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第2章 紗栄子、純子とアキラ編
第19話 紗栄子、純子とアキラ14 J
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紗栄子のことを考えていて、傷つけるつもりはなくても、お互い傷ついてしまうことってあるんだなあと思った。彼女ともっと話をしないといけない。だけど、紗栄子にも純子にもいい顔をして、美味しい所取り、八方美人はぼくはできない。
かといって、紗栄子なのか、純子なのか、選ばないといけないんだろうか?二人共失いたくはない、という都合のいい考えはダメなんだろうなあ。紗栄子が自衛隊に入隊しちゃったら、ぼくはどうするんだろうか?純子と同じ大学に進学したとして、ぼくはどうするんだろうか?
いろいろ考えていて、家に帰った。
母が「お帰り。朝帰り?本当に、木村くんの家に泊まったの?」とニタニタして言う。女性は侮れない。「高校三年生だからね。合格すれば来年から大学生。自分の息子のことをあまり詮索しませんよ。ただね、性病と妊娠だけは気をつけてね」と見透かされている。
「うん、まあ、ぼくにもいろいろ悩み事があるんだよ」と答えた。
「昼ごはん、食べるの?」
「いいえ、出かけます。外で食べます。スミマセン」
「帰ってきたと思ったら、また、お出かけですか?詮索しませんって、言っちゃったけど、どなたとお出かけなんですか?アキラさん?」
「女の子だよ」
「ほほぉ、彼女いない歴イコール年齢のアキラさんが?」
「できたんだよ、お母さん」
「今晩はお赤飯を炊こうかな?」
「からかわないでよ」
「どなたかお聞きしていい?」
「千寿青葉中学校の近くの氷川神社ってあるだろ?」
「ああ、知ってる」
「そこの娘さんで、時任純子さんって人」
「神社の娘さんか。いいんじゃないの。ちゃんとした家で」
「お母さんでも気になるの?どの家かによって?」
「親だからね、いくらさばけている私でもそういうのはあるよ。その娘さん当人がいい人でもさ、昔言われていた『かわむこうさん』の家とか、三河島の家だと考えちゃうな」
「何それ?」
「キミは知らないほうがいいんだけどね。『かわむこうさん』というのは、北千住から荒川を超えたあたりで、三河島は隅田川の向こうでしょ?私たちはここの地元だからわかるんだけど、そのね、昔、差別部落とか、三国人とかが住んでいたあたりでさ、そういう家があるのよ。差別はいけないんだけどね。未だにそういう意識は、私でも残っているのよ」
「難しそうな話だなあ。今度、聞かせてよ」
「知らないほうがいいんだけどね。今度、ゆっくり説明してあげるよ」
「よろしくお願いします。さって、シャワーして、でかけなきゃあ」とぼくは自分の部屋のある二階の階段を上がりかけた。
「アキラ、今度、木村くんの家で使っている入浴剤はどのブランドか、聞いておいてね。キミ、いい匂いがするよ」振り返ると、ニタァと笑っている。おっと、紗栄子の言うとおりだ。『シャワーを浴びなよ。私の入浴剤の匂いがしちゃまずいだろ?』って、紗栄子、するどい。
北千住の駅に十二時四十五分についた。LINEで純子に「着いたよ、今、改札口」とメッセした。すぐ既読が付いて「私はあと三分!」とレスがすぐ来た。
純子がスキップしながら近づいてくるのが遠くから見えた。膝上15センチ位のフードのついたダボダボのチュニックのスウェットシャツを着ていた。それに黒のレギンスとスニーカー。黒のレギンス?また?紗栄子が膝に手をおいて、お尻を突き出した姿が目に浮かんだ。おいおい。さすがに純子は下着をはいているだろう。ちょっと汗がでる。
ぼくの前にピョンっとジャンプして、「おっす」とニコニコしてぼくの顔を見る。改めて可愛いよなあ、と思う。
「純子の私服姿を初めて見たよ。ぼくの彼女は可愛いなあ」
「え~、ホント?褒めている?」
「褒めてるよ」
「うれしい!青春だぁ~。ところで、どこに連れて行ってくれるの?」
「考えたんだけどね、銀座に行って、下見しない?」
「銀座?下見?」
「うん、ホテルの下見」と言うと、純子が真っ赤になった。
「え?もう、泊まるの?」
「違うよ。下見だよ。泊まるわけないじゃないか?どこがいいか、何箇所かホテルを見て回るの。レストランとかモールとかもね」
「あ~、そういうこと。もうお泊りして、赤ちゃんを作るのかと思ったよ。一瞬、大学進学を諦めて、子育てします!って考えちゃったよ」
「キミ、ぼくを虐めてますね?」
「うん、わかった?エヘヘ、私は映画でも見に行くのかな?定番かな?って思ってた」
「だって、定番もいろいろ考えたんだけど、純子が『最初で最後、人生一回だけのプレゼント』っていうから、大切なプレゼントを開く場所の下見が大事だと思ったんだよ」
「あ~、私、いい相手に巡り会えて、幸せだわ」ぼくが?いい相手?罪悪感を感じる。
「で、でがけにさ、お母さんがどこ行くの?って聞くから、時任純子さんとデートしに行くって言っちゃったよ」
「おっと!もう、お母さんに言っちゃったの?ヘヘ、実は、私も冨澤さんとこのアキラくんとデートだ、ってパパに言ってきました」
「これってさ、学校でも黒板に書かれたし、親にも言っちゃうんだから、別れられないよ」
「別れることなんてあるはずないじゃない。アキラはバカねえ」
「ハイハイ、バカですよ、ぼくは」
かといって、紗栄子なのか、純子なのか、選ばないといけないんだろうか?二人共失いたくはない、という都合のいい考えはダメなんだろうなあ。紗栄子が自衛隊に入隊しちゃったら、ぼくはどうするんだろうか?純子と同じ大学に進学したとして、ぼくはどうするんだろうか?
