重たい愛は如何ですか〜狂愛侍従と王子様〜

なつや

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歪みの章

歪んだシナリオ2

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 ロイは小休憩を切り上げ、この後はお茶の時間─所謂、3時のおやつの時間の予定だ。

 普段であれば侍従である俺がこの時間も給仕をするが、今日は父ペールに呼ばれておりそばを離れる事が許可されていた。

 俺の代わりの給仕は、ロイの乳母が務めてくれる。
 この乳母は自分の産婆であり、もう1人の大好きな母だとロイは語っていた。

 「早く帰ってきてくれ!」
 ロイはにこやかに笑って俺を送り出し、乳母と手を繋いで屋内に向かった。

 俺はロイ達に向かって薄い魔力で作った蝶を飛ばし、俺は用意されていた馬車に向かった。
 馬車はアンラジェ邸宅へ動き出す。俺はその中で先程飛ばした蝶に意識を集中させた。

 *****

 蝶はロイの部屋に居た。護衛は部屋の前だろう、中には乳母であるルテュールとロイの2人だけである。

 「ロイ様、本日の茶葉は私の実家から送られてきた茶葉を使用した物になります」

 「あぁ、ルテュールのお茶は美味しいから楽しみだ!」
 優雅に座しているロイは、待ちきれないとばかりに身体を揺らしている。それをルテュールは微笑ましげに見つめていた。ルテュールは1度カップをお湯で温め、そこに紅茶を高い位置から綺麗なアーチを描いて注いだ。

 「こちらもお気に召して頂けると良いのですが…」
 蜂蜜色の紅茶からはふわりとあまり香りが漂っているようで、香りを嗅いだロイが嬉しそうに微笑んだ。
 「ところで、今日のお菓子はなんだ?」ロイは紅茶のみを準備された机を見て不思議そうな顔をする。
 「ふふふ、実は今日は…シヤン様のご実家、アンラジェ家で食されているマドレーヌをご準備させて頂きました!それも、シヤン様がロイ様の為に選定し、ご準備して下さったそうですよ!」
 「それはほんとか!?シヤンが!?食べたい!すぐ持ってきてくれ!!」
 ロイは嬉しそうに席から立ち上がり、両手を広げて早く早くと催促する。
 「お隣に準備しておりますので、すぐお持ち致しますね!」
 ルテュールはそう言ってにこにこと部屋から出て行った。

 部屋に1人残ったロイは胸に手を当てて深呼吸をし、興奮を落ち着ける為にルテュールの用意した紅茶を啜る。

 「…ん?なんか、味がいつもと違う?」

 ロイはカップを机に戻した途端「おぇっ…!?」と嘔吐えづきだし、青い顔をしながら立ち上がり、瞬時に机とカップをなぎ倒した。
 「ル、ルテュールっ!!」口を片手で覆いながら、よろよろと歩き出し外に助けを呼ぼうとした。

 ──ガチャッ!ガチャッ!

 何度もドアノブを下げるが、扉が開くことはない。

 ──ドンドン!ドンドン!

 「ルテュール!誰かっ!」ロイは口から血を吐きながら、扉を強く叩く。
 しかし外に誰かが居る気配すらない。

 それもそのはず。
 この部屋は俺の蝶を媒介に隔離している。隔離できる時間は短いが、ロイが毒で死ぬまでここに閉じ込めておける位には持つ。
 扉前の護衛に中の音は聞こえないし、部屋を出たルテュールが戻ってくるまでには少し時間がある。

 助けが来ないと理解したのか、ズルズルとロイは扉にもたれ掛かり、小さな声で泣き出した。

 「た、たすけて…シヤン…」

 泣きながら、ロイはふいに視線を上に向けた。

 「…シヤン?」

 ロイと目が合った。

 「…んで、…なんで見てるのにたすけてくれないの??」
 ロイは吐血し、大粒の涙を零しながら俺に手を伸ばす。もう立ち上がる力すらないようで、「なんでなんで」と繰り返している。

 「……あぁ……はは、ははは……あはははははは!!!」
 ロイは何を思ったのか、急に笑いだし、カーペットの敷かれた床にごろりと大の字で仰向けに寝転んだ。


『…っ!!』


 ロイの、見た目が変わる。
 ロイの魔力が全身を包み、金色だった髪は白くなり、瞳の色は青から赤へと変わった。


 「…シヤン、ねぇ、たすけて」


 白髪赤眼のロイが俺に助けを求める。
 その顔は諦めのような笑みを浮かべていて、俺の意識が蝶から逸れた。

 *****

 「っ!!」
 心がざわめいて、浅い呼吸を繰り返し、全身から嫌な汗が出てくる。
 蝶から意識が逸れたことにより、ロイの部屋から蝶が霧散した。それと同時に部屋の隔離も解けており今頃は、ロイの毒殺で王宮はてんやわんやだろう。

 そんな事よりも、俺は馬車の中で必死に呼吸を整え、自分の心に「あれは違う」と言い聞かせる。

 ─あれは違う。シュシュじゃない…

 何度も言い聞かせているのに、心は落ち着いてはくれなくて……

 ─シュシュに会いたい…

 俺は独り、顔を覆って小さく泣いた。


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