【完結】佐渡ヶ島のエレーナ少佐 (近未来戦記①)

✿モンテ✣クリスト✿

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第3章 北朝鮮人民軍、佐渡上陸

第24話(2) 戦闘、佐渡二見町

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 ソーニャ准尉が運転席に、助手席に鈴木三佐、後部座席に卜井ウライ、藤田、佐々木が乗り込んだ。

「准尉、急げ!」
「ラジャ!ソーニャ、ぶっ飛ばします!卜井ウライさんたち!シートベルト、きつくして!」
「わ、わかった・・・」

 ソーニャがタイフーンLのアクセルを踏み込んだ。舗装路なので、タイフーンLは120キロ以上は軽く走れる。軍用SUVなので、お世辞にも乗り心地がいいとはいえない。揺れる車内で、佐々木が撮影をしている。ソーニャ、可愛い顔して運転、荒い!と思った。


 胎蔵寺の駐車場に着くと、広瀬二尉が待っていた。広瀬は、駐車場の地面に地図を広げて、鈴木三佐と打合せをしている。それを撮影して、コメントを入れている卜井ウライら三人。広瀬はテレビで見る卜井ウライさんたちだ!と思った。もう一人、直立不動で待機している小柄な女性に目が止まった。クルーの人かな?軍の人?
 
 ソーニャ准尉は、直立で待機していて、鈴木三佐よりもはるかに大柄な陸自の軍人を見た。ゴリラみたいね?水陸機動団って、海兵隊のことよね?ゴリラばっかりなのかしらね?と思った。
 
「鈴木三佐、広瀬二尉に2分、インタビューを!」と藤田。「いいですよ。急いで」

「広瀬二尉、藤田です。取り急ぎ、2点、お伺いします。この北朝鮮人民軍の佐渡上陸は予想されていましたか?不意打ちでしたか?それと、東ロシア共和国軍が、敵から友軍になりましたが、お気持ちをお聞かせ下さい」

「最初の1点でありますが、まったく予想など立っておりませんでした。弾道弾ミサイルの攻撃はわかっておりましたが、まさか、陸戦力をホバークラフトで送り込んでくるとは思いもよりませんでした。我が水陸機動団が佐渡に派遣されたのも、ロシア軍との交戦、ガメラレーダーの守備が目的でした。それが、突然、東ロシアの独立、相互防衛協定の締結で友軍となり、驚きました。しかしながら、東ロシア共和国軍が友軍となり、日本国土の防衛に今我々と協力して当たっていただいているということは、感無量であります。自国でもない土地で、戦死する危険のある状態でのことであります。それが、さらに女性兵士だけで構成されている。我が部隊として、彼女らを一兵たりとも死傷させない覚悟で戦闘するものであります。以上です・・・あの、オフレコですが、ウォッカを飲み交わすと、ロシア軍、良い奴らですよ。驚いたのが、結構、ウクライナ出身者も多いんですよ。あ!余計なことでした」
「広瀬二尉、ありがとうございました・・・最後の部分は編集しますから・・・」

 横で聞いていたソーニャが、このゴリラ、いいこと言うわねえ。こういう人、好きだなあ、と思った。二人が十数日後にペレスヴェート艦内で再開するとは思っても見なかったのだ。

 特急便で、五人は戸地川のエレーナ隊本営に戻った。4時25分。北の上陸予想時間まで、あと35分。



 アニーが北朝鮮の尉官と思われる兵士に向かっていく。途中で脚からスライディング、目前で飛び上がると、かがんで着地、伸び上がってアッパーカットを食らわした。戦闘訓練ならいざしらず、本気でやったものだから、相手は一発で仰向けにぶっ倒れた。

 この無鉄砲娘め!後方支援しているこっちの気にもなりやがれ!とアニーの様子を見ていたアデルマンが思う。

 大尉は、二人まとめて銃剣で串刺しにして、抜きざま、腰だめでもう一人を単射した。アニーが大尉に背をつけた。

「大尉、他の兵士に残しておかないと」
「手加減できっかよ!」
「囲まれたわね」
「お前が飛び出すからだろ」
 
 二人の正面に機関銃を構えた潜んでいた北の兵士が二名、立ちふさがった。二人共身を伏せる。その二人の頭越しに小野と小野寺が機関銃手の頭を撃つ。

「おい、小野寺、未亡人というのは聞くが、嫁が死んだ場合、夫はなんと呼ばれるんだ?」と小野。
「そんなの知りますかいな」
「この二人、ほっておくと、俺等と結婚する前にあの世に行っちまうぞ!」
「ロシア女性って、みんなこんなじゃじゃ馬なんですかね?」

 背後の二人に気づいた大尉が「ツトム、小野寺、援護感謝!」と怒鳴る。

「ミーシャ、気をつけないと、キミの可愛い頭が吹っ飛ぶぞ!」と小野。
「あら?そうなったら、お嫁にいけませんわね」
「俺、怖くてオシッコ、チビリそうだよ」
「私、ナプキンをつけてきたから、大丈夫よ」
「クソっ!オシメしてくればよかったぜ!」
 
