164 / 276
旅行記
20、舞台と古都の街並み、そして仏像に圧倒される
しおりを挟む
奈良から京都のホステルに戻り、夕食と入浴を済ませた翌日。
この日の夜に東京へ戻る予定であるため、護たちは荷物をまとめ、チェックアウトを済ませてから、まず京都駅へとむかった。
駅にあるコインロッカーにスーツケースを預け、まず最初の目的地である清水寺へ向かうバスの停留所へむかった。
「清水寺と言えば、あれだよな?舞台」
「飛び下りの?」
「……あれ、下には木があるから案外死なないらしいぞ」
清水寺にまつわる有名な話をしたり、清水寺付近にある産寧坂にある古都の街並みが残る通りのことを話しながらバスを待った。
十分とせずにやってきたバスに乗り込み、清水寺へと向かった。
------------
清水寺に到着した一行は、拝観料を支払い、清水寺の中を散策した。
寺に身を置く僧が修行のために使うという、ろうそく以外の明かりがまったくない、真っ暗な空間を通り抜けると、おそらく誰もが一度は見たことがあるであろう、清水の舞台が視界に飛び込んできた。
夏の時期ということもあり、舞台の下には青々とした葉を茂らせた木が何本もあり、普段ならば見ることのない姿にほんの少し、感動を覚えていた。
「いやぁ、まさに絶景だな……」
「ほんと。山に登らないとこんな風景、見れないかも」
「今は夏だから一面緑だが、秋になると紅葉で赤いじゅうたんが出来るらしい」
「秋の京都かぁ……」
「ま、それは大学生とか修学旅行の特権だな」
季節が季節であれば、紅葉の京都を楽しむこともできたが、あいにくと今は夏真っ盛り。
眼下に広がっている色は緑ばかりだった。
もっとも、秋に京都を訪れることが出来るのは大学生か修学旅行の生徒、でなければツアー客ぐらいなものだろう。
「けど、京都の水で冷やされた冷奴を食べることができるのは、この時期だけだな」
「食い気かよ……否定はしないが」
なお、清水寺の境内には季節限定メニューとして冷奴を扱う食堂があるらしい。
事前に清がリサーチしていたようだが、昼時ではないため、即座に却下された。
却下されたことに対して、少しばかり不満そうな表情を浮かべる清だったが、そうなることは織り込み済みであったらしく、その表情は長続きしなかった。
その後、舞台を降りた五人は、境内を少しばかり散策してから産寧坂のほうへと向かっていった。
------------
産寧坂に到着すると、目の前にはまるで時代劇の世界に迷い込んだかのような雰囲気の街並みが広がっていた。
「う~ん、これぞまさに京都の風景……」
「ビバ京都」
「いや、なぜそこでそれ……」
「あははは……」
「でも、テレビで見る京都の風景っていえばこれだよねぇ」
まさに日本の古都と言われて連想する風景に、五人は口々にそんな感想を漏らしながら散策を始めた。
が、夏とはいえかなりの数の観光客が訪れているようで、少しばかり道が混雑していた。
とはいえ、本当に少しばかりであり、気になるかと聞かれればそうでもない、と答える程度のものだったが。
「いまは清水寺の方とか御山のほうに人が流れてるからこの程度で済んでるのかもな」
「御山?」
「比叡山とか高野山のこと。まぁ、比叡山のほうが多いのかな?精進料理とか出してるみたいだし」
突然、護の口から出てきた言葉に首をかしげる明美に、佳代が解説を加えた。
なお、今回の旅程にはそのどちらも加わっていない。
理由は単純で、距離があるため移動と体験で一日を費やしてしまうためだ。
決して、女人禁制であることが理由ではない。
「機会があれば行ってみたいね」
「……だな。色々といい経験が出来そうだ」
何気なく出てきた月美の言葉に、護は遠い目をしながら返した。
なぜそんな態度をとっているのか、不思議に思い、首をかしげる月美だったが、おそらくいまは答えてくれないだろう、と判断してそれ以上は追及しなかった。
------------
その後、京都の街並みを楽しみながら散策していた護たちだったが、その独特の街並みを楽しめる産寧坂と二寧坂を抜けて、京都美術館へと向かい、三十三間堂に到着した。
三十三間堂は千手観音像で有名なのだが、もう一つ、年始のころに行われる「楊枝加持」と江戸時代に行なわれていた通し矢にちなんだ「大的大会」という弓道の大会が行われることでも知られている。
特に、大的大会は京都の冬の風物詩として地元で愛されている。
だが、今回、護たちが歩いているのはお堂の中であり、目的は三十三間堂に鎮座する千手観音像である。
順路で通った際に展示されている資料に目は通したが、その程度の興味しかない。
