【完結】佐渡ヶ島のエレーナ少佐 (近未来戦記①)

✿モンテ✣クリスト✿

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第3章 北朝鮮人民軍、佐渡上陸

第24話(1) 戦闘、佐渡二見町

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 二見町の佐渡一周線沿いのレストラン駐車場はちょっと高台になっている。背後は崖で、十数メートル上は台地になっていて、小さな田んぼが広がっている。そこからは、二見町の小さな漁港が見えた。
 
 駐車場の右手を戸地川が流れている。戸地川沿いを東に向かい、稜線沿いを進めばそこはレーダーサイトのある金北山になる。標高千メートルのサイトまでかなりの急峻な経路だが、直線距離にして7キロ、強行突破は可能だ。

 相川町までは直線で11キロ。もしも北朝鮮軍が大佐渡スカイラインルートに主力を向けるなら、二見町から十数分で急行することはできる。ただ、エレーナは、車輌による大佐渡スカイラインルート突破ではなく、徒歩行軍による戸地川突破を北が行う気がした。むろん、大佐渡スカイラインには、相川町の経路と分屯基地の経路沿いに防衛拠点を配置してある。

 最初、自衛隊は、航空自衛隊の航空戦力による北朝鮮ホバーの殲滅を考えていた。ところが、北朝鮮のホバーは20メートル程度の長さしかなく、最高速度96キロをほこる。しかも、60隻という大艦隊だ。このような艦隊構成に対する有効な空対艦の攻撃兵器を空自は所有していない。持っているのは大型艦に対する空対艦ミサイルだけである。
 
 海上自衛隊は、というと、航空自衛隊と事情は同じだ。対ホバーの兵器など持っていない。それも上陸阻止のための作戦などとっていないのである。しかも、中国の台湾侵攻作戦で、海自の艦艇は西に出払っていて、佐渡防衛にさける艦艇はなかった。



 エレーナがレーダーサイトの南禅と通話していた。「南禅二佐、そちらから北のホバー、視認できますか?」

「バッチリだぞ!市ヶ谷から衛星画像の写真を送ってきている。細部までよく見える。映像をそっちに送る」
「了解!スヴェトラーナ、どう?受信している?」
「オッケーです!」

 エレーナとスヴェトラーナ准尉は、タブレットのモニターを覗き込んだ。標高千メートルの金北山から北の艦隊まで240キロ先なので、まだ望遠レンズでは無理だ。

 タブレットのモニターの衛星の俯瞰された画像を見ていた少佐が「二見町方面のホバーは車輌をあまり積んでいないわね。四輪はない。でも、あれ?これは二輪車じゃない?マウンテンバイクに見えるけど?スヴェトラーナ、これ、バイクよね?」とスヴェトラーナに言う。「これはバイクです、少佐」

「ヒロシ、これどう思う?」と鈴木三佐にエレーナが聞いた。
「奴ら、戸地川沿いを山の稜線をバイクで登って、レーダーサイトを襲撃するつもりだと思う」
「私もそう思うわ。考えたわね」
「ほら、見てみろよ。相川町のホバーは四輪車輌を積んでいる。これは二見町ルートの山岳路と違って、舗装路の大佐渡スカイラインを登るから、四輪車を使うつもりだな。水陸機動団にもこの映像は送っているよね?」「同時に見ているはずよ」
「二見町水陸機動団の指揮を取っているのは・・・広瀬二尉だったね。彼に意見を聞いてみよう」

「水陸機動団、二見町部隊、広瀬二尉、おられますか?こちら、ロシア軍、エレーナ隊の鈴木三佐」
「三佐、広瀬二尉であります」
「レーダーサイトから中継してもらっている映像、そちらでも確認できておりますか?」
「見えてます!昼間のようにクリアに!」
「二見町のホバーは二輪車、相川町のホバーは四輪車を積載していると思われますが?」

「そうですなあ。これ、マウンテンバイクっぽい。絶対、戸地川沿いを山の稜線を辿って、レーダーサイトを襲撃するつもりでしょう!相川町は、大佐渡スカイラインルートでの襲撃ですな?」
「こちらもそう見ています」

「ヒロシ、マイクを貸して!広瀬二尉、エレーナ少佐であります」
「少佐、お初です。日本語お上手で。テレビで拝見してましたよ」

「キレイに映ってたかしら?ええっと、小官の部隊は、千名。二見町の佐渡一周線沿いのレストラン駐車場を本営にしております。前衛に5百、ここの後衛に3百、スナイパー隊に2百を配置しております。そこで、二見町の上陸予想地点は、地形から見ると、姫津漁港、胎蔵寺のある集落の漁港、その横の砂浜ではないかと想定いたします。ホバー、約30隻で、戸地川周辺ですと、あそこしか上陸できないと思います」

「我々も先遣隊が胎蔵寺境内の駐車場に本営を設置中であります。集落に残っていた住民は、自衛隊車輌で戸地川を越えた、12キロ先の佐渡市立高千小学校に退避中であります。もしもとなれば、佐渡縦貫線(ドンデン線)で両津港に退避できます。住民退避で、30名を割きましたので、残り、470名が漁港の守備につきます。姫津漁港、胎蔵寺のある集落の漁港の中間地点に展開いたします!」

「了解です!我々も前衛を胎蔵寺周辺まで前進させます。狙撃隊は、戸地川に埋伏させます。バイクで突っ切られる恐れがあります・・・ヒロシ、マップを・・・う~ん、北秋川はどうかしら?」
「北秋川は、こちらの狙撃隊を配置しましょう。ただ、この川の上流の稜線はキツイし、レーダーサイトの金北山のはるか手前の大佐渡スカイラインにつながるだけなので、可能性は低いでしょう。北のバイク隊が突っ切るなら、やはり戸地川だと考えます!航空戦力はどうなのですか?」

「鈴木です。新潟分屯基地からAH-64D アパッチ・ロングボウが発進準備中。4機編隊で来る。市ヶ谷は錯乱していて、南西諸島の離島防衛や北海道ばかり気にしていたものだから、まさか、佐渡ヶ島に北朝鮮部隊が来るなんて想定はしていなかった。こうも山がちで、崖が海岸線に迫っている地形では、航空機の展開は無理だ。エレーナ、まだ時間有るか?」

「現在、午前3時25分!上陸予想時間まで約1時間半よ!」
「まだ、大丈夫だな。エレーナ、俺、胎蔵寺まで行ってくるわ。行って戻って時間はあるだろ?直接、広瀬二尉と打合せしてこよう。無線だと伝わりにくいからな。広瀬二尉、聞いたな?今からそっちに行く!」
「了解!15分で着きますな」
「おし、3時40分、胎蔵寺境内に行く」
「ハイ!了解です!」

 横で聞いていた卜井ウライ、藤田、佐々木が顔を見合わせた。卜井ウライが「鈴木さん、一緒に行っちゃダメ?」と無理を言う。「う~ん、どうだろうか?上陸前には帰ってこれるが・・・エレーナ?キミが指揮官だ!決めろ!」

「仕方ないわね。でも、自衛隊の映像も撮れるから・・・いいわよ。十分気をつけて!タイフーンLで行って!SUVなら防備は大丈夫でしょう・・・ソーニャ准尉!卜井ウライさんたちの警護、運転もお願いね!」
「少佐、了解であります!」
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