外務、防衛、内閣官房、警察、経済産業など22府省庁の国家公務員を対象に実施している。

2012年6月末時点で6万4361人の公務員が対象者となった。同制度に秘密漏洩に対する罰則規定はないが、国家公務員法の守秘義務違反(最高懲役1年)が適用される見込みである。

調査内容や運用実態の詳細について政府は公表していないが、本人および配偶者や親族の国籍、借金の有無などの経済状況、交友関係、精神疾患などの通院・治療歴、薬物・アルコールの影響、犯罪・懲戒処分歴、外国への渡航歴などが、本人の同意を得ずに調査されたものとみられる。

また、特別管理秘密の漏洩を避けるため、適格者となった国家公務員から身上明細書や誓約書を提出させていたという報道もあった。

同制度の存在は、2012年に社民党党首福島瑞穂の国会質問主意書に対し、政府が答弁書を閣議決定したため公式に明らかになった。

秘密取扱者適格性確認制度の根拠法令はないが、内閣情報調査室は「任命権者の権限の範囲内で実施しており、法的問題はない」としていた。なお、2013年に特定秘密保護法が成立したことで、民間人を含む特定秘密取扱者の適性を評価する制度の根拠法令が整った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
20171115

 俺は自宅マンションの駐車場から愛車のパジェロに乗った。平日の非番の日だったが、研究所に書類提出をしないといけない。錦糸町料金所から首都高7号小松川線にはいる。両国JCTで隅田川を渡り、首都高6号に。3月なら左手に桜が見えるんだが、今は十一月。日本橋からは都心環状線だ。

 北の丸公園、千鳥ヶ淵、外堀を左手に、首都高4号新宿線、国立競技場、明治神宮、新宿料金所を左折、高井戸から中央自動車道、神代植物公園・JRA東京競馬場を右手、国立府中料金所を降り、日野バイパスを村上工業のところで右折、左折して甲州街道にのって、矢川通りで右折、南部線の踏切を渡って、左折して立川国分寺線、また右折して立川東大和線、中央線のガード下を通り、自動車整備振興会のところを右折。

 左手は空き地、出入国管理局なんかのごっちゃの建物を抜けると、防衛装備庁航空装備研究所にたどり着く。左手には自衛隊東京地方協力本部、陸自東立川駐屯地なんかがある。研究所の敷地内に入って、いつも文句を言われるが、研究所の敷地駐車場に駐車した。

 Googleで航空装備研究所を検索するとこの立川が出てくるだろうが、俺は普段ここにはいない。ここは総務課とか政治家に見せるショールームとか、まあ、あまり研究をするという場所ではないのだ。もちろん、研究棟はある。俺が普段居るのは、協力会社の研究所、航空装備研究所土浦支所、新島支所などだ。

 土浦支所は、誘導武器の要素技術についての試験に関する業務のうち防衛装備庁長官の命ずるものをつかさどる、新島支所は、誘導武器についての試験に関する業務のうち防衛装備庁長官の命ずるものをつかさどる、なんて内規に書いてある。しかし、何をしているなんて、ホムペを見てもわからないだろう。いわゆる機密ってやつなのだ。

 俺は総務課のある事務棟に向かう。航空装備研究所の特別管理秘密責任者に会って俺の身上明細書を提出するためだ。新たな交友関係が発生した場合、速やかに(5日以内に)身上明細書を更新し、秘密取扱者適格性確認制度に照らし合わせ適格性審査を受けることとあるのだ。もちろん、俺は「特別管理秘密」の適応される国家公務員というわけだ。

 文書の提出は「情報へのアクセス管理」に規定してある「外部電磁的記録媒体への電子情報の保存」でデジタルデータを「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一技術基準」に基づいて提出してもいいのだが、この情報セキュリティ対策が面倒だ。幾重にもわたるセキュリティーをクリアしないといけない。慣れないと交友関係の更新項目なんて単純な記述の変更に1時間以上かかることもある。だから、俺は文書を手書きで書き、封筒に厳重に封印して、研究所の情報管理責任者に直接手渡すことにしている。

 今回の身上明細書の更新は、この前の日曜日に出会った「比嘉(ひが)美香」と昨日会った「三國優子」の2名だ。責任者から提出された俺の書類は、自衛隊情報保全隊、公安警察、内閣情報調査室を回覧されて、申し訳ないが、美香さんと優子さんの身上調査も秘密裏に行われる。

 分銅屋で飲んだ話は報告しない。身上調査が長くなる。おまけに、分銅屋なんて、防衛省、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、KEK(高エネルギー加速器研究機構)、東京大学宇宙線研究所宇宙線研究所(スーパーカミオカンデ所轄部署)の常連の集まる巣窟みたいなもんだ。

 俺は分銅屋に盗聴器や隠しカメラが仕掛けられていても驚きはしない。なんせ口の軽い連中が集まっている。紺野、南禅、羽生、小寺、加藤恵がよく来るからな。俺もか。森絵美だって来やがる。おまけに女将さんの吉川久美子だって、今や森絵美の同僚、KEKの東海キャンパス所属で博士論文の作成中だ。第一、監視役の公安警察の富田まで来るんだからな。富田は現在は紺野三佐と同じく内閣情報調査室出向なのだ。

 仏頂面の研究所の情報管理責任者(責任者という奴らは必ず仏頂面だ)が俺の封書を受け取る。受け取りはナシだ。デジタルデータに受領書は送信される。証拠は必要だからな。彼女は(実は大昔は美人であったろう40代後半の課長)俺の封書を彼女の背後の超大型電子金庫にしまい込む。やれやれ、これで今週は終わった。5日以内に新規更新を怠ると大目玉を食らう。

 おばちゃんが俺に「尾崎くん、紺野三佐が待ってるよ。どうせここに来るだろうから先回りしたみたい。第三打合せ室に行って」と言う。「俺の車にGPSでも仕込んでるんですかね?」と言うと「仕込まれていても私は驚きません。私のだってそうだもの。さあ、行って行って。忙しいんだから」と追い出そうとする。

 俺は長い廊下を歩いて第三打合せ室に行った。ノックをする。「尾崎です。入ります」と部屋内に入ると、ソファーセットに座った紺野三佐がいた。羽生三佐の元女房で俺と同期で防衛省に所属した。

「おやおや、内閣情報調査室の方がこんな立川まで何の御用で?俺に会いたかったのか?美千留?」
「何言ってんの?身上明細書の提出だろう?」

「よくご存知で。車にはたぶんGPSが仕込まれているだろうし、尾行もついているだろうからな。ああ、新しい交友関係の更新だ。日曜日に会った比嘉(ひが)美香さんと昨日会った三國優子さんだよ。もう知ってるだろう?」

「日曜日のその女の子はまだ報告がない。尾崎が非番だったしね。でも昨日の三國優子は調べた。キミが山形の会社に行っただろ?あの会社も監視対象だからね。それで山形から新幹線で東京駅に戻ってきた。喫煙室で三國優子に出会った。神田のバーに行った」

「なんで美香さんはまだ調べてなくて、優子さんは調べたんだ?」
「それがね、こういう偶然というのはキミみたいな対象者はハニトラを疑うんだけどね。三國優子はシロだよ。安心しな。だが、尾崎を尾行した富田の手下が念のため三國優子を尾行した。彼女、大井町から徒歩6分くらいのマンションに住んでいる。小林智子という同僚と同居している。小林智子もシロだ。しかし、尾崎を山形から尾行していたらしい女がいて、彼女が東京駅からキミの尾行から三國優子に切り替えたんだ。そいつは大井町の三國優子のマンションを確認すると品川方面に歩いていった。品川駅近くでタクシーに乗り込んだ」

「興味深いな。俺も尾行が十重二重に付いてうれしいよ」
「話を聞け。三國優子を尾行していた女、どこに行ったと思う?」
「早く言え」

「その女、無防備なことにだ、行ったのが、東京都港区元麻布3丁目4番地33号だ」
「そんな住所を言われても俺にはわからん」

「その住所にある建物は、駐日中華人民共和国大使館だ」
「おっと・・・おいおい、中国野郎が俺を?」

「そうだ。山形の会社はリチウムイオンキャパシタの開発だろ?中国は、レールガンも開発中。さらに中国の三番目の空母『福建』は電磁カタパルトを搭載しようとしているがうまくいってないようだ」
「だが、俺が偶然出会った新幹線でパーサーをやっている女の子がどう関係する?」

「それはわからない。彼女に脅しをかけてキミをスパイするかもしれないし。まあ、気をつけることだ」

「優子に明日も会うぞ。約束したんだ」
「こんどは大阪だろ?そこもキャパシタの開発企業だな」
「優子とのアポはキャンセルするか?」
「いいや、しないでいい。自然に会って酒でもなんでも飲んでくれ。ホテルに連れ込むのも自由だ。彼女はシロだからな」
「だが、彼女に危険が及ぶのは・・・」

「もう既に中国野郎にバレてんだから、逆に保護のためにもそのまま付き合え」
「参ったな」

「それで、尾崎、今度駐日中華人民共和国大使館に赴任してきた武官が曲者だ。ヤツのしっぽも掴みたい」
「誰だい、そいつは?」

「楊少校という女狐だよ。野心満々のやり手の人民解放軍の少校様だ。こいつに鈴をつけたいんだよ。こいつは人民解放軍東部戦区所属で、台湾侵攻、南西諸島攻略にも関わっているんだ」
「厄介な話だ」

「だから、明日の出張前に絶対にキミに会っておきたかったんだよ」
「わかった、わかった。じゃあ、もう用事はないな。俺は消えてもいいだろ?」
「私ももう用事は済んだが、尾崎の車で送ってくれ」
「どこまで?」
「決まってんだろ?オフになったら分銅屋だろ?錦糸町のマンションまで行って、車を置いて北千住までデートしようじゃないか?飲み台は内閣情報調査室で持つよ。水戸泉でも飲もうや」
「おいおい、俺の予定も聞かないで・・・」
「キミに今日の予定はないだろ?」
「よくご存知だな。プライバシーってものがないのか?この国は?」
「尾崎も私も特別管理秘密対象者だからな。分銅屋で飲むのが一番安全だよ。重要監視拠点なんだから」
「やれやれ・・・」
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