ほかにも免震構造についてや毎年行われる行事についての掲示もあったが流し読みする程度で、熟読はしていない。
そんな風に歩いているうちに、目的である千手観音像がある本堂にたどり着いた。
「……うわぁ……」
「……なぜだろうな、俺、悪いこと何もしてないはずなのにすっげぇ怖いって思ってる」
「あははは……」
「笑うしかないよね、これは……」
目の前に広がっているのは、千体はあるのではないかと疑ってしまうほどの数が並んでいる千手観音像だった。
その千本の手であらゆる魂を余すことなく救う、と言われている観音様ではあるが、護たちはどうやら、かなりの数が並ぶことで生まれる圧倒的な気配に威圧されてしまったようだ。
いわゆる、雰囲気に呑まれる、という状態だ。
だが、呑まれているのは護と月美、そして一時的とはいえ呪詛で鬼となっていた佳代と、薄いながらもかつては安倍家と並び陰陽寮の権力を独占した一族、賀茂家の血を引く清だけで、一般人である明美は仏像が放つ威圧感よりも、その荘厳さに驚いていたようだった。
この日の夜に東京へ戻る予定であるため、護たちは荷物をまとめ、チェックアウトを済ませてから、まず京都駅へとむかった。
駅にあるコインロッカーにスーツケースを預け、まず最初の目的地である清水寺へ向かうバスの停留所へむかった。
「清水寺と言えば、あれだよな?舞台」
「飛び下りの?」
「……あれ、下には木があるから案外死なないらしいぞ」
清水寺にまつわる有名な話をしたり、清水寺付近にある産寧坂にある古都の街並みが残る通りのことを話しながらバスを待った。
十分とせずにやってきたバスに乗り込み、清水寺へと向かった。
------------
清水寺に到着した一行は、拝観料を支払い、清水寺の中を散策した。
寺に身を置く僧が修行のために使うという、ろうそく以外の明かりがまったくない、真っ暗な空間を通り抜けると、おそらく誰もが一度は見たことがあるであろう、清水の舞台が視界に飛び込んできた。
夏の時期ということもあり、舞台の下には青々とした葉を茂らせた木が何本もあり、普段ならば見ることのない姿にほんの少し、感動を覚えていた。
「いやぁ、まさに絶景だな……」
「ほんと。山に登らないとこんな風景、見れないかも」
「今は夏だから一面緑だが、秋になると紅葉で赤いじゅうたんが出来るらしい」
「秋の京都かぁ……」
「ま、それは大学生とか修学旅行の特権だな」
季節が季節であれば、紅葉の京都を楽しむこともできたが、あいにくと今は夏真っ盛り。
眼下に広がっている色は緑ばかりだった。
もっとも、秋に京都を訪れることが出来るのは大学生か修学旅行の生徒、でなければツアー客ぐらいなものだろう。
「けど、京都の水で冷やされた冷奴を食べることができるのは、この時期だけだな」
「食い気かよ……否定はしないが」
なお、清水寺の境内には季節限定メニューとして冷奴を扱う食堂があるらしい。
事前に清がリサーチしていたようだが、昼時ではないため、即座に却下された。
却下されたことに対して、少しばかり不満そうな表情を浮かべる清だったが、そうなることは織り込み済みであったらしく、その表情は長続きしなかった。
その後、舞台を降りた五人は、境内を少しばかり散策してから産寧坂のほうへと向かっていった。
------------
産寧坂に到着すると、目の前にはまるで時代劇の世界に迷い込んだかのような雰囲気の街並みが広がっていた。
「う~ん、これぞまさに京都の風景……」
「ビバ京都」
「いや、なぜそこでそれ……」
「あははは……」
「でも、テレビで見る京都の風景っていえばこれだよねぇ」
まさに日本の古都と言われて連想する風景に、五人は口々にそんな感想を漏らしながら散策を始めた。
が、夏とはいえかなりの数の観光客が訪れているようで、少しばかり道が混雑していた。
とはいえ、本当に少しばかりであり、気になるかと聞かれればそうでもない、と答える程度のものだったが。
「いまは清水寺の方とか御山のほうに人が流れてるからこの程度で済んでるのかもな」
「御山?」
「比叡山とか高野山のこと。まぁ、比叡山のほうが多いのかな?精進料理とか出してるみたいだし」
突然、護の口から出てきた言葉に首をかしげる明美に、佳代が解説を加えた。
なお、今回の旅程にはそのどちらも加わっていない。
理由は単純で、距離があるため移動と体験で一日を費やしてしまうためだ。
決して、女人禁制であることが理由ではない。
「機会があれば行ってみたいね」
「……だな。色々といい経験が出来そうだ」
