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第4章 ヨナクニへ
第10話(1) 金少尉、旗艦龍虎山艦上1
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金少尉の居室、解放軍海軍台湾侵攻第2艦隊
旗艦龍虎山(Longhushan)艦上
金容洙少尉は、人民解放軍海軍の所属で、尾崎と美香の拉致を指揮した楊欣怡少校(少佐)の部下だ。しかし、彼女は朝鮮族であり、東ロシア共和国のエレーナ少佐と紺野二佐※に情報を流しているスパイである。
※2026年には紺野三佐は昇格して二佐になっている。
先島諸島侵攻の第二艦隊旗艦、強襲揚陸艦の龍虎山は、宮古海峡の接続水域(領海の基線からその外側24海里、約44kmの線)に近づいていた。石垣島まで120キロの海域だ。エレーナとの暗号通信が終わり、金少尉はくつろいでいた。エレーナは、東ロシア共和国から自衛隊に出向している陸軍将校だ。
さて、食事にしようか、シャワーを浴びようかとヨンスは考えた。
部屋の船内インターフォンが鳴った。なんだろう?と思って彼女は受話器を取る。切迫した声が聞こえた。「金少尉、李通信士長であります」と彼女がいつも目をかけてやっている李だった。ヨンスは李が上官の性被害に遭うのを何度もかばってやっていた。「なんだ、李士長?また、変態の上官に言い寄られ・・・」
「違います!政治将校が金少尉を逮捕するための準備をしているのを知りました。彼らの会話を盗み聞きしました。もうまもなくそちらの部屋に向かうようです!」
「それはまたなぜ?」
「艦内で暗号通信電波を傍受していて、金少尉のお部屋から電波が出ているというのを突き止めたらしいんです。そんなことはないと思いますが、政治将校のこと、何をされるかわかりません!それで事前にお知らせしようとご連絡した次第であります!」
「わ、わかった!李士長、何も問題はないはずだ。でも、ありがとう」
「では、金少尉、お気をつけて」
金少尉は量子エニグマ暗号トランシーバーと拳銃、ライフジャケットを掴んで、部屋を飛び出す。駆けながらライフジャケットを着込む。トランシーバと拳銃をズボンのポケットに突っ込んだ。
奴らは船の前部からやってくるはずだ、ヤバいぞ!と推測して、通路を後部甲板の方に駆けた。
(そういえば、楊少校が日本から拉致してレールガンと電磁カタパルトの開発をさせていた日本人のカップルが監禁されていたな。日本への手土産に彼らを連れていくもいいだろう。どこだっけ?向こうの通路か?)
金少尉は通路を左に曲がり、右舷の通路の方に駆けた。右舷通路の角で左右を盗み見る。歩哨が立っている部屋に気づいた。(あそこだ)ヨンスは歩みを緩めて歩哨の前を通り過ぎようとする。
「金少尉!ご苦労さまです!」と歩哨が敬礼をする。政治将校からの通達はまだないようだ、とヨンスは思った。
「ウム」と答礼してすれ違いざま右の裏拳で歩哨の首筋を投打した。崩れ落ちた歩哨の腰から鍵を取り出してドアを開けた。男女がベッドに座っていて話をしている最中だった。
「おい、キミらは拉致された日本人だろう?」と金少尉が日本語で聞いた。
「そうだが?あなたは何者だ?」
「私は人民解放軍の金容洙少尉。しかし、実はキミらの側の人間だ」
「そんなこと信用できるか!」
「・・・ああ、自衛隊の人間を知っている。私が日本に亡命したらカウンターパートになる人物だ。名前は紺野二佐という」
「紺野だと?紺野は三佐・・・九年も経てば昇進するか・・・」
「とにかく、一刻を争う。もうじき私を追って政治将校が来るだろう。私はスパイの身分がバレて捕まれば銃殺刑だ。さあ、私と一緒に来るのか、来ないのか?」
「・・・イチかバチかだ。行こう」と男が女に囁いた。
「ハイ」と女が頷く。
「よし。急な話だったのだ。数分前に人民解放軍の政治将校が私を逮捕するという情報をきいたばかりなのだ。それで、私は脱出の準備を何もしていない。追っ手はこの艦の前部から来るはずだ。いいか、一か八か、後部甲板から海に飛び込むぞ!」
「この荒天でか?」
「荒天だから逃げおおせるかもしれん。途中でキミらのライフジャケットを通路沿いで手に入れよう。何も持っていくな!邪魔だ!」
三人はタラップを二段ごとによじ登る。途中にライフジャケットが壁のガラス箱にあった。ガラスを割り三つ取り出した。後部甲板への水密扉を開く。後部甲板に出た。
幸いなことに、荒天のために甲板には人気はなかった。彼らは左舷甲板から海面を見下ろす。十四、五メートルある。急に甲板に拳銃の跳弾が飛んだ。
(どこかで見られたか?南無三、跳ぶしかないわね)とヨンス。
「キミら、泳ぎは?」
「いまさら習えないだろう?俺は泳ぐ程度はできるぜ」と日本人の男が答える。
