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呪怨劇
8、良き仲ほど、喧嘩は激しく冷たく
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翌日。
いつも通りの朝の風景が月華学園の前に広がっている。
そのはずだったのだが、勘のいい生徒の何人かはこの日の登校に何か物足りなさのようなものを感じていた。
それもそのはず。この日は護と月美が一緒に登校していなかったのだ。
その原因は現在も護たちの教室に漂っている瘴気にある。
この瘴気がクラスメイトたちに体調不良をもたらしていることは明らかなのだが、護はそれを完全に浄化しようとは考えていなかった。
そのことが月美を怒らせたため、二人は一緒に行動することをやめているのだ。
いや、それだけならばまだいいのだが、問題はそこからだった。
「……な、なぁ。お前と風森さん、何かあった?」
「別に」
昼休みになり、冷や汗を頬に伝わせながら清は護に問いかける。
だが、返ってきた答えはそっけなく、答えた本人は黙々とおにぎりを食べていた。
なお、おにぎりは月美が作ったもののようだが、具が入っていなかったようだ。
それが月美なりの嫌がらせ。いや、何かに対する抗議の形であることを清も察していたらしく。
――随分と低レベルな嫌がらせだなぁ。これで喧嘩してるってんだから、どうかしてるぞ
傍から見れば、ただの具なしおにぎりを持たされただけのように見える。
なんとも程度の低い抗議の方法に清は苦笑を浮かべていた。
だが、食べている本人の舌は、決してそんな生易しいものではないことを告げている。
――くっそ!甘いんだか辛いんだか苦いんだかまったくわからん!!いったい何を混ぜやがった、月美の奴!!
貌には全く出していないが、護の味覚はこのおにぎりが異常であることを察知し、警鐘をガンガン鳴らしていた。
だが、護も男の子。喧嘩の相手が思い描いた反応を示すつもりはなく、必死にポーカーフェイスを保ちながら、謎の味がするおにぎりをたいらげた。
平らげたが。
「……やばい」
「へ?って、おい!どこ行くんだよ、護!!」
おにぎりを完食したのち、護はそそくさと立ち去っていった。
どうやら、あまりおにぎりにあたったらしく、トイレへ駆け込んでいったようだ。
午後の最初の授業が始まる五分前まで、護は突然に襲いかかってきた腹痛と格闘し、こもり切ることになってしまった。
もっとも、教室に戻るときには平然としていたため、何があったのかを知る人間は月美と唯一の目撃者である清以外、誰もいなかったのだが。
----------------------------
一方。
「ねぇ、月美……土御門と何かあった?」
「別に、何も」
転校してきてからの親友である明美と一緒に弁当を食べていた月美だったが、その雰囲気は明らかに普段と違っていた。
その原因が恋人にあるのではないか、と推測することができないほど、明美は鈍くない。
――『何もない』とか言ってるけど、この子の態度、不機嫌な時のものなのよねぇ……大抵のことは笑って許すのに、これだけ不機嫌になるってことはやっぱり土御門が原因なんじゃ?
自分が月美に何かしたということはないし、清が何かしたのだとしたも、月美が不機嫌になるということはない。
むしろ、今頃、護を止めることに奔走しているはずだ。
となると、消去法で原因は護ということになる。
そう考えての問いかけだったのだが、月美は不機嫌な状態のまま、そっけなく返してきた。
親友のわかりやすい態度に、明美は苦笑を浮かべたが、その表情はすぐに戻る。
――けど、この二人が喧嘩ねぇ……いったい、何があったのやら
そもそもの疑問に考えが向く。
護と月美は現代の高校生カップルにしては珍しく純な関係らしく人目をはばからずにいちゃついたりするようなことはない。
だが、互いを信頼し合っていることが傍から見ていてもよくわかるほど仲がいいのだ。
そんな二人が、いきなり、何の前触れもなく冷戦状態に突入したのだから、よほどのことがあったに違いないということはわかるのだが。
――それ以上のことがなんにもわからないなぁ。まぁ、そもそも?あたし、月美のことも土御門のこともほとんど知らないんだけどね
むろん、明美は自分が月美と一番親しいということを自負しているつもりだ。
しかし、知り合ってからまだ一年も経っていないということも事実であり、何より二人ともあまり自分のプライベートに他者を招き入れるようなことはしない。
――こんなんで本当に『親友』って言えるのかしらねぇ……
そんな考えが頭の中に浮かぶ。
その瞬間、明美は頭を左右に振る。
――っと、いけないけない。こんなんでネガティブになってられないよ!これから知っていけばいいんだから、大丈夫、大丈夫!!
浮かんできた考えを振り払い、ポジティブに捉えて、気持ちが暗くならないようにした。
そんな明美の心を知ってか知らずか。
「明美?戻らないと授業、始まるよ??」
「へ?あ、うん!」
月美はさきほどの不機嫌そうな声とは打って変わって、普段通りの態度で明美に声をかけてくる。
その声に引き戻された明美は、うなずいて返し、教室へと戻っていった。
なお、教室に戻り、午後一番の授業が始まる五分前になってようやく教室に戻ってきた護を見て。
――月美、まさか土御門の弁当に何か盛った?