 右方向から北の兵士がAK-72を構えた。アニーがそいつを横殴りに連射して仕留める。相手はジリジリと後退する。そこに他のロシア兵も駆けつけて、後退する北の兵士を横薙ぎに一斉射撃して仕留めた。誰かがグレネードランチャーを発射して、相手が吹っ飛んだ。
 
「スヴェトラーナ、どうなってる?」とヘルメットのマイクに大尉が怒鳴る。
「大尉、相手は後退して、陸自の海兵隊に向かってます。姫津漁港、胎蔵寺のある集落方向!」
「追撃するか?」
「ハ!こちらも合流します。大尉と少尉の隊は中央突破で願います!」

「アニー、聞いたか?中央突破だぞ!」
「お安い御用で!」



 卜井ウライアナがカメラウーマンの佐々木の構えたビデオに向かって語りかけた。「視聴者のみなさま、こちら、佐渡ヶ島北岸の二見町から中継しております。現在、私たち三人は、ロシア軍後衛から戦闘現場を俯瞰している状態です」卜井ウライが軽くうなずくと、佐々木が二見町の戦闘現場をズームアップした。
 
「北朝鮮人民軍は、ホバークラフト60隻に乗船、約三千名の兵力と思われます。彼らは二見町、相川町の二手に分かれ、約千五百名ずつが航空自衛隊佐渡駐屯基地のガメラレーダーを奪取する目的と思われます」

 前回の北のミサイルに依る本土攻撃でも、佐渡のガメラレーダーは多大な働きをし、幾多の弾道弾ミサイル、滑空弾ミサイルの迎撃に寄与しました。

 もしも、このレーダーが北に奪取された場合、レーダーは180度反転して、日本本土の自衛隊、在日米軍の動きを索敵できてしまいます。このレーダーを奪われるわけにはいかないのです。

 陸上自衛隊、水陸機動団、総員二千名は、二見町、相川町に五百名ずつ配置。ロシア軍、失礼、東ロシア共和国軍と連携し、佐渡防衛にあたっております。そして、東ロシア共和国軍は、女性兵士千名で構成され、ここ二見町陣地に配置しております。千名の男性兵士は相川町に配置しております。
 
 日本国が、自衛隊とともに、ロシア人の部隊で防衛されているというこの状況は、私は感に堪えないものです。しかも、ここ二見町のロシア人兵士は全員女性なのです。また、今まで報道を控えておりましたが、彼女ら千名の内、七百名は、日本人と結婚をした、或いは結婚を約束している状態なのです。
 
 実に、信じがたいことであります。東ロシア共和国の意図が奈辺にあったか、計り知れませんが、戦時にこのようなことが起こった、起こっているというのは想像の埒外でした。
 
 つまり、ここのロシアの7割の女性兵士たちは、ロシア人であり、かつ、夫・婚約者は日本人という奇妙な状況で、夫・婚約者の国土防衛に命をかけている、ということなのです。

 かつて、日本のある政党の党首は、自衛隊を評して『暴力装置』と述べました。最近でも、自衛隊の活用法などという党是と反することを述べている人間がおります。
 
 彼らにとっての現実とは、紙に書いた文言、口に出すイデオロギーのスローガンなのでしょう。しかしながら、今、私の目前に展開している場面、これが、紙とか口での虚構ではない、本当の現実なのであります。

 私的なことですが、私も愛とか平和を口にすれば、それで世界が変わると信じていたことがございました。つい最近までも、そう信じておりました。だが、愛とか平和を口にしても、相手が同じ土俵に乗ってくれなければ、世界は絶対に変わらない、変われないと今は信じております。
 
 暴力に訴えた、現状の地政学的変更を、話合いとか政治上の駆け引きで押し留められないことは、ウクライナや台湾、韓国で起こっていること、進行していること、そして、ここ佐渡もまたそうです、押し留められるはずはないのです。
 
「私は・・・このような光景を目前にして・・・目前にして・・・い、以上です。佐渡、二見町から卜井ウライでした・・・」

 卜井ウライアナは呆然として、マイクを持って突っ立っている。藤田が彼女の肩をポンッと叩いて「卜井ウライ、すごいぞ、一世一代のアナウンスだったぞ!」と言う。

「うぇ~ん、何話しているか、台本もなくって・・・喋っちゃたよぉ~」
「まあ、すごく良かったよ」
「・・・オシッコ、漏れたよ・・・」
「元首相じゃないが、感動した!」
「・・・こんなの全カットだからいいけど、後で、叱られるね」

 右耳のイヤホンを押していた佐々木が「卜井ウライアナ、あの、東京からです。局長がスタジオを占拠して、今の全部、生ライブで音声も含めて流しちゃったそうです!」

「え?えええ?」
「ハイ、そうです、テレ東を除く全地上波、BS、Abemaが放送しました!Youtubeにも流れまして、すぐ、ロシア語、英語、中国語などに翻訳されて、コピーが全世界に流れてしまったそうです。削除しきれないそうです!」
「・・・藤田ぁ~、私、首だわ・・・」
「その代わり、世界的有名人になっちゃったよ、卜井ウライ・・・次期衆院選に出馬するかい?」
「ちなみに、テレビ東京は、オバQの再放送だったそうです・・・」
「・・・」
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