「よし、私から・・・」金少尉は甲板から海面に飛び降りた。脚をまっすぐにして、脚から海面に突っ込む。(まいっちゃうわねえ、最後の最後にこんなことになるなんて)
二人の日本人も金少尉に続いて飛び込んだ。
夢中で潜ろうとしたがジャケットが邪魔だ。少尉はライフジャケットを脱いだ。彼らにも脱ぐように手真似で伝えた。三人のジャケットは海面の方に漂っていく。
(これで、拳銃弾があたったかも?と思ってくれるといいんだけど)
彼らの周囲の水中に拳銃弾の航跡が見える。映画じゃないんだから!とヨンスは思ってさらに深く潜る。息が苦しい。日本人の男よりも女のほうが泳ぎが上手い。彼を彼女が手助けしている。
船は全速で航行していた。23ノット(時速37キロ)。
(船が停船するまで多少の時間はあるだろう。車じゃないのだから急ブレーキを踏んで急停車というわけにもいかない。ホバーだと引き出すのに時間がかかる。ゴムボートを出してくるだろう。もう拳銃弾の射程距離外だが、海上に顔を出すと見つかる可能性があるわね?)とヨンスは考えをめぐらす。
二分ほどで息が続かなくなる。彼らは海面に顔を出した。船はまだ停船していない。ゴムボートの格納してある側部ハッチはまだ開いていない。もう日が沈む。少尉はクロールで船から離れた。男を助けて女が少尉に続いた。
十数分経って、船が停船、ゴムボートが船外に出されているのがヨンスには見えた。ボートのサーチライトが見える。ボートから離れるようにさらに泳いだ。日が沈んだ。
(まいったなあ。宮古島までは約44km以上、石垣島までは120キロ以上あるわ。う~ん・・・この量子エニグマ暗号トランシーバー、防水よね。世界基準の防水でありますように。モニターが光ったわ。よかった!)金少尉は、エレーナの番号を押した。東ロシア共和国軍のエレーナ少佐が通話に応答した。
「エレーナ!助かった!」と少尉。
「どうしたの?金少尉?まだ、宮古海峡の接続水域じゃないの?」
「それが、この通信機の電波を探知されて気づかれたの。船から飛び降りて、今、泳いでいるところ。ライフジャケットも脱ぎ捨てたわ。私の他に拉致された日本人の男女も一緒よ」
「わかった!広瀬二尉!救助に使えるヘリはどこかにいるの?」とエレーナが自衛隊の水陸機動団指揮官の広瀬に聞いた。
「ちょうど揚陸艦オスリャービャにSH-60K哨戒ヘリコプターが着機してます!」
「金少尉、トランシーバーにGPSビーコンがついているわ。スイッチオンできる?」
「ちょっと待って・・・」とヨンスが海面上で立ち泳ぎをしながらトランシーバーのモニターを覗き込む。タッチセンサーじゃないのが救いだ。上下左右のキー操作でメニューを追う。あった。「あったわ。オンにした!」
「よし!受信した!北緯24.9054、東経125.2911!ヘリを出す!約30分!少尉、頑張れるか?」
「たぶん、大丈夫よ!」
「待ってろよ!」
「了解!」
旗艦龍虎山(Longhushan)艦上
金容洙少尉は、人民解放軍海軍の所属で、尾崎と美香の拉致を指揮した楊欣怡少校(少佐)の部下だ。しかし、彼女は朝鮮族であり、東ロシア共和国のエレーナ少佐と紺野二佐※に情報を流しているスパイである。
※2026年には紺野三佐は昇格して二佐になっている。
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さて、食事にしようか、シャワーを浴びようかとヨンスは考えた。
部屋の船内インターフォンが鳴った。なんだろう?と思って彼女は受話器を取る。切迫した声が聞こえた。「金少尉、李通信士長であります」と彼女がいつも目をかけてやっている李だった。ヨンスは李が上官の性被害に遭うのを何度もかばってやっていた。「なんだ、李士長?また、変態の上官に言い寄られ・・・」
「違います!政治将校が金少尉を逮捕するための準備をしているのを知りました。彼らの会話を盗み聞きしました。もうまもなくそちらの部屋に向かうようです!」
「それはまたなぜ?」
「艦内で暗号通信電波を傍受していて、金少尉のお部屋から電波が出ているというのを突き止めたらしいんです。そんなことはないと思いますが、政治将校のこと、何をされるかわかりません!それで事前にお知らせしようとご連絡した次第であります!」
「わ、わかった!李士長、何も問題はないはずだ。でも、ありがとう」
「では、金少尉、お気をつけて」
金少尉は量子エニグマ暗号トランシーバーと拳銃、ライフジャケットを掴んで、部屋を飛び出す。駆けながらライフジャケットを着込む。トランシーバと拳銃をズボンのポケットに突っ込んだ。
奴らは船の前部からやってくるはずだ、ヤバいぞ!と推測して、通路を後部甲板の方に駆けた。
(そういえば、楊少校が日本から拉致してレールガンと電磁カタパルトの開発をさせていた日本人のカップルが監禁されていたな。日本への手土産に彼らを連れていくもいいだろう。どこだっけ?向こうの通路か?)
