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第1話 おとといの夜から40時間ちょっとだけ
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「なんこれ?国連マークやけど?明彦は国連機関の職員なん?」ってミキちゃんが首を傾げとる。
「そやみたいね。UNDP。United Nations Development Programme、国際連合開発計画やね。国連の補助機関やけど、その名刺の裏を見てみてよ」
ミキちゃんが名刺をひっくり返した。眉を顰めとる。「表が国連組織で、裏がJAXA?JAXAって、あのロケットのH2Aを飛ばしよる日本の組織やん?」
「JAXAは宇宙航空研究開発機構よ。つまり、彼は国際機関と日本の政府機関に勤務しとって、で、住んどるとこがスリランカってこと。理解できんね?なんで、スリランカなん?先進国やないよ?UNDPだけやったらわかるよ。開発途上国の経済、社会的発展のために、プロジェクト策定や管理をする機関なんやけん。けど、JAXA?JAXAから出向でUNDPなんかな?でも、JAXAは宇宙開発の機関やん?」
「インドなんかもICBMや衛星ロケットを打ち上げとるけど?」
「インドはスリランカより貧しかけど、宇宙開発は1960年代に始まっとるよ。1970年代には初の国産打ち上げロケットの発射が成功しとる。フランス、アメリカ、ロシアが技術協力したんよ。貧しい言うても十数億人の人口の国やけん、宇宙開発の予算くらいは捻出できる。けど、スリランカはインドより裕福やけど人口は2千万人程度。宇宙開発の予算なんかないよ」
「なんかよぉわからんけど、本人に聞いてみようや。だって、政府機関の職員が美術品売買ビジネスに投資するってわけわからんよ。JAXAって組織は美術品の目利きもできるんかな?」
「まさかね。謎やね。本人は雲の上やし、次に日本に来た時に聞かんと。でも、政府機関職員なんやけん、まっとうな職業やし、安心は安心やね」
┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼┈┈
関西空港駅から12:14分発の特急はるか22号で新大阪まで行った。電車賃、明彦に出してもらって悪かったなあ。彼、お金持っとるねえ。まあ、貧乏よりええかあ。
新大阪駅で待ち時間が10分くらいあったけん、駅弁を買う。ミキちゃんに「駅弁、買おうや」って言ったら「お腹すいた」って言う。あれだけリーガロイヤルホテルのビュッフェで食べたのに、まだ食べられると?
うちは明彦の前やけん遠慮して少ししか食べんかった。淑女の嗜みやね。普段はミキちゃんと同じくらいの食欲やけど。小娘は、天ぷら、お寿司、お稲荷さん、おうどん、デザートを全部平らげた。小娘、よう食べたねえ。
「直美さん、駅弁はうちが買うけんね」って言う。それで、カゴになんとか御膳いう赤飯、煮物、揚げ物、お肉、タコの炊き込みご飯のおかずがいっぱいの駅弁を放り込んで、牛タン弁当も放り込む。
それ、全部食べるん?うん、食べる!って言う。うちも幕の内弁当にした。ウニ・いくら丼をカゴに放り込んだ。朝、遠慮したけんお腹すいたんよ。新幹線は13:18分発で15:57分着。3時間近くある。ビールも500mlを4本。あ~あ、太るかもね。
けど、一昨日の夜から40時間ちょっとしか経っとらん。あっという間やったな。大阪には夜行バスで来て、帰りは新幹線なんて。こういう旅も悪くないやん?あ!バーのオーナーにお店を昨日閉めちゃったのを謝らんとね!
「やることがいっぱいあるねえ」って独り言。
「直美さん、会社作るってどうやるん?」
「前に友人に聞いたら、市役所の窓口やハローワークで起業のやり方とか、小倉市の補助金制度とか、市が紹介してくれるオフィスとか教えてくれるらしいよ。ミキちゃんが従業員になったら、ミキちゃんのお給料の一部も負担してくれるそうよ」
「それ、事務作業はうちが手伝うよ」
「当てにしとるよ」
「香港とシンガポールやったら、英語やね?」
「うちはちょっと話せるけど…」
「うちは、TOEICで820点とっとる。やけん、会話と書類作業は、もうちょっと勉強すればなんとかなるかも」
「それって、すごくない?TOEICって、平均点620点くらいやなかったっけ?」
「うん、勉強してもう1回受けて、900点以上とろうかな?」
「ミキちゃん、そっち、任せた。うちは、画廊とか画家の発掘をするよ」
やることがだんだん見えてきた。二人して、二人前の駅弁をペロッと食べてしまい、ビールもあっという間になくなって、パーサーさんが通りがかったけん、ウィスキーのミニチュアボトルを3本ずつ、ロックでもらった。パーサーが女二人、トリプルロックなんていうけん目を丸くしとった。
山陽新幹線さくら583号は13:18分発、博多駅着が15:57分。もっと乗っとりたいな。
ミキちゃんと新幹線の中で話して、彼女はうちのマンションに住むことになった。全財産が今持っとるバッグだけやけん、引っ越しは必要ないんよ。彼女は身ぎれいやけど、スーツケースならわかるけど、あんなバッグひとつで服から下着まで詰め込むのってすごかね。ミニマムの持ち物なんやろ。でも、もっと服や靴は買わんとね。明日、服を買いに行こう。
漫画喫茶を転々として、コインランドリーで洗濯、ファストフード店で食事するなんていう生活じゃダメやろね?いやいや、彼女の言う『寂しくなっても、私がおるけん、なぐさめてあげる』目当てやないよ。ない!絶対にない!
