重たい愛は如何ですか〜狂愛侍従と王子様〜

なつや

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歪みの章

歪んだシナリオ

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 『少年が7才になる頃。
 双子の片割れが死んだ。落馬事故だった。』

 前世で読んだ公式本に記載されていた彼の話。

 ゲームの進行通りなら、ロイは2年後に落馬事故によって死ぬ。

 ─どうせ死ぬなら…

 俺達の為に、すぐに死んでくれるよね?─

 *****

 俺がロイの皇子宮に移ってから2週間。
 1日が非常に長く、世界から色が消えてしまったように感じる。

 ロイ付きの侍従になってすぐ、シュシュと同じ見た目、声で微笑みながら話しかけてきた。

 ─違う、お前じゃない。

 ロイはパーソナルスペースが狭いのか、距離感がバグっているし、すぐ俺に触れようとしてくる。

 ─触るな、触るな触るな!!

 今にも触れそうなそれを、俺は一歩後退する事によって避ける。
 ロイはそれが不満なのか、口を突き出して眉を寄せる。不満ならしなければいいのに、この対応が逆に興味を引くようで、口頭で辞めるよう伝えても辞めようとしない。

 ─あぁ、早くシュシュの元に帰りたい。

 仕事が終わる真夜中、普通であれば宮に用意された自室で就寝をするが…俺は魔法で飛翔しある場所へと向かう。

 「…ただいま」

 向かった場所は、小さな箱庭。
 視界に映るのは、2人で使っていたベッドで、俺の着ていたワイシャツを握りしめ、1人眠るシュシュ。

 俺は毎日、真夜中に塔へ訪れていた。
 真夜中だから、眠っているシュシュは俺が毎日来てることを知らないだろうけど……
 「ごめんね…こんな時間にしか帰ってこられなくて…」

 俺はほんのりと涙で濡れていたシュシュの頬を撫でた。

 *****

 偽物の侍従になって1ヶ月、ついにこの日がやってきた。

 「本日は朝食後からお昼頃まで座学、小休憩を挟み剣術と魔法の訓練、その後お茶の時間を設けまして……」
 皇子宮、ロイの私室。俺は室内の少し離れた場所から淡々とロイに今日の日程を告げていく。
 ロイはメイドに着替えさせて貰いながら眠そうに目を擦っていた。

 「…以上が本日のご予定となっております。」

 「んぅ…そうか、わかった…」
 着替えが終わってもまだ覚めないようで、眠そうな眼がまた閉じそうになっている。
 「…王子殿下、ご準備されたアレを…」
 着替えを手伝っていたメイドの1人が、小さくロイに声をかけた。

 「…っ!そうだ、助かった!」
 ロイはハッと目が覚めたようで、そのメイドに何かを持ってくるよう指示を出す。
 俺はそれを感慨もなく見ていた。

 少ししてメイドは1つの小さな箱を持ってきて、ロイに差し出し、ロイはそれを受け取るとそわそわした様子で俺の前にやって来た。

 「シヤン、今日はお前が僕の侍従になって1ヶ月の記念すべき日だ!」

 ロイは小さな箱を開けて、俺に渡してきた。
 受け取った箱の中には、小ぶりの青いピアスが2つ入っていた。

 「…ずっと一緒に居たいと思った人に、自分の眼や髪と同じ色の物をあげるといいって聞いたんだ!」
 ロイははにかんだように笑った。

 「…っ…」
 何かを言わなければとわかっているが、今声を出せば、全てを吐き出してしまいそうだった。
 俺は口元を手で覆い、頭を下げる。

 「!そ、そんなに、泣くほど嬉しかったのか!?」
 ロイは俺が泣いて喜んでいると思ったようで、嬉しそうな声で笑い俺の頭を撫でた。

 ─あぁ…本当に

 気持ちが悪い……─


 ロイの手を払い除けなかった自分を褒めたい。
 心が汚い靴で踏み躙られた気分だ。

 *****

 午前の日程全てが終わり、ロイの小休憩の時間。
 皇子宮の庭のガゼボで、俺はロイの『お願いという名の命令』で両耳に青いピアスを付けながら給仕をしていた。


 ─痛い

 穴の空いていなかった耳に、急遽穴を開けてピアスを通した。

 ─痛い

 ロイが嬉しそうに、給仕中の俺の耳に触れる。

 ──ガシャンッ!

 誰も触れていないのに、ガゼボの横に飾ってあった陶器の鉢が割れた。
 メイド達が慌てて片付けをし、他にも割れそうな鉢がないか点検の為、ロイは小休憩を切り上げる事になった。

 ストレスによる幻覚だったのか、割れた鉢から透明に近い白い魔力を見た気がした。
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