金少尉は通路を左に曲がり、右舷の通路の方に駆けた。右舷通路の角で左右を盗み見る。歩哨が立っている部屋に気づいた。(あそこだ)ヨンスは歩みを緩めて歩哨の前を通り過ぎようとする。
「金少尉!ご苦労さまです!」と歩哨が敬礼をする。政治将校からの通達はまだないようだ、とヨンスは思った。
「ウム」と答礼してすれ違いざま右の裏拳で歩哨の首筋を投打した。崩れ落ちた歩哨の腰から鍵を取り出してドアを開けた。男女がベッドに座っていて話をしている最中だった。
「おい、キミらは拉致された日本人だろう?」と金少尉が日本語で聞いた。
「そうだが?あなたは何者だ?」
「私は人民解放軍の金容洙少尉。しかし、実はキミらの側の人間だ」
「そんなこと信用できるか!」
「・・・ああ、自衛隊の人間を知っている。私が日本に亡命したらカウンターパートになる人物だ。名前は紺野二佐という」
「紺野だと?紺野は三佐・・・九年も経てば昇進するか・・・」
「とにかく、一刻を争う。もうじき私を追って政治将校が来るだろう。私はスパイの身分がバレて捕まれば銃殺刑だ。さあ、私と一緒に来るのか、来ないのか?」
「・・・イチかバチかだ。行こう」と男が女に囁いた。
「ハイ」と女が頷く。
「よし。急な話だったのだ。数分前に人民解放軍の政治将校が私を逮捕するという情報をきいたばかりなのだ。それで、私は脱出の準備を何もしていない。追っ手はこの艦の前部から来るはずだ。いいか、一か八か、後部甲板から海に飛び込むぞ!」
「この荒天でか?」
「荒天だから逃げおおせるかもしれん。途中でキミらのライフジャケットを通路沿いで手に入れよう。何も持っていくな!邪魔だ!」
三人はタラップを二段ごとによじ登る。途中にライフジャケットが壁のガラス箱にあった。ガラスを割り三つ取り出した。後部甲板への水密扉を開く。後部甲板に出た。
幸いなことに、荒天のために甲板には人気はなかった。彼らは左舷甲板から海面を見下ろす。十四、五メートルある。急に甲板に拳銃の跳弾が飛んだ。
(どこかで見られたか?南無三、跳ぶしかないわね)とヨンス。
「キミら、泳ぎは?」
「いまさら習えないだろう?俺は泳ぐ程度はできるぜ」と日本人の男が答える。
「よし、私から・・・」金少尉は甲板から海面に飛び降りた。脚をまっすぐにして、脚から海面に突っ込む。(まいっちゃうわねえ、最後の最後にこんなことになるなんて)
二人の日本人も金少尉に続いて飛び込んだ。
夢中で潜ろうとしたがジャケットが邪魔だ。少尉はライフジャケットを脱いだ。彼らにも脱ぐように手真似で伝えた。三人のジャケットは海面の方に漂っていく。
(これで、拳銃弾があたったかも?と思ってくれるといいんだけど)
彼らの周囲の水中に拳銃弾の航跡が見える。映画じゃないんだから!とヨンスは思ってさらに深く潜る。息が苦しい。日本人の男よりも女のほうが泳ぎが上手い。彼を彼女が手助けしている。
船は全速で航行していた。23ノット(時速37キロ)。
(船が停船するまで多少の時間はあるだろう。車じゃないのだから急ブレーキを踏んで急停車というわけにもいかない。ホバーだと引き出すのに時間がかかる。ゴムボートを出してくるだろう。もう拳銃弾の射程距離外だが、海上に顔を出すと見つかる可能性があるわね?)とヨンスは考えをめぐらす。
二分ほどで息が続かなくなる。彼らは海面に顔を出した。船はまだ停船していない。ゴムボートの格納してある側部ハッチはまだ開いていない。もう日が沈む。少尉はクロールで船から離れた。男を助けて女が少尉に続いた。
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「エレーナ!助かった!」と少尉。
「どうしたの?金少尉?まだ、宮古海峡の接続水域じゃないの?」
「それが、この通信機の電波を探知されて気づかれたの。船から飛び降りて、今、泳いでいるところ。ライフジャケットも脱ぎ捨てたわ。私の他に拉致された日本人の男女も一緒よ」
「わかった!広瀬二尉!救助に使えるヘリはどこかにいるの?」とエレーナが自衛隊の水陸機動団指揮官の広瀬に聞いた。
「ちょうど揚陸艦オスリャービャにSH-60K哨戒ヘリコプターが着機してます!」
「金少尉、トランシーバーにGPSビーコンがついているわ。スイッチオンできる?」
「ちょっと待って・・・」とヨンスが海面上で立ち泳ぎをしながらトランシーバーのモニターを覗き込む。タッチセンサーじゃないのが救いだ。上下左右のキー操作でメニューを追う。あった。「あったわ。オンにした!」
「よし!受信した!北緯24.9054、東経125.2911!ヘリを出す!約30分!少尉、頑張れるか?」
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