…初日からやってしもうた。
「そやみたいね。UNDP。United Nations Development Programme、国際連合開発計画やね。国連の補助機関やけど、その名刺の裏を見てみてよ」
ミキちゃんが名刺をひっくり返した。眉を顰めとる。「表が国連組織で、裏がJAXA?JAXAって、あのロケットのH2Aを飛ばしよる日本の組織やん?」
「JAXAは宇宙航空研究開発機構よ。つまり、彼は国際機関と日本の政府機関に勤務しとって、で、住んどるとこがスリランカってこと。理解できんね?なんで、スリランカなん?先進国やないよ?UNDPだけやったらわかるよ。開発途上国の経済、社会的発展のために、プロジェクト策定や管理をする機関なんやけん。けど、JAXA?JAXAから出向でUNDPなんかな?でも、JAXAは宇宙開発の機関やん?」
「インドなんかもICBMや衛星ロケットを打ち上げとるけど?」
「インドはスリランカより貧しかけど、宇宙開発は1960年代に始まっとるよ。1970年代には初の国産打ち上げロケットの発射が成功しとる。フランス、アメリカ、ロシアが技術協力したんよ。貧しい言うても十数億人の人口の国やけん、宇宙開発の予算くらいは捻出できる。けど、スリランカはインドより裕福やけど人口は2千万人程度。宇宙開発の予算なんかないよ」
「なんかよぉわからんけど、本人に聞いてみようや。だって、政府機関の職員が美術品売買ビジネスに投資するってわけわからんよ。JAXAって組織は美術品の目利きもできるんかな?」
「まさかね。謎やね。本人は雲の上やし、次に日本に来た時に聞かんと。でも、政府機関職員なんやけん、まっとうな職業やし、安心は安心やね」
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関西空港駅から12:14分発の特急はるか22号で新大阪まで行った。電車賃、明彦に出してもらって悪かったなあ。彼、お金持っとるねえ。まあ、貧乏よりええかあ。
新大阪駅で待ち時間が10分くらいあったけん、駅弁を買う。ミキちゃんに「駅弁、買おうや」って言ったら「お腹すいた」って言う。あれだけリーガロイヤルホテルのビュッフェで食べたのに、まだ食べられると?
うちは明彦の前やけん遠慮して少ししか食べんかった。淑女の嗜みやね。普段はミキちゃんと同じくらいの食欲やけど。小娘は、天ぷら、お寿司、お稲荷さん、おうどん、デザートを全部平らげた。小娘、よう食べたねえ。
「直美さん、駅弁はうちが買うけんね」って言う。それで、カゴになんとか御膳いう赤飯、煮物、揚げ物、お肉、タコの炊き込みご飯のおかずがいっぱいの駅弁を放り込んで、牛タン弁当も放り込む。
それ、全部食べるん?うん、食べる!って言う。うちも幕の内弁当にした。ウニ・いくら丼をカゴに放り込んだ。朝、遠慮したけんお腹すいたんよ。新幹線は13:18分発で15:57分着。3時間近くある。ビールも500mlを4本。あ~あ、太るかもね。
けど、一昨日の夜から40時間ちょっとしか経っとらん。あっという間やったな。大阪には夜行バスで来て、帰りは新幹線なんて。こういう旅も悪くないやん?あ!バーのオーナーにお店を昨日閉めちゃったのを謝らんとね!
「やることがいっぱいあるねえ」って独り言。
「直美さん、会社作るってどうやるん?」
「前に友人に聞いたら、市役所の窓口やハローワークで起業のやり方とか、小倉市の補助金制度とか、市が紹介してくれるオフィスとか教えてくれるらしいよ。ミキちゃんが従業員になったら、ミキちゃんのお給料の一部も負担してくれるそうよ」
「それ、事務作業はうちが手伝うよ」
「当てにしとるよ」
「香港とシンガポールやったら、英語やね?」
「うちはちょっと話せるけど…」
「うちは、TOEICで820点とっとる。やけん、会話と書類作業は、もうちょっと勉強すればなんとかなるかも」
「それって、すごくない?TOEICって、平均点620点くらいやなかったっけ?」
「うん、勉強してもう1回受けて、900点以上とろうかな?」
「ミキちゃん、そっち、任せた。うちは、画廊とか画家の発掘をするよ」
やることがだんだん見えてきた。二人して、二人前の駅弁をペロッと食べてしまい、ビールもあっという間になくなって、パーサーさんが通りがかったけん、ウィスキーのミニチュアボトルを3本ずつ、ロックでもらった。パーサーが女二人、トリプルロックなんていうけん目を丸くしとった。
山陽新幹線さくら583号は13:18分発、博多駅着が15:57分。もっと乗っとりたいな。
ミキちゃんと新幹線の中で話して、彼女はうちのマンションに住むことになった。全財産が今持っとるバッグだけやけん、引っ越しは必要ないんよ。彼女は身ぎれいやけど、スーツケースならわかるけど、あんなバッグひとつで服から下着まで詰め込むのってすごかね。ミニマムの持ち物なんやろ。でも、もっと服や靴は買わんとね。明日、服を買いに行こう。
漫画喫茶を転々として、コインランドリーで洗濯、ファストフード店で食事するなんていう生活じゃダメやろね?いやいや、彼女の言う『寂しくなっても、私がおるけん、なぐさめてあげる』目当てやないよ。ない!絶対にない!
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