いろいろ考えていて、家に帰った。
母が「お帰り。朝帰り?本当に、木村くんの家に泊まったの?」とニタニタして言う。女性は侮れない。「高校三年生だからね。合格すれば来年から大学生。自分の息子のことをあまり詮索しませんよ。ただね、性病と妊娠だけは気をつけてね」と見透かされている。
「うん、まあ、ぼくにもいろいろ悩み事があるんだよ」と答えた。
「昼ごはん、食べるの?」
「いいえ、出かけます。外で食べます。スミマセン」
「帰ってきたと思ったら、また、お出かけですか?詮索しませんって、言っちゃったけど、どなたとお出かけなんですか?アキラさん?」
「女の子だよ」
「ほほぉ、彼女いない歴イコール年齢のアキラさんが?」
「できたんだよ、お母さん」
「今晩はお赤飯を炊こうかな?」
「からかわないでよ」
「どなたかお聞きしていい?」
「千寿青葉中学校の近くの氷川神社ってあるだろ?」
「ああ、知ってる」
「そこの娘さんで、時任純子さんって人」
「神社の娘さんか。いいんじゃないの。ちゃんとした家で」
「お母さんでも気になるの?どの家かによって?」
「親だからね、いくらさばけている私でもそういうのはあるよ。その娘さん当人がいい人でもさ、昔言われていた『かわむこうさん』の家とか、三河島の家だと考えちゃうな」
「何それ?」
「キミは知らないほうがいいんだけどね。『かわむこうさん』というのは、北千住から荒川を超えたあたりで、三河島は隅田川の向こうでしょ?私たちはここの地元だからわかるんだけど、そのね、昔、差別部落とか、三国人とかが住んでいたあたりでさ、そういう家があるのよ。差別はいけないんだけどね。未だにそういう意識は、私でも残っているのよ」
「難しそうな話だなあ。今度、聞かせてよ」
「知らないほうがいいんだけどね。今度、ゆっくり説明してあげるよ」
「よろしくお願いします。さって、シャワーして、でかけなきゃあ」とぼくは自分の部屋のある二階の階段を上がりかけた。
「アキラ、今度、木村くんの家で使っている入浴剤はどのブランドか、聞いておいてね。キミ、いい匂いがするよ」振り返ると、ニタァと笑っている。おっと、紗栄子の言うとおりだ。『シャワーを浴びなよ。私の入浴剤の匂いがしちゃまずいだろ?』って、紗栄子、するどい。
北千住の駅に十二時四十五分についた。LINEで純子に「着いたよ、今、改札口」とメッセした。すぐ既読が付いて「私はあと三分!」とレスがすぐ来た。
純子がスキップしながら近づいてくるのが遠くから見えた。膝上15センチ位のフードのついたダボダボのチュニックのスウェットシャツを着ていた。それに黒のレギンスとスニーカー。黒のレギンス?また?紗栄子が膝に手をおいて、お尻を突き出した姿が目に浮かんだ。おいおい。さすがに純子は下着をはいているだろう。ちょっと汗がでる。
ぼくの前にピョンっとジャンプして、「おっす」とニコニコしてぼくの顔を見る。改めて可愛いよなあ、と思う。
「純子の私服姿を初めて見たよ。ぼくの彼女は可愛いなあ」
「え~、ホント?褒めている?」
「褒めてるよ」
「うれしい!青春だぁ~。ところで、どこに連れて行ってくれるの?」
「考えたんだけどね、銀座に行って、下見しない?」
「銀座?下見?」
「うん、ホテルの下見」と言うと、純子が真っ赤になった。
「え?もう、泊まるの?」
「違うよ。下見だよ。泊まるわけないじゃないか?どこがいいか、何箇所かホテルを見て回るの。レストランとかモールとかもね」
「あ~、そういうこと。もうお泊りして、赤ちゃんを作るのかと思ったよ。一瞬、大学進学を諦めて、子育てします!って考えちゃったよ」
「キミ、ぼくを虐めてますね?」
「うん、わかった?エヘヘ、私は映画でも見に行くのかな?定番かな?って思ってた」
「だって、定番もいろいろ考えたんだけど、純子が『最初で最後、人生一回だけのプレゼント』っていうから、大切なプレゼントを開く場所の下見が大事だと思ったんだよ」
「あ~、私、いい相手に巡り会えて、幸せだわ」ぼくが?いい相手?罪悪感を感じる。
「で、でがけにさ、お母さんがどこ行くの?って聞くから、時任純子さんとデートしに行くって言っちゃったよ」
「おっと!もう、お母さんに言っちゃったの?ヘヘ、実は、私も冨澤さんとこのアキラくんとデートだ、ってパパに言ってきました」
「これってさ、学校でも黒板に書かれたし、親にも言っちゃうんだから、別れられないよ」
「別れることなんてあるはずないじゃない。アキラはバカねえ」
「ハイハイ、バカですよ、ぼくは」
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