という物騒な考えが浮かんでしまったことは言うまでもない。
いつも通りの朝の風景が月華学園の前に広がっている。
そのはずだったのだが、勘のいい生徒の何人かはこの日の登校に何か物足りなさのようなものを感じていた。
それもそのはず。この日は護と月美が一緒に登校していなかったのだ。
その原因は現在も護たちの教室に漂っている瘴気にある。
この瘴気がクラスメイトたちに体調不良をもたらしていることは明らかなのだが、護はそれを完全に浄化しようとは考えていなかった。
そのことが月美を怒らせたため、二人は一緒に行動することをやめているのだ。
いや、それだけならばまだいいのだが、問題はそこからだった。
「……な、なぁ。お前と風森さん、何かあった?」
「別に」
昼休みになり、冷や汗を頬に伝わせながら清は護に問いかける。
だが、返ってきた答えはそっけなく、答えた本人は黙々とおにぎりを食べていた。
なお、おにぎりは月美が作ったもののようだが、具が入っていなかったようだ。
それが月美なりの嫌がらせ。いや、何かに対する抗議の形であることを清も察していたらしく。
――随分と低レベルな嫌がらせだなぁ。これで喧嘩してるってんだから、どうかしてるぞ
傍から見れば、ただの具なしおにぎりを持たされただけのように見える。
なんとも程度の低い抗議の方法に清は苦笑を浮かべていた。
だが、食べている本人の舌は、決してそんな生易しいものではないことを告げている。
――くっそ!甘いんだか辛いんだか苦いんだかまったくわからん!!いったい何を混ぜやがった、月美の奴!!
貌には全く出していないが、護の味覚はこのおにぎりが異常であることを察知し、警鐘をガンガン鳴らしていた。
だが、護も男の子。喧嘩の相手が思い描いた反応を示すつもりはなく、必死にポーカーフェイスを保ちながら、謎の味がするおにぎりをたいらげた。
平らげたが。
「……やばい」
「へ?って、おい!どこ行くんだよ、護!!」
おにぎりを完食したのち、護はそそくさと立ち去っていった。
どうやら、あまりおにぎりにあたったらしく、トイレへ駆け込んでいったようだ。
午後の最初の授業が始まる五分前まで、護は突然に襲いかかってきた腹痛と格闘し、こもり切ることになってしまった。
もっとも、教室に戻るときには平然としていたため、何があったのかを知る人間は月美と唯一の目撃者である清以外、誰もいなかったのだが。
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一方。
「ねぇ、月美……土御門と何かあった?」
「別に、何も」
転校してきてからの親友である明美と一緒に弁当を食べていた月美だったが、その雰囲気は明らかに普段と違っていた。
その原因が恋人にあるのではないか、と推測することができないほど、明美は鈍くない。
――『何もない』とか言ってるけど、この子の態度、不機嫌な時のものなのよねぇ……大抵のことは笑って許すのに、これだけ不機嫌になるってことはやっぱり土御門が原因なんじゃ?
自分が月美に何かしたということはないし、清が何かしたのだとしたも、月美が不機嫌になるということはない。
むしろ、今頃、護を止めることに奔走しているはずだ。
となると、消去法で原因は護ということになる。
そう考えての問いかけだったのだが、月美は不機嫌な状態のまま、そっけなく返してきた。
親友のわかりやすい態度に、明美は苦笑を浮かべたが、その表情はすぐに戻る。
――けど、この二人が喧嘩ねぇ……いったい、何があったのやら
そもそもの疑問に考えが向く。
護と月美は現代の高校生カップルにしては珍しく純な関係らしく人目をはばからずにいちゃついたりするようなことはない。
だが、互いを信頼し合っていることが傍から見ていてもよくわかるほど仲がいいのだ。
そんな二人が、いきなり、何の前触れもなく冷戦状態に突入したのだから、よほどのことがあったに違いないということはわかるのだが。
――それ以上のことがなんにもわからないなぁ。まぁ、そもそも?あたし、月美のことも土御門のこともほとんど知らないんだけどね
むろん、明美は自分が月美と一番親しいということを自負しているつもりだ。
しかし、知り合ってからまだ一年も経っていないということも事実であり、何より二人ともあまり自分のプライベートに他者を招き入れるようなことはしない。
――こんなんで本当に『親友』って言えるのかしらねぇ……
そんな考えが頭の中に浮かぶ。
その瞬間、明美は頭を左右に振る。
――っと、いけないけない。こんなんでネガティブになってられないよ!これから知っていけばいいんだから、大丈夫、大丈夫!!
浮かんできた考えを振り払い、ポジティブに捉えて、気持ちが暗くならないようにした。
そんな明美の心を知ってか知らずか。
「明美?戻らないと授業、始まるよ??」
「へ?あ、うん!」
月美はさきほどの不機嫌そうな声とは打って変わって、普段通りの態度で明美に声をかけてくる。
その声に引き戻された明美は、うなずいて返し、教室へと戻っていった。
なお、教室に戻り、午後一番の授業が始まる五分前になってようやく教室に戻ってきた護を見て。
――月美、まさか土御門の弁当に何か盛った?
という物騒な考えが浮かんでしまったことは言うまでもない。
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