何気なく出てきた月美の言葉に、護は遠い目をしながら返した。
なぜそんな態度をとっているのか、不思議に思い、首をかしげる月美だったが、おそらくいまは答えてくれないだろう、と判断してそれ以上は追及しなかった。
------------
その後、京都の街並みを楽しみながら散策していた護たちだったが、その独特の街並みを楽しめる産寧坂と二寧坂を抜けて、京都美術館へと向かい、三十三間堂に到着した。
三十三間堂は千手観音像で有名なのだが、もう一つ、年始のころに行われる「楊枝加持」と江戸時代に行なわれていた通し矢にちなんだ「大的大会」という弓道の大会が行われることでも知られている。
特に、大的大会は京都の冬の風物詩として地元で愛されている。
だが、今回、護たちが歩いているのはお堂の中であり、目的は三十三間堂に鎮座する千手観音像である。
順路で通った際に展示されている資料に目は通したが、その程度の興味しかない。
ほかにも免震構造についてや毎年行われる行事についての掲示もあったが流し読みする程度で、熟読はしていない。
そんな風に歩いているうちに、目的である千手観音像がある本堂にたどり着いた。
「……うわぁ……」
「……なぜだろうな、俺、悪いこと何もしてないはずなのにすっげぇ怖いって思ってる」
「あははは……」
「笑うしかないよね、これは……」
目の前に広がっているのは、千体はあるのではないかと疑ってしまうほどの数が並んでいる千手観音像だった。
その千本の手であらゆる魂を余すことなく救う、と言われている観音様ではあるが、護たちはどうやら、かなりの数が並ぶことで生まれる圧倒的な気配に威圧されてしまったようだ。
いわゆる、雰囲気に呑まれる、という状態だ。
だが、呑まれているのは護と月美、そして一時的とはいえ呪詛で鬼となっていた佳代と、薄いながらもかつては安倍家と並び陰陽寮の権力を独占した一族、賀茂家の血を引く清だけで、一般人である明美は仏像が放つ威圧感よりも、その荘厳さに驚いていたようだった。
0
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
孤児が皇后陛下と呼ばれるまで
香月みまり
ファンタジー
母を亡くして天涯孤独となり、王都へ向かう苓。
目的のために王都へ向かう孤児の青年、周と陸
3人の出会いは世界を巻き込む波乱の序章だった。
「後宮の棘」のスピンオフですが、読んだことのない方でも楽しんでいただけるように書かせていただいております。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
余命半年の僕は、君を英雄にするために「裏切り者」の汚名を着る
深渡 ケイ
ファンタジー
魔力を持たない少年アルトは、ある日、残酷な未来を知ってしまう。 最愛の幼馴染であり「勇者」であるレナが、半年後に味方の裏切りによって惨殺される未来を。
未来を変える代償として、半年で全身が石化して死ぬ呪いを受けたアルトは、残された命をかけた孤独な決断を下す。
「僕が最悪の裏切り者となって、彼女を救う礎になろう」
卓越した頭脳で、冷徹な「悪の参謀」を演じるアルト。彼の真意を知らないレナは、彼を軽蔑し、やがて憎悪の刃を向ける。 石化していく体に走る激痛と、愛する人に憎まれる絶望。それでも彼は、仮面の下で血の涙を流しながら、彼女を英雄にするための完璧なシナリオを紡ぎ続ける。
これは、誰よりも彼女の幸せを願った少年が、世界一の嫌われ者として死んでいく、至高の献身の物語。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった
風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」
王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。
しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。
追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。
一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。
「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」
これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる